病院認知症ケアチーム完全ガイド【2026年版・認知症ケア加算/構成メンバー/研修要件/BPSD対応】

📅公開日:2026-06-28
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急性期病院・地域包括ケア病棟・回復期リハ病棟・療養病棟のいずれにおいても、入院患者に占める認知症高齢者の割合は年々増加し、せん妄・BPSD(行動・心理症状)への対応、転倒・転落の防止、身体拘束の最小化、退院支援といった一連の課題は、病棟運営の中核テーマとなっています。診療報酬上の「認知症ケア加算1・2・3」は、こうした院内ケア体制の整備を評価する仕組みとして位置づけられており、専従・専任スタッフ、認知症ケアチーム(認知症ケア加算1)、研修要件、マニュアル整備など、複数の構成要素が要件として設計されています(厚生労働省「診療報酬改定」関連告示・通知)。

本記事は病院理事長・院長・看護部長・認知症ケア担当の医師・看護師を主な読者と想定し、病院内における認知症ケアチームの位置づけ、認知症ケア加算1/2/3の要件比較、チーム構成メンバー(医師・看護師・専門医療従事者)、認知症看護認定看護師・認知症看護専門看護師・老人看護専門看護師の役割、BPSD対応の基本フレーム、身体拘束最小化の枠組み、地域包括ケアシステムとの連携、2024年度診療報酬改定での見直し論点、よくある質問について、厚生労働省・地方厚生局・中央社会保険医療協議会(中医協)・国立長寿医療研究センター・日本看護協会の公開情報を整理した内容としてまとめています。診療報酬上の届出可否・施設基準充足の最終判断・個別患者への医療判断は、各病院の管理部門・診療部・地方厚生局・主治医にご確認ください。

この記事で分かること

  • 病院における認知症患者増加の背景と病棟運営上の課題
  • 認知症ケア加算1・2・3の施設基準・対象患者・点数構造
  • 認知症ケアチーム(加算1)の構成メンバーと専従・専任の考え方
  • 認知症看護認定看護師・認知症看護専門看護師・老人看護専門看護師の役割整理
  • BPSD(行動・心理症状)対応の基本フレームと非薬物的アプローチ
  • 身体拘束最小化の制度的位置づけと評価・記録の枠組み
  • 地域包括ケアシステム・かかりつけ医・地域連携室との連携
  • 2024年度診療報酬改定における認知症ケア加算の見直し論点

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1. 病院での認知症患者増加と病棟運営の課題

厚生労働省の推計では、認知症高齢者の数は2025年に約700万人前後に達する見通しとされ、65歳以上の高齢者の約5人に1人が認知症となる試算が示されています(厚生労働省「認知症施策推進大綱」関連資料)。入院患者の高齢化に伴い、急性期病院においても認知症あるいは認知機能低下を有する患者の割合が大きくなり、原疾患の治療と並行して、認知症ケアの設計が必須となる場面が増えています。原疾患(肺炎・心不全・骨折・脳血管疾患など)の治療経過、せん妄の発症、BPSDの顕在化、転倒・転落リスク、退院支援の難航といった複合的な課題が同時並行で進む点が、認知症患者の入院治療の特徴とされています。

こうした課題に対し、各病院では、認知症ケアチームの設置、認知症看護認定看護師の配置、せん妄予防プロトコル、身体拘束最小化委員会、退院支援部門との連携など、複数の取り組みを組み合わせて対応する体制づくりが進んでいます。診療報酬上は、平成28年度(2016年度)改定で「認知症ケア加算」が新設され、その後、加算1・2・3の階層化、研修要件の見直し、評価点数の改定が重ねられてきました(厚生労働省「診療報酬改定」関連告示)。本記事ではこの加算の枠組みを軸に、病院運営における認知症ケアチームの設計論点を整理します。

