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訪問看護ステーションの経営において、居宅介護支援事業所のケアマネジャー(介護支援専門員)との連携は、利用者紹介の主要な導線として位置づけられます。営業活動には「パンフレット配布」「訪問挨拶」「サービス担当者会議への参加」「地域ケア会議への参加」等の複数の手段がありますが、正当な情報提供と金銭・便宜供与による誘引の境界が実務上の論点となります。介護保険法および関係省令・厚生労働省通知には、居宅介護支援事業者の中立性・独立性を担保する規定が置かれており、抵触行為は運営基準減算・指定取消等の処分対象となり得ます。本記事は公開情報を整理した内容であり、特定の営業手法・特定の事業者を推奨するものではありません。
本記事は訪問看護ステーションの管理者・営業担当・経営者を主な読者と想定し、ケアマネ営業の位置づけ、パンフレット・紹介ツールの整備、紹介依頼の実務手順、違反行為(金銭・便宜供与)の類型、介護保険法の禁止規定、特定事業所集中減算(独立係数)による独立性の担保、地域ケア会議・地域連携イベントへの参加、2024年度介護報酬改定の関連論点を、厚生労働省・介護保険法の公開情報をもとに整理します。個別判断は所管の行政機関および顧問の専門家にご確認ください。
この記事で分かること
- 訪問看護におけるケアマネジャー営業の位置づけと目的
- パンフレット・紹介ツールの構成要素と作成上の留意点
- 居宅介護支援事業所への紹介依頼の実務フロー
- 違反行為の類型(金銭供与・便宜供与・過剰接待)
- 介護保険法・運営基準における中立性・独立性の禁止規定
- 特定事業所集中減算(独立係数)と居宅事業所の独立性担保
- 地域包括ケア会議・サービス担当者会議への参加の意義
- 地域連携イベント・研修会の運営と正当な情報提供の範囲
- 2024年度介護報酬改定における訪問看護の関連論点
- 訪問看護管理者・営業担当が実務で確認すべき10項目
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1. 訪問看護におけるケアマネジャー営業の位置づけ
訪問看護ステーションの利用者は、居宅介護支援事業所のケアマネジャーがケアプランに位置づけることで介護保険による訪問看護サービスの給付対象となります(介護保険法第46条・第81条ほか)。医療保険による訪問看護も主治医の指示のもとで実施されますが、介護保険優先の原則により多くの利用者は居宅サービス計画の枠組みで訪問看護を利用します。この構造上、訪問看護ステーションが利用者を安定的に確保するためには、地域の居宅介護支援事業所およびケアマネジャーとの継続的な連携が事業運営の基盤となります(厚生労働省「訪問看護」関連資料)。
ここでいう「営業」は、一般小売業の販促活動とは性格が異なります。訪問看護の営業は、自ステーションの提供体制(対応可能な医療処置・24時制対応・小児対応・精神科訪問看護・看取り対応等)を地域のケアマネジャーに正確に情報提供し、利用者にとって適切なサービス選択を支援する側面が中心です。ケアマネ側から見れば、利用者の医療ニーズに合致する訪問看護ステーションを選定するための判断材料が不足していることが実務上の課題であり、この情報格差を埋める活動が営業の主目的となります。
一方で、営業活動が「紹介の見返りとしての金銭・物品・便宜の供与」に及んだ場合、居宅介護支援事業所の中立性を損なうことになり、介護保険法の運営基準および厚生労働省通知に抵触するおそれがあります。営業設計は、この中立性・独立性の担保を前提条件として組み立てる必要があり、単に「訪問回数を増やす」「販促物を多く配る」といった量的アプローチではなく、法令遵守を前提とした情報提供の質と、地域連携の実質を高める設計が求められます。
2. パンフレット・紹介ツールの整備
訪問看護ステーションのパンフレット・紹介ツールは、ケアマネジャーが利用者・家族に訪問看護サービスの候補を提示する際の判断材料として機能します。掲載情報は利用者向けの説明資料としても活用されるため、事実に基づく正確な記載と誤認を招かない表現が前提となります。景品表示法の観点からも、根拠のない最上級表現・比較優位を示唆する表現の使用は避ける必要があります。
2-1. 標準的な記載項目
ステーションの基本情報(名称・所在地・電話・FAX・営業日・営業時間・24時間対応の可否)、指定番号、開設主体、管理者氏名、看護職員数(常勤・非常勤・保健師・看護師・准看護師の区分)、リハビリ職の配置、対応可能な医療処置(在宅酸素・人工呼吸器・気管カニューレ管理・中心静脈栄養・褥瘡ケア等)、対応可能な疾患・状態(がん末期・神経難病・小児・精神科訪問看護・認知症等)、対応エリア、緊急時訪問看護加算・特別管理加算等の届出状況、料金の目安、契約から初回訪問までの標準的な流れなどを整理して掲載することが実務上一般的です。
