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訪問看護は、主治医が交付する「訪問看護指示書」がなければ開始できません。加えて、要介護認定の場面では市区町村の依頼を受けた主治医が「主治医意見書」を作成し、介護保険サービス全体の設計に大きな影響を及ぼします。訪問看護ステーションの管理者・介護支援専門員・在宅療養支援診療所(在支診)の連携担当者にとって、両文書の位置づけ・依頼フロー・更新頻度・電子連携・介護保険との整合を正しく整理しておくことは、日々の業務効率と算定精度の両面で欠かせません。本記事は厚生労働省・自治体介護保険課などの公開情報を整理した内容として、2024年度診療報酬・介護報酬同時改定を踏まえた運用上の論点をまとめます。個別の算定・記載判断は管轄の地方厚生局・都道府県・市区町村・主治医にご確認ください。
この記事でわかること
- 訪問看護指示書と主治医意見書の制度上の違い・位置づけ
- 指示書の依頼フロー(初回・更新・特別指示書)
- 特別訪問看護指示書の交付要件と算定上の扱い
- 緊急時訪問看護加算と指示書との関係
- 主治医意見書の更新頻度と要介護認定サイクル
- 電子カルテ・訪問看護記録システムとの連携ポイント
- 介護保険サービス計画(ケアプラン)との整合設計
- 2024年度同時改定での関連変更点
- FAQ 5問・公的機関出典5件以上
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1. 訪問看護指示書の制度上の位置づけ
訪問看護指示書は、健康保険法および介護保険法に基づき、主治医が訪問看護ステーション・医療機関の看護師等に対して交付する医師の指示文書です。訪問看護基本療養費・介護報酬上の訪問看護費のいずれを算定する場合でも、指示書の交付が算定の前提となります。指示書の様式・記載事項は診療報酬告示の様式に定められており、傷病名・現在の状況(病状・治療状態)・投与中の薬剤・褥瘡の深さ・装着している医療機器・留意事項および指示事項・在宅患者訪問点滴注射に関する指示・緊急時の連絡先・不在時の対応法・特記事項などが標準項目です(出典:厚生労働省「診療報酬情報提供サービス」 https://shinryohoshu.mhlw.go.jp/ )。
指示書の有効期間は原則6か月以内で、主治医の判断によりそれより短い期間を設定することも可能です。訪問看護ステーションは指示書を受領した上で訪問看護計画書を作成し、利用者・家族への同意取得を経て訪問を開始します。指示書のない状態で提供された訪問看護は、保険請求上の算定要件を満たさず返戻の対象となります。
1-1. 指示書料の算定
指示書は交付する主治医側で「訪問看護指示料」として算定されます。医療保険では診療報酬点数表の在宅療養指導管理料の項に区分されており、月1回を限度に算定するのが基本です。同一月に複数のステーションへ指示書を交付した場合の取り扱い、特別訪問看護指示書・在宅患者訪問点滴注射指示書との併算定ルールは告示・通知に定められています(出典:厚生労働省「令和6年度診療報酬改定」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00041.html )。
2. 主治医意見書との違い——目的・交付主体・使い道
主治医意見書は、介護保険の要介護認定において市区町村が主治医に対して作成を依頼する文書で、要介護度の判定資料と、介護サービス計画作成時の医学的意見の提供という2つの役割を担います。訪問看護指示書とは目的・交付主体・依頼者・使い道がすべて異なるため、混同すると業務フローを誤ります。
| 項目 | 訪問看護指示書 | 主治医意見書 |
|---|---|---|
| 根拠 | 健康保険法/介護保険法(訪問看護費算定要件) | 介護保険法(要介護認定) |
| 依頼者 | 訪問看護ステーション・医療機関 | 市区町村(介護保険課) |
| 交付先 | 依頼元のステーション等 | 市区町村 |
| 目的 | 訪問看護提供の医師指示 | 要介護度判定資料・ケアプラン参考 |
| 有効期間 | 原則6か月以内 | 認定有効期間(原則12か月)に連動 |
| 報酬 | 訪問看護指示料 | 主治医意見書料(市区町村から支払) |
主治医意見書の様式・記載項目は厚生労働省が全国統一様式を定めており、傷病に関する意見・特別な医療・心身の状態に関する意見・生活機能とサービスに関する意見・特記事項の4本柱で構成されます。要介護認定は一次判定(コンピュータ判定)と二次判定(介護認定審査会)の2段階で行われ、主治医意見書は認定審査会の判定資料として重要な位置を占めます(出典:厚生労働省「要介護認定に係る制度の概要」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/nintei/gaiyo1.html )。