病院経営の観点から見ると、認知症ケア加算の届出は、診療報酬上の収益面と、患者・家族満足度、職員の業務設計、地域における信頼形成などの複数の側面に関わります。届出可否の判断は、対象患者数、専従・専任の人員確保、研修受講者数、マニュアル整備、委員会運営など、施設基準充足の見通しに基づき、診療部・看護部・事務部門が連携して検討する設計が一般的です。本記事は届出可否の最終判断ではなく、検討前の論点整理を支援する位置づけです。

2. 認知症ケア加算1・2・3の概要

認知症ケア加算は、認知症の患者に対する病棟での適切なケアの提供を評価する診療報酬上の加算で、現行制度では加算1・加算2・加算3の3階層に分かれています。加算1は認知症ケアチームによる介入を伴う最も手厚い体制、加算2は専任の医師・看護師を中心とした体制、加算3は研修修了者の配置を中心とした体制と整理されています(厚生労働省「診療報酬の算定方法」関連告示・通知)。具体的な点数・要件は改定ごとに見直されているため、最新の通知は地方厚生局および厚生労働省サイトでの確認が前提となります。

2-1. 加算1(認知症ケアチームによる介入)

加算1は、認知症ケアに係るチームによる介入を要件とする最上位の階層で、専任の常勤医師(認知症患者の診療に5年以上の経験を有する者など)、専従の常勤看護師(認知症看護に関する適切な研修修了など)、専任の常勤薬剤師、専任の常勤社会福祉士または精神保健福祉士などから構成されるチームによる介入が要件とされています。チームは、病棟ラウンド、症例検討会、ケア計画策定、マニュアル整備、職員研修などを実施し、認知症患者の入院時から退院までの一貫したケアを支援する位置づけです(厚生労働省「診療報酬の算定方法」関連告示・通知)。

2-2. 加算2(専任の医師・看護師による体制)

加算2は、加算1のような認知症ケアチームによる介入までは要件としないものの、病棟における認知症ケアの体制整備を評価する階層で、専任の常勤医師、専任の常勤看護師(認知症看護に係る適切な研修修了など)の配置、認知症ケアに関するマニュアル整備、対象患者のスクリーニング・ケア計画作成などが要件とされています。中規模病院や、加算1の体制構築が直ちに難しい施設において、段階的な体制整備の入り口として活用される場合があります。

2-3. 加算3(研修修了者の配置)

加算3は、認知症ケアに関する適切な研修を修了した看護師の病棟配置を中心とする階層で、加算1・2と比較して点数は低く設定されている一方、施設基準の充足ハードルは相対的に低く設計されています。研修修了看護師が、病棟ごとに認知症ケアの中核を担い、対象患者の評価・ケア計画立案・他職種連携などを行う設計です。小規模病院・回復期病院・療養病棟でも段階的な届出が可能な階層と位置づけられる場合があります。

2-4. 対象患者と算定期間

認知症ケア加算の対象は、認知症高齢者の日常生活自立度判定基準ランクIII以上に該当する患者など、一定の認知機能低下が認められる入院患者とされています。算定は入院日からの所定日数区分で点数が分かれる構造となっており、入院初期に手厚い点数、その後逓減する設計です。詳細な対象基準・算定上限日数・身体拘束を実施した場合の減算規定は告示・通知で定められているため、届出を検討する病院は最新の算定告示を確認することが前提となります(厚生労働省「診療報酬の算定方法」関連告示)。

3. 認知症ケアチームの構成メンバー

認知症ケア加算1で要件とされる認知症ケアチームは、専任の常勤医師、専従の常勤看護師、専任の常勤薬剤師、専任の常勤社会福祉士または精神保健福祉士などから構成される多職種チームです。原疾患の治療・薬物療法・心理社会的支援・退院後の地域生活への移行支援といった多面的な課題に対応するため、医師・看護師・薬剤師・社会福祉士・作業療法士・公認心理師など、複数の専門職種が役割を分担する設計が想定されています。

3-1. 医師(専任の常勤医師)

