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褥瘡(じょくそう/いわゆる「床ずれ」)は、長期臥床や栄養状態の悪化、体圧の集中などの要因が重なって生じる皮膚・皮下組織の損傷であり、急性期・慢性期・回復期を問わず多くの病院で日常的に直面する医療課題です。褥瘡の発生・重症化は、患者の苦痛を増すだけでなく、在院日数の長期化、感染症併発、療養病床への移行など複合的な負荷を病院全体にもたらします。そのため、医療法施行規則や診療報酬上のしくみとして、病院には褥瘡対策の体制整備とチーム的な取り組みが求められています。
本記事は病院の理事長・看護部長・褥瘡対策担当者を主な読者と想定し、褥瘡対策に関する制度的義務、褥瘡ハイリスク患者ケア加算の概要、チーム構成と多職種連携(医師・皮膚・排泄ケア認定看護師/WOCN・管理栄養士・理学療法士等)、評価ツール(DESIGN-R 2020・OHスケール等)、体圧分散マットレスとポジショニング、栄養管理との連携、DPC係数との関係、2024年診療報酬改定の関連動向、よくある質問を、厚生労働省・地方厚生(支)局・中央社会保険医療協議会(中医協)・日本褥瘡学会等の公開情報を整理した内容としてまとめます。本記事は公開情報の整理を目的としており、特定の診療報酬算定の可否や治療方針については、厚生労働省・地方厚生(支)局・主治医・専門職団体にご確認ください。なお、本記事は医療行為・診断・治療の助言を提供するものではありません。
この記事で分かること
- 医療法施行規則に基づく褥瘡対策の体制整備の位置づけ
- 褥瘡ハイリスク患者ケア加算の概要と算定要件の基本構造
- 褥瘡対策チームの構成(医師・WOCN・管理栄養士・理学療法士等)と多職種連携の考え方
- DESIGN-R 2020・OHスケール・ブレーデンスケール等の代表的な評価ツールの位置づけ
- 体圧分散マットレスの分類とポジショニング・体位変換の基本的な考え方
- 低栄養と褥瘡の関係・栄養サポートチーム(NST)との連携
- DPC/PDPSにおける褥瘡関連評価と機能評価係数IIとの関係
- 令和6年度(2024年度)診療報酬改定における関連動向の概要
- 自院の褥瘡対策体制をその場で点検できる10項目チェックリスト
1. 褥瘡対策の制度的義務(医療法施行規則)
病院における褥瘡対策は、診療報酬上の加算の枠組みに先立って、医療法施行規則および関連通知において、入院医療を提供する施設が整備すべき体制として位置づけられてきた経緯があります。具体的には、褥瘡対策に関する診療計画の作成、褥瘡対策に係る専任の医師および看護職員の配置、体圧分散寝具その他の器具の整備等が、入院基本料等の施設基準の前提として整理されています。これにより、入院基本料を算定する病院は、診療科を問わず一定の褥瘡対策体制を有することが基本要件となります(厚生労働省「保険診療における施設基準等」関連資料)。
1-1. 入院基本料の前提としての褥瘡対策
入院基本料を算定する病院は、施設基準の通知において、褥瘡対策に関する体制整備が前提とされています。具体的には、褥瘡対策に係る専任の医師・看護職員の配置、褥瘡対策に関する院内基準の整備、褥瘡発生のリスク評価および褥瘡が認められる患者に対する診療計画の作成、体圧分散寝具その他の器具の整備等が求められる構造とされています。これらは加算の有無に関わらず、入院医療を提供するうえでの「土台」として位置づけられる項目です(厚生労働省「保険診療における施設基準等」関連資料)。
1-2. 褥瘡対策に関する診療計画