3. 訪問看護指示書の依頼フロー
訪問看護指示書の依頼は、初回導入時・定期更新時・急変時(特別指示書)で流れが異なります。ステーション側は依頼テンプレートを標準化し、主治医の負担を最小化した書式運用を組むことが、円滑な連携継続の鍵です。
3-1. 初回導入時
ケアマネジャー・退院支援看護師・在支診などから利用相談を受けた後、主治医候補を確認し、訪問看護依頼書(ステーション書式)とあわせて指示書交付を依頼します。依頼書には利用者基本情報・現病歴・依頼理由・希望訪問頻度・特記事項を記載し、主治医が指示書を作成しやすい情報粒度に整えることが標準です。医療機関との連携が初回の場合は、事前に電話またはFAXで訪問看護提供体制を説明し、指示書送付方法(郵送・FAX・電子連携)を確認しておきます。
3-2. 定期更新時
指示書の有効期間終了1〜2週間前を目安に、更新依頼書と直近の訪問看護報告書を主治医に送付します。訪問看護報告書は月1回主治医に提出することが訪問看護計画書・報告書の基本フローに位置づけられており、指示書更新の判断材料としても機能します。有効期間切れの空白日を作らないよう、更新スケジュールを電子カレンダーで管理する運用が現場では一般的です。
3-3. 依頼書テンプレートの標準化
依頼書は「初回用」「更新用」「特別指示書用」「点滴指示書用」の4種を最低限そろえ、利用者IDと主治医情報をヘッダに自動差込できるフォーマットにしておくと、連携医療機関からの返送率が安定します。書式の煩雑さは主治医側の返送遅延の主因となるため、記入欄は最小限に絞る設計が望ましい方針です。
4. 特別訪問看護指示書の交付要件
特別訪問看護指示書は、急性増悪・終末期・退院直後などにより一時的に頻回の訪問看護が必要と主治医が判断した場合に交付される指示書です。交付日から14日間を有効期間とし、原則として月1回を限度に交付されます。ただし気管カニューレを使用している状態の利用者・真皮を越える褥瘡の状態にある利用者については、月2回まで交付が可能とされています(出典:厚生労働省「訪問看護療養費に係る指定訪問看護の費用の額の算定方法」 https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tb9756&dataType=1 )。
特別指示書が交付された期間中は、介護保険給付ではなく医療保険給付の訪問看護として取り扱われる点が実務上の要点です。ケアマネジャーとの連携で介護保険給付との重複を避け、期間終了後は自動的に元の保険区分に戻る運用を利用者・家族に事前説明する必要があります。訪問頻度は毎日訪問も可能となり、複数回訪問加算・長時間訪問看護加算などの併算定が制度上想定されています。
5. 緊急時訪問看護加算と指示書の関係
緊急時訪問看護加算(介護保険)・24時間対応体制加算(医療保険)は、いずれもステーションが利用者・家族からの緊急連絡に24時間対応し、必要時に臨時訪問を行う体制を評価する加算です。加算算定にあたっては、通常の訪問看護指示書に加えて「緊急時訪問看護に関する利用者同意」の取得と、主治医との連絡体制の整備が要件となります。2024年度介護報酬改定では、看護業務負担軽減への取り組み実施状況によって区分Ⅰ・区分Ⅱの評価差が設けられました(出典:厚生労働省「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」 https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001213516.pdf )。
緊急時に臨時訪問を行った場合は、その内容を訪問看護記録に残し、主治医への報告経路を確保します。夜間・休日の主治医連絡先が指示書上に明記されていない場合は、更新時に「緊急時の連絡先」欄を主治医に確認し、必要に応じて在支診・救急相談窓口も併記しておくと現場判断が安定します。
6. 主治医意見書の更新頻度と要介護認定サイクル
要介護認定の有効期間は、新規申請で原則12か月、区分変更申請で原則12か月、更新申請では最長48か月まで延長可能とされており、審査会の判断で6〜48か月の範囲で個別に決定されます(出典:厚生労働省「要介護認定に関するQ&A・関連通知」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/nintei/index.html )。主治医意見書は認定申請のたびに市区町村から主治医へ依頼されるため、更新頻度は認定有効期間に連動します。