2-2. 表現上の留意点
「地域で最も選ばれている」「最高水準の看護」「他事業所を圧倒する対応力」といった、客観的根拠を示せない最上級表現・優位性強調表現は使用しないことが基本です。介護報酬上の加算(機能強化型訪問看護管理療養費・専門管理加算・特別管理加算等)の届出状況は、事実として届出済であることを記載する範囲にとどめ、加算取得によるサービス品質の優位性を過度に強調する表現は避けます。また、他事業所との比較表・優劣を示唆する記述は、根拠と出典が明示できない限り掲載しないことが望まれます。
3. 居宅介護支援事業所への紹介依頼の実務
ケアマネジャーへの営業活動は、地域内の居宅介護支援事業所リストの整備から始めるのが実務上の基本です。市区町村の介護保険担当課、地域包括支援センター、都道府県が運用する「介護サービス情報公表制度」で公開されている事業所情報を活用し、営業対象エリアの居宅介護支援事業所を把握します(厚生労働省「介護サービス情報公表制度」)。事業所ごとの担当ケアマネ数・主な対応地域・母体法人の属性(医療法人・社会福祉法人・株式会社等)を整理し、訪問頻度の計画に反映します。
3-1. 初回訪問の基本手順
初回訪問は事前アポイントを取ることが望まれます。ケアマネジャーは訪問調査・モニタリング・給付管理業務等で外出していることが多く、アポなし訪問は業務の妨げになる可能性があります。訪問時にはパンフレット、対応可能な医療処置の一覧、担当エリアマップ、緊急時対応の体制図、指定通知の写し等を用意し、管理者または営業担当が自ステーションの体制を口頭で説明します。所要時間は10〜15分程度を目安に、簡潔な情報提供にとどめる運用が実務上一般的です。
3-2. 継続的な情報提供
初回訪問以降は、体制変更(看護師増員・新規サービス開始・対応エリア拡大・加算取得等)のタイミングで最新情報を届ける運用が中心となります。訪問看護提供中の利用者について、サービス提供状況の報告(訪問看護計画書・訪問看護報告書)を定められた様式・頻度で提出することは介護保険法上の義務であり、営業活動とは区別されます。ケアマネジャーからの照会への迅速な応答、サービス担当者会議への出席、地域ケア会議への参加といった実務対応の積み重ねが、結果として信頼関係の構築につながります。
4. 違反行為の類型(金銭・便宜供与)
訪問看護ステーションから居宅介護支援事業所またはケアマネジャー個人に対して、利用者紹介の対価として金銭・物品・便宜を供与する行為は、居宅介護支援事業所の中立性を損なう行為として問題視されます。具体的な類型としては、紹介1件あたりの金銭支払い(紹介料・キックバック)、商品券・ギフト券の贈答、高額な飲食接待、事業所備品・消耗品の無償提供、旅行・宿泊費の負担、ケアマネ個人への謝礼等が挙げられます。これらは営業慣行として黙認されるものではなく、居宅介護支援事業所の運営基準および関連通知に抵触する可能性のある行為として位置づけられます。
また、金銭以外の便宜供与として、居宅介護支援事業所の業務に必要な事務用品・IT機器の提供、事業所内での看護職員の無償労働、ケアマネジャーが本来行うべき記録業務の代行、営業車両の貸与、事業所賃料の一部負担などが問題となった事例が過去に指摘されています。営業活動と称して行われる便宜供与は、直接的な金銭のやりとりがなくとも「経済的利益の供与」として整理される可能性があり、線引きの判断は慎重に行う必要があります。個別事例の適否は指定権者である都道府県・政令指定都市・中核市の介護保険担当課および顧問の専門家にご確認ください。
5. 介護保険法の禁止規定
居宅介護支援事業所およびケアマネジャーの中立性・公正性は、介護保険法および「指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準」(平成11年厚生省令第38号)で明確に位置づけられています。同基準第1条の2(基本方針)は、指定居宅介護支援の提供にあたって「利用者の意思及び人格を尊重し、常に利用者の立場に立って提供されるよう配慮しなければならない」と定めています。また、同基準第13条(指定居宅介護支援の具体的取扱方針)は、公正・中立な立場で居宅サービス計画を作成することを求めています(厚生労働省「介護保険法及び関係法令」)。
