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訪問看護は医療保険と介護保険の二本立てで運用され、同じ利用者でも指示書の種類・訪問頻度・請求先が切り替わる場面が日常的に発生します。判定を誤ると返戻・過誤調整・自主返還に直結し、管理者・請求担当者にとって最初に押さえるべき実務スキルです。本記事は、厚生労働省告示・地方厚生局通知・介護保険課の資料など公開情報を整理した内容で、2026年8月時点における別表第7・別表第8・特別訪問看護指示書・請求フローの使い分けを、訪問看護管理者・訪問看護師・請求担当者向けに体系化します。個別ケースの判定は管轄の地方厚生局・保険者・国保連に確認してください。
この記事でわかること
- 医療保険適用・介護保険適用の判定フローと介護保険優先の原則
- 厚生労働大臣が定める疾病等(別表第7)の対象疾病と実務での確認手順
- 厚生労働大臣が定める状態等(別表第8)と算定範囲の拡張要件
- 特別訪問看護指示書の交付要件・14日ルール・月2回交付の例外
- 末期の悪性腫瘍・16歳未満の小児・精神疾患などケース別の適用整理
- 同月内で保険区分が変更された場合の請求分割の実務
- 2024年度診療報酬・介護報酬同時改定の主な影響点
- FAQ 5問・公的機関出典8件
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1. 医療保険と介護保険の基本原則
訪問看護は健康保険法および介護保険法の双方に位置づけられ、指定訪問看護事業者は両制度の指定を受けて運営されます。介護保険の被保険者(第1号被保険者および特定疾病に該当する第2号被保険者)が要介護・要支援認定を受けている場合、原則として介護保険が医療保険に優先して適用されます。これが介護保険優先の原則であり、訪問看護もこの原則に従います(出典:介護保険法、e-Gov法令検索、https://elaws.e-gov.go.jp/)。
1-1. 医療保険が優先される3つの例外
介護保険優先の原則には3つの例外があります。すなわち、(1)厚生労働大臣が定める疾病等(別表第7)に該当する場合、(2)主治医が特別訪問看護指示書を交付し交付日から14日間の頻回訪問が必要と認めた場合、(3)精神科を標榜する主治医から精神科訪問看護指示書が交付されている場合の3類型で、この期間は要介護認定の有無に関わらず医療保険による訪問看護として算定します(出典:厚生労働省「訪問看護療養費に係る指定訪問看護の費用の額の算定方法」最終改正2026年3月、https://www.mhlw.go.jp/)。
1-2. 判定フローの4ステップ
実務での判定は次の順に確認します。第1に利用者の年齢と要介護認定の有無を確認します。第2に主たる傷病が別表第7に該当するかを確認します。第3に特別訪問看護指示書の交付有無・有効期間を確認します。第4に精神科訪問看護の対象要件を満たすか確認します。いずれかに該当すれば医療保険、いずれにも該当せず要介護認定があれば介護保険が適用されます。
2. 厚生労働大臣が定める疾病等(別表第7)
別表第7は、在宅で頻回・長時間の医療的ケアが必要と想定される疾病を厚生労働大臣が告示で列挙したもので、要介護認定の有無に関わらず医療保険による訪問看護の対象となります。介護保険の区分支給限度基準額に縛られず必要量の訪問看護を提供できるようにするための例外規定です(出典:厚生労働省「特掲診療料の施設基準等」最終改正2026年3月、https://www.mhlw.go.jp/)。
2-1. 主な対象疾病
別表第7に列挙されている主な疾病は、末期の悪性腫瘍、多発性硬化症、重症筋無力症、スモン、筋萎縮性側索硬化症、脊髄小脳変性症、ハンチントン病、進行性筋ジストロフィー症、パーキンソン病関連疾患(進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症、パーキンソン病でホーエン・ヤール重症度3以上かつ生活機能障害度2以上)、多系統萎縮症、プリオン病、亜急性硬化性全脳炎、ライソゾーム病、副腎白質ジストロフィー、脊髄性筋萎縮症、球脊髄性筋萎縮症、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、後天性免疫不全症候群、頸髄損傷、人工呼吸器を使用している状態です。改正が繰り返されているため、最新版は告示原文で確認してください。
2-2. パーキンソン病関連疾患の重症度要件
