病院の電子カルテ間データ移行・報告書標準化 完全ガイド【2026年版・HL7 FHIR/データ移行/病病連携】

📅公開日:2026-08-27

※本記事には広告(PR)が含まれます。mitoru編集部は公開情報を整理して比較・解説しており、表示順位や評価は広告主からの依頼ではなく編集部の独自判断によります。

電子カルテを更新する、あるいは複数施設で診療情報を共有する場面では、既存電子カルテから新システムへのデータ移行と、退院時要約・診療情報提供書等の報告書標準化が経営・情報システム部門の重要論点となります。旧ベンダー独自形式で蓄積された長期の診療データを、新ベンダーが取り扱う標準形式へ整合的に引き継ぐ設計を誤ると、参照性・真正性・保存性の確保に大きな影響が生じます。近年は厚生労働省が主導する電子カルテ情報共有サービスや HL7 FHIR(Fast Healthcare Interoperability Resources)を基盤とする標準化議論が進み、病病・病診連携の観点からも情報の相互運用性が課題となっています。本記事は病院・診療所の経営者、事務長、情報システム担当、医療情報技師に向けて、電子カルテ間データ移行と報告書標準化の全体像を、公開情報を整理した内容として概説します。

本記事は厚生労働省・経済産業省・総務省等の公的機関資料と関連団体の公開情報をもとに整理した内容であり、特定製品・特定ベンダーの推奨、契約判断・投資判断の助言、医療行為・診断・治療の助言を目的としたものではありません。制度・ガイドライン・技術標準は改訂されるため、個別の適用可否は最新版の原本、行政窓口、ベンダーの導入支援窓口へあらかじめご確認ください。

この記事で分かること

  • 電子カルテ間データ移行が課題となる背景と論点整理
  • HL7 FHIR の基本構造と国内での位置づけ
  • 電子カルテ情報共有サービスと 6 情報 2 文書の概要
  • データ移行の主要論点(範囲・形式・真正性・保存性)
  • 退院時要約・診療情報提供書の標準化動向
  • 病病連携・病診連携における情報授受の実務ポイント
  • 移行プロジェクトの 8 ステップ検討フロー
  • ベンダー選定時の 10 項目チェックリスト
  • データ移行を段階的に進めるべきケースの整理

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1. 電子カルテ間データ移行が課題となる背景

電子カルテのリプレースは、ハードウェア老朽化、保守終了、機能拡張要件、医療DX関連機能への対応、経営統合や新棟建設といった複数の要因から生じます。1990 年代後半から普及した電子カルテはベンダーごとに独自の内部形式でデータを保存してきた経緯があり、当時は院内で完結する運用が中心でした。近年は電子処方箋、オンライン資格確認、電子カルテ情報共有サービス、地域医療情報連携ネットワーク等への対応要請が強まり、施設外へ診療情報を安全に受け渡す設計思想への転換が進んでいます(厚生労働省「医療分野の情報化の推進について」関連資料)。

電子カルテのデータには、基本情報、経過記録、オーダ、処方、検査結果、画像所見、退院時要約、看護記録、部門システム連携データ等が含まれます。ベンダー乗り換え時は、これらのうち何をどの粒度で新システムへ引き継ぐか、参照専用の別環境で保管するかを、医療安全・診療継続性・コストの観点で切り分ける検討が起点となります。

2. HL7 FHIR の基本と国内での位置づけ

HL7 FHIR は、医療情報の相互運用性を高めるために国際的に策定されている標準規格で、患者・診察・検査・処方等をリソース単位で構造化し、Web 技術(HTTP・JSON/XML 等)を用いて交換することが可能です。従来の HL7 v2 メッセージや CDA(Clinical Document Architecture)と比べて Web API との親和性が高く、モバイルアプリや地域連携基盤との接続を想定した設計になっています。

厚生労働省が推進する電子カルテ情報共有サービスでは、傷病名・アレルギー・感染症・薬剤禁忌・検査(生活習慣病関連)・処方の 6 情報と、診療情報提供書・退院時要約の 2 文書が共有対象とされる方向で議論が進んでいます。これらの文書・情報要素は HL7 FHIR のリソース構造をベースに定義される想定で、既存電子カルテ側もこの構造に整合するデータの受け渡し実装が求められる見通しです(厚生労働省「電子カルテ情報共有サービス」関連ページ)。