入院時には、褥瘡発生のリスク評価を行い、リスクが認められる患者および褥瘡を有する患者については、診療計画を作成して多職種で共有することが求められます。診療計画には、リスク要因の整理、体圧分散寝具の使用、体位変換・ポジショニング、栄養管理、スキンケア、評価のスケジュールなど、患者ごとの状況に応じた項目が含まれる構造とされています。診療計画の作成・運用は、看護部門が中心となりつつ、医師・管理栄養士・理学療法士・薬剤師等が連携する仕組みが一般的です。
1-3. 褥瘡対策に関する院内体制
院内体制としては、褥瘡対策委員会の設置、褥瘡対策チーム(医師・看護師・管理栄養士等)の編成、褥瘡対策マニュアルの整備、発生症例の集計・分析、職員研修の実施等が、多くの病院で運用されています。委員会・チームの活動は、入院基本料の体制要件と褥瘡ハイリスク患者ケア加算等の加算要件の双方を支える基盤となります。組織としての継続的な改善サイクル(PDCA)を回す枠組みを設けることが、体制の実効性を高めます。
1-4. 制度的義務の整理表
| 区分 | 主な要件 | 院内での対応例 |
|---|---|---|
| 入院基本料の前提 | 専任医師・看護職員、体圧分散寝具等の整備 | 褥瘡対策委員会設置・寝具整備 |
| 診療計画 | リスク評価と計画作成 | 入院時アセスメント・多職種共有 |
| 院内基準・マニュアル | 褥瘡対策の標準化 | マニュアル整備・職員研修 |
| 記録・分析 | 発生症例の把握 | 発生率集計・委員会で振り返り |

2. 褥瘡ハイリスク患者ケア加算の概要
褥瘡対策の体制が一定水準を超えて整っている病院では、入院料に上乗せされる「褥瘡ハイリスク患者ケア加算」を算定できる枠組みが、診療報酬上設けられています。本加算は、褥瘡発生のリスクが高い患者に対する組織的なケアを評価するもので、専任の褥瘡管理者の配置、診療計画の作成、体圧分散寝具を含むケア用品の整備、定期的な評価などが要件として整理される構造とされています。詳細は最新の診療報酬点数表・告示・通知(厚生労働省)でご確認ください。
2-1. 加算の基本的な位置づけ
褥瘡ハイリスク患者ケア加算は、入院基本料に上乗せされる加算の一つで、所定の体制要件を満たした病院において、褥瘡発生のリスクが特に高いと判断される患者に対し、組織的なケアを行った場合に算定する構造とされています。要件としては、皮膚・排泄ケアに関する専門的な知識を有する看護師(皮膚・排泄ケア認定看護師等)を中心とした褥瘡管理者の配置、計画策定、体圧分散用具等の整備、評価の継続実施等が含まれる構造です(厚生労働省「診療報酬の算定方法(告示)」関連資料)。
2-2. 対象となるハイリスク患者の考え方
褥瘡発生のリスクが高い患者とは、一般に、自力で体位変換が困難である状態、特定の神経・運動機能の障害がある状態、強度の浮腫・関節拘縮を伴う状態、低栄養状態、皮膚の脆弱性が顕著な状態など、複数のリスク要因を有する患者を指す考え方が用いられます。具体的な対象範囲は告示・通知で整理されているため、最新の点数表・通知をあらかじめ確認することが前提となります(厚生労働省「診療報酬の算定方法(告示)」関連資料)。
2-3. 専任の褥瘡管理者と体制要件
本加算の体制要件として、皮膚・排泄ケアに関する所定の専門的研修を修了した看護師等を、専任の褥瘡管理者として配置することが整理されています。皮膚・排泄ケア認定看護師(Wound, Ostomy and Continence Nurse/WOCN)はその代表的な人材で、創傷・ストーマ・失禁ケアの専門性を備えた看護師として、日本看護協会の認定制度のもとで養成されています。専任者の配置に加え、計画の作成・評価・記録の運用体制を整えることが要件の中核となります。
2-4. 算定要件の確認と運用
