病院中央検査部(臨床検査室) 完全ガイド【2026年版・生化学/血液/微生物/精度管理/ISO15189】

📅公開日:2026-07-26
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病院の中央検査部(臨床検査室・検査科)は、患者から採取された検体(血液・尿・便・体液・組織等)の分析と、患者に直接接して行う生理機能検査(心電図・超音波・脳波・呼吸機能等)を担う診療支援部門で、診療のあらゆる場面で用いられる客観的データを提供する中核部門です。診断・治療方針の決定・治療効果判定・術前スクリーニング・救急対応・感染対策など、病院機能の質と安全は検査データの正確性と迅速性に大きく依存しており、精度管理と結果報告の信頼性確保が運営上の最重要課題として位置づけられています。

本記事は病院の検査部長・臨床検査技師・事務長・医療安全担当者を主な読者と想定し、中央検査部の位置づけ、検体検査(生化学・血液・一般・免疫・微生物)と生理機能検査の業務範囲、内部精度管理・外部精度管理の枠組み、ISO15189認定(臨床検査室認定)の要件、2018年改正医療法で新設された検体検査の精度確保基準と検体検査精度管理責任者、臨床検査技師のタスクシフト/シェア(2021年施行の業務拡大)、2024年度診療報酬改定の関連項目について、厚生労働省・一般社団法人日本臨床衛生検査技師会・公益社団法人日本医師会臨床検査精度管理調査・日本適合性認定協会(JAB)等の公開情報を整理した内容としてまとめています。個別の検査項目の実施可否・施設基準の該当性判断は、所定の専門人材と各所管官庁にご確認ください。

この記事で分かること

  • 中央検査部の位置づけと院内での役割(診療支援部門の中核)
  • 検体検査5分野(生化学・血液・一般・免疫・微生物)の業務範囲
  • 生理機能検査(心電図・超音波・脳波・呼吸機能等)の業務範囲
  • 内部精度管理・外部精度管理の枠組み
  • ISO15189認定(臨床検査室認定)の要件と取得メリット
  • 2018年改正医療法・検体検査精度管理責任者の役割
  • 2021年施行の臨床検査技師のタスクシフト/シェア関連業務追加
  • 2024年度診療報酬改定における関連項目

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1. 中央検査部の位置づけ

中央検査部(臨床検査室・検査科・検査部)は、院内の複数診療科から依頼される臨床検査を一元的に受託し、標準化された手順と精度管理のもとで実施・報告する診療支援部門です。従来は診療科ごとに個別の検査室を運用する形態も見られましたが、機器の大型化・高度化・自動化の進展と、24時間対応・救急検査体制の必要性から、中央化・集約化が進んでいます。検査部門は大きく「検体検査部門」と「生理機能検査部門」に分けられ、施設によっては輸血検査・遺伝子検査・病理検査を含む部門構成となります。

臨床検査技師は、臨床検査技師等に関する法律(昭和33年法律第76号)に基づく国家資格で、厚生労働大臣の免許を受けて臨床検査業務を行う医療専門職です。検査業務は医師の指示のもとで実施され、検査結果の解釈・診療への活用は医師の責務のもとに置かれます。中央検査部の運営には、検査部長・技師長・部門主任・各領域担当技師の役割分担と、医療安全管理委員会・感染対策委員会等との院内連携が不可欠です。

2. 検体検査

検体検査は、患者から採取された血液・尿・便・体液・組織等の検体を対象とする検査で、生化学的検査・血液学的検査・一般検査(尿・便・体液)・免疫学的検査・微生物学的検査・病理学的検査・遺伝子関連検査に大別されます。2018年の医療法改正で、これらの検査分類が「一次分類」「二次分類」として整理され、施設ごとの実施範囲と精度確保基準が明文化されました。

分野主な検査項目主な使用機器
生化学肝機能(AST・ALT・γ-GTP)・腎機能(Cre・BUN)・脂質・電解質・血糖・HbA1c自動生化学分析装置・免疫測定装置
血液血算(CBC)・白血球分類・凝固検査(PT・APTT・D-ダイマー)自動血球計数装置・凝固測定装置
一般尿定性・尿沈渣・便潜血・髄液・穿刺液尿自動分析装置・尿沈渣分析装置
免疫腫瘍マーカー・感染症抗原抗体・甲状腺・自己抗体化学発光免疫測定装置(CLEIA等)
微生物培養同定・薬剤感受性・グラム染色・遺伝子検査(PCR等)自動培養装置・質量分析装置(MALDI-TOF)・PCR装置
輸血血液型・不規則抗体・交差適合試験自動輸血検査装置
病理組織診・細胞診・術中迅速診断自動包埋装置・自動染色装置・顕微鏡