パーキンソン病は「ホーエン・ヤール重症度3以上かつ生活機能障害度2以上」の場合に限り別表第7に該当します。重症度が要件を下回る場合は別表第7の対象外となり、要介護認定があれば介護保険適用に戻ります。主治医の診断書・訪問看護指示書の重症度記載を訪問記録に転記し、変動時は速やかに保険区分を見直します。
2-3. 別表第7該当時の算定範囲
別表第7該当者は、原則の「週3日まで」の上限を超えて訪問看護を提供でき、複数の訪問看護ステーションからの訪問(原則2か所、要件を満たせば3か所)も認められます。同一日複数回訪問加算・複数名訪問看護加算・長時間訪問看護加算の算定対象にもなり、在宅療養の医療的な密度が高いほど適用範囲が広がる設計です。
3. 厚生労働大臣が定める状態等(別表第8)
別表第8は疾病名ではなく「状態」を列挙した告示で、疾患に関係なく医療的処置の量で該当判定します。別表第8該当者も週4日以上の訪問・1日複数回訪問・複数名訪問など、算定制限が緩和されます(出典:厚生労働省告示、https://www.mhlw.go.jp/)。
3-1. 主な対象状態
別表第8に列挙されている主な状態は、在宅で人工呼吸指導管理を受けている状態、気管カニューレを使用している状態、真皮を越える褥瘡の状態、点滴注射を週3日以上行う必要があると認められる状態、人工肛門または人工膀胱を設置している状態、留置カテーテル(尿道・胃瘻・経鼻等)を使用している状態、在宅酸素療法指導管理・在宅中心静脈栄養法指導管理・在宅成分栄養経管栄養法指導管理・在宅自己腹膜灌流指導管理などを受けている状態です。詳細は特掲診療料の施設基準の告示本文で確認してください。
3-2. 別表第7と第8の関係
別表第7は「疾病」で介護保険から医療保険に区分を切り替える基準、別表第8は「状態」で医療保険の算定範囲を拡張する基準です。両者は独立した告示で、別表第8に該当しても要介護認定があり別表第7に該当しない場合は原則介護保険適用のままです。ただし、特別管理加算(I・II)や複数名訪問看護加算の算定要件など、介護保険側でも別表第8を参照する箇所があるため、両表の該当有無は月次で確認します。
4. 特別訪問看護指示書の運用

特別訪問看護指示書は、急性増悪・終末期・退院直後などで一時的に頻回の訪問看護が必要と主治医が認めた場合に交付されます。交付日から14日間に限り、介護保険利用者であっても医療保険による訪問看護に切り替わり、週4日以上の訪問や1日複数回訪問が算定可能となります(出典:厚生労働省「訪問看護療養費に係る指定訪問看護の費用の額の算定方法」)。
4-1. 交付頻度と月2回交付の例外
特別訪問看護指示書は原則として月1回の交付です。ただし、気管カニューレを使用している状態の利用者、真皮を越える褥瘡を有する利用者については月2回まで交付が認められます。月2回交付を活用する場合、対象状態の記録を訪問看護記録書に残し、主治医と交付日の調整を事前に行います。
4-2. 期間管理と切替日の記録
特別訪問看護指示書の有効期間は交付日から14日間で、1日でも超過すると超過分は医療保険で算定できません。訪問記録・レセプトソフトの保険区分・請求台帳の3か所に切替開始日と終了日を明示し、期間終了3日前に主治医へ再交付の要否を確認する運用を推奨します。介護保険側では期間中の該当日について訪問看護費を算定しないため、ケアマネジャーへの連絡と居宅サービス計画の一時修正も同時に行います。
5. 末期の悪性腫瘍のケース
末期の悪性腫瘍は別表第7に該当するため、要介護認定の有無に関わらず医療保険による訪問看護として算定します。要介護認定を持つ利用者でも、末期がんの診断が主治医から示された時点で介護保険のケアプランから訪問看護を外し、医療保険の訪問看護療養費に切り替えます。切替時期はケアマネジャー・主治医・利用者・家族と共有し、居宅サービス計画の変更届出を同時に行います。
5-1. 訪問看護ターミナルケア療養費
医療保険側では、死亡日および死亡日前14日以内に2回以上の訪問看護を実施し、ターミナルケアの支援体制について利用者・家族に説明・同意を得た場合に「訪問看護ターミナルケア療養費」を算定できます。同一利用者について1回のみ算定可能で、算定要件・記録要件は最新の算定告示・通知で確認します(出典:厚生労働省告示、https://www.mhlw.go.jp/)。
6. 16歳未満・小児のケース
