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訪問看護ステーションが担うターミナルケア・在宅看取りは、利用者本人の意思を尊重した最期の時間を家族とともに過ごせるよう支援する在宅医療の要となる業務です。2024年度診療報酬・介護報酬同時改定では在宅看取り関連の評価が見直され、ターミナルケア加算・在宅ターミナルケア加算・グリーフケア関連の枠組みも整理されました。管理者・訪問看護師・在宅看取り担当が押さえるべき制度と多職種連携、家族支援、スタッフメンタルヘルス、ACP(Advance Care Planning)の運用まで、厚生労働省・中央社会保険医療協議会・日本ホスピス緩和ケア協会など公的機関・団体の公開情報を整理した内容としてまとめます。本記事は一般的な制度解説であり、個別の算定・臨床判断は管轄の地方厚生局・都道府県・主治医・所属団体にご確認ください。
この記事でわかること
- ターミナルケア加算(介護保険)と訪問看護ターミナルケア療養費(医療保険)の要件
- グリーフケアに関わる遺族支援の位置づけ
- 在宅看取りの流れ(安定期・移行期・臨死期・死亡確認・遺族訪問)
- 主治医・薬剤師・ケアマネジャーとの多職種連携の要点
- 家族への意思決定支援と介護負担軽減の視点
- 看取りに携わるスタッフのメンタルサポート
- ACP(人生会議)の考え方と運用
- 2024年度同時改定における関連加算の見直しポイント
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1. 訪問看護ターミナルケアの位置づけ——在宅看取りを支える中核機能
訪問看護におけるターミナルケアとは、生命を脅かす疾患の終末期にある利用者に対し、身体的・精神的・社会的苦痛の緩和と本人の意思を尊重した療養支援を提供する看護実践を指します。厚生労働省は「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」で、本人の意思決定を基本とし、医療・ケアチームと本人・家族との話し合いを繰り返しながら方針を決めていく枠組みを示しています(出典:厚生労働省 同ガイドライン https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000197721.html )。住み慣れた自宅で最期を迎えたいというニーズは根強く、在宅医療推進施策の柱の一つとして位置づけられています(出典:厚生労働省「在宅医療の推進について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000061944.html )。訪問看護ステーションは、在宅療養支援診療所・訪問診療医・ケアマネジャー・薬局・介護サービス事業所と連携し、24時間対応体制のもとで臨死期の症状緩和から遺族への訪問(グリーフケア)まで一連の役割を担います。
1-1. 在宅看取りの制度的基盤
在宅看取りを制度的に支える柱は、①在宅療養支援診療所・在宅療養支援病院による24時間往診・訪問看護指示体制、②訪問看護ステーションの24時間対応体制加算・緊急時訪問看護加算、③ターミナルケア加算・在宅ターミナルケア加算による死亡直前期の看護実践への評価、の3つに整理できます。具体的な要件・点数は診療報酬・介護報酬告示の最新版で確認します(出典:厚生労働省「令和6年度診療報酬改定」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00041.html /「令和6年度介護報酬改定」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_37687.html )。
1-2. 訪問看護師の役割の広がり
訪問看護師のターミナル期の役割は、症状緩和のケアに留まらず、病状説明の橋渡し、療養場所の意思決定支援、介護指導、死亡確認時の連絡と対応、エンゼルケア、遺族へのグリーフケアまで幅広く広がっています。医療行為に関わる判断は主治医の指示のもと行われる一方、療養生活を支える判断は看護師が主体的に組み立てる場面が多く、多職種のハブ機能を果たすポジションです。
2. ターミナルケア加算・在宅ターミナルケア加算とグリーフケア

