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「多職種カンファをオンライン化したいが、医療情報安全管理ガイドラインとの整合が不安」「退院前カンファに訪問看護ステーションやケアマネを呼ぶと日程調整が破綻する」「Web会議の録画・議事録はどこまで保存し、どこから廃棄すればよいのか」——病院の医療連携室・DX推進担当・情報システム部からよく寄せられる相談です。本記事は、医療機関におけるオンライン会議運用(多職種カンファ/退院前調整/セキュリティ/録画/議事録)の設計論点を、厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」、総務省・経済産業省の関連ガイドライン、個人情報保護委員会の医療関係ガイダンス等、公開情報を整理した内容としてまとめたものです。
本記事の対象読者:①院内多職種カンファレンスをオンライン/ハイブリッド運用に移行したい病院医療連携室、②退院前カンファレンスに院外の訪問看護・ケアマネ・地域包括を呼ぶ運用を整えたいDX推進担当、③会議ツールの選定・セキュリティ設定・録画運用ルールを整備したい情報システム部。個別の情報安全管理措置・診療報酬上の要件・雇用契約に関わる論点は、所属都道府県・地方厚生局・所轄労働基準監督署・自院の顧問弁護士/社労士にもあわせてご相談ください。
この記事でわかること
- 医療機関で行われるオンライン会議の主要な類型と特徴
- 多職種カンファレンス(院内)を破綻させないアジェンダ設計
- 退院前カンファ(院外連携)で日程・音声品質・同意取得を整える手順
- Teams/Zoom/Webex 等の主要ツールを医療機関視点で比較する観点
- 医療情報システムの安全管理に関するガイドラインとの整合ポイント
- 録画・議事録の保存期間・アクセス制御・廃棄フローの考え方
- 患者情報の匿名化・同意取得・院外共有時の留意点
- 回線・端末・マイク・ヘッドセットの標準構成と院内配線
- 2024年(第6.0版)以降の医療情報ガイドライン改定動向の要点
- よくある質問5問と、関連公的機関の出典一覧
1. 医療機関オンライン会議の主要な類型
医療機関で行われるオンライン会議は、参加者と目的によって大きく5類型に分類されます。類型が違えばセキュリティ要件・録画方針・使用ツールも変わるため、まず自院で運用している会議を棚卸しし、類型ごとにルールを整えるのが出発点になります。
- 院内多職種カンファレンス:医師・看護師・薬剤師・リハビリ・MSW等が症例・治療方針・退院支援を検討する会議。患者個人情報を扱うため院内ネットワーク内での運用が基本
- 退院前カンファレンス:院外の訪問看護ステーション・居宅介護支援事業所・地域包括支援センター等と接続し、退院後の在宅療養設計を協議する会議
- 地域連携会議:近隣の医療機関・救急隊・行政と行う症例検討・連携運用会議。参加者が広く、日程調整が複雑
- 院内マネジメント会議:医局会・診療部長会・運営会議・医療安全委員会等の意思決定会議。議事録の保存年限が就業規則・院内規程で定められる
- 職員研修・e-Learning:感染対策・医療安全・情報セキュリティ研修等。録画配信と受講管理が求められる
類型ごとに扱う情報の機微度(患者情報を含むか、経営情報か、公開可能な研修か)が異なります。オンライン化・録画方針・使用ツールを一律に決めず、類型別のルール表を作成しておくと現場運用がぶれにくくなります。
2. 多職種カンファレンス(院内)——アジェンダ設計と時間管理
院内多職種カンファレンスは、症例1件あたりの持ち時間を明確に区切ることが運営の要点です。1症例あたり10〜15分、全体で60分以内に収める設計が現場で継続しやすいラインです。時間超過が慢性化すると参加率が急速に低下し、結果として情報格差が生まれます。
多職種カンファの標準アジェンダ(60分・4症例)
- 開始時の連絡事項・前回の宿題確認(5分)
- 症例1〜4検討(各12分):主治医から病状・治療経過・退院目標を3分、看護師・薬剤師・リハ・MSWからそれぞれのアセスメントを各1〜2分、方針合意を3分
- クロージング(残時間):次回持ち越し議題、ネクストアクションの担当者・期限確認
ハイブリッド運用(会議室+オンライン参加者混在)では、会議室側にスピーカーフォンを1台設置し、資料は共有画面で全員が同じものを見ている状態を保つのが基本です。ホワイトボードを使う場合は資料化して画面共有する運用に切り替えると、オンライン参加者の情報格差が減ります。