加算の算定にあたっては、(1)体制要件(人員・整備)、(2)患者要件(リスクの判定)、(3)記録要件(計画書・評価記録)、(4)算定期間・回数等のルールを、最新の告示・通知に基づき確認することが前提となります。算定可否や運用の細部は、地方厚生(支)局や社会保険診療報酬支払基金等の確認も踏まえて整理することが推奨されます。本記事では具体的な点数・要件の詳細は割愛します。
2-5. 加算要件の整理表
| 区分 | 整理される観点 | 院内での主な対応 |
|---|---|---|
| 人員配置 | 専任の褥瘡管理者(看護師等) | WOCN等の配置・専従/専任の区分整理 |
| 整備 | 体圧分散寝具・ケア用品の整備 | マットレス機種選定・調達体制 |
| 計画 | 診療計画書の作成・共有 | 多職種会議・カルテ記載の標準化 |
| 評価 | 定期的なリスク・創評価 | DESIGN-R 2020等での記録 |
| 運用ルール | 算定期間・記録様式 | 院内マニュアル整備 |
3. 褥瘡対策チームの構成と多職種連携
褥瘡は、体圧、皮膚の状態、栄養、活動性、湿潤など多面的な要因が複合して発生・悪化するため、対策チームには複数の職種の関与が前提となります。チームは、入院基本料の前提となる体制と、褥瘡ハイリスク患者ケア加算の体制を一体的に運用する役割を担うことが多く、病院全体の褥瘡対策の中核として機能します。
3-1. 医師(皮膚科・形成外科・主治医等)
医師は、褥瘡の診断、創傷の評価、治療方針の決定、感染管理、外科的処置の要否判断などを担います。皮膚科医・形成外科医がチームに関与する病院では、難治性・深部の褥瘡について専門的な助言を受けやすくなる構造が整います。一方、専門医が常駐していない病院でも、主治医を中心に、看護師・管理栄養士等と連携してチームを運用する形が広く採用されています。
3-2. 皮膚・排泄ケア認定看護師(WOCN)
皮膚・排泄ケア認定看護師(WOCN/Wound, Ostomy and Continence Nurse)は、創傷・ストーマ・失禁ケアの専門性を備えた看護師で、日本看護協会の認定看護師制度のもとで養成されています。褥瘡対策においては、リスク評価、ケアプランの立案、看護スタッフへの教育・コンサルテーション、難治例への助言など、専門的な看護を担う中核的存在として位置づけられます。WOCNの配置・育成は、褥瘡ハイリスク患者ケア加算の体制要件とも親和性が高い領域です。
3-3. 管理栄養士・栄養サポートチーム(NST)
低栄養は褥瘡発生・治癒遅延の重要な要因の一つとされ、管理栄養士の関与は対策チームに不可欠です。栄養スクリーニング、必要栄養量の評価、経口・経腸・経静脈栄養の選択への助言、嚥下機能を踏まえた食形態の調整など、栄養面のサポートを担います。多くの病院では、栄養サポートチーム(NST)と褥瘡対策チームが連携し、低栄養例・難治例について合同で検討する体制が運用されています。
3-4. 理学療法士・作業療法士
理学療法士(PT)・作業療法士(OT)は、関節可動域、座位耐久性、移乗動作、ポジショニングの実施等の観点から、体圧分散と離床促進に関わる助言を担います。長時間の同一体位による体圧集中を避けるためには、車椅子座位の姿勢評価、シーティング、リハビリテーションによる活動性の向上が有用な要素となります。PT・OTの関与は、急性期からの早期離床、回復期での生活機能向上、慢性期での廃用予防のいずれの局面でも、褥瘡対策と相互に作用します。
3-5. 薬剤師・医療材料担当・事務
薬剤師は、外用薬の選択、相互作用、保湿・スキンケア製品に関する情報提供を担います。医療材料担当・SPD部門は、ドレッシング材・体圧分散寝具の調達と在庫管理を支え、ケアの継続性を担保します。事務部門は、算定要件の運用、施設基準の届出、医事課との連携、加算算定状況のモニタリングを通じて、制度面の運用を支える役割を担います。
