クリニック・病院の子育て支援制度設計 完全ガイド【2026年版・育休/短時間勤務/看護休暇/くるみん認定】

📅公開日:2026-08-01
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クリニック・病院における子育て支援制度の設計は、女性医師・看護師・薬剤師・医療事務等の定着率向上と採用競争力強化に直結する経営テーマです。育児・介護休業法(育介法)は2022年10月に産後パパ育休が施行され、2023年4月からは大企業で育休取得率公表義務化、2025年には柔軟な働き方の措置義務化等が段階的に施行されており、事業主対応は継続更新されています。

本記事は病院・クリニックの人事担当者・院長・事務長を主な読者と想定し、育児介護休業法の要点、産休・育休、短時間勤務、子の看護休暇、復職支援、両立支援等助成金、くるみん認定、院内保育・病児保育との統合、2024〜2025年動向を、厚生労働省・こども家庭庁・e-Gov法令検索等の公開情報を整理した内容としてまとめています。個別の就業規則改定・助成金申請の可否は、所轄労働局・社会保険労務士等の専門人材にご確認ください。

この記事で分かること

  • 医療機関における子育て支援の意義
  • 育児・介護休業法の要点と2022年〜2025年改正
  • 産前産後休業・育児休業(産後パパ育休を含む)
  • 短時間勤務・時差出勤・所定外労働免除
  • 子の看護等休暇(2025年改正で対象拡大)
  • 復職支援・シフト調整の実務論点
  • 両立支援等助成金の各コース
  • くるみん・プラチナくるみん認定の要件
  • 院内保育・病児保育事業との統合活用
  • 2024〜2025年動向と就業規則改定要素

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1. 医療機関における子育て支援の意義

医療・福祉分野は女性労働者比率が全産業平均を大きく上回り、厚生労働省「賃金構造基本統計調査」等の公表資料でも「医療,福祉」産業の女性比率の高さが継続して示されています。看護職員は圧倒的多数が女性であり、医師についても新規登録医の女性比率が上昇傾向にあることが厚生労働省「医師・歯科医師・薬剤師統計」等で公表されています。子育て支援制度の充実は、医療機関経営における人材確保・定着の中核テーマです。

医療機関の職場環境は、夜勤・準夜勤・当直・オンコール・救急対応など変則的な勤務形態を含み、育児との両立において一般事務職とは異なる配慮が要素です。労基法上の産前産後休業、育介法上の育児休業・短時間勤務・子の看護休暇、育児時間等の各制度を医療機関特有の勤務体系と整合させて就業規則に明文化することが、労使トラブル防止と離職抑制の観点で要素です。

2. 育児・介護休業法の要点と近年の改正

育児・介護休業法は、労働者の職業生活と家庭生活の両立支援を目的とする法律で、事業主に育児休業・介護休業・子の看護休暇等の付与義務、不利益取扱いの禁止、雇用環境整備等を課しています。厚生労働省・e-Gov法令検索で条文と関連省令・指針が公開されており、事業主は規模を問わず適用対象です。

施行時期主な改正事項事業主対応の要素
2022年4月雇用環境整備・個別周知・意向確認義務化就業規則・研修・面談フォーマット整備
2022年10月産後パパ育休(出生時育児休業)創設・育休分割取得可男性育休の運用整備・給付金申請対応
2023年4月従業員1,000人超の事業主に育休取得率公表義務公表様式・集計・自社サイト掲載
2025年4月子の看護等休暇の対象拡大・柔軟な働き方の措置義務化就業規則改定・労使協議・個別周知
2025年10月3歳〜小学校就学前の子を養育する労働者への柔軟な働き方の措置選択制の柔軟措置(複数から選択)

2025年4月施行の改正では、子の看護休暇の名称・対象子範囲・取得事由が見直されました。2025年10月からは、3歳〜小学校就学前の子を養育する労働者に対し、事業主が複数措置(始業時刻等の変更・テレワーク・所定外労働の制限・短時間勤務・保育施設の設置運営等)から2つ以上を選択して講じ、労働者が1つを選択できる仕組みが義務化されます。詳細は厚生労働省の公表資料をご確認ください。

3. 産前産後休業・育児休業(男女とも)

3-1. 産前産後休業(労働基準法第65条)

産前休業は労働者本人の請求により、出産予定日前6週間(多胎妊娠は14週間)から取得可能です。産後休業は本人請求の有無にかかわらず、出産日翌日から8週間は就業させることができません(産後6週間経過後は本人請求かつ医師の判断に基づき就業可)。産前産後期間中は健康保険から出産手当金(標準報酬日額の3分の2相当)が支給されます。

