病院の医療経済性評価・費用対効果分析 完全ガイド【2026年版・HTA/QALY/新薬導入/DPC分析】

📅公開日:2026-08-25
※本記事には広告(PR)が含まれます。掲載判断は当サイトの編集基準に基づき行っています。 編集方針 | 最終更新日: 2026-08-25

※本記事には広告(PR)が含まれます。mitoru編集部は公開情報を整理して比較・解説しており、表示順位や評価は広告主からの依頼ではなく編集部の独自判断によります。

病院経営における医療経済性評価(HTA:Health Technology Assessment)と費用対効果分析は、高額医療技術・新薬・新医療材料の導入判断、DPC/PDPS対象病院における診療プロセスの経済性評価、医療機器の更新投資判断、算定病床機能の選択など、経営意思決定の根拠として活用されている枠組みです。日本では2019年4月から新薬・新医療材料に対する費用対効果評価制度が本格運用され、増分費用効果比(ICER)と質調整生存年(QALY)を用いた分析結果が薬価・材料価格の調整に反映されるようになりました。院内では、DPC分析ツール・原価計算・医療技術評価を組み合わせた経営管理の実装が広がっています。

本記事は病院の院長・経営企画室長・医事課長・薬剤部長・医療材料委員会担当者を主な読者と想定し、医療経済性評価(HTA)の枠組み、質調整生存年(QALY)・増分費用効果比(ICER)といった主要指標、日本の費用対効果評価制度(中医協 費用対効果評価専門組織)、DPC/PDPS分析による院内経済評価、新薬・新医療材料の導入判断プロセス、医療技術評価の院内実装、2024年度診療報酬改定関連項目について、厚生労働省・中央社会保険医療協議会(中医協)・国立保健医療科学院等の公開情報を整理した内容としてまとめています。個別の意思決定・算定判断は、所定の専門人材と各所管官庁にご確認ください。

この記事で分かること

  • 医療経済性評価(HTA)の枠組みと国際的な位置づけ
  • 質調整生存年(QALY)・増分費用効果比(ICER)の考え方
  • 日本の費用対効果評価制度(2019年本格運用開始)の全体像
  • 中医協 費用対効果評価専門組織と国立保健医療科学院C2Hの役割
  • 費用対効果評価対象品目の選定基準と分析プロセス
  • DPC/PDPS分析による院内経済評価(DPC点数マトリクス・在院日数・機能評価係数)
  • 新薬・新医療材料の院内導入判断プロセス(薬事・薬剤・材料委員会)
  • 医療技術評価の院内実装(原価計算・部門別収支・診療科別分析)
  • 2024年度診療報酬改定における関連項目

[PR]

[PR]

1. 医療経済性評価(HTA)とは

医療経済性評価(HTA:Health Technology Assessment)は、医薬品・医療機器・医療技術・診療手順等の医療技術について、有効性・安全性に加え、経済性(費用対効果)・倫理・社会的影響を多面的に評価し、政策決定や臨床導入判断の根拠を提供する枠組みです。国際的にはHTAiやINAHTA(国際HTAネットワーク)を中心に手法の標準化が進められ、英国のNICE(国立医療技術評価機構)、豪州のPBAC、独のIQWiG等が代表的な公的HTA機関として知られています。日本では、中央社会保険医療協議会(中医協)の下に費用対効果評価専門組織が設置され、国立保健医療科学院 保健医療経済評価研究センター(C2H:Center for Outcomes Research and Economic Evaluation for Health)が分析実務を担う体制が整備されています。

HTAの分析視点は、公的医療制度の持続可能性の観点から、限られた医療資源をどの技術・治療に配分するかを検討する政策判断に加え、病院単位での高額医療技術の導入判断・診療科構成の検討・医療機器投資の判断など、院内経営意思決定にも応用されています。

2. 主要な評価指標(QALY・ICER)

費用対効果分析(Cost-Effectiveness Analysis:CEA)および費用効用分析(Cost-Utility Analysis:CUA)で用いられる代表的な指標が、質調整生存年(QALY:Quality-Adjusted Life Year)と増分費用効果比(ICER:Incremental Cost-Effectiveness Ratio)です。

指標定義算式・単位
QALY質調整生存年。生存期間に生活の質(QOL)による重み(効用値0〜1)を掛け合わせた指標生存年数 × QOL効用値(単位:QALY)
ICER比較対照技術に対する追加費用を追加効果(QALY等)で除した比(新技術費用−対照技術費用)÷(新技術効果−対照技術効果)
費用便益分析(CBA)効果を金銭換算し費用と直接比較純便益(円)または便益/費用比
費用最小化分析(CMA)効果が同等の場合に費用のみを比較費用(円)