16歳未満の利用者は介護保険の被保険者に該当しないため、訪問看護はすべて医療保険で提供します。訪問看護指示書は小児科・専門診療科の主治医から交付を受け、必要に応じて別表第7・別表第8・特別訪問看護指示書の該当を確認します。乳幼児加算・幼児加算などの年齢加算、超重症児・準超重症児に対する加算体系は医療保険独自のもので、介護保険の単位数体系とは別に整理する必要があります。
6-1. 医療的ケア児支援法との関係
2021年施行の医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律により、医療的ケア児の在宅支援体制の整備が国・自治体の責務として明示されました。訪問看護ステーションは相談支援専門員・保育所・学校と連携し、通学時・園外活動時の看護提供体制についても情報共有します(出典:内閣府・こども家庭庁公表資料、https://www.cfa.go.jp/)。
7. 介護保険優先ルールの実務

要介護認定を受けている利用者が別表第7・別表第8・特別指示書・精神科訪問看護のいずれにも該当しない場合、訪問看護は介護保険で提供します。ケアプラン上の位置づけ、区分支給限度基準額の残単位、他の居宅サービスとの併用状況を月次で確認し、限度額超過の予兆があれば早期にケアマネジャーと調整します。
7-1. 40〜64歳の第2号被保険者
40〜64歳の第2号被保険者は、介護保険法施行令第2条に定める16の特定疾病に該当し要介護認定を受けた場合に限り介護保険を利用できます。特定疾病に該当しない場合や要介護認定を受けていない場合は、要件を満たせば医療保険による訪問看護が対象となります(出典:介護保険法施行令、e-Gov法令検索、https://elaws.e-gov.go.jp/)。
7-2. 認知症の取扱い
アルツハイマー型認知症、血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症などは精神科訪問看護療養費の算定対象外です。要介護認定があれば介護保険による訪問看護、認定がなければ医療保険による通常の訪問看護として算定します。精神科訪問看護指示書が交付されていても、認知症が主たる傷病である場合は算定を控え、通常の訪問看護指示書に切り替えるよう主治医と調整します。
8. 同月内で保険区分が変更された場合の請求
同月内で医療保険と介護保険の区分が切り替わる代表的なケースは、特別訪問看護指示書の交付・期間満了、要介護認定の新規取得・区分変更、末期がんの診断確定、退院日から新規訪問開始、精神科訪問看護指示書の交付などです。切替日を境に医療保険と介護保険それぞれのレセプトを別個に作成し、日割り単位の重複請求を避けます。
8-1. 請求先の使い分け
医療保険分は社会保険診療報酬支払基金(協会けんぽ・組合健保等)または国民健康保険団体連合会(国保・後期高齢者医療)に「訪問看護療養費明細書」を提出します。介護保険分は国民健康保険団体連合会(介護給付費)に「介護給付費請求書・介護給付費明細書」を電子請求します。いずれも提出締切は原則翌月10日で、遅延は翌月請求に繰延べとなります(出典:社会保険診療報酬支払基金 https://www.ssk.or.jp/、国民健康保険中央会 https://www.kokuho.or.jp/)。
8-2. 記録の突合とレセプト前チェック
月末締切前に、訪問看護記録書・訪問看護計画書・訪問看護指示書(通常・特別・精神科)・保険証コピー・介護保険被保険者証コピー・ケアプラン控えの6点を突合し、切替日・保険区分・算定加算・提出先を1件ずつ確認します。特に月中で区分が切り替わった利用者はダブルチェックの対象とし、レセプトソフトの保険区分設定と請求台帳の記載を一致させます。
9. 2024年度診療報酬・介護報酬同時改定の主な影響
2024年度は6年に1度の診療報酬・介護報酬・障害福祉サービス等報酬の同時改定が行われ、訪問看護分野でも複数の見直しが実施されました。実務に影響が大きい主な改定項目を整理します(出典:厚生労働省「令和6年度診療報酬改定の概要」「令和6年度介護報酬改定について」、https://www.mhlw.go.jp/)。
9-1. 医療保険側の主な改定
医療保険側では、24時間対応体制加算に看護業務負担軽減の取組評価が新設され、機能強化型訪問看護管理療養費の要件見直し、専門管理加算・遠隔死亡診断補助加算などの評価が示されました。同一建物居住者に対する訪問看護基本療養費の見直しも行われています。詳細は各種通知・事務連絡と地方厚生局のQ&Aで確認します。
9-2. 介護保険側の主な改定