3. 退院前カンファレンス(院外連携)——日程・音声・同意
退院前カンファレンスは、退院支援計画に基づき院内スタッフと院外の訪問看護ステーション・居宅介護支援事業所・地域包括支援センター等が集まり、退院後の在宅療養体制を協議する会議です。院外参加者の日程調整が最大の運用ボトルネックとなるため、退院支援看護師・MSWが早期に候補日を提示し、Web会議URLを事前配布する運用が定着しています。
退院前カンファ運用のチェック項目
- 患者・家族への「オンラインで院外事業者と情報共有する」旨の説明と同意取得
- Web会議URLの発行と院外事業者への事前配布(開始10分前接続テストを推奨)
- 参加者名簿・所属事業所・連絡先の事前共有
- 共有資料(診療情報提供書・看護サマリ・服薬情報等)の事前送付または画面共有
- 音声品質確保のためのマイク・スピーカー配置(会議室側はスピーカーフォン1台推奨)
- 議事録テンプレ(決定事項・担当・期限)に沿った書記担当の指名
患者・家族が同席するケースでは、画面共有される資料に他患者情報が映り込まないよう、共有アプリを電子カルテ全体ではなく個別ファイル単位で指定する運用が推奨されます。院外事業者との情報共有は、個人情報保護法・個人情報保護委員会の「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」の枠内で行い、同意取得の記録を診療録に残す運用が基本です。
4. 主要ツールの比較観点——Teams/Zoom/Webex/Google Meet
医療機関で採用が広い会議ツールは、Microsoft Teams、Zoom、Cisco Webex、Google Meet の4系統です。機能比較ではなく、医療機関の要件に沿った以下の観点で評価するのが実務的です。
- データ保管地域:録画・議事録・チャットデータの保管リージョン、国内サーバー保管の可否
- 暗号化:通信経路の暗号化方式、エンドツーエンド暗号化オプションの提供状況
- アクセス制御:会議URL共有時のロビー・待機室・パスコード必須設定、参加者ドメイン制限
- 院外参加者の招待手順:院外事業者がアプリインストール不要でブラウザ参加できるか
- 録画データの保管場所と共有制御:クラウド録画の保管期間、ダウンロード・再共有の制限
- 電子カルテ・院内ID基盤との連携:Active Directory/シングルサインオンの対応可否
- ライセンス体系:職員数・同時接続数に応じた課金モデル、教育・医療機関向けプラン
- 可用性:院内ネットワーク/DMZの設計、災害時の代替経路
いずれのツールも医療機関での採用実績はありますが、既に導入済みのオフィススイート(Microsoft 365/Google Workspace)と整合させる選定が現実的です。単独の会議ツールとして高機能でも、ID基盤・メール・カレンダーが分離すると情報システム部の運用負担が増加します。
5. 医療情報システムの安全管理に関するガイドラインとの整合
厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」は、医療機関が扱う情報システムの安全管理措置を定めた基準です。オンライン会議で患者情報を扱う場合、同ガイドラインが求める技術的安全管理措置(アクセス制御・認証・暗号化・ログ管理)・人的安全管理措置(職員教育・守秘義務)・物理的安全管理措置(端末保管・盗難防止)に整合する運用設計が求められます。
整合ポイント(オンライン会議運用に関連する範囲)
- 会議参加者の認証(院内ID/ドメイン制限/多要素認証の検討)
- 通信経路の暗号化とセッション記録の管理
- 録画データを含む記録の保存場所・アクセス権限・監査ログ
- 外部事業者(クラウドサービス提供者)との契約における責任分界と再委託管理
- 職員へのセキュリティ教育(会議URLの外部漏洩防止・私物端末利用時の留意事項)
特にクラウド型会議ツールを利用する場合、外部保存の取扱いに関する「安全管理ガイドライン」の要件と、総務省・経済産業省「医療情報を取り扱う情報システム・サービスの提供事業者における安全管理ガイドライン」に照らした事業者選定が実務論点になります。契約書・SLA・データ保管地域の説明資料を事業者から取得し、院内の情報セキュリティ委員会で承認するプロセスを踏むと監査対応が容易になります。
6. 録画・議事録の保存——保存期間とアクセス制御