3-6. チーム構成の整理表
| 職種 | 主な役割 | 連携先 |
|---|---|---|
| 医師 | 診断・治療方針・処置判断 | WOCN・主治医・皮膚科/形成外科 |
| WOCN | リスク評価・ケア計画・教育 | 病棟看護師・医師 |
| 管理栄養士 | 栄養評価・食事計画 | NST・看護師・主治医 |
| PT・OT | ポジショニング・離床支援 | 看護師・リハビリ部門 |
| 薬剤師 | 外用薬・スキンケア助言 | 医師・看護師 |
| 事務・医事 | 算定・施設基準・記録 | WOCN・医事課 |

4. 評価ツール(DESIGN-R 2020・OHスケール等)
褥瘡対策は、客観的な評価ツールを用いた継続的なアセスメントによって、ケアの質と一貫性が支えられます。日本褥瘡学会等の公開情報を踏まえ、代表的な評価ツールには、褥瘡の状態を評価する DESIGN-R 2020、リスク評価のための OHスケール、ブレーデンスケール等が挙げられます。各ツールには目的・対象・記録方法の特徴があり、自院の患者層と運用体制に応じて選択・併用されます。
4-1. DESIGN-R 2020(創の評価)
DESIGN-R 2020 は、日本褥瘡学会が公開している褥瘡の評価ツールで、深さ(Depth)、滲出液(Exudate)、大きさ(Size)、炎症・感染(Inflammation/Infection)、肉芽組織(Granulation)、壊死組織(Necrotic tissue)、ポケットの有無を体系的に評価する構造とされています。重症度の把握と経時的な変化のモニタリングに用いられ、ケアの効果評価や多職種間での情報共有の共通言語として機能します。詳細な使用法・記録様式は日本褥瘡学会の公開資料をご参照ください。
4-2. OHスケール(リスク評価)
OHスケールは、骨突出の程度、自力体位変換能力、浮腫、関節拘縮の有無等の項目で褥瘡発生リスクを評価するツールとして、国内の臨床現場で広く用いられている指標の一つです。簡便に実施できる点が特徴とされ、入院時の初期スクリーニングや病棟での定期評価に活用されます。具体的な評価項目・運用方法は公開資料・関連書籍を参照のうえ、院内で記録様式を統一して運用することが望まれます。
4-3. ブレーデンスケール(リスク評価)
ブレーデンスケール(Braden Scale)は、知覚の認知、湿潤、活動性、可動性、栄養状態、摩擦・ずれの6項目で褥瘡発生リスクを評価する国際的に普及した指標とされています。各項目をスコア化し、合計点でリスクを段階的に把握する構造で、評価の標準化と継続的なモニタリングに活用されます。OHスケールと併用または使い分ける運用も行われており、自院の患者層に応じた選択が行われます。
4-4. 評価ツールの運用
評価ツールは、入院時の初期評価、定期的な再評価、状態変化時の再評価といった節目で運用されることが一般的です。電子カルテ上のテンプレート化、写真記録との併用、多職種カンファレンスでの共有等を通じて、評価結果がケアプランの見直しに反映される仕組みを整えることが重要です。記録の標準化は、加算要件で求められる記録要件への対応にもつながります。
4-5. 評価ツールの位置づけ整理表
| ツール | 主な目的 | 主な観点 |
|---|---|---|
| DESIGN-R 2020 | 創の重症度評価 | 深さ・滲出液・大きさ・炎症・肉芽・壊死・ポケット |
| OHスケール | 発生リスク評価 | 骨突出・体位変換能力・浮腫・関節拘縮 |
| ブレーデンスケール | 発生リスク評価 | 知覚・湿潤・活動・可動・栄養・摩擦/ずれ |
