介護施設の看取り介護 完全ガイド【2026年版・看取り加算/ACP/家族対応/多職種連携/職員メンタル】

📅公開日:2026-08-09

※本記事には広告(PR)が含まれます。mitoru編集部は公開情報を整理して比較・解説しており、表示順位や評価は広告主からの依頼ではなく編集部の独自判断によります。

本記事は、特別養護老人ホーム(特養)・介護老人保健施設(老健)で看取り介護に取り組む施設長・生活相談員・介護福祉士・看護職を対象に、厚生労働省の告示・通知および令和6年度介護報酬改定資料など公開情報を整理した内容です。医療行為・治療方針の判断は主治医の指示に従ってください。本記事は制度理解と運用体制づくりの参考情報として作成しています。事業所ごとの運用は所轄自治体の解釈通知や集団指導資料と照合してください。

【編集方針】本記事は制度の一次情報(厚生労働省・介護報酬告示等)を出典として整理しています。事業所ごとの体制構築・算定判断は所轄自治体や顧問先の助言を併用してください。事実誤認のご指摘は編集部で確認のうえ訂正します。

目次

  1. 看取り介護の位置づけと定義
  2. 看取り介護加算の要件(特養・老健)
  3. ACP(人生会議)と意思決定支援
  4. 家族への説明と関係構築
  5. 多職種連携(施設看護・訪問診療・薬剤師)
  6. エンゼルケアと退所後の対応
  7. 職員のメンタルサポートとグリーフケア
  8. 2024年(令和6年度)介護報酬改定のポイント
  9. FAQ(よくある質問)
  10. 関連リンク

[PR]

介護タウン

[PR]

訪問看護経営ガイドも参考に

訪問看護システム比較を見る

記事を読む →

1. 看取り介護の位置づけと定義

看取り介護とは、医師が回復の見込みがないと診断した終末期の利用者に対し、身体的・精神的な苦痛の緩和と尊厳の保持を目的として、施設・多職種チームが本人と家族の意向に沿ってケアを提供する取組みを指します。厚生労働省の「看取り介護加算」告示上は、医師の医学的知見に基づく判断と、本人・家族への十分な説明・同意、多職種による看取り介護計画の策定と定期的な見直しが基本的な枠組みとして位置づけられています。

看取り介護は「延命治療の代替」ではなく、本人の意思決定を尊重しながら日常生活の延長線上で穏やかな最期を支えるケアです。積極的な医療介入を望まない選択が本人の意思として確認されている場合でも、痛みや呼吸苦などの症状緩和については医師の指示のもとで適切な対応が求められます。介護職・看護職・生活相談員・栄養士・機能訓練指導員など、施設内の多職種が同じ方針を共有していることが前提となります。

施設で看取りを行うか、居宅・病院に移行するかの選択は、本人の事前意思、家族の意向、主治医の医学的判断、施設の看護体制などを踏まえて総合的に検討されます。近年は在宅・施設での看取りを希望する高齢者が増加傾向にあり、施設側にも安定した看取り体制を整えるニーズが高まっています。看取りの取組みを始める際は、看取りに関する指針の整備、職員研修、記録様式の統一、協力医療機関との連携ルールなど、事前準備の段階から丁寧に組み立てることが継続運用の鍵になります。

2. 看取り介護加算の要件(特養・老健)

特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)における看取り介護加算は、常勤の看護職員配置、24時間の連絡体制、看取りに関する指針の整備と職員研修、個別の看取り介護計画の作成、本人・家族への随時説明などが算定要件として定められています。加算区分は死亡日からの日数(死亡日以前31日以上45日以下、30日以下、4日以下、当日など)で段階的に設定され、施設内で最期を迎えた場合と居宅・病院で亡くなった場合とで扱いが分かれます。

算定にあたっては、看取り介護計画書、本人・家族への説明と同意の記録、医師の医学的診断の記録、多職種カンファレンスの議事録、日々の観察記録などが実地指導・監査で確認される主要書類となります。書式は自治体推奨版があれば準用し、無ければ施設独自様式で構いませんが、算定要件の各項目が漏れなく記載される設計にしておくと後日の点検が容易です。看護職員の配置区分(常勤・非常勤・オンコール対応の有無)や、協力医療機関との連携内容(往診体制・救急時受入れ)も加算算定の前提条件として整理しておきます。