日本の費用対効果評価制度では、増分費用効果比(ICER:円/QALY)が中心的な評価指標として採用され、支払意思額(WTP:Willingness to Pay)の目安として500万円/QALY・750万円/QALY・1,000万円/QALY等の閾値が段階的に用いられます。ICERが低いほど費用対効果が良好と判定され、価格調整の方向性が決定されます。QOL効用値の測定にはEQ-5D-5L等の一般的健康関連QOL尺度が広く採用されています。

3. 日本の費用対効果評価制度

日本では2016年度から試行的導入が始まり、2019年4月から本格的に運用が開始された制度です。対象は、革新性・有用性の観点から選定された医薬品および医療材料で、原価計算方式または類似薬効比較方式で算定された品目のうち、市場規模・薬価等の一定の基準を満たすものが選定されます。選定された品目は、企業が分析を実施し、国立保健医療科学院C2Hがレビュー(公的分析)を行い、中医協 費用対効果評価専門組織で総合的評価を実施したうえで、価格調整が行われる仕組みです(厚生労働省 費用対効果評価制度関連資料)。

制度の対象拡大は段階的に進められており、H1(保険収載後選定)・H2(保険収載時選定)・H3(市場拡大再算定連動)等の区分に応じたプロセスが整理されています。分析ガイドラインは国立保健医療科学院C2Hが公表する「中央社会保険医療協議会における費用対効果評価の分析ガイドライン」に基づき運用されます。

4. DPC/PDPS分析による院内経済評価

DPC/PDPS対象病院では、DPC点数マトリクス(入院期間別の1日あたり点数)・在院日数管理・機能評価係数II・救急医療係数・保険診療係数などを組み合わせた収益構造の分析が経営管理の基礎となります。DPC分析ツール・ベンチマークシステムを通じ、診療科別・DPCコード別の在院日数実績・出来高換算収益・DPC収益差の可視化が広く運用されています。厚生労働省が公表するDPC導入の影響評価に係る調査データや、DPC/PDPS対象病院向けの各種公表資料が院内分析の参照基盤となっています。

院内での医療経済性評価の一形態として、DPCコード別の原価計算(部門費配賦・診療科別収支・症例別収支)を実施する病院も増えており、原価計算システムとDPC分析ツールを組み合わせた経営管理の実装が拡大しています。診療プロセスの標準化(クリニカルパス整備)と併用することで、在院日数短縮・後発品使用促進・材料選定の適正化といった医療の質と経済性の両立を図る取り組みが進んでいます。

5. 新薬・新医療材料の院内導入判断

院内における新薬・新医療材料の採用判断は、薬事委員会・材料委員会・医療機器安全管理委員会等の合議体で行われます。判断項目は、有効性・安全性のエビデンス、既採用品との差別化、想定使用症例数・年間購入額、DPC対象病院では包括評価下での収支影響、既存採用品との整理(後発品への切替・重複品目の整理)など、多面的に検討されます。費用対効果評価の対象品目については、中医協での価格調整結果を踏まえた採用判断が行われます。

特に高額薬剤(分子標的薬・免疫チェックポイント阻害薬・遺伝子治療薬等)や高額医療材料(人工関節・ペースメーカ・カテーテル関連機器等)については、想定症例数と保険償還額・材料費・関連費用を対比した収支シミュレーションを行い、採用の妥当性を検討する運用が広く行われています。

6. 医療技術評価の院内実装

院内での医療技術評価の実装は、経営企画室・医事課・薬剤部・診療科の連携で進められることが一般的です。実装要素として、以下の枠組みが参考にされています。

実装要素内容関連部署
DPC分析診療科別・DPCコード別の在院日数・収益分析医事課・経営企画室
原価計算部門別費用配賦・診療科別収支・症例別収支経営企画室・医事課
クリニカルパス管理パス使用率・バリアンス分析・在院日数短縮診療科・看護部・経営企画室
後発品使用促進後発品置換率のモニタリングと目標管理薬剤部・薬事委員会
材料コスト管理単価・使用量分析・SPD連携・共同購入検討材料委員会・SPD担当
高額医療技術評価新規導入時の収支シミュレーション診療科・経営企画室

医療技術評価の運用は、経営指標(医業収支・部門別収支・在院日数・病床稼働率等)と併走してモニタリングされ、四半期・月次の経営会議で共有される運用が広く見られます。

7. 2024年度診療報酬改定における関連項目

2024年度診療報酬改定では、機能評価係数IIの見直し、DPC対象病院の要件見直し、高額薬剤の類似薬効比較方式・原価計算方式の見直しなどが実施され、DPC/PDPS対象病院の経営管理に影響する項目が整理されています(厚生労働省 令和6年度診療報酬改定関連資料)。費用対効果評価制度についても、対象品目選定基準・分析プロセスの運用整理が段階的に進められています。

加算算定要件・施設基準の届出要件・DPC関連係数の詳細は、厚生労働省の公表資料の最新版と地方厚生局の通知をご確認ください。

8. よくある質問(FAQ)

