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病院の手術室(OR:Operating Room、手術部)は、外科系診療科の中核的な診療機能を担う部門であり、術者・麻酔科医・手術看護師・臨床工学技士・診療放射線技師・薬剤師・病理検査技師など、多職種が集約して稼働する高度専門部門です。手術件数・症例構成・稼働率は病院経営の主要指標に直結し、清潔区域の維持・感染対策・機器管理・多職種連携の設計は、医療安全と患者アウトカムの根幹をなします。
本記事は病院の手術部長・手術室師長・臨床工学技士・事務長を主な読者と想定し、手術室の位置づけ、手術室稼働率の設計、手術看護(器械出し看護師・外回り看護師)の役割、手術支援ロボット・手術機器の管理、清潔区域と感染対策、麻酔科医との連携、多職種チーム運営、2024年度診療報酬改定における手術関連項目について、厚生労働省・日本手術医学会・日本手術看護学会などの公開情報を整理した内容としてまとめています。個別の手術手技・機器仕様・施設基準の該当性判断は、所定の専門人材(外科医・麻酔科医・医療機器メーカー・感染管理認定看護師等)と各所管官庁にご確認ください。
この記事で分かること
- 病院における手術室(OR)の位置づけと部門構成
- 手術室稼働率の考え方(定時枠・延長・緊急枠の設計)
- 手術看護における器械出し看護師と外回り看護師の役割分担
- 手術支援ロボット・エネルギーデバイス・内視鏡外科機器の管理体制
- 清潔区域のゾーニング・空調・粒子管理と手術部位感染(SSI)対策
- 麻酔科医との連携(術前評価・術中管理・術後回復)
- 多職種チーム(外科・麻酔・看護・臨工・薬剤・病理・放射線)の連携設計
- 2024年度診療報酬改定における手術関連加算・施設基準の要点
1. 手術室(OR)の位置づけと部門構成
手術室は、医療法および医療法施行規則で定められた病院の主要診療機能の一つであり、外科・整形外科・脳神経外科・産婦人科・泌尿器科・眼科・耳鼻咽喉科・心臓血管外科など、複数の外科系診療科が共用する集約型の高度診療部門です。厚生労働省の医療施設調査等の公開資料でも、手術室数・手術実施件数は病院機能を示す基本指標として毎年公表されており、地域医療計画・病床機能報告における病院の役割設定にも用いられます(厚生労働省「医療施設調査」)。
手術部の運営は、手術部長(医師)・手術室師長(看護師)・臨床工学技士部門・麻酔科の管理者が中心となり、手術予定調整会議・手術部運営会議・手術安全チェックリスト運用等を通じて多職種横断のガバナンス体制を構築します。手術件数の増減、緊急手術・時間外手術の発生頻度、症例構成(低侵襲手術・ロボット手術の比率)は、人員配置・機器投資・施設整備計画の主要な意思決定材料となります。
2. 手術室稼働率の設計
手術室の稼働率は、定時枠(平日日勤帯の予定手術)・延長枠(定時終了後の予定手術延長)・緊急枠(時間外・休日の予定外手術)の3構造で設計されるのが一般的です。稼働率の定義は施設ごとに異なりますが、「定時枠内における実際の手術実施時間 ÷ 定時枠時間」として算出される稼働率(Case-Time Utilization)と、「手術予定件数 ÷ 稼働可能枠数」で算出される枠稼働率(Block Utilization)が併用されます。過度な高稼働は緊急対応枠を圧迫し、低稼働は固定費(人件費・機器減価償却費)の回収を難しくするため、稼働率の適正水準は施設の症例構成・診療科ポートフォリオに応じて設定します。
| 枠区分 | 主な用途 | 設計上の論点 |
|---|---|---|
| 定時枠(Prime Time) | 平日日勤帯の予定手術 | 診療科別のブロック割当・週間手術予定調整 |
| 延長枠(After Prime) | 定時終了後の予定手術延長 | 時間外人員配置・時間外手当・翌日枠への影響 |
| 緊急枠(Emergency) | 時間外・休日の予定外手術 | オンコール体制・救急外科・産科帝王切開等の受入 |
診療科別のブロック割当(Block Scheduling)は、各診療科の年間手術件数・平均手術時間・緊急発生率をもとに定期見直しを行います。稼働実績と予定件数の乖離が大きい枠は、他診療科への転用(Release)や共用化(Open Block)を柔軟に運用することで、全体稼働率の底上げを図ります。手術予定調整の透明性確保のため、電子カルテ連携の手術予約システム(Surgery Scheduling System)を導入する施設も増えています。