認知症ケアチームの医師は、神経内科・精神科・老年内科・脳神経外科などにおいて、認知症患者の診療経験を有する常勤医師から選任されることが多い構成です。役割は、認知症の鑑別診断・薬物療法の調整・せん妄評価・BPSDへの薬物的介入の判断・主治医との連携・チームの方針決定など、医学的判断を伴う領域に及びます。原疾患の主治医は別に存在することが基本で、認知症ケアチームの医師は、横断的なコンサルテーションの位置づけで関与する設計が一般的です。

3-2. 看護師(専従の常勤看護師)

認知症ケアチームの看護師は、認知症看護認定看護師、認知症看護専門看護師、老人看護専門看護師、もしくは認知症ケアに関する所定の研修を修了した看護師から、専従の常勤として配置されます。役割は、病棟ラウンドにおける個別アセスメント、ケア計画策定支援、病棟看護師への助言・指導、家族支援、退院支援部門との連携、職員研修の企画・運営など、チームの中核を担う実務領域に及びます。専従要件のため、原則として病棟看護業務との兼務は不可とされる構造です。

3-3. 薬剤師(専任の常勤薬剤師)

認知症ケアチームの薬剤師は、認知症治療薬・抗精神病薬・抗不安薬・睡眠薬などの薬物療法における、適正使用・副作用モニタリング・相互作用評価を担う構成員です。高齢者・認知症患者では、多剤併用(ポリファーマシー)に伴う薬物有害事象のリスクが指摘されており、薬剤師が処方内容を横断的に確認し、減薬の提案や相互作用の評価を行うことで、せん妄・転倒の予防につながる場合があるとされています(日本老年医学会「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン」関連資料)。

3-4. 社会福祉士・精神保健福祉士

社会福祉士または精神保健福祉士は、退院後の生活設計、介護保険サービスとの調整、家族支援、成年後見制度の情報提供、地域包括支援センターとの連携など、心理社会的支援を担う構成員です。認知症患者の退院支援では、介護力・住環境・経済状況・本人の意思などの複数の要素を統合して、退院先の選定(自宅・介護老人保健施設・特別養護老人ホーム・グループホーム等)を検討するプロセスが必要で、社会福祉士・精神保健福祉士が中心的な調整役を担う設計とされています。

3-5. その他の構成メンバー

必須要件ではないものの、作業療法士(OT)、理学療法士(PT)、言語聴覚士(ST)、公認心理師、管理栄養士などが、認知症ケアチームに準ずる形で関与する病院もあります。作業療法士は、認知機能訓練、ADL支援、せん妄予防の活動プログラムなどを担い、公認心理師は神経心理学的検査・家族カウンセリング・職員のメンタルヘルス支援などを担う設計が見られます。チーム構成は病院規模・診療科構成・地域医療資源によって調整される運用です。

4. 認知症看護認定看護師・専門看護師の役割

認知症ケアチームの中核を担う看護師として、認知症看護認定看護師(CN)、認知症看護専門看護師(CNS)、老人看護専門看護師(CNS)などの資格保有者が想定されています。いずれも日本看護協会が認証する資格制度に基づくもので、教育課程・実務経験・認定審査の各要件を満たした看護師に付与される資格です(日本看護協会「認定看護師」「専門看護師」関連資料)。

4-1. 認知症看護認定看護師

認知症看護認定看護師は、認知症の各重症度・経過に応じた看護実践、家族・介護者への教育・相談、医療チーム内でのコンサルテーション、施設や地域における看護職への指導を担う位置づけです。教育課程は、現行の特定行為研修を組み込んだB課程を中心に再編が進められており、所定の教育期間(数百時間規模)・実習・認定試験を経て認定される構造です。認知症ケア加算1の専従看護師要件として、認知症看護認定看護師の配置が代表的な選択肢の一つとされています。