加えて、居宅介護支援事業者は利用申込者に対して「複数の指定居宅サービス事業者等の紹介を求めることができる」旨等を説明し、利用者の選択機会を保障する義務があります。特定事業者への集中誘導や、経済的利益供与によって特定事業者を優先的に位置づける運用は、この基本方針に反することとなります。運営基準違反が認められた場合、都道府県知事・市町村長は勧告・命令・指定取消等の行政処分を行うことができます(介護保険法第84条ほか)。
6. 特定事業所集中減算(独立係数)と独立性の担保
居宅介護支援事業所が特定の事業者に利用者を集中させることを抑止する仕組みとして、「特定事業所集中減算」が介護報酬上に設けられています。同減算は、居宅介護支援事業所が作成した居宅サービス計画において、訪問介護・通所介護・福祉用具貸与のいずれかについて、同一事業者が提供するサービスの位置づけ割合が80%を超える場合、当該居宅介護支援事業所の基本報酬から一定額を減算する仕組みです(厚生労働省「指定居宅介護支援に係る介護給付費単位数サービスコード」関連通知)。減算の判定は判定期間ごとに実施され、正当な理由が認められる場合を除いて減算対象となります。
訪問看護は現行の特定事業所集中減算の直接的な対象サービスには含まれませんが、居宅介護支援事業所の独立性・中立性を担保する制度趣旨は同様に及びます。特定の訪問看護ステーションへの過度な紹介集中は居宅事業所の公正性への疑念を招くおそれがあり、訪問看護ステーション側としても、地域内の複数事業所への情報提供を丁寧に行い、利用者の医療ニーズに合致した適切な選定が行われる環境を尊重する姿勢が求められます。母体法人が共通する居宅介護支援事業所(いわゆる「囲い込み」の指摘対象となる関係性)については、より慎重な運用が望まれます。
7. 地域包括ケア会議・サービス担当者会議への参加
地域包括ケアシステムの推進に伴い、市町村・地域包括支援センターが主催する「地域ケア会議」への参加機会が拡大しています。地域ケア会議は、個別ケースの多職種検討を通じて地域課題を抽出し、地域資源の開発・政策形成につなげる場として位置づけられ、訪問看護ステーションも構成メンバーとして参加が期待されています(厚生労働省「地域包括ケアシステム」関連資料)。この場への参加は営業活動ではなく地域の社会資源としての貢献であり、結果として地域の多職種からの認知と信頼につながる側面があります。
また、利用者ごとに開催される「サービス担当者会議」は、居宅サービス計画の作成・変更にあたってケアマネジャーが招集し、担当する各サービス事業所の担当者が参加して支援方針を協議する場です。訪問看護ステーションからは担当看護師または管理者が出席し、医療的観点からの意見提示・情報共有を行います。会議への欠席や意見提示の質は、ケアマネジャーからの評価に直結する実務上の重要ポイントであり、営業訪問の頻度以上に、これら公式な連携の場での実務対応が事業所の信頼形成に寄与します。
8. 地域連携イベント・研修会の運営
訪問看護ステーションが主催または共催する形で、地域のケアマネジャー・介護職員向けの研修会・症例検討会を開催する運営は、正当な情報提供の一形態として実施されています。テーマとしては、在宅における医療的ケアの実際(吸引・経管栄養・褥瘡ケア・在宅酸素等)、看取り期の支援、認知症のBPSD対応、感染対策、介護報酬改定の解説などが挙げられます。研修会は、参加者に対する情報提供と地域全体のケアの質向上を目的とするものであり、特定事業所への紹介誘導を目的とした運用は避ける必要があります。
研修会に付随する茶菓・軽食の提供は、社会通念上相当な範囲であれば実務上許容されると解される場合が多いものの、参加者への金品・商品券配布、高額な記念品の配布、宿泊を伴う懇親会の招待などは、便宜供与と評価されるおそれがあります。共催団体(地域の職能団体・地域包括支援センター・市町村介護保険課等)と連携して運営することで、公益性が担保されやすくなります。
9. 2024年度介護報酬改定における関連論点
2024年度介護報酬改定(令和6年度改定)では、訪問看護に関して複数の見直しが行われました。厚生労働省「令和6年度介護報酬改定について」に基づく主な事項として、理学療法士等による訪問の評価見直し、専門管理加算の新設(緩和ケア・褥瘡ケア・人工肛門ケア・特定行為研修修了者の配置等の要件)、遠隔死亡診断補助加算の新設、退院時共同指導加算・緊急時訪問看護加算の見直しなどが実施されました。これらの改定内容は、ケアマネジャーへの情報提供資料においても、届出状況と実際の提供体制を正確に反映することが求められます。
居宅介護支援側でも、2024年度改定において特定事業所加算の見直し、ICT活用による事務負担軽減、逓減制の適用件数の見直し等が行われています。ケアマネの担当件数・業務負担は営業活動の受け入れ余力に影響するため、地域の居宅介護支援事業所の運営状況の理解も実務上の営業設計に反映される要素です。制度は改定・通知の発出により随時見直されるため、最新情報は厚生労働省および所管の都道府県・市町村介護保険担当課の公表情報で確認することが望まれます。