看取り期の訪問看護を評価する加算は、介護保険では「ターミナルケア加算」、医療保険では「訪問看護ターミナルケア療養費」として整理されています。算定単位・要件が異なるため、利用者ごとに適用保険を確定させたうえで算定します。以下は2024年度同時改定後の概要を整理した内容で、具体的な点数・単位数は厚生労働省告示の最新版で確認してください(出典:厚生労働省「令和6年度診療報酬改定の概要」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00041.html )。
| 項目 | ターミナルケア加算(介護保険) | 訪問看護ターミナルケア療養費(医療保険) |
|---|---|---|
| 根拠 | 介護報酬告示 | 診療報酬告示(訪問看護療養費) |
| 算定単位 | 死亡月に1回 | 死亡月に1回 |
| 主な要件 | 死亡日および死亡日前14日以内に2回以上訪問/ターミナルケア計画の作成/利用者・家族への説明と同意 | 死亡日および死亡日前14日以内に2回以上訪問/ターミナルケアに係る計画とケア提供/死亡診断への関与 |
| 対象 | 要介護認定を受けた利用者 | 医療保険適用の利用者(別表第7疾病該当者・特別指示書交付者等) |
| 実施主体 | 訪問看護ステーション | 訪問看護ステーション |
2-1. 介護保険「ターミナルケア加算」のポイント
介護保険のターミナルケア加算は、要介護認定を受けた利用者が在宅で死亡した場合に、死亡日および死亡日前14日以内に2回以上の訪問を行い、ターミナルケアに関する計画を作成のうえ本人・家族に説明し同意を得たケースを対象に算定される加算です。多職種カンファレンスの実施記録、家族への説明経過、症状観察と対応記録がケア計画書と訪問記録に残されていることが評価の前提となります(出典:厚生労働省「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」 https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001213516.pdf )。
2-2. 医療保険「訪問看護ターミナルケア療養費」のポイント
医療保険のターミナルケア療養費は、末期の悪性腫瘍・別表第7疾病該当者・特別訪問看護指示書交付者など医療保険適用の利用者が対象で、死亡日および死亡日前14日以内の訪問実績・ケア計画とケア提供・死亡診断への関与が要件です(出典:中央社会保険医療協議会「令和6年度診療報酬改定 個別改定項目について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000188411_00040.html )。同一利用者に対して介護保険・医療保険の重複算定はできず、死亡月時点の保険区分に応じて該当する加算を算定します。
2-3. グリーフケアと遺族訪問の位置づけ
グリーフケア(遺族へのケア)は、看取り後に遺族が経験する悲嘆反応に寄り添い、生活再構築を支援する取り組みです。訪問看護ステーションでは、死亡後の遺族訪問や電話連絡を運用に組み込んでいる事業所が広く存在します。診療報酬・介護報酬におけるグリーフケア単独の加算は限定的ですが、ステーションの看取り実績を評価する加算(機能強化型訪問看護ステーションの要件など)と一体で行われるのが一般的です(出典:特定非営利活動法人日本ホスピス緩和ケア協会 https://www.hpcj.org/ )。
3. 在宅看取りの一般的な流れ
在宅看取りは、安定期→移行期(Pre-terminal)→臨死期(Terminal)→死亡確認→エンゼルケア→遺族訪問の段階で進みます。段階ごとの看護のポイントと家族説明を、ステーション内で共通フレーム化しておくと、担当交代時も方針がぶれません。
3-1. 安定期——療養環境と意思の確認
安定期の焦点は、療養環境の整備(介護ベッド・褥瘡予防・排泄環境・服薬管理)と本人・家族の意思確認です。ACPの視点で、本人が大切にしたいこと・望む療養場所・望まない医療的介入を段階的に話し合い記録に残します。急変時対応の意向は主治医・在宅医の判断のもとで文書化し、多職種で共有します。
3-2. 移行期——症状変化への対応と看取り期の心構え共有
移行期には、食事量の減少・活動量の低下・傾眠傾向の増加など、身体機能の低下が徐々に顕在化します。家族に対して「起こりうる身体変化」と「その時の対応」を段階的に伝えていくことが、家族の心の準備を支える基盤となります。急変時に本人の希望と異なる搬送に至るケースを避けるためにも、事前の意思確認と丁寧な説明が要点です。
3-3. 臨死期——症状緩和と家族支援