4-2. 認知症看護専門看護師

認知症看護専門看護師は、認定看護師より高度な実践・教育・研究機能を担う資格で、修士課程修了が要件とされる位置づけです。日本看護系大学協議会・日本看護協会が連携して教育課程・認証制度を運営しており、特定の専門分野について、卓越した看護実践、相談、調整、倫理調整、教育、研究の6つの役割を担うとされています。病院では、認知症ケアチームの教育・研究機能、複雑事例のコンサルテーション、組織横断的なケア改善活動などを担う設計が一般的です。

4-3. 老人看護専門看護師

老人看護専門看護師は、高齢者を対象とした看護全般を専門分野とする専門看護師で、認知症ケアに加え、フレイル、サルコペニア、廃用症候群、エンドオブライフケア、家族介護支援など、高齢者特有の複合的課題に対応する位置づけです。認知症ケアチームでは、認知症看護認定看護師・専門看護師と役割を分担、あるいは協働する形で、加齢に伴う複合疾患・身体機能低下と認知症の重畳に対応する役割が想定されます。

4-4. 認知症ケアに関する適切な研修

認知症ケア加算2・3で要件とされる「認知症ケアに関する適切な研修」は、日本看護協会が認定する認定看護師教育課程に加えて、所定の研修プログラムが該当する場合があるとされています。具体的にどの研修が該当するかは、厚生労働省・地方厚生局の通知で示されており、研修時間・内容(認知症の基本的理解・アセスメント・BPSD対応・家族支援・地域連携など)が一定の基準を満たすことが求められます。届出を検討する病院は、研修修了者の在籍状況と、当該研修が要件に該当するか否かを、地方厚生局に確認する設計が一般的です。

5. BPSD(行動・心理症状)対応の基本フレーム

BPSD(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia:認知症の行動・心理症状)は、認知症の中核症状(記憶障害・見当識障害・実行機能障害など)に伴って出現する、興奮・攻撃・徘徊・不穏・幻覚・妄想・抑うつ・不安・睡眠障害などの症状群を指す概念です。入院患者では、原疾患・治療・環境変化が誘因となってBPSDが顕在化することが多く、その対応は認知症ケアの中心的課題の一つとなっています(国立長寿医療研究センター「認知症の医療・ケア」関連資料)。

5-1. アセスメントの枠組み

BPSDのアセスメントは、症状(何が起きているか)、頻度・強度、誘因(身体的不調・痛み・脱水・便秘・薬剤副作用・環境変化など)、本人にとっての意味、ケア提供者側の対応を、体系的に整理することから始まります。Cohen-Mansfield Agitation Inventory(CMAI)、Neuropsychiatric Inventory(NPI)などの評価尺度が用いられる場合もありますが、いずれも医学的判断と並行して活用するツールであり、対応方針の最終決定は医師の判断に基づきます。記録の標準化により、職員間で症状の経過・対応の有効性を共有しやすくなる設計が望まれます。

5-2. 非薬物的アプローチの優先

BPSD対応では、原則として非薬物的アプローチを第一選択とし、薬物療法は限定的に用いる方針が、国内外の関連ガイドラインで共通して示されているとされています。具体的には、誘因の除去(痛み・脱水・便秘の解消、薬剤の見直し、環境調整)、コミュニケーションの工夫(穏やかな声かけ、選択肢の提示、急がせない対応)、生活リズムの整備(日中の活動・夜間の睡眠環境)、回想法・音楽療法・作業療法などの介入が挙げられます(厚生労働省「認知症施策推進大綱」関連資料、国立長寿医療研究センター関連資料)。

5-3. 薬物療法の位置づけ

非薬物的アプローチで改善しない、あるいは本人・他者への危険が切迫している場合に、抗精神病薬・抗不安薬・睡眠薬などの薬物療法が選択肢となる場合があります。ただし、これらは脳血管障害・転倒・誤嚥・死亡リスクの上昇などの有害事象との関連が指摘されており、最小有効量・短期間使用・定期的な見直しが基本方針とされています。処方判断は精神科医・神経内科医・主治医の医学的判断に基づくものであり、認知症ケアチームの役割は、薬物療法の必要性・継続性の評価をチームで共有・記録する設計の支援にあるとされています。