会議の録画・議事録の保存期間は、会議類型と含まれる情報の性質によって設計します。院内マネジメント会議の議事録は院内規程で定められた年限(例:5年)で保管、医療安全委員会等の議事録は医療機関の運営に関わる記録として長期保管、というのが典型的な運用です。多職種カンファ・退院前カンファの録画は原則行わない、または必要な場合に限り期間を短く区切る運用が現場で採用されやすい設計です。
録画運用の設計項目
- 録画の要否判断:録画が業務上必要な会議のみに限定(研修・再視聴前提のもの)
- 録画の告知:会議冒頭で録画開始を口頭アナウンスし議事録にも記録
- 保存場所:院内ファイルサーバまたは承認済クラウドの限定フォルダ
- アクセス権限:参加職種・所属部署単位で閲覧権限を制限
- 保存期間:院内規程で定めた期間経過後に廃棄(ログを残す)
- ダウンロード制限:ローカル保存を許可するか、閲覧のみに制限するかを明確化
議事録は決定事項・担当者・期限の3点セットが揃った形式で作成し、機微な患者情報は識別できない形(患者番号・イニシャル等)で記載する運用が推奨されます。テキスト議事録は録画より検索性が高く、後日のふりかえりに有用です。
7. 個人情報・匿名化——画面共有と資料の取り扱い
オンライン会議で患者情報を扱う際、画面共有時の情報漏洩リスクを最小化する運用設計が求められます。電子カルテ全体を画面共有すると、目的外の患者情報が映り込む可能性があるため、共有単位はアプリ単位ではなくウィンドウ単位・ファイル単位に限定する設定が推奨されます。
- 画面共有前に不要なアプリ・タブを閉じる(メール通知ポップアップも要注意)
- 資料テンプレートに氏名欄と患者番号欄を分け、匿名化して共有する場合の運用ルールを整備
- 会議参加者の背景に他患者情報が映り込まないようレイアウトを確認(ハイブリッド会議室)
- チャット機能で患者情報を送受信しない運用の徹底(記録が残り管理が煩雑になる)
- 院外事業者を含む会議では、事前配布資料のマスキング範囲を退院支援看護師・MSWが確認
患者本人・家族が同席するケースでは、他患者に関する画面が一切映らない構成に切り替えることが推奨されます。院外事業者への資料事前送付は、暗号化メール・院内ポータルからのダウンロード等、送付経路が追跡可能な方法を選定するのが基本です。
8. 回線・機器準備——院内ネットワークと端末構成
オンライン会議の品質は、ネットワーク帯域・端末性能・音響機器の3要素で決まります。院内Wi-Fiが電子カルテ系と共用の場合、会議時間帯にトラフィックが競合し音声・映像品質が低下するケースがあります。可能であれば会議室に有線LAN配線を用意し、Wi-Fi依存を減らす構成が安定します。
推奨機器構成(会議室・個人席それぞれ)
- 会議室:スピーカーフォン(USB接続、指向性マイク内蔵)、大型モニタまたはプロジェクタ、有線LAN、Webカメラ(広角)
- 個人席(多職種カンファ参加者):ヘッドセットまたはUSBマイク、外付けカメラ(ノートPC内蔵で代用可)、有線LANまたは安定Wi-Fi
- 共通:マイク・スピーカーの音量事前テスト、ハウリング防止のため会議室内で複数端末を音声出力しない
特にハイブリッド会議で頻発するトラブルは、会議室側で参加者ごとにノートPCを開き複数音声が同時に入ってハウリングが発生するケースです。会議室では音声入出力を1台に集約するルールを徹底することで解消します。院内配線・DMZ設計は情報システム部が主管で計画し、電子カルテ系ネットワークとの分離方針も明確化しておくと監査対応が容易になります。
9. 2024年動向——医療情報安全管理ガイドライン改定の要点
厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」は継続的に改定されており、第6.0版(2023年5月)ではランサムウェア対策・外部サービス利用時の責任分界・オンライン診療関連の記述が拡充されました。オンライン会議運用に関連する範囲では、クラウドサービス利用時の外部保存要件、認証・アクセス制御の強化、事業継続計画(BCP)における情報システム復旧の考え方が重視されています。
あわせて、総務省・経済産業省の関連ガイドライン(医療情報を取り扱う情報システム・サービスの提供事業者向け)も継続改定されているため、ガイドライン最新版の確認と、事業者選定時の適合状況の確認が実務論点となります。院内では情報セキュリティ委員会が定期的に改定内容をレビューし、内規(運用手順書・チェックリスト)に反映する運用が推奨されます。
10. よくある質問(FAQ)
- Q1. 多職種カンファをオンライン化する際、患者同意は必要ですか?