臨死期は、意識レベル低下・下顎呼吸・チアノーゼなど死亡が近づく身体変化が明らかになる期間です。訪問頻度を増やし、症状緩和のケアを主治医の指示のもとで実施します。家族へは、この段階で起きる身体変化が病状の自然な経過であることを説明し、看取りの場に寄り添える環境を整えます。24時間対応体制のもとで電話相談・臨時訪問できる態勢が心理的支えとなります。
3-4. 死亡確認とエンゼルケア・遺族訪問
死亡が近づいた・確認された段階では、家族から訪問看護ステーションに連絡が入り、看護師が訪問して状態を確認のうえ主治医へ連絡します。死亡診断は医師が行う医療行為であり、看護師は主治医到着までの家族への寄り添いと、その後の死亡診断書交付・エンゼルケア・葬儀社への引き継ぎ支援を担います。死亡後の遺族訪問は、看取り後1〜2週間・四十九日前後・一周忌前後など、事業所ごとに運用ルールを設定するケースが一般的で、療養期の思い出の共有・遺族の心身状態の確認・必要な社会資源の紹介を、遺族の受け止めのペースに合わせて行います。
4. 主治医・在宅療養支援診療所との多職種連携
在宅看取りは、訪問看護ステーション単独で完結する業務ではなく、主治医(在宅療養支援診療所・在宅療養支援病院・往診医)、薬剤師、ケアマネジャー、介護サービス事業所、必要に応じてMSW(医療ソーシャルワーカー)といった多職種の協働で成立します。厚生労働省も地域包括ケアシステムにおける在宅医療・介護連携推進事業を通じて多職種連携を支援しています(出典:厚生労働省「在宅医療・介護連携推進事業」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000078123.html )。
4-1. 主治医との情報共有と指示体制
看取り期は病状変化が速まるため、訪問看護指示書・特別訪問看護指示書の内容更新、屯用薬の指示、症状変化時の連絡先と時間帯の確認を主治医との間で明文化しておくことが重要です。夜間・休日の対応方針(救急要請の是非、看取り時の連絡順序)を事前に共有しておくと、臨死期の判断が安定します。
4-2. 医療介護専用SNS等の活用
医療介護専用SNS(MedicalCare STATION等)を活用すると、主治医・薬剤師・ケアマネジャー間で症状経過・処方変更・家族の状況を文字ベースで蓄積でき、看取り期の情報共有が円滑になります。夜間に主治医への電話をためらう場面でも、テキストで状況を残しておけば翌朝までに主治医の判断を得られるケースもあります(出典:厚生労働省「医療情報化に関する政策」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000201849.html )。
4-3. 薬剤師・ケアマネジャー・退院時共同指導
疼痛管理・症状緩和に用いる医療用麻薬・鎮痛補助薬の管理は薬剤師との連携が要点で、在宅患者訪問薬剤管理指導を担う薬剤師と服薬状況・副作用・レスキュー使用状況を共有します。ケアマネジャーとは、介護サービスの調整・家族への介護指導・レスパイトケアの活用可能性を連携します。病院からの退院で在宅看取り方針となる利用者では、退院前カンファレンス・退院時共同指導の場で在宅チーム(在宅医・訪問看護・ケアマネ・薬剤師)が方針をすり合わせ、退院時共同指導加算等の枠組みで切れ目のない移行を制度が下支えします。
5. 家族支援——意思決定・介護負担・悲嘆
在宅看取りにおいて、家族は主たる介護者であると同時に、本人の意思の代弁者・悲嘆の当事者でもあります。家族が抱える負担は多層的で、訪問看護師はこれらを包括的に受け止める役割を担います。
5-1. 意思決定支援——本人の意思を中心に
療養場所の選択・救急要請の是非・蘇生処置の希望など、看取り期には家族が意思決定を求められる場面が繰り返し発生します。訪問看護師は、家族が独りで抱え込まないよう、主治医・在宅医・ケアマネと連携して意思決定支援の場を設けます。ACPガイドラインが示すとおり、本人の意思が確認できる段階で繰り返し話し合い、意思が確認できなくなった段階では「本人が何を望んでいたか」を家族と医療・ケアチームで共有して方針を導きます(出典:厚生労働省「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000197721.html )。
5-2. 介護技術の指導・社会資源の情報提供