介護老人保健施設(老健)では「ターミナルケア加算」として看取り期のケアが評価されます。医師・看護職員・介護職員・支援相談員・管理栄養士等が共同でターミナルケア計画を作成し、本人・家族の意向を踏まえた療養方針を定めること、症状緩和や褥瘡予防などの計画に沿った実践、死亡日・死亡日前日・死亡日以前2日以上30日以下の区分での算定など、要件は告示・留意事項通知に細かく規定されています。算定漏れや過剰算定の防止のため、記録様式と根拠書類の整備が実務上の要点になります。

要件の正確な条文は厚生労働省の令和6年度介護報酬改定関係通知(厚生労働省 令和6年度介護報酬改定について)で一次情報を確認してください。自治体ごとに解釈通知や集団指導資料が追加されている場合があり、実地指導での指摘傾向にも地域差があります。加算算定の可否や届出手続きで判断に迷うケースは、所轄窓口(都道府県・市町村介護保険担当課)に事前照会する運用が安全です。

3. ACP(人生会議)と意思決定支援

ACP(Advance Care Planning/愛称「人生会議」)は、人生の最終段階における医療・ケアについて、本人が家族等や医療・ケアチームと繰り返し話し合うプロセスです。厚生労働省は「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」を公表し、本人による意思決定を基本とすること、話合いの内容を文書化して関係者で共有すること、本人の意思は変化しうるため繰り返し確認することを求めています(厚生労働省 人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン)。

施設現場でACPを進める際は、入所時アセスメントの段階で「これまでの生き方・大切にしていること」を聞き取り、状態変化の節目(体重減少・食事摂取量の低下・複数回の発熱・入退院など)ごとに本人・家族と話合いの場を設定します。本人が意思決定困難な状況にある場合は、家族等が本人の推定意思を代弁する形で協議し、その根拠を診療録・介護記録に残します。ACPは「一度決めたら終わり」ではなく、体調や心境の変化に応じて何度でも見直せることを本人・家族に丁寧に伝えることが重要です。

話合いのファシリテーションは、生活相談員・看護職・ケアマネジャーなど本人・家族との信頼関係が構築されている職員が担うのが実践的です。単発の重い意思決定を求めるのではなく、日常会話の延長線で価値観を汲み取り、節目でチームとして整理するアプローチが本人負担を軽減します。話合いの記録は、日時・参加者・話合いの要点・結論・次回見直し予定を最低限含めて記載し、家族への説明時に持参できる形で整えておくと、後日「聞いていない」といった行き違いを防ぎやすくなります。

4. 家族への説明と関係構築

看取り期の家族対応は、情報提供の質と頻度が信頼関係を左右します。基本の流れは、①入所時に施設の看取り指針を書面で説明、②状態変化時に医師・看護職・生活相談員が同席して現況と選択肢を説明、③本人の意思・家族の意向を看取り介護計画に反映、④日々の変化を家族に随時報告、⑤看取り期に入ってからは面会体制と連絡体制を明確化、という段階を踏みます。

説明の場では、断定的な予後予測や医療者以外による医療判断の助言を避け、「主治医の見立て」と「介護現場で観察されている変化」を切り分けて伝えます。家族間で意見が分かれる場合は、キーパーソンを一人に絞らず、可能な範囲で親族の合意形成を促す進行が有効です。夜間・休日の連絡ルール、面会時の感染対策、看取り時の付き添い可否、居室での対応か医務室対応かなど、事前に文書で共有しておくことで、直前の混乱を減らせます。

遠方の家族や連絡が取りにくい家族への対応では、ICTを活用したオンライン面会、家族専用の情報共有アプリ、定期的な状況報告メール等の仕組みが有効です。プライバシー保護と情報漏えい防止の観点で、施設側の運用ルール(アカウント管理、動画・写真の取扱い、家族間での共有範囲)を明文化してから導入する流れが望ましいと考えられます。感染症流行時など面会制限が必要な局面でも、家族との接点を切らさない仕組みを持っているかが、看取り期の家族満足度に影響します。

5. 多職種連携(施設看護・訪問診療・薬剤師)

看取り介護の質は、施設内多職種と外部医療者との連携密度で決まります。施設看護職員は、バイタル・水分摂取・排泄・皮膚状態・意識レベルの変化を継続的に観察し、日々の記録を通じて医師の判断材料を提供します。配置医師や協力医療機関の医師との情報伝達は、電話・FAX・ICT記録システムなど施設で運用しているツールを使い、口頭指示は復唱・記録して二重確認します。