5. 体圧分散マットレスとポジショニング
褥瘡対策の物理的基盤として、体圧分散寝具(マットレス・クッション等)と、体位変換・ポジショニングの運用は重要な構成要素です。入院基本料の体制要件にも体圧分散寝具の整備が位置づけられており、患者のリスク評価と臨床状況に応じた寝具選択・運用が、褥瘡対策チームの主要な実務領域となります。
5-1. 体圧分散マットレスの分類
体圧分散マットレスは、構造・機構の観点から、ウレタンフォーム等の静止型(リアクティブ型)と、エアセルの圧切替を行う圧切替型(アクティブ型)、両者の特性を備えたハイブリッド型等に分類されます。リスクの程度や患者の状態(自力体位変換能力・関節拘縮の有無・体格等)、医師・WOCN等の評価に基づいて寝具を選択する運用が一般的です。具体的な機種・仕様の選定は、メーカー公開情報および医療機器の特性を踏まえ、自院の評価基準に従って行われます。
5-2. クッション・シーティング
座位での体圧分散も褥瘡対策上重要な領域です。車椅子・座椅子・ベッド上座位における体圧の集中部位(仙骨部・坐骨部等)に対し、適切なクッションと姿勢調整(シーティング)を組み合わせることで、長時間座位による組織損傷のリスクを低減する取り組みが行われます。PT・OTの関与は、シーティングの質を支える要素となります。
5-3. 体位変換とポジショニング
体位変換は、同一部位への持続的な体圧集中を避けるための基本的なケアで、患者の状態に応じた間隔と方法で実施されます。ポジショニングでは、骨突出部の除圧、ずれと摩擦の予防、関節拘縮への配慮、呼吸・循環への影響評価などが包括的に検討されます。具体的な体位変換間隔は、マットレスの性能・患者状態・組織耐性等を総合的に判断して個別に決定されることが一般的で、画一的な時間設定は推奨されない傾向があるとされています(日本褥瘡学会 公開資料を参照)。
5-4. スキンケアと湿潤管理
皮膚の脆弱性を高める要因として、過剰な乾燥、失禁・浸軟による過湿、摩擦・ずれが挙げられます。保湿剤の活用、失禁関連皮膚炎(IAD)への配慮、適切な清拭、おむつ選択等のスキンケア要素は、体圧分散と並行して取り組むべき領域です。WOCN・看護師を中心に、薬剤師・物品管理担当が連携する運用が一般的です。
5-5. 体圧分散・ポジショニングの整理表
| 領域 | 主な対象 | 関与する職種 |
|---|---|---|
| マットレス選択 | 臥位の体圧分散 | WOCN・看護師・物品管理 |
| クッション・シーティング | 座位の体圧分散 | PT・OT・看護師 |
| 体位変換 | 同一部位の除圧 | 看護師・看護補助者 |
| スキンケア | 皮膚の脆弱性予防 | WOCN・看護師・薬剤師 |

6. 栄養管理との連携
低栄養は褥瘡発生・治癒遅延の代表的な要因として、多くのガイドラインで指摘されてきました。栄養管理の充実は、体圧分散・スキンケアと並ぶ褥瘡対策の柱であり、栄養サポートチーム(NST)と褥瘡対策チームの連携運用は、多くの病院で標準的な体制として組み込まれています。
6-1. 栄養スクリーニング
入院時の栄養スクリーニングは、低栄養リスクの早期把握に有用とされています。代表的な指標として、体重変化、BMI、食事摂取量、血清アルブミン値等が用いられる構造で、ツールとしては SGA(主観的包括的評価)、MNA-SF、MUST等が国内外で知られています。スクリーニングの結果に応じて、管理栄養士による詳細な栄養評価と介入計画につなげる運用が一般的です。
6-2. NSTと褥瘡対策チームの連携
