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編集部からのお知らせ:本記事は厚生労働省・地方厚生局・中央社会保険医療協議会(中医協)・日本薬剤師会など公的機関の公開情報を整理した内容です。診療報酬・調剤報酬の算定要件は告示・通知・疑義解釈で随時更新されます。実際の算定・届出にあたっては最新の厚生労働省告示および地方厚生(支)局の通知をご確認ください。本記事は2026年6月時点の公開情報に基づいています。
かかりつけ薬剤師・かかりつけ薬局制度は、2016年度調剤報酬改定で「かかりつけ薬剤師指導料」「かかりつけ薬剤師包括管理料」が新設されて以来、調剤報酬体系の中核を担う制度として位置づけられてきました。2024年度改定では地域支援体制加算の要件見直し、健康サポート薬局・専門医療機関連携薬局制度との連動強化、医療DXに伴う電子処方箋活用要件の加点など、再編が進んでいます。本ガイドでは、薬局経営者・薬剤師・調剤チェーン本部の視点から、制度の経緯・算定要件・認定要件・経営インパクトを公開情報ベースで整理します。
1. かかりつけ薬剤師制度の経緯(医療法・薬機法・調剤報酬)
かかりつけ薬剤師・かかりつけ薬局という考え方は、厚生労働省が2015年10月に公表した「患者のための薬局ビジョン」が出発点です。同ビジョンでは「門前から地域へ」「対物業務から対人業務へ」という方向性が示され、2025年までに全ての薬局がかかりつけ薬局機能を持つこと、2035年までに地域包括ケアの一翼を担うことが目標として掲げられました(出典:厚生労働省「患者のための薬局ビジョン」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000098459.html)。
制度面では、2019年12月公布の改正医薬品医療機器等法(薬機法)により、2020年9月から「地域連携薬局」「専門医療機関連携薬局」の認定制度が施行されました。これに先行して、2016年4月の調剤報酬改定で「かかりつけ薬剤師指導料」「かかりつけ薬剤師包括管理料」が新設され、対人業務評価が本格化しています(出典:厚生労働省「調剤報酬改定の概要」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411.html)。
その後の改定では、地域支援体制加算(2018年新設)の要件強化、調剤管理料・服薬管理指導料の再編(2022年改定)、医療DX推進体制整備加算の新設(2024年改定)など、対人業務・地域連携・DX対応を一体で評価する方向に進んでいます(出典:厚生労働省「令和6年度診療報酬改定について」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00043.html)。
2. かかりつけ薬剤師指導料・包括管理料の算定要件
2-1. 点数体系(2024年度改定後)
かかりつけ薬剤師指導料は、患者の同意を得た上で、指定したかかりつけ薬剤師が継続的に服薬指導・処方提案・残薬管理などを行った場合に算定する点数です。2024年度改定後の点数は、かかりつけ薬剤師指導料が76点、かかりつけ薬剤師包括管理料が291点となっています(出典:厚生労働省告示「診療報酬の算定方法の一部改正等」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00043.html)。
かかりつけ薬剤師指導料は調剤管理料・服薬管理指導料に代えて算定する点数であり、医療機関に「地域包括診療料」「認知症地域包括診療料」等の届出がある患者の場合は包括管理料を算定します。指導料と包括管理料は同一患者に併算定できません。
2-2. 算定に必要な業務要件
かかりつけ薬剤師指導料の算定にあたっては、以下の業務をすべて実施する必要があります。
- 患者が任意で選択した「かかりつけ薬剤師」が継続して服薬指導を行うこと
- すべての保険調剤について、調剤後の電話等による服薬状況確認(フォローアップ)と記録を行うこと
- 他医療機関を受診した場合の処方薬を含む一元的・継続的な薬学管理を行うこと
- 24時間相談に応じる体制を整備し、患者に連絡先を文書で交付すること
- 在宅患者訪問薬剤管理指導の届出を行っていること(薬局として)
- 残薬管理・重複投薬・相互作用の確認結果を処方医に情報提供すること