3. 手術看護(器械出し看護師・外回り看護師)
手術看護は、清潔区域内で術者に器械を提供する器械出し看護師(Scrub Nurse)と、清潔区域外から手術全体を管理する外回り看護師(Circulating Nurse)の2職務を基本とし、日本手術看護学会が公表する関連資料でもこの役割分担が示されています(日本手術看護学会 公表資料)。器械出し看護師は術野に近接して器械・ガーゼ・縫合材料を管理し、術者の手技進行に合わせて必要な器械を過不足なく供給する役割を担います。外回り看護師は清潔区域外から、患者受入・体位固定・薬剤準備・記録・機器接続・カウント管理・術中家族対応など、手術全体の進行を統括します。
手術看護の教育制度としては、日本看護協会の認定看護師制度における「手術看護認定看護師」や、日本手術看護学会の「手術看護実践指導看護師」など、複数の認定資格が運用されています。認定看護師の配置は、手術部の教育体制・安全管理体制の質を示す指標として、病院機能評価(JCQHC)等の第三者評価においても評価対象となります。
3-1. 手術安全チェックリスト
WHOが提唱する手術安全チェックリスト(Surgical Safety Checklist)は、手術前(Sign In)・執刀前(Time Out)・退室前(Sign Out)の3ポイントで、多職種が声出し確認を行う運用が広く採用されています。患者確認・部位確認・アレルギー確認・使用予定機器の可用性確認・カウント確認などの項目を、手術のたびに定型的に実施することで、部位間違い・患者間違い・器械遺残の防止に寄与します。
4. 手術支援ロボット・手術機器の管理
近年の手術室は、内視鏡外科手術(腹腔鏡・胸腔鏡・関節鏡)・手術支援ロボット(da Vinci、hinotori等)・エネルギーデバイス(電気メス・超音波凝固切開装置)・術中画像装置(術中CT・術中MRI・ハイブリッド手術室のC-arm)など、高度な医療機器が集約されています。これらの機器管理は臨床工学技士(CE)が中心となり、始業前点検・術中トラブル対応・使用後点検・定期保守・故障記録・薬機法に基づく添付文書管理を担います。医療機器の承認情報は、医薬品医療機器総合機構(PMDA)の医療機器情報ページで確認できます(PMDA「医療機器」関連情報)。
手術支援ロボットの導入は、対応可能な術式・術者資格・院内認定制度の整備・保守契約・トレーニング環境の確保など、多面的な検討が必要です。診療報酬上、ロボット支援下手術は特定の術式に対して算定要件が定められており、術式追加・点数改定は診療報酬改定のたびに見直しが行われます(厚生労働省 令和6年度診療報酬改定関連資料)。ハイブリッド手術室(Hybrid OR)は、心臓血管外科・脳血管外科等でカテーテル治療と外科手術を同一室で連続実施できる設備で、初期投資・空間設計・多職種運用体制の設計が導入時の主要な論点となります。
5. 清潔区域と感染対策
手術室は清潔度クラス分類に基づくゾーニングが求められ、日本手術医学会が公表する「手術医療の実践ガイドライン」等の関連資料でも、清潔区域(術野周辺)・準清潔区域(麻酔導入・器械準備)・清潔区域外(前室・廊下)の区分と空調設計・室圧管理・粒子管理の考え方が整理されています。手術室内の空調は、HEPAフィルタを用いた高清浄空調(層流方式または乱流方式)で管理し、隣接区域との室圧差により清潔区域への微粒子・微生物の流入を抑制します。整形外科の人工関節手術等では、より高い清浄度クラスが求められる場合があります。
手術部位感染(SSI:Surgical Site Infection)対策は、術前抗菌薬投与のタイミング・除毛方法・手術野消毒・保温管理・血糖管理・術中低体温防止など、複数の要素を組み合わせた統合的な取り組みが求められます。厚生労働省の院内感染対策関連通知でも、SSIサーベイランスの実施と感染対策委員会(ICC)・感染制御チーム(ICT)による部門横断的な対応が示されています(厚生労働省「医療機関における院内感染対策について」関連通知)。SSIサーベイランスへの参加は、感染対策向上加算の施設基準における体制整備の位置づけにも関連します。
6. 麻酔科医との連携