体位変換・排泄介助・口腔ケア・食事介助・褥瘡予防など、家族が自宅で行う介護技術を段階的に指導することが、家族の自信と安心につながります。家族の身体的・精神的疲労が蓄積する時期には、レスパイトケア(短期入所生活介護、医療ショートステイ等)の活用をケアマネと相談し、介護者の休息時間を確保する視点が重要です。介護保険の利用限度額・高額療養費制度・身体障害者手帳など社会資源はケアマネ・MSWと連携して情報提供を行います(出典:厚生労働省「介護保険制度について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/gaiyo/index.html )。
5-3. 悲嘆への寄り添い
予期悲嘆(看取り前の悲嘆)と死別後の悲嘆は、家族が経験する自然な反応です。訪問看護師は判断や助言を急がず、家族の語りに耳を傾ける姿勢が支援の基盤となります。長期化する悲嘆や日常生活に支障をきたす反応が疑われる場合には、精神科医療機関・地域の遺族支援団体・グリーフケア専門機関の紹介を検討します。
6. スタッフのメンタルサポート——看取りに携わる看護師を支える
看取り業務は看護師自身も感情労働の負荷を受けます。バーンアウトや共感疲労を予防し、持続的に看取りに携われるための組織的支援は、ステーション運営の中核テーマの一つです。
6-1. デスカンファレンスの定期開催
看取り事例の振り返り(デスカンファレンス)を定期開催することで、担当看護師の心理的整理と事業所全体としてのケアの質向上を両立できます。「本人・家族の意思がどう尊重されたか」「症状緩和の実際」「多職種連携の課題」「看護師自身が感じた迷い・葛藤」を共有する場が、実践知の蓄積とスタッフの心理的支援の両面で機能します。
6-2. メンター制度・勤務調整
経験の浅い看護師が初めて看取りを担当する場面では、ベテランのメンターが同行訪問・振り返り面談で支える体制が有効です。看取り直後の翌日は、訪問件数を減らす・半日休扱いにするなど、担当看護師が呼吸を整えられる時間を確保する勤務調整ルールを明文化することが望ましく、連続して看取りが重なった時期には担当者交代・シフト調整で1人に負担が集中しない配慮を組み込みます。
6-3. 外部研修と専門団体との連携
緩和ケア・エンドオブライフケア・グリーフケアに関する外部研修への参加は、看護師の実践力向上と自己ケアの両面に資する取り組みです。公益財団法人日本訪問看護財団・日本看護協会・日本ホスピス緩和ケア協会などが、看取り・緩和ケアに関する研修・情報提供を行っています(出典:公益財団法人日本訪問看護財団 https://www.jvnf.or.jp/ /公益社団法人日本看護協会 https://www.nurse.or.jp/ )。
7. 人生の最終段階における医療とACP(Advance Care Planning)
ACP(Advance Care Planning)は、将来の医療・ケアについて本人が家族等や医療・ケアチームと繰り返し話し合い、本人の意思決定を支援するプロセスです。厚生労働省は「人生会議」の愛称でACPの普及啓発を進めており、在宅看取りの現場では訪問看護師が実施者・記録者として重要な役割を担います(出典:厚生労働省「『人生会議』してみませんか」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000212396.html )。
7-1. ACPガイドラインの基本原則
厚生労働省の「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」は、①本人の意思決定を基本とする、②医療・ケアチームと本人・家族との話し合いを繰り返す、③本人の意思が確認できない場合は本人の推定意思を尊重する、といった基本原則を示しています。ACPは一度きりの意思確認ではなく、病状変化に応じて繰り返す動的なプロセスであることが強調されています。
7-2. 訪問看護師によるACPの実践と事前指示書
訪問看護師は、日々の訪問で本人・家族と自然な会話を重ねられる立場にあり、ACPの実施者としての適性が高いといえます。「病状が変化したらどのように過ごしたいか」「大切にしたいこと・避けたいことは何か」を段階的に問いかけ、語られた内容を記録し多職種で共有します。ACPは話し合いのプロセスそのものであり、事前指示書(延命処置に関する希望を文書化したもの)は結果として作成される文書の一つに位置づけられます。日本では法的拘束力を持つ事前指示書制度は制度化されていませんが、本人の意思を医療・ケアチームで共有する記録として実務上の意義は大きく、地域の在宅医療・介護連携推進事業や医師会が推奨する様式を活用するケースが多く見られます。
8. 2024年度同時改定における関連加算の見直し
