病院の在宅療養後方支援病床運営 完全ガイド【2026年版・施設基準/紹介元登録/緊急入院体制】

📅公開日:2026-10-02

※本記事には広告(PR)が含まれます。mitoru編集部は公開情報を整理して比較・解説しており、表示順位や評価は広告主からの依頼ではなく編集部の独自判断によります。

在宅療養中の患者が急変した際に入院先となる「後方支援」の機能は、在宅療養後方支援病院の施設基準、連携医療機関との関係づくり、入院希望患者の事前届出、緊急入院用病床の運用、地域包括ケア病棟など他の入院料との関係、在宅患者緊急入院診療加算などの算定と、制度理解と院内運用の両面が求められる領域です。本記事は厚生労働省等の公開情報(令和8年度診療報酬改定後の通知を含む)を整理した内容であり、特定の事業者・サービスの導入を推奨するものではありません。施設基準の適合判断・届出可否・算定可否は、所轄の地方厚生(支)局・都道府県の担当部署にご確認ください。

この記事の対象読者:病院の院長・事務長・看護部長・地域医療連携室長・医事課・入院管理(ベッドコントロール)部門の担当者。施設基準、連携協定、入院希望患者の事前登録、緊急入院の受入体制、地域包括ケア病棟との区分、認知症・看取りへの対応、算定項目の整理を扱います。

この記事でわかること

  • 在宅療養支援診療所・在宅療養支援病院との違い
  • 施設基準(第16の3)の6要件と届出
  • 連携協定と、紹介元医療機関リストの管理
  • 入院希望患者の事前登録と、診療情報交換
  • 緊急入院の受入体制と、認知症・看取りへの対応
  • 地域包括ケア病棟・包括期充実体制加算との区分
  • 在宅患者緊急入院診療加算と、紹介料・連絡料の考え方

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1. 在宅療養後方支援病院とは:制度の位置づけと「後方支援病床」

在宅医療を担う診療所や病院にとって、患者の急変時に入院先があらかじめ決まっているかどうかは、在宅療養の継続を左右します。在宅療養後方支援病院は、その緊急時の入院先を事前に確保する仕組みで、特掲診療料の施設基準等に係る通知(以下「施設基準通知」)の第16の3に定められています。在宅医療を提供する医療機関(連携医療機関)の求めに応じ、事前届出のある入院希望患者の診療が可能な体制と、緊急入院用の病床を常に確保することが中心です。

1-1. 在宅療養支援診療所・在宅療養支援病院との違い

区分許可病床数の要件緊急入院の位置づけ
在宅療養支援診療所診療所無床の場合は、別の保険医療機関(許可病床200床以上の病院を含む)との連携で入院病床を確保し、受入医療機関名等を地方厚生(支)局長に届け出る
在宅療養支援病院200床未満(別表第6の2の地域は280床未満)、又は半径4キロメートル以内に診療所なし自院で、緊急時に入院できる病床を常に確保する
在宅療養後方支援病院200床以上(別表第6の2の地域は160床以上)入院希望患者のための病床を常に確保し、受入不可なら他院を探して紹介する

1-2. 本記事でいう「後方支援病床」

「後方支援病床」は診療報酬上の病床区分ではなく、本記事では通知が定める「入院できる病床を常に確保していること」に基づく緊急入院用病床の運用を指す呼称です。専用病棟とするか空床を運用するかは病院の設計に委ねられます(5.で整理)。

2. 施設基準の全体像(施設基準通知 第16の3)

施設基準は、令和8年3月5日付の施設基準通知(保医発0305第8号)第16の3に定められています。以下は実務の視点での要約です。訂正通知・疑義解釈を含め、原文でご確認ください。

項目通知上の内容(要旨)
(1) 許可病床数200床以上(別表第6の2の地域は160床以上)
(2) 連携・連絡担当者連携医療機関と連携し、連絡を受ける担当者をあらかじめ指定して、連絡先を文書で提供する
(3) 診療体制事前届出のある入院希望患者の診療が24時間可能な体制を確保し、患者に説明する。届出文書の写しは連携医療機関と患者に交付し、病院で保管・更新する。1患者につき1病院を想定
(4) 緊急入院用病床入院できる病床を常に確保する。入院させられない場合は、当該病院が他の病院を探して紹介する
(5) 診療情報の交換連携医療機関と3月に1回以上交換する。診療情報提供料(Ⅰ)は算定できない
(6) 一覧表(5)の診療情報等に基づき、入院希望患者の最新の一覧表を作成する