麻酔科医は、術前評価(Pre-Anesthetic Evaluation)・術中麻酔管理(Intraoperative Management)・術後回復管理(Post-Anesthesia Care Unit:PACU)の3フェーズで手術室運営に関わります。術前評価では、患者の併存疾患・服薬状況・アレルギー歴・気道評価をもとに、麻酔法(全身麻酔・脊椎麻酔・硬膜外麻酔・区域麻酔)を選択し、周術期リスクを評価します。近年は術前外来(Pre-Anesthesia Clinic)を設置し、麻酔科医が入院前に評価を完結させる運用が増えており、当日手術中止リスクの低減・手術予定調整の効率化に寄与します。
術中管理では、麻酔器・生体情報モニタ・輸液ポンプ・体温管理装置・自己血回収装置等の機器を用い、循環動態・呼吸・体温・血糖・鎮痛レベルを継続的に管理します。多くの施設では、麻酔科医と手術看護師・臨床工学技士が同じ手術チームとして常時コミュニケーションを取り、術中の予定変更や急変対応にリアルタイムで対応します。麻酔科医の人員配置は手術可能枠数を直接規定する要素であり、麻酔科医不足は手術枠削減や緊急手術受入制限の原因になり得るため、地域医療計画上の重要な論点として厚生労働省の医師確保計画関連資料でも取り上げられています(厚生労働省「医師確保計画」関連資料)。
7. 多職種チーム運営
手術室は、外科医(術者・助手)・麻酔科医・手術看護師・臨床工学技士・診療放射線技師・薬剤師・病理検査技師・輸血技師など、8〜10職種が集約する多職種チームで運営されます。各職種の役割分担は、日本手術医学会・日本手術看護学会・日本臨床工学技士会等の関連団体が公表する資料でも整理されており、職種横断の役割一覧・術式別チーム構成・術中連携プロトコルの整備が推奨されています。
| 職種 | 主な役割 |
|---|---|
| 外科医(術者・助手) | 手術手技の実施・術式判断・術中意思決定 |
| 麻酔科医 | 術前評価・術中麻酔管理・術後回復管理 |
| 手術看護師 | 器械出し・外回り・体位固定・カウント管理 |
| 臨床工学技士 | 手術機器点検・術中対応・人工心肺・自己血回収 |
| 診療放射線技師 | 術中X線透視・術中CT・術中MRI |
| 薬剤師 | 麻酔薬・術中薬剤の払出・調製・管理 |
| 病理検査技師 | 術中迅速病理診断のための検体処理 |
多職種連携の実効性を担保する仕組みとして、術前ブリーフィング(Preoperative Briefing)・術後デブリーフィング(Postoperative Debriefing)を定期実施する運用が広く採用されています。術前ブリーフィングでは、術式・想定所要時間・使用機器・予備血・想定合併症を全員で共有し、術後デブリーフィングでは、想定と実績の差異・機器トラブル・改善提案を記録します。これらの記録は手術部運営会議で集約され、翌月以降の運用改善につなげます。
8. 2024年度診療報酬改定における手術関連項目
2024年度診療報酬改定では、手術関連の複数項目で見直しが行われました。手術通則における施設基準(麻酔管理料の施設基準、周術期管理体制、手術・処置の休日・時間外・深夜加算等)の整理、ロボット支援下手術の対象術式追加、内視鏡外科手術の点数見直し、周術期口腔機能管理の連携加算の運用整理などが含まれます。詳細は厚生労働省の公表資料および地方厚生局の通知を確認する必要があります(厚生労働省 令和6年度診療報酬改定関連資料)。
手術・処置の休日・時間外・深夜加算については、緊急手術体制の維持・時間外人員配置の適正化に関わる重要な収益源であり、算定要件と実績記録の整合性確保が求められます。周術期管理体制加算・麻酔管理料の施設基準は、麻酔科医の常勤配置要件・時間外対応要件が定められており、麻酔科医の勤務環境整備(働き方改革関連)と両立させる運用設計が論点となります。加算算定要件の年度改定は厚生労働省の公表資料の最新版を継続的に確認してください。
9. よくある質問(FAQ)
- Q1. 手術室稼働率はどの水準を目標に設計すべきですか?
- A. 稼働率の目標水準は施設の症例構成・診療科ポートフォリオ・緊急手術受入方針により異なります。定時枠内での実施時間ベースの稼働率が高すぎると緊急対応枠が圧迫され、低すぎると固定費回収が課題となります。多くの解説資料では中程度〜やや高めの稼働水準が目安として示されますが、自院の実績データと診療科ヒアリングをもとに、枠再配分・共用化ルールを定期見直しする運用が推奨されます。
- Q2. 器械出し看護師と外回り看護師はどのように配置しますか?