5-4. せん妄との鑑別

急性期病院では、認知症患者にせん妄が重畳することが多く、両者の鑑別と並行対応が重要な論点となります。せん妄は急性発症の意識障害で、原因(感染・電解質異常・薬剤・低酸素など)の除去により改善する可能性があり、認知症の慢性経過とは異なる対応設計が必要です。CAM(Confusion Assessment Method)などのスクリーニングツールを活用し、医師の診断と並行してチームで対応する設計が一般的です(国立長寿医療研究センター関連資料)。

6. 身体拘束最小化の枠組み

身体拘束は、患者の身体機能低下・精神的苦痛・尊厳の損なわれ・廃用症候群の進行・せん妄の悪化など、多くの負の影響を伴うため、医療・介護領域で「最小化」を目指す方針が一貫して示されています(厚生労働省「身体拘束ゼロへの手引き」関連資料)。2024年度診療報酬改定では、身体拘束を実施した場合の認知症ケア加算の減算規定が見直されるなど、身体拘束最小化を制度面でも後押しする方向性が示されているとされています(厚生労働省「令和6年度診療報酬改定」関連告示・通知)。

6-1. 三原則(切迫性・非代替性・一時性)

介護保険指定基準で示される身体拘束の三原則(切迫性・非代替性・一時性)は、医療現場でも共通の判断軸として参照される考え方です。生命または身体が危険にさらされる可能性が著しく高いこと(切迫性)、身体拘束以外に代替手段がないこと(非代替性)、必要最小限の時間にとどめること(一時性)の三要件をすべて満たす場合に限り、例外的に身体拘束を実施する設計です。三要件の判定・記録・家族説明・定期見直しを多職種で行う体制が望まれます。

6-2. 身体拘束最小化委員会・指針

病院における身体拘束最小化の取り組みでは、身体拘束最小化委員会の設置、指針の整備、研修の実施、実施事例の記録・振り返り、低減目標の設定などが基本的な構成要素とされています。2024年度診療報酬改定では、身体拘束最小化の指針整備・委員会設置などが、医療法上の入院基本料の要件として位置づけられる方向で見直しが進められたとされています(厚生労働省関連通知)。要件の最新内容は地方厚生局通知での確認が前提となります。

6-3. 非拘束化に向けたケアの工夫

身体拘束を回避するためのケアの工夫として、見守り体制の強化、環境調整(明るさ・音・温度・床面の安全性)、転倒予防プログラム、ライン類の整理(点滴・カテーテルの目立たない固定)、夜間の生活リズム整備、家族の付き添いの調整などが、関連書籍・ガイドラインで紹介されているとされています。認知症ケアチームは、こうした工夫の標準化・院内展開を支援する役割を担うことが想定されます。

7. 地域包括ケア・退院支援との連携

認知症患者の入院治療は、退院後の生活設計まで含めて一貫して設計することが基本方針とされています。地域包括ケアシステムの推進では、医療・介護・住まい・生活支援・予防の各サービスが地域で一体的に提供される姿が目標とされており、認知症患者の退院支援においても、地域包括支援センター・かかりつけ医・介護保険サービス・地域の認知症初期集中支援チーム等との連携が重要となります(厚生労働省「地域包括ケアシステム」「認知症施策推進大綱」関連資料)。

7-1. 入院時からの退院支援

退院支援は、入院時からの開始が基本方針とされており、入院前の生活状況・介護力・本人の意思・かかりつけ医情報の把握から始めることが望まれます。認知症ケアチームの社会福祉士・精神保健福祉士が、退院支援部門・地域連携室・主治医・病棟看護師と連携し、退院後の生活設計を多職種で検討する設計が一般的です。退院前カンファレンス(地域の介護支援専門員・かかりつけ医・家族を交えた多職種カンファレンス)の運用が、円滑な退院・地域生活への移行に寄与するとされています。