Q1. 費用対効果評価の対象となる医薬品はどのように選ばれますか?
A. 中医協 費用対効果評価専門組織で、革新性・有用性の観点、市場規模の見込み、算定方式(原価計算方式・類似薬効比較方式等)を踏まえて選定が行われます。選定区分はH1・H2・H3等に整理され、区分に応じて分析実施・レビュー・価格調整のプロセスが進められます。詳細は厚生労働省・中医協の公表資料をご確認ください。
Q2. QALYと生存年数はどう違いますか?
A. 生存年数(LY:Life Year)は生存期間そのものを指すのに対し、QALY(質調整生存年)はその生存期間中の生活の質(QOL)を効用値(0〜1、1が完全な健康状態、0が死亡と等価)で重み付けした指標です。例えば効用値0.5の状態で10年生存する場合、QALYは5.0となります。生存期間の延長と生活の質の改善を統合的に評価できる点が特徴です。
Q3. 病院独自でHTAを実施することは可能ですか?
A. 公的な費用対効果評価制度は中医協の枠組みで実施されますが、病院独自の意思決定(高額医療機器の導入・診療プロセスの見直し・新規診療科開設等)にHTAの手法を応用する事例は増加しています。院内実装では、公表されている分析ガイドラインを参考にしつつ、院内データ(DPC分析・原価計算・部門別収支)を活用した経営判断への応用が広く行われています。
Q4. DPC対象病院で新薬導入時の収支影響はどう試算しますか?
A. 該当DPCコードにおいて出来高算定される項目(高額薬剤・手術・処置等)と包括評価される項目を切り分け、想定使用症例数を掛け合わせた収支シミュレーションが基本的な検討方法です。高額薬剤のうち一定の基準を満たすものは出来高算定となる場合があり、詳細は厚生労働省・地方厚生局の通知をご確認ください。
Q5. 費用対効果評価の結果はどう価格に反映されますか?
A. ICER(増分費用効果比)の値と支払意思額の閾値(500万円/QALY等)を比較し、費用対効果の判定区分に応じて価格の引下げまたは引上げが行われる仕組みが整理されています。詳細な価格調整方法は、中医協 費用対効果評価専門組織の公表資料および厚生労働省の関連通知をご参照ください。

9. 関連内部リンク・次のステップ

医療経済性評価の実装は、DPC管理・機能評価係数対応・原価計算・診療報酬改定対応など、複数の運営テーマと接続します。自院の状況に応じて、以下の関連記事も参考にしながら、経営管理体制の整備を進めることが有用です。

10. 出典・参考資料

  • 厚生労働省「費用対効果評価制度」関連資料 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00046.html (取得日:2026-08-25)
  • 厚生労働省「中央社会保険医療協議会(中医協)」関連資料 https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-chuo_128154.html (取得日:2026-08-25)
  • 厚生労働省「令和6年度診療報酬改定」関連資料 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00037.html (取得日:2026-08-25)
  • 厚生労働省「DPC/PDPS(診断群分類別包括評価)関連資料」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000049343.html (取得日:2026-08-25)
  • 厚生労働省「医療保険制度の概要」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/index.html (取得日:2026-08-25)
  • 国立保健医療科学院 保健医療経済評価研究センター(C2H)「中央社会保険医療協議会における費用対効果評価の分析ガイドライン」関連資料 https://c2h.niph.go.jp/ (取得日:2026-08-25)
  • 医薬品医療機器総合機構(PMDA)「医療機器・医薬品の承認情報」 https://www.pmda.go.jp/ (取得日:2026-08-25)

【免責事項】本記事は厚生労働省・中央社会保険医療協議会(中医協)・国立保健医療科学院C2H・医薬品医療機器総合機構(PMDA)等の公開情報を整理することを目的としており、個別の意思決定・算定判断・費用対効果評価の結果解釈を保証するものではありません。関係法令・告示・通知・診療報酬点数表・分析ガイドラインは改正・改訂により見直されるため、個別判断は所定の専門人材(保険医療機関の指導部門・診療報酬対応コンサルタント等)と、厚生労働省・地方厚生局・関係学会・関係機関にご確認ください。本記事の情報利用によって生じた損害について、mitoru編集部は責任を負いません。

最終更新日:2026年8月25日|編集方針

[PR]

[PR]

関連記事(mitoru編集部おすすめ)

mitoru編集部の見解

医療法人の経理・税務はクラウド会計だけでは完結しません。mitoru編集部は、医療系に強い税理士法人との顧問契約と、月次決算の早期化(翌月10営業日以内)の2点を、長期的なガバナンスの基本動作として推奨します。改定対応の遅延は税務リスクと経営判断の遅延を同時に引き起こします。

医師求人看護師求人比較記事