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訪問看護ステーションを開設するためには「管理者」を配置する必要があり、この管理者要件は健康保険法および「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」(以下、指定基準)等により定められています。誰でも管理者になれるわけではなく、資格・常勤性・専従性・兼務規定など複数の観点で条件が課されるため、開設準備の初期段階から要件を正しく理解しておくことが安定した事業運営の起点となります。本記事は、厚生労働省・地方厚生局・全国訪問看護事業協会・日本看護協会が公表している公開情報を整理した内容として、訪問看護ステーション管理者になるための法的要件・実務上の論点・都道府県管理者研修の位置づけ・兼務可否・人員基準・開設要件・関連制度との違いをまとめます。個別の指定申請の可否や解釈は管轄の都道府県・地方厚生局・市区町村の窓口にご確認ください。
この記事でわかること
- 訪問看護ステーション管理者の法的な位置づけと根拠法令
- 「専ら管理業務に従事する常勤」原則の意味と実務運用
- 管理者に求められる資格(保健師または看護師)と経験年数の考え方
- 都道府県が実施する訪問看護管理者研修の内容と受講タイミング
- 訪問看護業務や他職務(サービス提供責任者等)との兼務可否
- 人員基準2.5人以上の常勤換算ルールと現場での回し方
- 開設に必要な法人格・事務所要件・設備要件
- 看護小規模多機能型居宅介護(看多機)や医療機関との比較
- 24時間対応体制加算・緊急時訪問看護加算と管理者の関係
- 2024年度介護報酬改定における管理者関連論点
- よくある質問(FAQ)5問
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1. 訪問看護ステーション管理者の法的要件
訪問看護ステーションの管理者要件は、介護保険法に基づく「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」(厚生省令第37号)第62条、および健康保険法に基づく「指定訪問看護の事業の人員及び運営に関する基準」(厚生省令第80号)で規定されています。両基準に共通する骨子は「常勤の保健師または看護師であって、専ら管理者の職務に従事する者を置くこと」というものです。ただし、当該ステーションの管理業務に支障がない場合には、同一事業所内の他の職務や同一敷地内にある他の事業所等の職務との兼務が可能とされています(出典:e-Gov法令検索「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」https://elaws.e-gov.jp/document?lawid=411M50000080037 )。
指定申請の実際の運用は、地方厚生局および都道府県・指定都市・中核市が担っています。医療保険の指定訪問看護事業者としての指定は地方厚生局、介護保険の指定居宅サービス事業者としての指定は都道府県等が窓口となる二層構造のため、両者に対して管理者情報を届け出ることになります。管理者の変更・欠員が発生した場合は、遅滞なく変更届出書の提出が求められる点も実務上の重要ポイントです。
2. 「専従・常勤」原則の意味と実務運用
「常勤」とは、当該事業所における勤務時間が、事業所において定められている常勤の従業者が勤務すべき時間数(週32時間を下回る場合は32時間を基本)に達していることを指します。「専従」は、原則としてサービス提供時間帯を通じて当該事業所の職務に専ら従事することを意味します。訪問看護ステーション管理者は、この2つを両立する必要があります。したがって、他法人の管理者を兼ねたり、非常勤で管理者に就くことは基本的に想定されていません。
2-1. 兼務が認められる範囲
指定基準の解釈通知では「管理業務に支障がない場合」に限って、以下のような兼務が認められています。①同一事業所内で訪問看護職員として訪問看護業務を兼務する、②同一敷地内にある同一法人の他事業所(居宅介護支援・訪問介護・小規模多機能等)の管理者や従業者と兼務する、③みなし指定を受けている医療機関の職員と兼務する、といった形態です。実際の運用可否は都道府県・指定都市等の解釈により差があるため、開設前に窓口へ確認することが推奨されます。
3. 管理者に求められる経験年数の考え方