2024年度は診療報酬・介護報酬の同時改定の年であり、在宅看取り・ターミナルケア関連の評価も見直されました。改定の柱は、在宅看取り体制整備の強化・看護業務負担軽減の評価・多職種連携の推進です。要件・点数は厚生労働省告示・通知の最新版を確認してください(出典:厚生労働省「令和6年度診療報酬改定」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00041.html /「令和6年度介護報酬改定」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_37687.html )。
8-1. 介護保険:ターミナルケア加算と看取り関連加算
介護保険のターミナルケア加算は改定のたびに見直され、2024年度改定でも他の看取り関連加算(看取り連携体制加算等)との整合が図られました。ケア計画作成・多職種カンファレンス実施・利用者と家族への説明と同意といった算定要件の運用実態を記録上担保することが返戻防止の要点です(出典:厚生労働省 社会保障審議会介護給付費分科会 https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-hosho_126706.html )。
8-2. 医療保険:機能強化型評価と多職種連携加算
医療保険の訪問看護ターミナルケア療養費は機能強化型訪問看護ステーションの要件(看取り実績・24時間対応体制・常勤看護職員数・専門性の高い看護師の配置等)とも関連し、機能強化型を目指す事業所では年間看取り件数・多職種連携実績・研修体制整備が中期計画のテーマになります。退院時共同指導加算・在宅患者連携指導加算・在宅患者緊急時等カンファレンス加算など多職種連携加算も看取り実務と密接に関連するため、カンファレンス記録を確実に残す運用が加算収益と業務品質の両方に資します(出典:中央社会保険医療協議会「令和6年度診療報酬改定 個別改定項目について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000188411_00040.html )。
9. よくある質問(FAQ)
- Q1. ターミナルケア加算は死亡日14日前より前の訪問も要件に含まれますか
- ターミナルケア加算(介護保険)の算定要件は、死亡日および死亡日前14日以内の訪問回数が中心です。14日より前の訪問はケア提供の基盤として重要ですが、算定要件上の訪問回数カウントは14日以内の実績に基づきます。詳細は厚生労働省告示・通知および管轄自治体の運用取扱いを確認してください。
- Q2. 在宅で急変し救急搬送されて病院で死亡確認された場合、算定できますか
- 算定可否は状況によって取扱いが分かれるため、Q&Aや管轄自治体の解釈確認が必要です。搬送先での死亡確認となった場合でも、要件を満たす訪問実績とケア提供・家族への説明と同意等の記録が整っていれば算定される場合と、そうでない場合があります。判断に迷う事例は地方厚生局・都道府県・市区町村の担当窓口に照会してください(出典:厚生労働省「介護サービス関係Q&A」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/qa/index.html )。
- Q3. 家族が急変時に事前意向と異なる救急要請をする事態を防ぐ方法は
- ゼロにすることは難しいものの、①ACPを繰り返し実施し家族と本人の意向を共有、②急変時の連絡先(オンコール窓口・在宅医)を家族に周知、③夜間・休日の連絡フローを冷蔵庫等の視認できる場所に掲示、④救急要請の是非についての意向を文書化して多職種で共有、といった運用でギャップを減らす取り組みが行われています。
- Q4. 看取りに携わったスタッフのメンタルヘルスをどう支援すればよいですか
- デスカンファレンスの定期開催、経験の浅いスタッフへのメンター配置、看取り直後の勤務調整、外部研修・スーパービジョンの活用が組織的な支援策として挙げられます。個人差が大きいため面談で希望を聴取したうえで柔軟に対応する運用が有効視されています。
- Q5. 訪問看護ステーション単独でグリーフケア加算を算定する枠組みはありますか
- 診療報酬・介護報酬において、単独で「グリーフケア」だけを対象に算定する専用加算は限定的です。多くの事業所ではターミナルケア加算・訪問看護ターミナルケア療養費、機能強化型訪問看護ステーションの評価、多職種連携加算などと一体でグリーフケアを実践する運用となっています。最新の告示・通知で枠組みを確認してください。
10. まとめ——在宅看取りを支えるチェックリスト