7-2. 認知症初期集中支援チームとの連携

認知症初期集中支援チームは、市町村が設置する地域の支援チームで、医療・介護の専門職が、認知症が疑われる人・認知症の人およびその家族を訪問し、初期の支援を集中的に行う仕組みとされています(厚生労働省「認知症施策推進大綱」関連資料)。病院は、退院後の地域生活で支援が必要となる事例について、地域包括支援センター経由で初期集中支援チームと情報共有を行う設計が見られます。退院前カンファレンスへの参加依頼など、具体的な連携方法は自治体ごとに運用が異なる場合があります。

7-3. かかりつけ医・認知症サポート医

地域のかかりつけ医、認知症サポート医、認知症疾患医療センターとの連携も、退院後の継続的な医療提供体制の整備において重要な論点です。認知症サポート医は、かかりつけ医への助言・相談、専門医療機関との連携、地域での認知症対応力向上の研修を担う役割で、都道府県が研修を実施しています(厚生労働省「認知症サポート医養成研修」関連資料)。退院時情報提供書では、認知症の重症度・BPSDの経過・服薬状況・家族の介護力などを整理し、退院後の主治医に引き継ぐ設計が望まれます。

8. 2024年度診療報酬改定での見直し

令和6年度(2024年度)診療報酬改定では、認知症ケア加算の体系の継続を前提に、身体拘束最小化との関連、研修要件の見直し、点数の改定などが議論されたとされています(厚生労働省「令和6年度診療報酬改定」関連告示・通知、中央社会保険医療協議会総会資料)。改定内容は告示・通知で詳細が定められているため、ここでは論点を整理する形で記載します。

8-1. 身体拘束最小化との連動

身体拘束最小化は、認知症ケア加算の評価軸の一つとして、加算1・2・3すべてに通底する論点です。2024年度改定では、身体拘束を実施した場合の認知症ケア加算の減算規定の見直し、身体拘束最小化のための指針整備・委員会設置などが入院基本料の要件として位置づけられる方向で議論されたとされています。具体的な減算率・要件は最新の告示・通知で確認することが前提です。

8-2. 認知症ケアチームの専従要件

加算1で要件とされる専従の常勤看護師は、原則として病棟看護業務との兼務不可とされる構造ですが、勤務形態の弾力化・専従要件の細部の運用については、各改定で見直しが行われる場合があります。最新の運用については、地方厚生局の解釈通知・疑義解釈で確認することが前提となります。

8-3. 関連加算との関係整理

認知症ケア加算は、せん妄ハイリスク患者ケア加算、入退院支援加算、地域包括ケア病棟入院料、回復期リハビリテーション病棟入院料など、他の入院料・加算と組み合わせて算定されることが多い構造です。改定では、これら関連項目との要件の整合、施設基準の重複部分の整理などが論点となる場合があり、複数の届出を持つ病院では、横断的な要件確認の運用が望まれます。

9. よくある質問(FAQ)