2-1. 標準規格と院内実装のギャップ

電子カルテの内部形式は、ベンダーの製品世代・カスタマイズ経緯によって異なります。医事コード、傷病名マスタ、薬剤マスタ、検査項目マスタが施設固有のコードで運用されている場合、標準規格へマッピングする「コード変換テーブル」の整備が移行実務の中核となります。ICD-10、標準病名マスタ、JLAC10(臨床検査項目分類コード)、YJ コード(医薬品)、SS-MIX2 標準化ストレージ等のコード体系の使用状況を、まず棚卸しすることが実務上の起点です。

3. データ移行で論点となる範囲・形式・真正性

データ移行では、範囲(What)、形式(How)、期間(When)、責任分界(Who)の 4 軸で設計するのが実務上の基本です。全データを新システムに引き継ぐケース、直近数年のみ引き継ぐケース、旧環境を参照専用で残すケース等、施設の事情に応じて選択が分かれます。

3-1. 引き継ぎ対象データの範囲設定

基本情報・処方・検査結果・傷病名・退院時要約等の構造化データは、新システムへ整合的に取り込みやすい一方、経過記録の自由記載、看護記録、スキャン取り込みされた紙文書、DICOM 画像等は移行方式が異なります。画像は PACS 側で保管を継続して電子カルテからは参照連携する構成が多く、経過記録の自由記載は PDF 化して参照専用文書として保存する運用も一般的です。何をどの粒度で新環境に取り込むかは、日常参照頻度・医療安全・容量コストの三点で優先度を判定します。

3-2. 電子保存三原則との整合

電子カルテの記録は、電子保存三原則(真正性・見読性・保存性)を満たす形で保存することが医療情報システムの安全管理に関するガイドラインで示されています。データ移行の場面では、旧環境で作成された記録の作成者・作成日時・改変履歴を新環境でも保持する設計、参照専用文書として PDF 化した場合の作成者と作成日時の記載、旧環境を凍結・参照専用化した場合のアクセスログ管理等が論点となります(厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」関連ページ)。

3-3. データ移行方式の類型

方式特徴主な適用場面
フル移行過去全データを新環境に取り込み診療継続性を最優先する更新
期間限定移行直近数年分のみ新環境に取り込みコスト・容量の抑制を重視
参照専用併存旧環境を凍結し閲覧のみ継続過去データが大量・自由記載が多い場合
PDF アーカイブ過去記録を PDF 化して新環境に格納旧環境の運用停止を計画する場合

4. 退院時要約・診療情報提供書の標準化

退院時要約と診療情報提供書は、電子カルテ情報共有サービスにおける「2 文書」に位置づけられ、施設間で共有される想定の文書です。退院時要約は入院期間中の主要な診断・治療経過・退院時処方・今後の療養方針を要約したもので、転院・在宅移行・外来通院の切替時に受け手施設が短時間で状況を把握するための基幹文書です。診療情報提供書は診療科・施設間の紹介・逆紹介に伴い発行される文書で、いずれも標準化された構造で作成することで受け手側の情報活用性が高まる位置づけです。

4-1. 標準化で参照される主なコード体系

  • 傷病名:標準病名マスタ(ICD-10 対応)
  • 医薬品:YJ コード・HOT コード等
  • 臨床検査:JLAC10 / JLAC11
  • アレルギー・禁忌:SNOMED CT 参照案を含む議論
  • 手術・処置:K コード(診療報酬点数表)と標準マスタの併用

電子カルテ内部でこれらのコードを一貫して用いる運用があれば、退院時要約・診療情報提供書の構造化出力が実装しやすくなります。逆に、施設独自コードで運用している場合は、標準コードへの変換テーブル整備が事前準備の中核となります。

5. 病病連携・病診連携での情報授受

急性期病院から回復期・慢性期病院への転院、あるいは病院から在宅医療クリニックへの逆紹介の場面では、退院時要約・診療情報提供書に加えて、検査結果、画像、退院時処方、看護サマリ、リハビリ経過等の情報授受が求められます。従来は紙の文書と画像 CD-R の受け渡しが中心でしたが、地域医療情報連携ネットワーク、電子カルテ情報共有サービス、DICOM Web 等の仕組みを通じたオンライン共有が段階的に広がっています。