- A. 標準的な配置は、1手術あたり器械出し看護師1名・外回り看護師1名の2名体制が基本で、術式の複雑度・所要時間・術中体位変換の頻度に応じて追加配置を行います。長時間手術・高難度手術では、器械出し看護師の交代要員を確保する運用も広く行われています。認定看護師・実践指導看護師の配置は、教育体制と安全管理体制の質を示す指標として位置づけられます。
- Q3. 手術支援ロボットの導入時に検討すべき論点は何ですか?
- A. 対応可能な術式範囲・術者資格要件・院内認定制度の整備・年間症例数の見込み・保守契約条件・トレーニング環境(動物実験施設または研修センターの利用)・診療報酬算定要件との整合性が主な論点となります。導入後の稼働率・症例集積の推移を継続モニタリングし、追加機器導入・術式拡大の判断材料とする運用が一般的です。
- Q4. 手術部位感染(SSI)サーベイランスにはどう取り組みますか?
- A. 厚生労働省の院内感染対策関連通知でも、SSIサーベイランスの実施と感染対策委員会・感染制御チームとの連携が示されています。国内外の複数のサーベイランスネットワークが運用されており、術式別のSSI発生率を全国データと比較することで、自院の予防対策の妥当性を評価できます。データ収集項目・記録方法・報告様式は施設ごとに手順化し、感染管理認定看護師と協働して定期分析を行う運用が広く採用されています。
- Q5. 麻酔科医の人員配置が手術枠に与える影響は何ですか?
- A. 麻酔管理料の施設基準・周術期管理体制加算の要件により、麻酔科医の常勤配置数は同時稼働可能な手術枠数を規定する要素となります。麻酔科医の不足は手術枠削減・緊急手術受入制限の原因となる場合があり、地域医療計画上の重要な論点として厚生労働省の医師確保計画関連資料でも取り上げられています。麻酔科標榜医・麻酔科認定医・麻酔科指導医の資格保持者数と、勤務時間管理・オンコール体制の設計が実務上の主要論点となります。
10. 関連内部リンク・次のステップ
手術室の運営は、感染対策・機器管理・診療報酬算定・多職種連携など、複数の運営テーマと接続します。自院の状況に応じて、以下の関連記事も参考にしながら、手術部運営体制の整備と改善を並行して進めることが有用です。
- 病院の中央滅菌室(CSSD) 完全ガイド — 手術器械の再生処理体制
- 病院 臨床工学技士業務ガイド — 手術室機器管理の中核職種
- 病院設備管理・ファシリティマネジメント完全ガイド — 空調・清浄度・室圧管理の基盤
- DPC/PDPS病院の経営管理ガイド — 手術関連加算と収益構造
11. 出典・参考資料
- 厚生労働省「医療施設調査」 https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/79-1.html (取得日:2026-07-25)
- 厚生労働省「医療機関における院内感染対策について」関連通知 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/kansen/index.html (取得日:2026-07-25)
- 厚生労働省「令和6年度診療報酬改定」関連資料 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00037.html (取得日:2026-07-25)
- 厚生労働省「医師確保計画」関連資料 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/kinkyu/index.html (取得日:2026-07-25)
- 厚生労働省「医療法・医療提供体制」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/iryou_keikaku/index.html (取得日:2026-07-25)
- 医薬品医療機器総合機構(PMDA)「医療機器」関連情報 https://www.pmda.go.jp/review-services/drug-reviews/review-information/devices/0001.html (取得日:2026-07-25)
- 日本手術医学会「手術医療の実践ガイドライン」関連資料 https://jaom.kenkyuukai.jp/ (取得日:2026-07-25)
- 日本手術看護学会 公表資料 https://www.jona.gr.jp/ (取得日:2026-07-25)
- 日本看護協会「認定看護師(手術看護)」関連資料 https://nintei.nurse.or.jp/nursing/qualification/cn (取得日:2026-07-25)
【免責事項】本記事は厚生労働省・日本手術医学会・日本手術看護学会・医薬品医療機器総合機構等の公開情報を整理することを目的としており、個別の手術手技・機器仕様・法令適合の可否判断、施設基準の該当性判断、加算算定要件の適用可否判断を保証するものではありません。関係法令・告示・通知・診療報酬点数表は改正・改訂により見直されるため、個別判断は所定の専門人材(外科医・麻酔科医・医療機器メーカー・感染管理認定看護師等)と、厚生労働省・地方厚生局・関係学会にご確認ください。本記事の情報利用によって生じた損害について、mitoru編集部は責任を負いません。
最終更新日:2026年7月25日|編集方針
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mitoru編集部の見解
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