訪問診療医が関わるケースでは、往診時に看護職員・介護職員・生活相談員が同席し、家族の質問を集約して伝えるスタイルが情報の齟齬を防ぎます。薬剤師(在宅患者訪問薬剤管理指導・居宅療養管理指導)は、複数薬の相互作用確認、剤形変更(錠剤から粉砕・簡易懸濁、貼付剤への切替など)、鎮痛薬・便秘対策薬の管理で重要な役割を担います。管理栄養士・言語聴覚士・機能訓練指導員は、経口摂取困難時の食形態調整や体位・関節可動域維持の助言で連携します。

ケアマネジャー(介護支援専門員)は、家族とのやりとりの窓口として動くケースが多く、看取り期の担当者会議の招集・議事録作成・関係機関への情報共有を担います。特養では施設ケアマネ、老健では支援相談員が中心となり、外部の医療機関ソーシャルワーカーや在宅療養支援診療所と連絡調整する体制を平時から整えておくと、急変時の対応がスムーズになります。

在宅医療・介護連携の全体像は厚生労働省のポータル(厚生労働省 地域包括ケアシステム)で確認できます。地域の在宅医療・介護連携推進事業の資料や、多職種連携研修の案内も自治体HPで公開されていることが多く、施設として参画するとネットワーク構築が進めやすくなります。

6. エンゼルケアと退所後の対応

エンゼルケア(死後の処置)は、故人の尊厳を守り、家族が故人と最期の時間を穏やかに過ごせるように行うケアです。医師による死亡確認の後、看護職員が中心となって、清拭、口腔ケア、着替え、整容などを行います。宗教・宗派・地域慣習によって希望する処置の内容や順序が異なるため、事前に家族の意向を確認しておくことが望まれます。着衣は本人・家族が希望する衣服を用意していただくケースが多く、施設ではその受け渡し・保管ルールを明確にします。

退所(お見送り)時は、居室でのお別れの時間を家族の希望に沿って設け、葬儀社搬送までの導線を静かに整えます。他の入所者への配慮として、搬送時間帯や動線、居室片付けのタイミングを検討します。退所後は、私物の返却、預り金の精算、介護給付費請求の締め、看取り介護加算算定のための記録整備など事務手続きを、期限を意識して進めます。

看取り後のフォローアップとして、四十九日・一周忌の時期に家族へお便りを送る、家族会での追悼の場を設ける、といった取組みを続けている施設もあります。無理な負担にならない範囲で、家族との関係を継続する仕組みは、地域における施設への信頼形成にも寄与します。エンゼルケアの手順書は、看護部と介護部で共同で整備し、新人教育の中でロールプレイを含めて研修するとよいでしょう。

7. 職員のメンタルサポートとグリーフケア

看取りに関わる職員は、担当利用者との死別による喪失感、判断が正しかったかという自問、家族対応の緊張などが積み重なりやすい環境で働いています。施設として組織的に支える仕組みが求められます。実施しやすい取組みとしては、①看取り事例ごとのデスカンファレンス(振り返り会)、②新人・異動者向けの看取り研修、③心理的負担の高い職員へのシフト調整、④外部相談窓口(EAP・産業保健スタッフ等)への接続、⑤ピアサポートやメンター制度の整備などが挙げられます。

デスカンファレンスは、事例の医学的な振り返りに加えて、職員一人ひとりの感情や気づきを言語化できる場として設計します。「反省会」ではなく「学びと感情の共有の場」というスタンスを施設長・管理者が明示し、若手職員が話しやすい雰囲気づくりを心がけます。個人情報保護に配慮しながら、事例から得られた教訓を看取り指針の改訂や研修資料の更新に反映していく循環を作ると、施設全体の看取りケアが継続的に磨かれます。

職員自身のメンタルケアは、業務のパフォーマンス維持だけでなく、利用者・家族に落ち着いたケアを届けるための土台になります。労働安全衛生法上のストレスチェック制度や事業場の産業保健体制については、厚生労働省の解説(厚生労働省 ストレスチェック制度)を参照し、施設規模に応じた運用を確認してください。50人以上の事業場ではストレスチェックの実施義務があるため、実施時期・実施者・結果の取扱いを規程化しておくとよいでしょう。