3-2. 育児休業・産後パパ育休

育児休業は原則として子が1歳に達するまで(保育所に入所できない等の事情がある場合は最長2歳まで延長可能)、男女を問わず取得できる制度です。2022年10月改正で分割取得(2回まで)が可能となり、パパ・ママ育休プラス制度利用時は子が1歳2か月に達するまでそれぞれ1年以内で取得可能です。産後パパ育休(出生時育児休業)は、子の出生後8週間以内に4週間まで取得可能な別枠の休業制度で、分割2回取得可、労使協定締結時は休業中の就業も可能です。給付面は雇用保険の出生時育児休業給付金等が支給されます。

医療機関では雇用形態が多様であり、有期雇用労働者の育休要件を就業規則・労使協定と整合させることが実務的です。診療科ごとに人員配置基準・シフト体制が異なるため、代替要員確保(応援勤務・非常勤採用等)の運用ルール事前設計も要素です。

4. 短時間勤務・時差出勤・所定外労働免除

育介法は、3歳未満の子を養育する労働者について、原則1日6時間の短時間勤務制度(第23条)を事業主に義務付けています。医療機関では、外来診療時間・入院病棟の交代勤務体制と短時間勤務者の勤務時間帯の組合せが実務論点です。日勤帯の常時配置が必要な部署では、複数の短時間勤務者のジョブシェア型運用、日勤専従化と夜勤専従者の組合せ等が選択肢となります。

制度対象主な内容根拠
短時間勤務制度3歳未満の子を養育する労働者原則1日6時間の勤務を選択可能育介法 第23条
所定外労働の制限3歳未満の子を養育する労働者本人請求で所定外労働の免除育介法 第16条の8
時間外労働の制限小学校就学前の子を養育する労働者時間外労働月24時間・年150時間まで育介法 第17条
深夜業の制限小学校就学前の子を養育する労働者深夜業(22時〜翌5時)の免除請求可育介法 第19条
育児時間1歳未満児を育てる女性労働者1日2回各30分以上の育児時間請求可労働基準法 第67条
柔軟な働き方の措置(2025.10〜)3歳〜小学校就学前の子を養育する労働者複数措置から選択(テレワーク・時差・短時間等)育介法(2025年改正)

深夜業の制限(育介法第19条)は、小学校就学前の子を養育する労働者が請求した場合、事業の正常な運営を妨げる場合等を除き深夜業を免除する仕組みです。医療機関では夜勤・当直体制との整合が課題となり、部署内配置転換・夜勤専従者採用等の総合対応が要素となります。就業規則には申請手続・請求単位・免除期間の変更・終了事由を明記します。

5. 子の看護等休暇(2025年改正で対象拡大)

子の看護等休暇(育介法第16条の2)は、養育する子が病気・けがをしたときの世話、疾病の予防を図るために必要な世話(予防接種・健康診断等)を行う労働者に付与される休暇です。2025年4月改正で名称が「子の看護等休暇」となり、対象子の範囲が小学校3年生修了まで拡大、取得事由に感染症に伴う学級閉鎖等・入園式・卒園式・入学式が追加されました。

付与日数は、対象子が1人の場合は年5日、2人以上の場合は年10日で、時間単位取得も可能です。有給か無給かは法令上の定めはなく、就業規則で明確化します。医療機関では申請手続・突発取得時のシフト応援体制・勤怠管理システム対応等の実務整備が要素です。

6. 復職支援・シフト調整

育児休業からの復職局面は離職リスクが高まる時期であり、事前面談・段階的復職・保育所調整支援・院内保育活用等の総合支援が要素です。厚生労働省「イクメンプロジェクト」「両立支援のひろば」等でも、復職前面談・業務量調整・キャリア面談等が紹介されています。医療機関では看護部長・診療部長・事務部門が連携し、復職スケジュール(試し出勤・時短適用・夜勤免除期間の設定等)を個別作成する運用が現実的です。シフト調整では日勤専従化・夜勤専従者採用・ジョブシェア型短時間勤務・オンコール免除・勤務間インターバル制度等を組み合わせます。「医師の働き方改革」(2024年4月施行)で医師の時間外労働上限規制が本格運用されており、育児中の医師支援と重ねた設計が有効です。