これらは「対人業務評価」の中心的要件であり、調剤管理料・服薬管理指導料に上乗せされる対価として位置づけられています。記録の不備や24時間体制の不備は個別指導・適時調査で指摘の対象になりやすい論点です。
3. かかりつけ薬剤師の認定要件(実務経験・研修・所属時間)
かかりつけ薬剤師指導料・包括管理料を算定できる薬剤師は、施設基準で定められた要件を満たす必要があります。主な要件は以下のとおりです。
- 薬剤師としての実務経験:3年以上
- 当該保険薬局における勤務期間:1年以上(同一の保険薬局に継続勤務)
- 当該保険薬局における週当たり勤務時間:32時間以上
- 研修認定:薬剤師認定制度認証機構が認証する研修認定制度等による認定を取得していること(公益財団法人日本薬剤師研修センター等が運営する認定研修)
- 医療に係る地域活動の取組への参画:市町村・医師会等が主催する研修会・健康相談会・学校薬剤師活動等への参加
勤務時間要件は「労働時間として32時間以上」であり、休憩時間や非常勤掛け持ち先の時間は含めません。所属薬局を移動した場合は新薬局で1年経過するまで算定できないため、ヘッドハント・店舗異動時の経営リスクとして留意が必要です(出典:厚生労働省「保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則・関連通知」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/iryouhoken01/index.html)。
研修認定制度については、薬剤師認定制度認証機構(CPC)が認証する第三者認証研修が対象となります。代表的なものに「研修認定薬剤師」(日本薬剤師研修センター)、「JPALS認定薬剤師」(日本薬剤師会)、「生涯研修認定」(日本病院薬剤師会)等があり、いずれも継続的な単位取得・更新が必要です(出典:公益財団法人日本薬剤師研修センターhttps://www.jpec.or.jp/)。
4. 患者同意書の取得・継続要件
かかりつけ薬剤師指導料は、患者の希望に基づき、患者が任意でかかりつけ薬剤師を選択する制度です。算定にあたっては、患者から書面による同意を取得し、薬剤師署名・患者署名のある同意書を薬局に保管する必要があります。
- 同意書記載項目:かかりつけ薬剤師の氏名、業務内容(24時間対応・一元管理・在宅対応等)、同意取得日、患者署名
- 同意の解除:患者が同意を撤回した場合は即時に算定停止
- 変更:同一薬局内で別薬剤師に変更する場合は新たな同意取得が必要
- 掲示義務:かかりつけ薬剤師の氏名・勤務状況を薬局内に掲示
- 勧誘の禁止:同意を強要してはならない・選択は患者の自由意思に基づく
厚生局の個別指導では、同意書の記載漏れ(業務内容の具体記載なし・署名日空欄)、同意取得タイミング(処方箋受付後の同日取得の妥当性)、勧誘行為の有無(マニュアル化された勧誘トーク)が指摘されやすい論点です。同意取得手順を院内マニュアル化し、新人薬剤師にも統一運用させる体制が重要です。
5. 地域支援体制加算との関係
地域支援体制加算は、地域医療への貢献度が高い薬局を評価する加算で、2018年度改定で新設されました。2024年度改定では加算1~4の4段階に再編され、点数は加算1が32点、加算2が40点、加算3が10点、加算4が32点となっています(出典:厚生労働省「令和6年度診療報酬改定の概要(調剤)」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00043.html)。
地域支援体制加算の届出要件には、「かかりつけ薬剤師指導料・包括管理料の算定回数」が組み込まれています。具体的には、所定の地域医療貢献実績(時間外対応、麻薬調剤、在宅薬剤管理、服薬情報提供、重複投薬・相互作用等防止加算、服用薬剤調整支援料等)の中から、薬局区分に応じた件数を満たす必要があります。
処方箋集中率が高い門前型薬局(集中率85%超)と、集中率が低い地域密着型薬局では届出区分が異なり、それぞれ求められる実績件数も異なります。地域支援体制加算1・2は集中率85%以下が原則であり、面分業を促進するインセンティブ設計となっています。
6. 健康サポート薬局・地域連携薬局・専門医療機関連携薬局制度
6-1. 健康サポート薬局(厚労省告示)