Q1. 認知症ケア加算1の届出に必要な人員はどう確保すべきですか?
A. 専任の常勤医師、専従の常勤看護師、専任の常勤薬剤師、専任の常勤社会福祉士または精神保健福祉士の確保が要件とされています。特に専従看護師は病棟看護業務との兼務が原則不可のため、看護部内での配置調整・採用計画の見直しが必要となる場合があります。要件の細部・運用については、地方厚生局の解釈通知を確認し、診療部・看護部・事務部門で連携した検討が望まれます。
Q2. 加算2・3から段階的に届出を進めることは可能ですか?
A. 制度上、加算1・2・3はいずれかの届出となるため、病院の体制に応じて、まず加算3・2から届出を行い、研修受講・人員確保を進めながら、加算1への移行を検討する運用は一般的に見られる設計です。施設基準充足の見通しと、研修修了者の養成計画・人員配置計画を中期的に整理する設計が望まれます。
Q3. 認知症ケアチームと精神科リエゾンチームの違いは何ですか?
A. 認知症ケアチームは認知症患者のケアを中心とする多職種チームであり、精神科リエゾンチーム(精神科リエゾンチーム加算)は、せん妄を含む精神症状全般について、精神科医・看護師等が横断的にコンサルテーションを行うチームです。両者は対象患者・要件・点数構造が異なるものの、対応領域に一定の重なりがあるため、病院内では役割分担の整理が論点となる場合があります。両加算の併算定可否・住み分けは、最新の告示・通知で確認することが前提です。
Q4. BPSDに対する抗精神病薬の使用は許容されますか?
A. 非薬物的アプローチを第一選択とし、薬物療法は限定的に用いる方針が、国内外の関連ガイドラインで示されているとされています。本人・他者への危険が切迫している場合などに、最小有効量・短期間使用・定期的な見直しを前提として処方される場合がありますが、処方判断は精神科医・神経内科医・主治医の医学的判断に基づくものです。本記事では具体的な薬剤選択・投与量の助言は行いません。
Q5. 身体拘束ゼロを目指す場合の現実的なステップは?
A. 身体拘束最小化委員会の設置、指針の整備、職員研修、実施事例の記録・振り返り、低減目標の設定など、段階的なPDCA運用が現実的なアプローチとされています。一度に「ゼロ」を達成することは難しい場合があるため、現状把握から始め、削減可能な事例から段階的に取り組む設計が望まれます。多職種カンファレンスで個別事例を検討し、非拘束化に向けたケアの工夫を院内で共有する運用が、関連書籍・ガイドラインで紹介されているとされています。
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10. 関連内部リンク・次のステップ

病院における認知症ケア体制の整備と関連するテーマとして、地域包括ケア病棟の運用、退院支援、医療機能評価の受審準備、看護職の研修体制があります。自院の経営課題に応じて、以下の関連記事も参考に、組織改善と地域連携の方針整理を並行して進めることが有用です。

11. 出典・参考資料

  • 厚生労働省「認知症施策推進大綱」関連資料 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000076236_00002.html (取得日:2026-06-28)
  • 厚生労働省「診療報酬の算定方法(告示)」関連資料 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411.html (取得日:2026-06-28)
  • 厚生労働省「令和6年度診療報酬改定」関連告示・通知 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000196352_00008.html (取得日:2026-06-28)
  • 厚生労働省「地域包括ケアシステム」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/chiiki-houkatsu/ (取得日:2026-06-28)
  • 厚生労働省「身体拘束ゼロへの手引き」関連資料 https://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/kaigo/torikumi/torikumi.html (取得日:2026-06-28)
  • 厚生労働省「認知症サポート医養成研修」関連資料 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000079008.html (取得日:2026-06-28)
  • 中央社会保険医療協議会(中医協)総会資料 https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-chuo_128154.html (取得日:2026-06-28)
  • 国立長寿医療研究センター「認知症の医療・ケア」関連資料 https://www.ncgg.go.jp/ (取得日:2026-06-28)
  • 日本看護協会「認定看護師」「専門看護師」関連資料 https://www.nurse.or.jp/nursing/qualification/ (取得日:2026-06-28)
  • 日本老年医学会「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン」関連資料 https://www.jpn-geriat-soc.or.jp/ (取得日:2026-06-28)

【免責事項】本記事は厚生労働省・地方厚生局・中央社会保険医療協議会(中医協)・国立長寿医療研究センター・日本看護協会・日本老年医学会等の公開情報を整理することを目的としており、特定の病院における認知症ケア加算の届出可否、施設基準充足の最終判断、個別患者への医療判断、薬物療法の選択を保証するものではありません。告示・通知・ガイドラインは改訂される場合があるため、個別判断は各病院の管理部門・診療部・地方厚生局・主治医にご確認ください。本記事の情報利用によって生じた損害について、mitoru編集部は責任を負いません。

最終更新日:2026年6月28日|編集方針

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