- 院内スタッフのみで行う症例検討は診療目的の内部利用として同意取得が不要と整理される場合が一般的ですが、院外事業者(訪問看護ステーション・居宅介護支援事業所等)を含むケースでは事前の同意取得が推奨されます。個別の同意取得範囲は、個人情報保護委員会「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」を参照のうえ、院内の個人情報保護管理者・顧問弁護士に確認してください。
- Q2. 退院前カンファの録画は行ってよいですか?
- 録画の要否は各医療機関の判断ですが、患者・家族・院外事業者が参加する会議のため、録画する場合は参加者全員への事前告知と、保存期間・アクセス権限の明確化が求められます。実務上は録画を行わず、テキスト議事録のみで運用する医療機関が多く見られます。録画を行う場合は院内の情報セキュリティ委員会での承認プロセスを踏むと監査対応が容易です。
- Q3. 院外事業者がZoomやTeamsに慣れていない場合、どう対応すれば?
- 院外の訪問看護ステーション・ケアマネ事業所は、アプリインストール権限がない環境で業務している場合があります。ブラウザ参加が可能なツール(Zoom Webクライアント・Teams Webクライアント・Google Meet等)を選定し、参加URLとブラウザ推奨バージョンを事前案内する運用が実務的です。開始10分前の接続テストを標準化しておくと、当日のトラブルが減少します。
- Q4. 会議ツールのライセンスコストを抑える工夫はありますか?
- 既に導入済みのオフィススイート(Microsoft 365/Google Workspace)に含まれる会議機能を活用する構成が、追加ライセンスを発生させない選択肢です。単独の会議ツールを別途契約する場合は、同時接続数・録画時間・ストレージ容量で課金モデルが変わるため、実利用ボリュームを3ヶ月程度計測してから本契約に切り替える段階的導入が過剰投資を避ける定石です。
- Q5. 医療情報安全管理ガイドラインへの整合を、どこから着手すればよいですか?
- まず自院で運用中の会議ツール・録画データ・議事録の保管場所を棚卸しし、(1)認証方式(2)データ保管地域(3)アクセス権限(4)保存期間 の4項目を一覧化することから着手する医療機関が多く見られます。棚卸しの結果を情報セキュリティ委員会で共有し、ガイドライン最新版の該当項目と突き合わせて優先度付けを行うのが実務的な進め方です。院内リソースが不足する場合は、外部の情報セキュリティ監査事業者への相談も選択肢になります。
11. まとめ・関連リンク・出典
医療機関のオンライン会議は、類型別(院内多職種/退院前/地域連携/マネジメント/研修)にセキュリティ要件と運用ルールを分けて設計するのが基本方針です。ツール選定は既存オフィススイートとの整合を優先し、録画・議事録の保存期間・アクセス権限は院内規程で明文化することで、監査対応と現場運用の両立が図れます。厚生労働省・総務省・経済産業省のガイドライン最新版を情報セキュリティ委員会で継続的にレビューする運用体制が、長期的な整合維持の要点となります。
本記事は公開情報の整理を目的としており、個別の医療情報安全管理措置・患者情報の院外共有ルール・雇用契約に関わる論点等については、所属都道府県・地方厚生局・個人情報保護委員会・自院の顧問弁護士/社労士等の専門機関にご相談ください。記載内容に誤りを発見された場合は、編集部が確認のうえ訂正いたします。
- 出典1:厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/0000516275_00006.html(取得日:2026-08-02)
- 出典2:厚生労働省「医療分野の情報化の推進について」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/johoka/index.html(取得日:2026-08-02)
- 出典3:厚生労働省「医療安全対策」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/i-anzen/index.html(取得日:2026-08-02)
- 出典4:厚生労働省「在宅医療・介護連携推進事業」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000073684.html(取得日:2026-08-02)
- 出典5:総務省「医療情報を取り扱う情報システム・サービスの提供事業者における安全管理ガイドライン」https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/d_syohi/iryou_anzen.html(取得日:2026-08-02)
- 出典6:個人情報保護委員会「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/guidelines_medical/(取得日:2026-08-02)
- 出典7:経済産業省「医療情報を取り扱う情報システム・サービスの提供事業者における安全管理ガイドライン」https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/iryou_jyouhou.html(取得日:2026-08-02)
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mitoru編集部の見解
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