栄養サポートチーム(NST)は、医師・管理栄養士・看護師・薬剤師等で構成される多職種チームで、低栄養患者の栄養介入を担う役割が一般的とされています。NST加算等の枠組みのもと、褥瘡対策チームとの合同カンファレンスや、低栄養を伴う難治例の合同評価が行われる病院も多く、両チームの連携は患者アウトカム向上の観点で重要な実務領域です(厚生労働省「診療報酬の算定方法(告示)」関連資料)。
6-3. 嚥下機能と食形態
嚥下機能の低下は、十分な経口摂取を妨げ、結果として低栄養と褥瘡リスクを高める要因となり得ます。言語聴覚士(ST)による嚥下機能評価、管理栄養士による食形態の調整、看護師による摂食支援等が連携することで、安全かつ十分な栄養摂取を支える運用が組まれます。経口摂取が困難な症例については、医師・管理栄養士・薬剤師が連携して経腸・経静脈栄養の選択を検討します。
6-4. 栄養管理の整理表
| 領域 | 主な内容 | 関与する職種 |
|---|---|---|
| スクリーニング | 低栄養リスクの早期把握 | 看護師・管理栄養士 |
| 詳細評価 | 必要栄養量・代謝の評価 | 管理栄養士・医師 |
| 嚥下評価・食形態 | 安全な摂取の確保 | ST・管理栄養士・看護師 |
| 経腸・経静脈栄養 | 必要量の確保 | 医師・薬剤師・管理栄養士 |
7. DPC係数と褥瘡対策の関係
DPC/PDPS対象病院においては、機能評価係数IIや在院日数の論点を通じて、褥瘡対策と病院経営が間接的に結びつく構造があります。褥瘡の発生は在院日数の長期化・治療コストの増加・他疾患治療の妨げといった影響をもたらすため、対策の質は経営指標にも反映される可能性があります。ただし、係数の評価項目や算定方法は改定ごとに見直されるため、最新告示・通知の確認が前提です(厚生労働省「DPC/PDPS」関連資料)。
7-1. 在院日数と効率性指数
機能評価係数IIの構成要素の一つである効率性指数は、診断群分類別の在院日数の短縮の度合いを評価する観点とされています。褥瘡の発生・悪化は、合併症対応のための入院延長や、転院・退院調整の困難化につながる場合があり、効率性指数に対する間接的な影響が生じる可能性があります。褥瘡対策の充実は、在院日数の適正化を通じて係数評価にも寄与し得る領域として整理できます。
7-2. 保険診療指数とデータ精度
保険診療指数は、DPCデータの精度や保険診療の質的向上に関連する観点とされています。褥瘡については、入院時持参例(持ち込み褥瘡)と入院後発生例の区別、DESIGN-R 2020等による評価記録、適切な傷病名・処置のコーディング等が、データ精度の前提となります。診療情報管理士・WOCN・看護師の連携によって、診療実態に即した記録が確保されることが重要です。
7-3. 加算算定と収益構造
褥瘡ハイリスク患者ケア加算・栄養サポートチーム加算等の算定は、入院料に上乗せされる収益要素となります。算定の前提となる体制整備や記録運用の負荷と、得られる収益・医療の質向上のバランスを、長期的視点で評価することが、経営的な判断材料となります。加算ありきではなく、医療の質を支える体制が結果として算定要件と整合する設計が、持続的な運用につながります。
8. 2024年診療報酬改定における関連動向
令和6年度(2024年度)診療報酬改定では、入院医療の機能分化、医療と介護の連携、生活習慣病等の慢性疾患管理、栄養管理体制の整備等を含む幅広い見直しが行われました。褥瘡対策に直接関連する項目としては、入院料の体制要件や関連する加算の整理、栄養管理体制に関する記載の整備等が、改定の方向性として整理されています(厚生労働省「令和6年度診療報酬改定について」)。具体的な要件・点数は告示・通知の原本でご確認ください。
8-1. 改定の基本方針と入院医療