2-1. 届出様式と受入実績の件数要件

届出は別添2の様式20の4を用い、連絡を受ける体制について連携医療機関等に交付する文書を添付します。第16の3には受入件数そのものを施設基準とする記載は確認できません。ただし、地域包括ケア病棟入院料や包括期充実体制加算の施設基準では後方支援病院としての受入実績が参照されるため(7.で整理)、受入実績を台帳で管理する意義があります。

3. 連携協定の設計と紹介元医療機関リストの管理

3-1. 連携協定書に盛り込む項目の例

通知上の連携医療機関は「在宅医療を提供する医療機関」で、在支診に限られません(在支診の要件は在宅療養支援診療所(在支診)届出完全ガイドを参照)。通知は「連携していること」「連絡先を文書で提供すること」を求めており、協定書の締結自体を明記した規定は確認できません。以下は役割分担を文書化する際の設計例です。

  • 連絡窓口と連絡手順(つながらない場合の次の連絡先を含む)
  • 入院希望患者の登録・変更・取消の手順と様式
  • 診療情報の交換頻度・記載項目・送付手段
  • 受入不可時の取扱い(他院紹介、搬送先候補の共有)
  • 算定項目の整理(受入側・連携医療機関側)
  • 個人情報の取扱いと、協定の見直し時期

3-2. 紹介元医療機関リスト(台帳)の管理

通知が求めるのは入院希望患者の最新の一覧表です。これとは別に、連携医療機関単位の台帳(届出区分、協定の更新日、連絡窓口、登録患者数、直近の情報交換日、依頼・受入件数、受入不可の理由)を持つと、窓口変更や更新漏れに気づきやすくなります。更新責任者を地域医療連携室等に置き、四半期ごとに点検する運用が考えられます。

チーム輪=連携

4. 入院希望患者の事前情報登録と診療情報交換・連携カンファレンス

4-1. 事前届出(登録)の流れ

入院希望患者とは、連携医療機関が在宅医療を行っており、緊急時の当該病院への入院を希望するものとして、様式20の6又はこれに準じた文書で事前に病院へ届け出た患者をいいます。

  1. 入院を希望する患者が、病院へ届出を行う
  2. 病院が、診療体制と病床の確保について患者に説明する(連携医療機関を通じた説明も可)
  3. 届出文書の写しを連携医療機関と患者に交付し、病院でも保管する
  4. 変更があれば更新し、一覧表に反映する

様式20の6は一例で、①連携医療機関の求めに基づき24時間いつでも診療を行うこと、②入院が必要なら当該医療機関が入院治療を行うこと、③行えない場合は適切な医療機関へ紹介すること、④患者の診療情報を情報交換すること、⑤関係医療機関・患者の情報等、を含んでいれば病院の実情に応じて変更できます。届出は1患者につき1病院を想定しており、受理時に他の病院への届出の有無を連携医療機関と患者に確認します。

4-2. 3月に1回以上の診療情報交換

詳細な診療内容は不要ですが、引き続き当該病院への緊急入院を希望しているか、届出内容の変更の有無、期間中の特記事項の有無を記載します。ファクシミリ、電子メール、ICT等は差し支えない一方、記録の残らない電話等は認められません。送付予定日を台帳に登録し、未返信の連携医療機関へ事務部門が確認する運用が考えられます。

4-3. 連携カンファレンスの位置づけ

後方支援病院の施設基準にカンファレンス開催を求める記載は、確認した範囲では見当たりません(在支診・在支病の在宅支援連携体制には月1回以上の定期カンファレンスの規定がありますが、別の枠組みです)。受入事例の振り返りや、受入不可事例と代替搬送先、連絡手順の見直しを議題とした年1〜2回程度の合同カンファレンスは、任意の取組として考えられます。

5. 緊急時入院受入体制の構築

5-1. 病床の「常時確保」の考え方

通知は入院できる病床を「常に確保していること」を求めますが、病床数や専用病床とするかを数値で示す規定は確認できず、運用設計に委ねられています。特定病棟の空床を目安にする方式、ベッドコントロールで依頼時に調整する方式などが考えられます(設計例)。「常に確保」を説明できるよう、空床確認の手順と依頼から入院までの記録を残します(病院の入院管理室・ベッドコントロール運営 完全ガイドも参照)。

5-2. 連絡受付から入院までの院内フロー

  1. 連絡窓口が受付し、患者名・病状の概要・搬送手段・到着予定を記録する
  2. 一覧表で登録状況を確認する
  3. 当直医・担当診療科が受入可否を判断する
  4. 入院管理室・看護管理者が病床を確定する
  5. 入院前又は入院後速やかに、患者の希望する診療内容等を連携医療機関の保険医に確認・共有する(在宅患者緊急入院診療加算の留意事項)
  6. 入院直後から退院調整を開始する