7. 両立支援等助成金の活用

厚生労働省「両立支援等助成金」は、両立支援に取り組む事業主に対する助成金で、育児休業取得促進・復職支援・介護休業取得促進等を目的とする複数コースで構成されます。各コースは年度ごとに支給要件・金額が改定されるため、申請前に厚生労働省・所轄労働局の最新公表資料の確認が前提となります。医療機関はサービス業と同じ枠組みで対象となります。

コース名主な支給対象事例備考
出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)男性労働者の育児休業取得促進第1種・第2種の類型設定
育児休業等支援コース育休取得時・職場復帰時の支援等育休復帰支援プラン策定・実施
介護離職防止支援コース介護支援プラン策定・介護休業取得本記事対象外(別記事参照)
不妊治療両立支援コース不妊治療と仕事の両立支援両立支援制度導入・利用
柔軟な働き方選択制度等支援コース柔軟な働き方選択制度の導入・利用2025年改正関連

助成金活用の実務ポイントは、(1)就業規則・労使協定への明確記載、(2)制度運用の証跡(面談・研修記録等)、(3)計画書・支給申請書の期限内提出、(4)所轄労働局への事前相談、です。医療機関で活用実績が多いのは「育児休業等支援コース」「出生時両立支援コース」で、育休復帰支援プラン策定を通じて就業規則整備と助成金取得を同時進行できます。

8. くるみん・プラチナくるみん・トライくるみん認定

くるみん認定は、次世代育成支援対策推進法に基づき、一般事業主行動計画の策定・届出を行い、計画目標達成と一定の認定基準を満たした事業主を厚生労働大臣が「子育てサポート企業」として認定する制度です。認定段階は「トライくるみん」「くるみん」「プラチナくるみん」の3段階で、認定事業主は認定マークを求人票等に表示でき、医療機関の採用ブランディングに活用可能です。

認定段階主な位置づけ認定基準の傾向
トライくるみんくるみん認定より低い基準の入門段階男性育休取得率・女性育休取得率の一定基準等
くるみん子育てサポート企業認定の標準段階男女それぞれの育休取得率基準等
プラチナくるみんくるみん認定後、より高い水準を継続達成男性育休取得率・女性活躍推進の高い基準
不妊治療対応加算各認定にプラス「トモニン」等の関連認定不妊治療と仕事の両立支援関連

認定申請の流れは、(1)一般事業主行動計画の策定・都道府県労働局への届出、(2)計画期間中の実績積上、(3)認定基準充足の自己確認、(4)認定申請書提出、(5)審査・認定、です。認定基準は改正が繰り返され、男性育休取得率の水準引上げ等が近年の傾向で、医療専門職の育休取得実績の計画的積上が認定取得の中核要素です。

9. 院内保育・病児保育事業との統合活用

院内保育所は、病院・クリニックが職員の子を対象に設置・運営する事業主内保育所で、夜間・休日保育に対応した運用も可能です。医療機関の変則勤務体系との親和性が高く、看護職員の復職支援の要として長く活用されています。厚生労働省「病院内保育所運営事業(医療従事者確保対策事業)」等の補助制度が整備され、都道府県経由の補助金交付を受けられる仕組みがあります。

病児保育事業は、こども家庭庁所管の子ども・子育て支援制度の枠組みで、病気の子どもを保育所・医療機関等で一時的に預かる事業です。医療機関併設型の病児保育室は、小児科医・看護師の関与により医療的ケアと保育を組み合わせた運用が可能で、地域住民支援と自院職員の両立支援を兼ねる形態が見られます。制度枠組みはこども家庭庁「病児保育事業」の公表資料に整理されています。

10. 2024〜2025年の動向と就業規則改定の要素

2024〜2025年の政策・実務環境の動向として、(1)2025年4月施行の子の看護等休暇の対象拡大、(2)2025年10月施行の柔軟な働き方の措置義務化、(3)育休取得率公表義務の対象拡大検討、(4)男性育休取得促進の政府目標引上げ、(5)医師の働き方改革との相互作用、(6)こども家庭庁設置以降の子育て支援施策一元化、が主な論点です。就業規則改定の要素は、条文改定・労使協定改定・育休取得実績の管理と公表フォーマット整備・柔軟な働き方措置の選択肢設計・男性育休取得促進の社内広報等で、所轄社会保険労務士との連携が実務要素となります。

11. よくある質問(FAQ)