訪問看護ステーションの管理者要件について、指定基準の条文には「経験○年以上」という数値的な最低ラインは規定されていません。したがって、条文上は保健師または看護師の免許を有する常勤者であれば管理者になることが可能です。ただし、訪問看護の実務経験を有しない看護師が管理者に就いた場合、指定基準の運営基準(適切なサービス提供・記録管理・従業員教育・苦情処理・事故対応など)を実行するうえで難易度が高くなるため、都道府県によっては「訪問看護の実務経験○年以上が望ましい」といったガイドラインを設けているところもあります。
実務的には、公益財団法人日本訪問看護財団や公益社団法人日本看護協会が推奨するキャリア設計として、病棟や外来での看護経験を基礎とし、訪問看護ステーションでのスタッフ勤務経験を数年経てから管理者にステップアップするモデルが広く紹介されています(出典:公益社団法人日本看護協会「訪問看護に関する情報」https://www.nurse.or.jp/nursing/practice/homevisit/index.html )。
4. 資格要件——保健師または看護師
訪問看護ステーションの職員は、保健師・看護師・准看護師・助産師・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士など多職種で構成されます。しかし管理者になれるのは「保健師または看護師」に限定されており、准看護師・助産師・リハビリ職は管理者になれません。この点は、他の居宅サービスと比べて資格要件が厳格な部分です。看護師については、正看護師の免許を保有していれば足り、認定看護師や専門看護師といった上位資格を求められるものではありません。
准看護師は訪問看護のサービス提供者としては勤務可能ですが、管理者としての配置は認められていないため、准看護師しかいない体制では管理者要件を満たすことができない点に注意が必要です(出典:厚生労働省「訪問看護療養費に係る指定訪問看護の費用の算定方法」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000061944.html )。
5. 都道府県が実施する管理者研修
訪問看護ステーション管理者の質の向上を目的として、多くの都道府県では管理者向けの研修プログラムを実施または後援しています。実施主体は、都道府県看護協会、都道府県訪問看護連絡協議会、公益財団法人日本訪問看護財団、公益財団法人全国訪問看護事業協会などです。研修内容には、訪問看護制度の全体像、労務管理、事業運営、リスクマネジメント、地域連携、報酬請求実務、ICT活用、経営分析などが含まれるのが一般的で、数日間〜数ヶ月にわたる複合的なプログラムとして構成されます。
指定基準上、管理者研修の修了が指定申請の必須条件になっているわけではありませんが、都道府県によっては「開設前または開設後○ヶ月以内に受講」を強く推奨している場合があります。新任管理者は、開設前から受講日程を確認し、余裕を持って受講計画を立てておくと運営初期の不安を減らせます(出典:公益財団法人全国訪問看護事業協会https://www.zenhokan.or.jp/ )。
6. 兼務可否——サービス提供責任者等との関係
訪問看護ステーションの管理者が「訪問介護のサービス提供責任者(サ責)」を兼務できるかどうかは、同一敷地内・同一法人・管理業務に支障がないかという条件で判断されます。訪問介護のサ責は介護福祉士等の資格が必要であり、看護師資格だけでは就任できないため、実務上はサ責を兼務するケースは限定的です。一方で、訪問看護ステーションと訪問介護事業所を同一法人・同一敷地内で運営する場合、管理者同士の兼務や、事務職員・相談員の共有は運用上よく行われます。
また、居宅介護支援事業所(ケアマネジャー)を併設する場合、看護師資格を有し主任介護支援専門員資格を持つ管理者が両方の管理者を兼務するケースもみられます。ただし、居宅介護支援側の管理者は主任介護支援専門員が原則となるため、資格の重複要件を満たす人材の確保が前提となります。
7. 人員基準——看護職員2.5人以上(常勤換算)
訪問看護ステーションの人員基準は、指定基準第60条により「保健師、看護師または准看護師(以下「看護職員」という)を常勤換算方法で2.5人以上配置すること」と定められています。うち1人は常勤である必要があり、管理者はこの常勤看護職員の1人としてカウントするのが一般的です。理学療法士・作業療法士・言語聴覚士は、実情に応じて適当数を配置するとされており、法定の最低配置人数は設定されていません。
| 職種 | 配置基準 | 常勤要件 |
|---|---|---|