健康サポート薬局は、厚生労働大臣が定める基準を満たし、地方厚生局に届出を行った薬局です。要介護高齢者・健康相談者への対応、要指導医薬品の取扱い、健康サポート薬局研修修了薬剤師の常駐などが要件となります(出典:厚生労働省「健康サポート薬局のあり方について」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000133082.html)。
6-2. 地域連携薬局(薬機法認定)
地域連携薬局は、改正薬機法に基づく都道府県知事認定の薬局類型です。入退院時の医療機関との情報連携、在宅医療への対応、夜間休日対応、地域の他薬局への医薬品提供などが認定要件で、認定後は店頭・広告での「地域連携薬局」表示が可能になります(出典:厚生労働省「地域連携薬局・専門医療機関連携薬局について」https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_14001.html)。
6-3. 専門医療機関連携薬局(薬機法認定)
専門医療機関連携薬局は、がん等の専門的薬学管理が必要な患者に対し、専門医療機関と連携して継続的な薬学管理を行う薬局です。傷病領域別の認定(現時点では「がん」のみ)で、専門性の高い薬剤師(がん薬物療法認定薬剤師等)の常駐が要件となります。
これら3制度は、かかりつけ薬剤師制度・地域支援体制加算と重なり合いながら、薬局の機能分化・地域包括ケアへの参画を促進する制度群として整備されています。経営戦略上は、自局の機能・立地・人材から、どの認定・加算を取得すべきかを優先順位づけして取り組むことが重要です。
7. 経営インパクト(患者単価・処方箋集中率・LTV)
かかりつけ薬剤師指導料を1処方箋あたり76点算定できれば、調剤管理料・服薬管理指導料に代えて算定する形となり、対象患者については1回あたり数十点~100点超の上乗せ効果が生まれます。さらに地域支援体制加算と組み合わせることで、加算1取得時で32点/枚、加算2取得時で40点/枚が処方箋ごとに上乗せされます。
処方箋集中率の観点では、地域支援体制加算1・2は集中率85%以下が原則であり、門前型薬局では「面分業転換」が課題になります。一方で、かかりつけ薬剤師指導料自体は集中率制限がなく、門前型でも要件を満たせば算定可能です。
LTV(顧客生涯価値)の観点では、かかりつけ薬剤師制度は患者の継続来局を促し、24時間対応や在宅対応を通じて他薬局への流出を抑制する効果が見込めます。継続率・リピート率の改善は、慢性疾患患者の構成比が高い薬局ほど効果が大きくなります。一方で、24時間電話対応・在宅訪問・研修受講などの業務負荷増加に対する人件費・労務管理コストとのバランスをどう取るかは、各薬局の経営判断に委ねられます。
8. 2024年改定の影響と2026年改定の論点
8-1. 2024年改定の主要ポイント
- 地域支援体制加算が4段階(加算1~4)に再編
- 医療DX推進体制整備加算の新設(電子処方箋管理サービス活用が要件)
- 調剤後薬剤管理指導料の対象拡大(糖尿病患者等)
- 在宅薬学総合体制加算の新設
- 連携強化加算の見直し
これらは中医協(中央社会保険医療協議会)における議論を経て、診療報酬改定の答申として取りまとめられました。中医協の議事録・資料は厚生労働省のサイトで公開されており、改定背景・狙いを把握する一次資料となります(出典:厚生労働省「中央社会保険医療協議会」https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-chuo_128154.html)。
8-2. 2026年改定に向けた論点
2026年度は次回改定の谷間の年であり、改定の方向性は中医協の議論を通じて段階的に明らかになっていく見込みです。論点として注目されるのは、(1) 電子処方箋の普及進捗を踏まえた医療DX関連評価の拡充、(2) 在宅医療における薬局の役割強化、(3) ポリファーマシー対策・処方提案の評価、(4) かかりつけ薬剤師制度の要件見直し(特に勤務時間要件の柔軟化と質の担保のバランス)などが、過去の中医協資料・骨太方針・改定議論で繰り返し取り上げられているテーマです。
本記事は2026年6月時点の公開情報をもとに整理した内容であり、改定内容の予測・断定はしていません。実際の改定内容は中医協答申・厚生労働省告示・関係通知が確定した時点で各保険薬局にて改めてご確認ください。
9. よくある質問(FAQ)
- Q1. かかりつけ薬剤師指導料は、処方箋を受け付けるたびに算定するのですか?