情報授受の実務では、(1)受け手施設が読める形式で提供されているか、(2)アクセス権限管理と患者同意取得のプロセスが整備されているか、(3)受領後の記録保管ルールが院内で明確化されているか、の 3 点が基本論点です。地域連携ネットワークの参加要件、費用負担、運用手順は自治体・二次医療圏ごとに異なるため、都道府県の医療計画部門や事務局にご確認ください(厚生労働省「医療 DX」関連資料)。

5-1. 連携基盤の主な類型

  • 電子カルテ情報共有サービス:国レベルでの 6 情報 2 文書共有基盤(構築が進行中)
  • 地域医療情報連携ネットワーク:二次医療圏単位の相互参照基盤
  • PACS 連携:DICOM 画像を施設間でオンライン参照・受渡し
  • 医療情報交換 API:HL7 FHIR ベースのシステム間 API 連携

6. 移行プロジェクトの 8 ステップ検討フロー

  1. 現状棚卸し:既存電子カルテのデータ量、コード体系、部門システム連携、独自カスタマイズを整理
  2. 要件定義:診療科・部門ごとに新環境で継続すべき機能と改善したい機能を整理
  3. ベンダー情報収集:複数ベンダーから提案を受け、移行実績とマッピング支援体制を比較
  4. データ移行方針策定:フル・期間限定・参照専用・PDF アーカイブの組み合わせを設計
  5. コード変換テーブル整備:施設独自コードと標準コードのマッピング表を作成
  6. 試験移行と検証:サンプルデータで移行を試行し、参照性・整合性を確認
  7. 切替リハーサル:本番切替と同一手順で予行、業務影響と復旧手順を確認
  8. 本番切替と定着支援:切替後の質問受付、修正対応、旧環境の運用停止手続きを段階的に実施

いずれの段階でも、旧ベンダー・新ベンダー・院内情報システム担当・診療部門・看護部門の 5 者が情報を共有するプロジェクト体制が実務上の基盤となります。事務長・院長は月次でプロジェクト進捗を確認し、判断が必要な論点を早期に共有する運用が推奨されます。

7. ベンダー選定時の 10 項目チェックリスト

  • 1. データ移行実績:他ベンダーからの移行案件を過去に手掛けた経験があるか
  • 2. コード変換支援:施設独自コードから標準コードへのマッピング作成を支援できるか
  • 3. HL7 FHIR 対応:電子カルテ情報共有サービス想定の入出力を実装済みまたは計画中か
  • 4. 部門システム連携:既存 PACS・検体検査・薬剤・栄養等の連携継続が可能か
  • 5. 参照専用環境:旧環境の凍結・参照専用化の技術支援があるか
  • 6. データ返却条件:契約終了時の返却フォーマット・費用・期間が契約書に明記されているか
  • 7. 電子保存三原則対応:作成者・作成日時・改変履歴の保持設計が明確か
  • 8. 医療情報安全管理:厚労省・経産省・総務省の関連ガイドラインへの準拠状況を対応表で提示できるか
  • 9. 移行期間中の並行運用:切替日の業務停止時間と、直前・直後の運用支援が具体的に示されているか
  • 10. サポート窓口:切替後の質問受付、修正対応の SLA、担当窓口の連絡体制が明確化されているか

10 項目のうち「該当する」が 8 項目以上なら比較検討を進める目安、5 項目以下なら追加資料の提示・質疑応答を通じて情報を補完してから判断することが実務上の目安となります。

8. データ移行を段階的に進めるべきケース

短期集中での一括切替が難しい状況もあります。以下のようなケースでは、段階的な移行を検討することが合理的な選択肢となります。

8-1. データ量・独自カスタマイズが大規模

診療実績が長期にわたり、部門システム連携や帳票カスタマイズが多層化している施設では、フル移行のリスクが高くなります。この場合、直近数年の構造化データのみ新環境へ引き継ぎ、旧環境を参照専用で保管する構成、あるいは部門システムごとに切替時期をずらす構成が検討対象となります。

8-2. 診療科ごとの運用差が大きい

診療科ごとに帳票・オーダテンプレートの運用が大きく異なる施設では、事前の要件整理に時間を要する場面があります。試験移行と診療科ヒアリングを段階的に組み合わせるアプローチが実務上の一案です。