2024年改定の基本方針では、医療従事者の働き方改革、医療DX、医療と介護の連携、患者の状態に応じた急性期医療の評価、救急医療等の機能の評価といった観点が示されました。入院医療においては、急性期から回復期・慢性期への流れの中で、患者の機能維持・回復を支える体制の重要性が改めて強調される構造とされており、褥瘡対策・栄養管理を含む基盤的なケアの位置づけも、この文脈に位置づけられます(厚生労働省「令和6年度診療報酬改定について」)。
8-2. 栄養管理体制の整備
栄養管理体制については、入院基本料に関する施設基準のうち栄養管理に関する記載や、栄養サポートチーム加算等の関連項目について、近年の改定で見直しが重ねられてきた経緯があります。栄養管理体制の整備は、褥瘡対策の前提条件の一つとされており、改定動向のフォローは、褥瘡対策チームの運用にも関わる領域です。詳細は厚生労働省の改定資料・通知をご確認ください。
8-3. 改定情報のフォロー体制
改定への対応では、医事課・看護部・栄養部・診療情報管理部門等が連携して、告示・通知の内容を点検し、自院の体制と記録運用を整合させる作業が必要となります。中央社会保険医療協議会(中医協)の議論資料、地方厚生(支)局の説明資料、社会保険診療報酬支払基金の通知等も、運用判断の参考資料として活用されます。改定後一定期間の運用見直しを計画的に行う体制が、過誤算定や記録不備のリスクを下げます。
9. 自己点検チェックリスト(10項目)
自院の褥瘡対策体制をその場で点検できる10項目チェックリストです。「該当する」「不明」「該当しない」のいずれかを記録し、不明項目は厚生労働省・地方厚生(支)局の公開資料、または院内の関係部門にご確認ください。
- 1. 専任体制:褥瘡対策に係る専任の医師・看護職員が配置されているか。
- 2. 寝具整備:体圧分散寝具その他の器具が、患者のリスクに応じて整備・運用されているか。
- 3. リスク評価:入院時にOHスケール・ブレーデンスケール等によるリスク評価が行われているか。
- 4. 創の評価:褥瘡を有する患者に対して、DESIGN-R 2020等の評価が定期的に行われているか。
- 5. 診療計画:褥瘡対策に関する診療計画が作成され、多職種で共有されているか。
- 6. WOCN等の専門人材:皮膚・排泄ケア認定看護師等を中心とした褥瘡管理者の配置・育成が進んでいるか。
- 7. NSTとの連携:栄養サポートチームと褥瘡対策チームが連携して、低栄養例を検討する体制があるか。
- 8. ポジショニング・スキンケア:体位変換・シーティング・スキンケアの標準化が図られているか。
- 9. 記録・データ精度:DPCコーディング・診療録記載で、入院時持参例と入院後発生例の区別等が明確になっているか。
- 10. 改定対応:診療報酬改定・通知の内容を院内で点検し、運用に反映する体制があるか。
10項目のうち「該当する」が8項目以上であれば、褥瘡対策体制が概ね定着していると判断できる目安となります。5項目以下の場合は、専任体制・寝具整備・リスク評価・診療計画といった基盤部分から優先的に着手することが推奨されます。
10. よくある質問(FAQ)
- Q1. 褥瘡対策チームと褥瘡対策委員会は何が違うのですか?
- A. 一般に、褥瘡対策委員会は院内の方針・基準・教育・データ集計など、組織全体の方針決定と振り返りを担う合議体として運用されます。一方、褥瘡対策チームは、個別の患者の評価・ケア計画・実施・再評価を担う実働組織として位置づけられることが多い構造です。両者は重なる部分もあり、病院の規模・体制により役割の整理は異なります。具体的な区分・運用は、自院のマニュアル・院内規定をご確認ください。
- Q2. 専任の褥瘡管理者にはどのような資格が求められますか?