- 同意取得済みの患者がかかりつけ薬剤師の在局時に来局した場合に算定します。指定された薬剤師が不在の場合は、調剤管理料・服薬管理指導料を通常どおり算定します。指定薬剤師の在局シフトを患者に伝える運用が重要です。
- Q2. 一人の患者が複数のかかりつけ薬剤師を持つことは可能ですか?
- かかりつけ薬剤師は患者1人につき1名のみです。複数の薬局・薬剤師を指定することはできません。これは「一元的・継続的な薬学管理」という制度趣旨に基づいています。
- Q3. かかりつけ薬剤師の異動・退職時はどうなりますか?
- かかりつけ薬剤師が当該薬局を退職・異動した場合、その時点で算定不可となります。患者が同一薬局内の別薬剤師を新たに選択する場合は、新たな同意取得が必要です。新薬剤師は同薬局1年以上・週32時間以上等の認定要件を満たす必要があります。
- Q4. かかりつけ薬剤師指導料とお薬手帳の関係は?
- かかりつけ薬剤師指導料の算定要件として、お薬手帳の活用や一元管理は前提となります。電子お薬手帳・電子処方箋管理サービスとの連携も2024年改定以降、医療DX推進体制整備加算等で評価されつつあります。
- Q5. かかりつけ薬剤師指導料の届出はどこで行うのですか?
- 所在地を管轄する地方厚生(支)局へ届出を行います。届出様式・受付要領は各地方厚生局のサイトで公開されています。施設基準の届出と個別薬剤師の認定要件確認書類が必要で、変更時は届出更新が必要です(出典:厚生労働省 地方厚生局一覧https://www.mhlw.go.jp/kouseikyoku/)。
10. 関連内部リンク・次のステップ
かかりつけ薬剤師制度は、調剤報酬・地域連携・人材育成・労務管理の各領域に横断的に関わる制度です。薬局経営の全体最適を考える上では、以下の関連テーマも併せてご確認ください。
- 地域支援体制加算の届出要件詳細
- 調剤薬局向け電子薬歴・レセコンの比較
- 在宅薬剤管理指導の立ち上げ手順
- 薬剤師の研修認定取得ルート
- 調剤チェーン本部のM&A動向と中小薬局の経営選択肢
主な出典・参考資料
- 厚生労働省「患者のための薬局ビジョン」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000098459.html
- 厚生労働省「調剤報酬改定について」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411.html
- 厚生労働省「令和6年度診療報酬改定について」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00043.html
- 厚生労働省「健康サポート薬局のあり方について」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000133082.html
- 厚生労働省「地域連携薬局・専門医療機関連携薬局について」https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_14001.html
- 厚生労働省「中央社会保険医療協議会」https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-chuo_128154.html
- 厚生労働省 地方厚生局一覧https://www.mhlw.go.jp/kouseikyoku/
- 公益財団法人日本薬剤師研修センターhttps://www.jpec.or.jp/
- 公益社団法人日本薬剤師会https://www.nichiyaku.or.jp/
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mitoru編集部の見解
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