| 管理者 | 1人(専従・常勤) | 常勤の保健師または看護師 |
| 看護職員 | 常勤換算2.5人以上 | うち1人は常勤 |
| 理学療法士等 | 実情に応じて適当数 | 常勤要件なし |
| 事務職員 | 基準上必置ではない | — |
常勤換算は「当該従業者の勤務延時間数÷当該事業所において常勤の従業者が勤務すべき時間数」で計算します。週40時間を常勤の基準としているステーションで、週20時間勤務の非常勤看護師は0.5人分としてカウントされる、という考え方です。産休・育休・傷病等で常勤が一時的に欠員となる場合は、都道府県への相談が必要になります。
8. 開設要件——法人格・事務所要件
訪問看護ステーションを開設するためには、法人格を有していることが指定基準上の前提となります。株式会社・合同会社・一般社団法人・医療法人・社会福祉法人・NPO法人・生活協同組合など、法人形態は問われませんが、個人事業主としての開設は認められません。事業目的に「訪問看護事業」を明記した定款を整えたうえで、法人登記済であることを確認できる登記事項証明書を指定申請時に添付します。
事務所については、専用の区画があること、利用申込みの受付・相談・記録の保管・職員の待機に適したスペースがあることが求められます。数値的な最低面積は法令上定められていませんが、多くの都道府県で「事務スペース・相談スペース・記録保管スペースを備えていること」が確認事項として挙げられます。プライバシー保護の観点から、相談スペースは他の来訪者から声が漏れない構造とすることが望まれます。
9. 看護小規模多機能型居宅介護(看多機)等との違い
訪問看護ステーションと類似する在宅看護提供形態として、看護小規模多機能型居宅介護(看多機)、定期巡回・随時対応型訪問介護看護、複合型サービス等があります。看多機は、通い・泊まり・訪問(訪問介護・訪問看護)を一体的に提供する地域密着型サービスで、市区町村が指定権者となる点、管理者要件が「厚生労働大臣が定める研修を修了した者」を含む点などが訪問看護ステーションと異なります。
| サービス | 指定権者 | 管理者資格 | 看護職員配置 |
|---|---|---|---|
| 訪問看護ステーション | 都道府県/地方厚生局 | 保健師または看護師 | 常勤換算2.5人以上 |
| 看護小規模多機能型居宅介護 | 市区町村 | 研修修了者(保健師・看護師含む) | 常勤換算2.5人以上等 |
| みなし指定訪問看護(医療機関) | 地方厚生局 | 医療機関の管理者に準ずる | 個別基準 |
10. 24時間対応体制と管理者の役割
訪問看護における24時間対応体制加算(医療保険)および緊急時訪問看護加算(介護保険)は、夜間・休日を含む24時間の連絡対応・緊急訪問対応が可能な体制を評価する加算です。加算算定にあたっては「24時間連絡が取れる体制」「必要に応じて緊急訪問できる体制」を整備し、利用者・家族に体制を書面で明示することが求められます。管理者は、これらの体制構築・オンコール表の作成・職員負担の管理・記録の整備の中心的役割を担います。
オンコール担当は看護職員が対応することが基本であり、管理者自身も担当ローテーションに入るケースが多く見られます。管理者の心身の負担を過度に集中させない仕組み設計(オンコール手当・代休・複数名当番制)は、離職防止と持続可能な運営のための実務課題です。
11. 2024年度介護報酬改定と管理者の実務論点
2024年度の介護報酬改定では、訪問看護に関する加算体系や運営基準に複数の見直しが行われました。管理者の実務に関わる主な論点として、①専門管理加算等の要件明確化、②看護体制強化加算の見直し、③処遇改善加算の一本化、④業務継続計画(BCP)未策定減算の本格運用、⑤高齢者虐待防止措置未実施減算の適用、⑥身体的拘束等の適正化に関する記録整備、などが挙げられます。いずれも管理者が主導して整備・記録・研修を進める必要がある領域です(出典:厚生労働省「令和6年度介護報酬改定について」https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_37687.html )。
また、感染症発生時の業務継続計画(感染症BCP・自然災害BCP)は2024年度から未策定減算が本格化しており、様式例に沿って策定・年1回以上の見直し・研修・訓練を行うことが求められます。管理者は策定・改訂・訓練実施記録の管理主体となります。
12. よくある質問(FAQ)
- Q1. 訪問看護の実務経験がなくても管理者になれますか?