5-3. 受入できない場合の対応

やむを得ず入院させられなかった場合は、当該病院が他に入院可能な病院を探して紹介することとされ、探索の役割は連携医療機関ではなく病院側にあります。様式20の6の「搬送の可能性がある医療機関」欄で代替候補を事前に把握し、受入不可の理由を台帳に記録して年次で点検します。

業務フロー

6. 認知症患者の受入と看取り目的入院

6-1. 認知症患者の受入

在宅療養中の高齢患者には認知症のある方が少なくなく、行動・心理症状(BPSD)や意思疎通の困難さへの対応が論点になります。通知上、認知症の有無で対象を限定する記載は確認できないため、受入可否の基準を院内で定め、事前登録の段階から日常生活自立度、行動・心理症状の傾向、意思決定を担う家族等の連絡先、生活リズム等の情報を得ておく設計が現実的です(設計例)。

入院後は、認知症ケア加算(A247)の対象となる患者がいます。留意事項通知では日常生活自立度ランクⅢ以上が対象で、身体的拘束を実施する場合はアセスメント、患者家族への説明と同意、記録、解除に向けた検討が求められます。詳細は病院認知症ケアチーム完全ガイドを参照してください。

6-2. 看取り目的入院の考え方

後方支援病院の施設基準に看取り実績を求める記載はありません(在宅療養支援病院には在宅看取りの実績を求める項目があります)。入院での看取りを選ぶ場面では、本人の意思と家族の意向を状況に応じて繰り返し確認し、関係者で共有することが重要です。厚生労働省の「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」は、施設基準通知や留意事項通知で意思決定支援の参照先として挙げられており、人生会議(ACP)の資料も公開されています。看取り目的の依頼を受ける際の受入方針、入院前に共有を受ける情報(本人・家族の意向、急変時の方針)、面会の取扱いは、院内で文書化しておきます。

7. 急性期から療養への転院と地域包括ケア病棟との区分

7-1. 地域包括ケア病棟入院料との区分

後方支援病院は病院単位の施設基準(特掲診療料)、地域包括ケア病棟入院料は病棟・病室単位の入院料(基本診療料)で、分類の軸が異なり、二者択一ではありません。基本診療料の施設基準通知(保医発0305第7号)は、地域包括ケア病棟入院料について、次のいずれかの基準を求めています。

  • 在宅療養支援病院の届出を行っていること
  • 在宅療養後方支援病院の届出を行い、直近1年間の在宅患者の受入実績が3件以上(在宅患者緊急入院診療加算の「1」を算定したものに限る)であること
  • 第二次救急医療機関、救急病院、又は同一敷地内の訪問看護ステーションのいずれかであること

一般病床で算定する場合は、在宅療養支援病院・後方支援病院(受入実績)・訪問看護ステーションのいずれかに加え、第二次救急医療機関又は救急病院のいずれかが必要です。運営面は地域包括ケア病棟経営完全ガイドで整理しています。

7-2. 包括期充実体制加算との関係

令和8年度改定後の基本診療料の施設基準通知には、包括期充実体制加算(第2の2)が示されています。許可病床数200床(別表第6の2の地域は280床)未満で、地域包括医療病棟入院料又は地域包括ケア病棟入院料を算定する病棟を有することなどに加え、後方支援に係る実績(自宅等からの緊急入院患者の受入れ、在宅患者緊急入院診療加算1〜3の算定回数など)が求められます。許可病床数の要件が後方支援病院(200床以上)と異なるため、まず自院がどちらに関係するかを確認します。

7-3. 急性期病院から療養の場への転院

後方支援病院が受けるのは在宅療養中の患者の緊急入院で、急性期病院からの転院は別の流れですが、同じ病院が両方を担う場面があります。地域包括ケア病棟入院料等には、急性期治療後の患者の受入れを評価する急性期患者支援病床初期加算と、自宅等で療養を継続している患者の入院を評価する在宅患者支援病床初期加算があり、いずれも転院・入院・転棟した日から起算して14日を限度に算定し、入院前の居場所や入院までの経過等を診療録に記載します。転院調整の体制は病院MSW(医療ソーシャルワーカー)配置設計 完全ガイドも参考になります。