Q1. クリニックで職員が10人未満ですが、就業規則作成義務はありますか?
A. 労働基準法第89条は、常時10人以上の労働者を使用する使用者に就業規則の作成・届出を義務付けています。10人未満のクリニックには法定作成義務はありませんが、育介法上の各制度は事業主規模を問わず適用されるため、運用ルール明確化の意味で就業規則類の作成が実務推奨されます。所轄労働局・社会保険労務士にご相談ください。
Q2. 有期雇用の非常勤看護師も育児休業の対象になりますか?
A. 2022年4月改正で有期雇用労働者の育休取得要件が緩和され、現在は「子が1歳6か月に達する日までに労働契約が満了することが明らかでないこと」が主要件です。「1年以上の継続雇用」要件は撤廃されており、非常勤看護師も原則として育休対象になり得ます。個別事案は所轄労働局の判断をご確認ください。
Q3. 短時間勤務者が夜勤を希望した場合、応じる必要がありますか?
A. 育介法上の短時間勤務は労働者が1日6時間の勤務を選択できる仕組みで、深夜業の制限(第19条)は労働者請求により免除される仕組みです。本人が夜勤を希望する場合、事業主が個別対応する義務は法令上明示されていません。夜勤希望への対応は、部署人員配置・労使協議・本人同意等を踏まえ、就業規則・個別労働契約で明確化します。
Q4. くるみん認定を取得するとどのようなメリットがありますか?
A. くるみん認定事業主は、認定マークを求人票・自社サイト・広告等に表示でき、採用ブランディングに活用できます。加えて、公共調達加点、両立支援等助成金の一部コースでの加算措置、日本政策金融公庫の低利融資等が整備されている場合があります。個別要件は年度ごとに改定されるため、最新公表資料をご確認ください。
Q5. 男性医師・男性看護師の育休取得を促進するにはどのような施策が有効ですか?
A. 一般的に有効とされる施策は、(1)産後パパ育休の個別周知・意向確認、(2)男性育休取得実績の見える化、(3)管理職研修、(4)育休取得者へのキャリア面談、(5)代替要員確保のルール整備、等です。厚生労働省「イクメンプロジェクト」の公開資料に事例が整理されており、両立支援等助成金「出生時両立支援コース」活用と組み合わせた設計が実務的です。

12. 関連内部リンク・次のステップ

子育て支援制度設計は、医師の働き方改革、女性医療従事者支援、労務管理、就業規則整備等の関連テーマと接続します。自院の状況に応じて以下の関連記事も参考にしながら、就業規則改定と助成金活用を並行して進めることが有用です。

13. 出典・参考資料

  • 厚生労働省「育児・介護休業法について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000130583.html (取得日:2026-08-01)
  • 厚生労働省「両立支援等助成金」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/josei-jitsugen/ryouritsu.html (取得日:2026-08-01)
  • 厚生労働省「くるみんマーク・プラチナくるみんマーク・トライくるみんマークについて」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kodomo/shokuba_kosodate/kurumin/index.html (取得日:2026-08-01)
  • 厚生労働省「両立支援のひろば」 https://ryouritsu.mhlw.go.jp/ (取得日:2026-08-01)
  • 厚生労働省「イクメンプロジェクト」 https://ikumen-project.mhlw.go.jp/ (取得日:2026-08-01)
  • 厚生労働省「医療従事者の勤務環境改善(病院内保育所運営事業含む)」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/kinmukankyou/index.html (取得日:2026-08-01)
  • 厚生労働省「医師の働き方改革」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/ishi-hatarakikata/index.html (取得日:2026-08-01)
  • こども家庭庁「病児保育事業」 https://www.cfa.go.jp/policies/kokoseido/hoiku/byouji-hoiku/ (取得日:2026-08-01)
  • こども家庭庁 公式サイト https://www.cfa.go.jp/ (取得日:2026-08-01)
  • e-Gov 法令検索「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=403AC0000000076 (取得日:2026-08-01)
  • e-Gov 法令検索「労働基準法」 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000049 (取得日:2026-08-01)
  • e-Gov 法令検索「次世代育成支援対策推進法」 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=415AC0000000120 (取得日:2026-08-01)

【免責事項】本記事は厚生労働省・こども家庭庁・e-Gov法令検索等の公開情報を整理することを目的としており、個別の就業規則改定・労使協定締結・助成金申請の妥当性・法令適合性を保証するものではありません。関係法令・告示・通知は改正・改訂により見直されるため、個別判断は所定の専門人材(所轄労働局・社会保険労務士・弁護士・産業医等)にご確認ください。本記事は医療行為・診断・治療に関する助言を目的とするものではありません。本記事の情報利用によって生じた損害について、mitoru編集部は責任を負いません。

最終更新日:2026年8月1日|編集方針

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