- A. 褥瘡ハイリスク患者ケア加算等の体制要件では、皮膚・排泄ケアに関する所定の専門的研修を修了した看護師等が、専任の褥瘡管理者として位置づけられる構造とされています。皮膚・排泄ケア認定看護師(WOCN)はその代表的な人材です。具体的な要件は告示・通知に整理されているため、最新資料および地方厚生(支)局の確認情報をご参照ください。
- Q3. 体位変換は何時間ごとに行うのが適切なのですか?
- A. 体位変換の間隔は、画一的な時間で定めるよりも、マットレスの性能、患者の組織耐性、リスク評価、皮膚観察の結果等を踏まえて個別に判断する考え方が、近年の公開資料で示される傾向にあります。具体的な運用は、日本褥瘡学会の公開資料および自院の褥瘡対策マニュアルをご確認ください。本記事は具体的な体位変換間隔を推奨するものではありません。
- Q4. 入院時に持ち込まれた褥瘡はどう扱えばよいですか?
- A. 入院時に既に褥瘡を有する患者については、入院時アセスメントでその状態を記録し、入院後の経過と区別できる形で診療録に記載することが、データ精度およびDPCコーディングの観点から重要とされています。入院時持参例と入院後発生例の区別は、自院の褥瘡発生率の把握や、対策の効果検証にも関わる基本的な記録要件です。具体的な記録様式は院内マニュアル・診療情報管理部門にご確認ください。
- Q5. 中小規模の病院でWOCNを配置するのは難しいのですが、どう体制を整えるべきですか?
- A. 専門看護師・認定看護師の配置は規模により難しい場合があり、その場合は、皮膚・排泄ケアに関する所定の研修を修了した看護師の育成、近隣病院の専門人材によるコンサルテーション、関連学会・団体の研修活用、院内の多職種チームによる役割分担などが、現実的な対応の選択肢として挙げられます。加算算定の体制要件は告示・通知の最新版でご確認ください。
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- 関連サービスの公式サイトで、対応規模・料金プラン・申込方法をご確認ください。所要時間や手続きは各サービスの公式情報を参照してください。
11. 関連リンク・出典
- 厚生労働省「保険診療における施設基準等」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/iryouhoken15/index.html (取得日:2026-06-28)
- 厚生労働省「診療報酬の算定方法(告示)」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000196352.html (取得日:2026-06-28)
- 厚生労働省「令和6年度診療報酬改定について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00037.html (取得日:2026-06-28)
- 厚生労働省「DPC/PDPS(診断群分類別包括評価)」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000198757.html (取得日:2026-06-28)
- 厚生労働省「中央社会保険医療協議会(中医協)」 https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-chuo_128154.html (取得日:2026-06-28)
- 厚生労働省「医療提供体制の確保(医療計画)」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/iryou_keikaku/index.html (取得日:2026-06-28)
- 厚生労働省「医療法・医療法施行規則」関連情報 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/index.html (取得日:2026-06-28)
- 一般社団法人 日本褥瘡学会 https://www.jspu.org/ (取得日:2026-06-28)
- 公益社団法人 日本看護協会「認定看護師」 https://nintei.nurse.or.jp/nursing/qualification/cn (取得日:2026-06-28)
【免責事項】本記事は厚生労働省告示・通知、日本褥瘡学会・日本看護協会等の公開情報を整理することを目的としており、特定の診療報酬加算の算定可否、特定の治療・ケアの効果、特定製品の優劣を保証するものではありません。診療報酬・施設基準・加算要件は告示・通知の改訂や年度の見直しにより変動し、解釈に関する判断は地方厚生(支)局・社会保険診療報酬支払基金等の確認が必要です。また、本記事は医療行為・診断・治療の助言を提供するものではなく、個別の患者ケアおよび治療方針は、主治医および関係する専門職にご確認ください。本記事の情報利用によって生じた損害について、mitoru編集部は責任を負いません。
最終更新日:2026年6月28日|編集方針
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mitoru編集部の見解
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