引き継ぎ

8. 算定項目の整理と紹介料・連絡料の考え方

項目概要(留意事項通知の要旨)
A206 在宅患者緊急入院診療加算受入保険医療機関が、診療所の保険医の求めに応じて入院させた場合に、入院初日に入院中1回算定。区分「1」には、後方支援病院が事前届出の患者を連携医療機関の求めで入院させた場合が含まれる
C012 在宅患者共同診療料通院困難で後方支援病院を緊急時の搬送先として希望する患者に、後方支援病院が連携医療機関の求めに応じ共同で往診又は訪問診療を行った場合に算定
B009 診療情報提供料(Ⅰ)3月に1回以上の診療情報交換には算定できない

A206の区分「2」は、診療所の保険医が事前に緊急時の受入医療機関名を文書で提供した場合(区分「1」を除く)に算定します。点数・算定上限は告示・通知の原文でご確認ください。

8-1. 「紹介料」「連絡料」の考え方

「紹介料」「連絡料」は診療報酬の項目名ではありません。連携先とのやり取りで算定できるのは、A206・C012など告示・通知に定められた項目に限られ、特に施設基準上の診療情報交換には診療情報提供料(Ⅰ)を算定できません。また、保険医療機関及び保険医療養担当規則(第2条の4の2)は、事業者又はその従業員に患者を紹介する対価として金品を提供すること等により、患者が自己の保険医療機関で診療を受けるよう誘引することを禁じています。連携医療機関との間で独自の「紹介料」「連絡料」を設ける設計は想定せず、評価は診療報酬の公式項目の範囲で運用します。

医事課が中心となり、入院希望患者の一覧表と連動して、依頼件数・受入件数・算定した項目と区分を台帳化すると、算定漏れの防止に加え、地域包括ケア病棟入院料の受入実績(直近1年間3件以上)や包括期充実体制加算の算定回数の確認にも役立ちます。

9. よくある質問(FAQ)

Q1. 何床以上の病院が対象ですか?
許可病床数200床以上(別表第6の2の地域は160床以上)とされています。届出可否は通知原文を踏まえ、地方厚生(支)局にご確認ください。
Q2. 満床で受け入れられなかった場合はどうなりますか?
当該病院が他に入院可能な病院を探し、入院希望患者を紹介することとされています。理由と紹介の経過は台帳に記録しておくと点検に役立ちます。
Q3. 認知症や看取り目的の入院も受け入れる必要がありますか?
通知の施設基準には、疾患や認知症の有無、看取り目的であることで対象を限定する記載は確認できません。受入可否の基準は、自院の診療体制を踏まえて院内で定め、事前登録の段階から必要な情報を連携医療機関から得ておく運用が現実的です。

10. 次の1ステップ

本記事を読み終えたら、まず「自院の許可病床数を確認したうえで、過去1年間に在宅医療を行う医療機関から受けた緊急入院の相談について、連絡元・受入可否・受入不可の理由を一覧にまとめる」という最小アクションから始めることをお勧めします。連絡元の偏りや受入不可理由の傾向が見えれば、連携協定の優先先や病床運用の見直しの判断材料になります。

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出典

  1. 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67729.html(取得日:2026-10-02)
  2. 厚生労働省「特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて(令和8年3月5日保医発0305第8号)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001732104.pdf(取得日:2026-10-02)
  3. 厚生労働省「基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて(令和8年3月5日保医発0305第7号)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001732097.pdf(取得日:2026-10-02)
  4. 厚生労働省「医科診療報酬点数表に関する事項(留意事項通知 別添1)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001732089.pdf(取得日:2026-10-02)
  5. 厚生労働省「在宅医療の推進について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000061944.html(取得日:2026-10-02)
  6. 厚生労働省「地域包括ケアシステム」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/chiiki-houkatsu/(取得日:2026-10-02)
  7. 厚生労働省「「人生会議」してみませんか」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_02783.html(取得日:2026-10-02)
  8. 「保険医療機関及び保険医療養担当規則」(e-Gov法令検索) https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=332M50000100015(取得日:2026-10-02)

免責事項

本記事は厚生労働省等の公開情報を整理した一般的な情報であり、特定の事業者・サービスの優位性を保証するものではありません。施設基準の適合判断、届出の可否、診療報酬項目の算定可否は、自院の医事課・地域医療連携室・地方厚生(支)局等の専門窓口にご相談ください。本記事は医療行為・診断・治療の助言を含みません。関連制度は改定・訂正通知・疑義解釈で見直されることがあるため、実務適用時は最新の公式情報をご確認ください。記載内容は2026-10-02時点の公開情報に基づきます。

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