8. 2024年(令和6年度)介護報酬改定のポイント

令和6年度介護報酬改定では、看取り期のケアの質向上と関係機関との連携推進が引き続き重点課題として位置づけられました。特養の看取り介護加算・老健のターミナルケア加算では、ACPの取組みを踏まえた意思決定支援プロセスの充実、協力医療機関との連携強化、記録の適切な整備などが要点となっています。改定の具体的な単位数・算定要件・経過措置は、告示・留意事項通知・Q&A等で複合的に規定されるため、一次情報を確認する運用が重要です(厚生労働省 令和6年度介護報酬改定について)。

あわせて、協力医療機関との定期的な会議、ICTを活用した情報共有、身元引受人がいない利用者への意思決定支援の記録など、実務対応の幅が広がっています。改定内容の解釈で判断に迷う点は、所轄自治体(都道府県・市町村)の集団指導資料や実地指導の指摘事例を参照し、必要に応じて所轄窓口に照会してください。厚生労働省のQ&Aは複数回に分けて発出されるため、公表時期を追いかけて最新版を把握する運用が実務上の要点になります。

改定を踏まえた施設内の対応としては、①看取り介護指針の改訂、②看取り介護計画書様式のバージョンアップ、③職員研修プログラムの更新、④協力医療機関との覚書・連携文書の見直し、⑤ICTツールの選定と情報共有ルールの整備、⑥算定要件チェックリストの更新、といった手順で進めると漏れを防ぎやすくなります。改定初年度は請求実務でのミスが発生しやすいため、算定開始月の実績確認と国保連からの返戻対応をチーム体制で行う準備をしておくと安全です。

9. FAQ(よくある質問)

Q1. 看取り介護加算とターミナルケア加算はどう違いますか?
看取り介護加算は特別養護老人ホーム等の介護福祉施設サービスで算定される加算で、ターミナルケア加算は介護老人保健施設で算定される加算です。対象となる施設類型が異なるため、算定要件・記録様式・区分もそれぞれの告示・通知に沿って整備します。両者とも医師の医学的判断、本人・家族の同意、多職種による計画策定と実践、記録の整備が共通の要素となります。
Q2. 本人が意思決定困難な場合、ACPはどう進めますか?
厚生労働省ガイドラインは、本人が意思決定困難な場合、家族等が本人の推定意思を尊重して代弁する形での話合いを求めています。過去の言動・生活歴・価値観の情報を家族から丁寧に聞き取り、話合いの経過と結論の根拠を記録に残す運用が基本です。家族がいない・関与が難しい場合は、成年後見人や、施設・医療・地域包括支援センター等の多職種チームでの検討など、代替の合意形成プロセスをガイドラインが示しています。
Q3. 看取り期に病院搬送を希望する家族への対応は?
本人の事前意思、家族の意向、主治医の医学的判断を踏まえたうえで、話合いの場を持ちます。「施設で最期まで」との事前確認があっても、状況変化により家族の気持ちは揺れうるため、方針変更の余地を残す説明を平時から行っておくと、直前の意思決定がしやすくなります。搬送の可否は最終的に主治医の判断に従います。搬送を選択した場合の受入れ先医療機関との連携ルールも、事前に協議しておくと迷いが減ります。
Q4. 職員が担当利用者の死別で心理的負担を抱えたら?
デスカンファレンスで感情を言語化する場を用意する、シフト調整で連続対応を避ける、産業医・保健師や外部EAPへの接続を案内する、といった対応が現場でとりやすい選択肢です。個人での抱え込みを避ける文化づくりが土台になります。管理者は、職員の変化(遅刻・欠勤・表情・言動の変化)に早く気づける観察眼を持ち、面談の場を設定できる体制を整えます。
Q5. 看取り介護指針は整備すべきですか?
看取り介護加算・ターミナルケア加算を算定する場合、看取りに関する指針の整備と職員研修の実施は要件に含まれます。算定の有無にかかわらず、施設として看取りに関する基本方針を文書化しておくことは、家族への説明や職員教育の観点で有用です。指針は施設の理念・多職種チームの役割・意思決定支援の進め方・記録ルール・研修計画などを盛り込み、年1回程度は見直す運用が望まれます。

10. 関連リンク

[PR]

[PR]

介護タウン

関連記事(mitoru編集部おすすめ)

mitoru編集部の見解

訪問看護・訪問介護は2024年4月の同時改定で報酬体系が大きく変化しています。mitoru編集部は、事業所選定時に介護報酬・診療報酬の改定追従能力と、ICT導入による記録効率化への姿勢を、経営継続性の指標として確認することを推奨します。

医師求人看護師求人比較記事