- 指定基準の条文上、経験年数の最低ラインは規定されていません。ただし、運営基準の要求水準(記録・研修・苦情処理・事故対応・BCP等)を満たすためには、訪問看護または看護管理の経験が実務上重要とされます。都道府県が独自に「望ましい経験年数」を示している場合もあるため、開設地の窓口に確認することが推奨されます。
- Q2. 助産師や准看護師では管理者になれませんか?
- 訪問看護ステーションの管理者要件は「保健師または看護師」と規定されており、助産師および准看護師は管理者としての配置が認められていません。ただし、准看護師は看護職員として訪問看護のサービス提供にあたることは可能です。
- Q3. 管理者が訪問看護業務を兼務することはできますか?
- 「管理業務に支障がない場合」に限り、同一事業所内で看護職員として訪問看護業務を兼務することが認められています。特に開設初期の小規模ステーションでは、管理者自身が訪問件数を担うことが一般的です。管理業務が形骸化しないよう、時間配分と記録管理を意識することが重要です。
- Q4. 都道府県管理者研修は開設前に受講しなければなりませんか?
- 研修修了が指定申請の法定要件になっているわけではありません。しかし、多くの都道府県で開設前後の受講が強く推奨されており、内容も運営実務の理解を深める設計となっています。新任管理者は研修年間スケジュールを確認し、可能な限り早期の受講を計画しておくと安心です。
- Q5. 個人事業主のままで訪問看護ステーションを開設できますか?
- 指定基準は「法人であること」を求めているため、個人事業主として訪問看護ステーションを開設することはできません。株式会社・合同会社・一般社団法人などの法人格を取得し、定款に訪問看護事業を明記したうえで指定申請を行う必要があります。
まとめ——管理者要件は「資格・常勤・専従・体制整備」の総合設計
訪問看護ステーション管理者の要件は、単に「看護師資格を持っていること」だけではなく、常勤・専従・兼務規定・人員基準・体制整備・BCP・加算算定要件など、複数の観点を総合的に満たす必要があります。管理者候補は、開設前から指定基準を条文レベルで読み込み、都道府県窓口の指導内容を確認し、管理者研修を計画的に受講することで、開設後の運営を安定させる下地を作ることができます。本記事の内容は公開情報を整理した一般的な解説であり、具体的な指定申請の可否・解釈は管轄の都道府県・地方厚生局・市区町村にご相談ください。
関連リンク
出典
- e-Gov法令検索「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」https://elaws.e-gov.jp/document?lawid=411M50000080037
- 厚生労働省「在宅医療の推進について」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000061944.html
- 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定について」https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_37687.html
- 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001213516.pdf
- 厚生労働省「介護サービス施設・事業所調査」https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/24-22-2.html
- 公益財団法人全国訪問看護事業協会https://www.zenhokan.or.jp/
- 公益社団法人日本看護協会「訪問看護に関する情報」https://www.nurse.or.jp/nursing/practice/homevisit/index.html
- 公益財団法人日本訪問看護財団https://www.jvnf.or.jp/
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