8-3. 経営統合・新棟建設と時期が重なる

経営統合・新棟建設・移転と電子カルテ更新が同時期に重なる場合、業務負荷を分散する観点から、電子カルテ更新のタイミング調整、あるいは移行段階の細分化を検討する余地があります。

9. よくある質問(FAQ)

Q1. 過去の全データを新電子カルテに取り込むべきですか?
A. 一概には言えません。診療継続性・容量コスト・移行リスクのバランスで判断します。直近数年の構造化データのみ引き継ぎ、それ以前は参照専用環境や PDF アーカイブで保管する運用も一般的です。判断は自院の診療科構成・データ量・予算に応じて設計することが実務上の起点です。
Q2. 電子カルテ情報共有サービスへの対応は自院にも関係しますか?
A. 病院・診療所を含む医療機関の広い範囲で対応が想定される方向で議論が進んでいます。自院の電子カルテがこのサービスへの接続対応を計画しているかは、ベンダーに事前にご確認ください。制度の最新動向は厚生労働省の関連ページをご参照ください。
Q3. 施設独自のコードでも移行できますか?
A. 独自コードから標準コード(ICD-10・JLAC10・YJ コード等)へのマッピング表を整備することで、新環境への引継ぎと施設間連携での相互運用性が高まります。マッピング作業はベンダー支援の対象になる場合もあるため、提案依頼時に支援範囲を確認することが実務上の要点です。
Q4. 退院時要約はどこまで構造化すべきですか?
A. 電子カルテ情報共有サービスの 2 文書として共有想定の要素(主病名・退院時処方・アレルギー・退院時状態・療養方針等)は、構造化して出力できる設計が望まれます。自由記載欄も残しつつ、要点を構造化フィールドに転記する運用が実務上の一案です。
Q5. 旧電子カルテは切替後どのように扱いますか?
A. データ移行方針によります。フル移行後は旧環境をシャットダウンする運用、参照専用で数年間残す運用、PDF アーカイブに変換して新環境に格納する運用等があります。参照専用の場合はアクセス権限管理・アクセスログ・保守契約の見直しが必要です。
Q6. 病病連携で他院とデータ共有する時の同意はどう扱いますか?
A. 患者本人からの同意取得と院内での同意記録の運用が実務上の基盤です。同意書式、電子的同意の可否、参加ネットワーク運営主体の運用ルールを事前に整理することが望まれます。個人情報保護委員会・厚生労働省の関連ガイダンスを参照し、実務上の運用は法務・所管窓口へご確認ください。
📌 あなたが次にやるべき1つの行動
関連サービスの公式サイトで、対応規模・料金プラン・申込方法をご確認ください。所要時間や手続きは各サービスの公式情報を参照してください。

10. 出典・参考資料

  • 厚生労働省「医療分野の情報化の推進について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/johoka/index.html (取得日:2026-08-27)
  • 厚生労働省「電子カルテ情報共有サービス」関連ページ https://www.mhlw.go.jp/stf/denshi_karute_kyouyu.html (取得日:2026-08-27)
  • 厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」 https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/0000516275_00002.html (取得日:2026-08-27)
  • 厚生労働省「医療 DX の推進に関する工程表等」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_25585.html (取得日:2026-08-27)
  • 経済産業省「医療情報を取り扱う情報システム・サービスの提供事業者における安全管理ガイドライン」 https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/iryojoho/index.html (取得日:2026-08-27)
  • 総務省「クラウドサービスの安全・信頼性に係る情報開示指針」 https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/d_syohi/ictsec_index.html (取得日:2026-08-27)
  • e-Gov 法令検索「医療法」 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=323AC0000000205 (取得日:2026-08-27)
  • 個人情報保護委員会「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」関連ページ https://www.ppc.go.jp/ (取得日:2026-08-27)

【免責事項】本記事は厚生労働省・経済産業省・総務省・個人情報保護委員会等の告示・通知・ガイドライン、および HL7 FHIR 等の技術標準に関する公開情報を整理することを目的としており、特定製品・特定ベンダーの推奨や、契約判断・投資判断の助言を目的としたものではありません。医療情報システムに関する制度・ガイドライン・技術標準は改訂されるため、個別の適用可否は最新版の原本、行政窓口、ベンダーへあらかじめご確認ください。本記事は医療行為・診断・治療の助言を含みません。本記事の情報利用によって生じた損害について、mitoru編集部は責任を負いません。

最終更新日:2026年8月27日|編集方針

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