介護保険側では、緊急時訪問看護加算にI・IIの区分が導入され、看護体制強化加算の要件見直し、口腔連携強化加算などが新設されました。基本報酬の単位数についても訪問時間・訪問職種ごとに見直しが行われています。地域区分別の1単位単価は市町村ごとに異なるため、事業所所在地の適用地域区分を告示で確認します。
10. よくある質問(FAQ)
- Q1. 要介護認定を受けた末期がん患者は医療保険と介護保険のどちらで請求しますか
- 末期の悪性腫瘍は別表第7に該当するため、要介護認定があっても医療保険による訪問看護として算定します。主治医が末期がんの診断を示した時点でケアプランから訪問看護を外し、居宅サービス計画の変更届出を行ってください(出典:厚生労働省告示、https://www.mhlw.go.jp/)。
- Q2. 特別訪問看護指示書は月2回まで交付できるのはどのような場合ですか
- 気管カニューレを使用している状態の利用者、および真皮を越える褥瘡を有する利用者については月2回まで交付が認められます。それ以外の利用者は原則月1回までです。
- Q3. 15歳の医療的ケア児は介護保険を利用できますか
- 16歳未満は介護保険の被保険者に該当しないため、介護保険の訪問看護は利用できません。すべて医療保険による訪問看護で対応し、必要に応じて別表第7・別表第8・特別訪問看護指示書の該当を確認して算定範囲を設定します。
- Q4. 精神科訪問看護指示書と通常の訪問看護指示書は併用できますか
- 同一の主たる傷病について同時に併用することはできません。精神疾患を主たる傷病とし精神科を標榜する主治医から精神科訪問看護指示書が交付されている場合は精神科訪問看護療養費で算定し、通常の訪問看護指示書に切り替える場合は指示書の様式変更と保険区分の見直しを同時に行います。個別ケースは地方厚生局に確認してください。
- Q5. 同月内で介護保険から医療保険に切り替わった場合、区分支給限度基準額はどう計算しますか
- 特別訪問看護指示書の交付期間中に発生した医療保険分の訪問看護は介護保険の区分支給限度基準額の対象外です。介護保険側では期間中の該当日の訪問看護費を算定せず、切替前・切替後の介護保険分のみを限度額と突合します。詳細は保険者・国保連に確認してください。
11. 関連リンク・出典
- e-Gov 法令検索「介護保険法」(最終改正時点):https://elaws.e-gov.go.jp/
- e-Gov 法令検索「健康保険法」:https://elaws.e-gov.go.jp/
- e-Gov 法令検索「介護保険法施行令」:https://elaws.e-gov.go.jp/
- 厚生労働省「訪問看護療養費に係る指定訪問看護の費用の額の算定方法」(最終改正2026年3月):https://www.mhlw.go.jp/
- 厚生労働省「特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」(最終改正2026年3月):https://www.mhlw.go.jp/
- 厚生労働省「令和6年度診療報酬改定の概要」:https://www.mhlw.go.jp/
- 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定について」:https://www.mhlw.go.jp/
- 厚生労働省「介護保険制度の概要」:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/gaiyo/index.html
- こども家庭庁「医療的ケア児支援法」関連公表資料:https://www.cfa.go.jp/
- 社会保険診療報酬支払基金 公表資料:https://www.ssk.or.jp/
- 国民健康保険中央会 公表資料:https://www.kokuho.or.jp/
※本記事は2026年8月時点の公開情報を整理した内容です。制度・告示は随時改正されるため、実務適用時は最新の告示・通知・地方厚生局および保険者からの事務連絡を確認してください。個別の保険区分判定・算定可否・レセプトの取扱いについては、管轄の地方厚生局・保険者・国保連にお問い合わせください。
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mitoru編集部の見解
訪問看護ステーションの開業・運営は、看護師人員確保と地域医療機関との連携体制が成功要因です。mitoru編集部は、開業前の事業計画段階で、地域包括ケアシステムにおける位置づけを保健所・地域包括支援センターへヒアリングすることを推奨します。