- ターミナルケア加算・訪問看護ターミナルケア療養費の算定要件を最新告示で確認しているか
- ターミナルケア計画書のフォーマットと運用ルールが事業所内で標準化されているか
- ACP(人生会議)の実施・記録・多職種共有の運用が組み込まれているか
- 主治医・在宅医・薬剤師・ケアマネジャーとの情報共有ツールが導入されているか
- 退院時共同指導・在宅患者緊急時等カンファレンス等の多職種連携加算の運用フローが整っているか
- デスカンファレンスが定期開催され、事例の振り返りと看護師の心理的支援が行われているか
- 看取り直後のスタッフ勤務調整ルールが明文化されているか
- グリーフケア(遺族訪問・電話フォロー)の運用ルールが定められているか
- 看取り実績が記録・集計され、機能強化型評価への活用可能性が検討されているか
在宅看取りは、本人の意思を尊重した最期の時間を家族とともに過ごせるよう支援する、訪問看護の中核的な実践領域です。制度を正確に理解し多職種と協働し、家族とスタッフの双方を支える組織体制を整えることが、質の高いターミナルケアを持続的に提供する基盤となります。本記事の内容は公開情報を整理した一般的な解説であり、具体的な算定・臨床判断は管轄の地方厚生局・都道府県・主治医・所属団体にご相談ください。
関連リンク
出典
- 厚生労働省「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000197721.html
- 厚生労働省「『人生会議』してみませんか」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000212396.html
- 厚生労働省「在宅医療の推進について」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000061944.html
- 厚生労働省「在宅医療・介護連携推進事業」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000078123.html
- 厚生労働省「令和6年度診療報酬改定」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00041.html
- 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定」https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_37687.html
- 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001213516.pdf
- 厚生労働省「介護保険制度について」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/gaiyo/index.html
- 厚生労働省「介護サービス関係Q&A」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/qa/index.html
- 厚生労働省「医療情報化に関する政策」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000201849.html
- 厚生労働省 社会保障審議会介護給付費分科会https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-hosho_126706.html
- 中央社会保険医療協議会「令和6年度診療報酬改定 個別改定項目について」https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000188411_00040.html
- 公益財団法人日本訪問看護財団https://www.jvnf.or.jp/
- 公益社団法人日本看護協会https://www.nurse.or.jp/
- 特定非営利活動法人日本ホスピス緩和ケア協会https://www.hpcj.org/
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mitoru編集部の見解
訪問看護ステーションの開業・運営は、看護師人員確保と地域医療機関との連携体制が成功要因です。mitoru編集部は、開業前の事業計画段階で、地域包括ケアシステムにおける位置づけを保健所・地域包括支援センターへヒアリングすることを推奨します。