訪問看護ステーションとしては、意見書の作成タイミングそのものに直接関与しませんが、主治医が意見書を作成する際に参照する情報として、直近の訪問看護報告書・ADL評価・服薬状況・生活機能低下の様子を平時から共有しておくことが、意見書記載の質を高める間接的な貢献となります。ケアマネジャーからの情報照会に応じる際も、主治医意見書との整合を意識した情報粒度で回答すると、認定審査の判断材料の一貫性が保たれやすくなります。
7. 電子カルテ・訪問看護記録システムとの連携
指示書・報告書・計画書のやり取りは、従来はFAX中心の運用でしたが、電子カルテ連携・地域医療連携ネットワーク・訪問看護記録システムの普及により、電子化の選択肢が広がっています。厚生労働省が推進する「医療DX」の枠組みでは、医療機関・訪問看護ステーション間の文書電子化と情報連携基盤の整備が中期方針として示されています(出典:厚生労働省「医療DXの推進に関する工程表」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_33417.html )。
7-1. 連携の3パターン
現場での連携パターンは大きく3つに分かれます。第1に、地域医療連携ネットワーク(各地域のID-Link・HumanBridge等)を介した主治医の電子カルテ参照。第2に、訪問看護記録システムが持つ主治医向けポータルからのPDF指示書・報告書送受信。第3に、汎用のセキュアメール・暗号化ファイル転送による添付ファイルやり取り。いずれも個人情報保護法・医療情報システム安全管理ガイドラインに沿った運用設計が前提となります。
7-2. FAX並行運用が続く現実
電子連携は主治医側の医療機関がシステム対応している場合に限られるため、地域構成によってはFAX並行運用が長期化するのが現実です。電子で受領した文書もPDFとして訪問看護記録システムに紐づけ、指示書の交付履歴を時系列で追える状態を維持することが重要です。
8. 介護保険サービス計画との整合
介護保険給付の訪問看護は、居宅サービス計画(ケアプラン)に位置づけられ、サービス提供票に基づいて実施されます。指示書に記載された医学的指示内容と、ケアプランに記載された訪問看護のサービス内容・頻度が整合していないと、サービス担当者会議での修正・再調整が発生します。ケアマネジャーは主治医意見書・訪問看護指示書・アセスメント結果を統合してケアプランを作成するため、ステーションからの情報提供の粒度が計画の精度を左右します(出典:厚生労働省「指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準」 https://elaws.e-gov.jp/document?lawid=411M50000080038 )。
サービス担当者会議では、指示書に記載された医学的留意事項をケアマネジャー・他サービス提供事業者に共有し、リハビリ職・訪問介護・福祉用具貸与など他サービスとの連携における注意点を整理します。特に医療的ケア児・末期がん利用者・人工呼吸器装着者では、指示書の記載内容がそのままケアプランの安全設計に反映される必要があります。
9. 2024年度診療報酬・介護報酬同時改定の関連ポイント

2024年度は6年に1度の診療報酬・介護報酬同時改定に該当し、訪問看護指示書・主治医意見書を取り巻く運用にも複数の変更が加わりました。厚生労働省告示・通知の原文で最新値を確認したうえで、自ステーション運用に反映する必要があります。
- 緊急時訪問看護加算(介護保険)の区分Ⅰ・区分Ⅱ構造化(看護業務負担軽減への取り組み実施の評価)
- 24時間対応体制加算(医療保険)における負担軽減取り組みの評価差設計
- 機能強化型訪問看護ステーションの人員・実績要件の見直し
- 専門管理加算・遠隔死亡診断補助加算など専門性評価の拡充
- ICT活用・書類簡素化に関する加算・要件緩和の一部拡大
これらの変更は、指示書・報告書・計画書のやり取りにも間接的に影響するため、算定・記載運用の見直しタイミングとして活用が有効です。詳細は厚生労働省「令和6年度診療報酬改定」および「令和6年度介護報酬改定」ページで公表されている告示・通知を確認してください(出典:厚生労働省「令和6年度介護報酬改定」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_37687.html )。
10. FAQ
- Q1. 訪問看護指示書と主治医意見書は同じ主治医が書きますか?