10. よくある質問(FAQ)
- Q1. パンフレット配布のタイミングはどう設計すべきか
- A. 初回訪問時、体制変更時(看護師増員・新規サービス開始・加算取得等)、地域研修会等の告知時が主なタイミングとして実務上想定されます。同一事業所への短期間の反復訪問は業務の妨げとなる可能性があるため、目的を明確にしたうえで頻度を設計することが望まれます。
- Q2. ケアマネへの手土産(菓子折り等)は許容されるか
- A. 社会通念上の範囲を超える贈答は便宜供与に該当するおそれがあります。金額・頻度・目的により評価が分かれるため、居宅介護支援事業所の受け取り方針(受領を辞退している事業所も存在)を確認したうえで、慎重な判断が求められます。個別事例の適否は所管の指定権者および顧問の専門家にご確認ください。
- Q3. 特定事業所集中減算は訪問看護にも適用されるか
- A. 現行の特定事業所集中減算の直接的な対象サービスは、訪問介護・通所介護・福祉用具貸与とされています。訪問看護は直接の対象ではありませんが、居宅介護支援事業所の中立性・公正性の趣旨は訪問看護の紹介にも及ぶため、過度な紹介集中は避けることが望まれます(厚生労働省「指定居宅介護支援に係る介護給付費単位数」関連通知)。
- Q4. サービス担当者会議への出席が困難な場合の対応は
- A. やむを得ない事情で出席が困難な場合は、事前にケアマネジャーへ連絡のうえ、書面(照会文書等)による意見提示で代替する運用が制度上想定されています。ただし出席は原則であり、勤務体制の調整で出席可能な体制を整えることが望まれます。
- Q5. 地域包括支援センターとの連携はどう始めるか
- A. 地域包括支援センターは市町村が設置主体となる公的機関で、地域ケア会議の主催、要支援者のケアマネジメント、総合相談支援等を担っています。所管の市町村介護保険担当課を通じてセンター一覧を確認し、担当者へアポイントを取ったうえで自ステーションの体制説明・地域資源としての情報提供を行う運用が基本です(厚生労働省「地域包括ケアシステム」関連資料)。
11. 出典・参考資料
- 厚生労働省「訪問看護」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/houmonkango/index.html (取得日:2026-08-09)
- 厚生労働省「介護保険制度について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/gaiyo/index.html (取得日:2026-08-09)
- 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_36697.html (取得日:2026-08-09)
- 厚生労働省「地域包括ケアシステム」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/chiiki-houkatsu/index.html (取得日:2026-08-09)
- 厚生労働省「介護サービス情報公表制度」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000069443.html (取得日:2026-08-09)
- 厚生労働省「指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第38号)関連資料」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/kyotaku/index.html (取得日:2026-08-09)
- e-Gov法令検索「介護保険法(平成9年法律第123号)」 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=409AC0000000123 (取得日:2026-08-09)
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最終更新日:2026年8月9日|編集方針
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mitoru編集部の見解
訪問看護ステーションの開業・運営は、看護師人員確保と地域医療機関との連携体制が成功要因です。mitoru編集部は、開業前の事業計画段階で、地域包括ケアシステムにおける位置づけを保健所・地域包括支援センターへヒアリングすることを推奨します。