- 訪問看護指示書はステーションが依頼した主治医が交付し、主治医意見書は市区町村が要介護認定のために依頼した主治医が作成します。両者が同一医師となるケースは多いものの、制度上は別の依頼経路であり、指示書の主治医と意見書の主治医が異なる場合もあります。ステーション側は「訪問看護の指示を出す主治医」を明確にしておく必要があります。
- Q2. 指示書の有効期間中に主治医が変更になった場合はどうしますか?
- 新しい主治医から改めて訪問看護指示書の交付を受ける運用が基本です。旧主治医の指示書の有効期間が残っていても、実際に指示を出せる立場の医師が変更された時点で新指示書に切り替える方針が、責任所在を明確にする観点で安全側とされます。切替の実務手順は主治医・医療機関の方針によっても異なるため、個別に確認してください。
- Q3. 特別訪問看護指示書は月2回まで交付できるケースは何ですか?
- 気管カニューレを使用している状態の利用者、および真皮を越える褥瘡の状態にある利用者については、月2回まで特別訪問看護指示書の交付が可能とされています。それ以外の急性増悪等の場合は月1回が原則です。詳細な要件・記載事項は診療報酬告示・関連通知を確認してください。
- Q4. 主治医意見書の内容を訪問看護ステーションが閲覧できますか?
- 主治医意見書は市区町村・介護認定審査会・ケアマネジャーが認定審査およびケアプラン作成のために参照する文書で、訪問看護ステーションが直接閲覧する仕組みは制度上ありません。ただし、利用者・家族の同意のもとケアマネジャーから要点を情報共有される場合や、主治医との連携の中で医学的意見の骨子が共有される場合があります。取り扱いは個人情報保護の観点で慎重を要します。
- Q5. 電子指示書は法的に有効ですか?
- 電子署名・タイムスタンプなど所定の要件を満たした電子文書は、医療情報システム安全管理ガイドラインの枠組みで運用が認められています。地域医療連携ネットワーク経由でPDF送受信する場合も、真正性・見読性・保存性の3要件を担保する運用設計が前提です。具体的な運用可否は使用システム・医療機関との合意事項に依存するため、導入前に自治体・システムベンダー・主治医と協議のうえ判断してください。
11. まとめ——指示書と意見書を「連携文書」として運用する
訪問看護指示書と主治医意見書は、目的も依頼経路も異なる別文書ですが、いずれも訪問看護ステーションの実践・介護支援専門員の計画設計・在支診の在宅医療連携を結節する「連携文書」として機能します。指示書は算定要件であると同時に主治医との継続的な医学的コミュニケーションの記録媒体、意見書は要介護認定の判断資料であるとともにケアプラン設計の羅針盤です。両者を独立した書類として処理するのではなく、多職種連携の情報循環の一部として位置づけると、書類作業が単なる事務から「連携の質を高める設計」へと変わります。本記事は公開情報を整理した一般的な解説であり、具体的な算定・記載・運用判断は管轄の地方厚生局・都道府県・市区町村・主治医にご相談ください。
関連リンク
出典
- 厚生労働省「令和6年度診療報酬改定」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00041.html
- 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定」https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_37687.html
- 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001213516.pdf
- 厚生労働省「要介護認定に係る制度の概要」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/nintei/gaiyo1.html
- 厚生労働省「要介護認定に関するQ&A・関連通知」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/nintei/index.html
- 厚生労働省「医療DXの推進に関する工程表」https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_33417.html
- 厚生労働省「訪問看護療養費に係る指定訪問看護の費用の額の算定方法」https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tb9756&dataType=1
- e-Gov 法令検索「指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準」https://elaws.e-gov.jp/document?lawid=411M50000080038
- 厚生労働省 診療報酬情報提供サービスhttps://shinryohoshu.mhlw.go.jp/
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mitoru編集部の見解
訪問看護ステーションの開業・運営は、看護師人員確保と地域医療機関との連携体制が成功要因です。mitoru編集部は、開業前の事業計画段階で、地域包括ケアシステムにおける位置づけを保健所・地域包括支援センターへヒアリングすることを推奨します。