2-1. 生化学的検査

生化学的検査は、血清・血漿中の酵素・基質・電解質・微量元素等を測定し、肝・腎・膵・心筋・脂質代謝・糖代謝等の臓器機能を評価する検査群です。自動生化学分析装置による多項目同時測定が基本で、緊急検査(ER・ICU等からの依頼)に対応する迅速報告体制の整備が求められます。基準範囲の設定は、日本臨床化学会等の学会標準に基づく院内基準の設定と、定期的な見直しが運用されます。

2-2. 血液学的検査

血液学的検査は、血球数算定(CBC)・白血球分類・血液像(末梢血塗抹標本)・凝固検査(PT・APTT・フィブリノゲン・D-ダイマー等)を含みます。自動血球計数装置による多項目測定が基本で、異常検体は目視鏡検による確認が求められます。凝固検査は術前スクリーニング・抗凝固療法モニタリング・DIC評価等で用いられます。

2-3. 一般検査

一般検査は、尿検査(定性・沈渣)・便検査(潜血・虫卵)・髄液検査・穿刺液検査(胸水・腹水・関節液等)を含みます。尿検査は自動分析装置による定性検査と、鏡検による沈渣検査の組合せで実施され、腎疾患・尿路感染症・糖尿病等のスクリーニングと診断補助に用いられます。髄液検査・穿刺液検査は緊急性が高く、細胞数算定・生化学・細菌検査の連携が求められます。

2-4. 免疫学的検査

免疫学的検査は、抗原抗体反応を利用した測定で、腫瘍マーカー・感染症関連抗原抗体(HBs・HCV・HIV・梅毒等)・甲状腺関連ホルモン・自己抗体・アレルギー関連検査等を含みます。化学発光免疫測定法(CLEIA・CLIA)・電気化学発光免疫測定法(ECLIA)等の自動化装置による測定が主流で、多品目・高感度・高スループット化が進んでいます。感染症関連検査は報告体制と再検査ルールの整備が運用上の要点となります。

2-5. 微生物学的検査

微生物学的検査は、培養同定・薬剤感受性検査・グラム染色・抗酸菌検査・遺伝子検査(PCR・LAMP等)を含みます。院内感染対策・抗菌薬適正使用支援(AST)・アウトブレイク対応において中核的な役割を担い、薬剤耐性菌(MRSA・ESBL産生菌・CRE等)の検出と院内感染対策委員会・感染制御チーム(ICT)への情報提供が日常業務に組み込まれます。近年は質量分析装置(MALDI-TOF MS)による迅速同定と、遺伝子検査による耐性遺伝子検出が普及しており、検査所要時間の短縮と精度向上が進展しています。

3. 生理機能検査

生理機能検査は、患者に直接接して生体信号を測定・記録する検査群で、心電図(安静時・負荷・24時間ホルター)・超音波検査(心・腹部・血管・体表)・呼吸機能検査(スパイロメトリー・肺拡散能)・脳波・筋電図・神経伝導検査・眼底・聴力・平衡機能等を含みます。臨床検査技師が実施可能な生理機能検査の範囲は、臨床検査技師等に関する法律施行令で定められており、法令改正により対象範囲が段階的に拡大されてきた経緯があります。

超音波検査(エコー)は生理機能検査の中でも実施件数が多く、心臓・腹部・血管・乳腺・甲状腺・体表領域を担う技師の育成と、超音波検査士(日本超音波医学会等の認定制度)の資格取得が広く運用されています。ホルター心電図・24時間血圧計等の在宅装着検査は、装着・回収・解析・レポート作成の一連工程を検査部で担当する運用が一般的です。

4. 精度管理

臨床検査の精度管理は、内部精度管理(IQC:Internal Quality Control)と外部精度管理(EQA:External Quality Assessment)の両輪で運用されます。内部精度管理は、日常業務のなかで管理試料を測定し、Levey-Jennings管理図・Westgard多重ルール等の統計的手法により測定系の安定性を評価する仕組みで、日々の測定開始前・途中・終了時の管理試料測定が基本です。異常検出時は原因究明・是正措置・再現性確認を経て測定再開する運用が求められます。

外部精度管理は、外部機関から配布された共通試料を各施設で測定し、施設間比較により自施設の測定精度を客観的に評価する枠組みで、公益社団法人日本医師会が主催する「日本医師会臨床検査精度管理調査」、一般社団法人日本臨床衛生検査技師会が主催する「日臨技臨床検査精度管理調査」等が代表的な調査事業として広く利用されています。参加により自施設の測定値のバイアス・分散・外れ値の有無を客観的に把握でき、精度管理体制の妥当性検証と改善活動に活用されます。

5. ISO15189認定(臨床検査室認定)

ISO15189は臨床検査室の品質と能力に関する国際規格で、日本国内では公益財団法人日本適合性認定協会(JAB)が認定機関として運用しています。認定取得により、検査室の品質マネジメントシステム(QMS)・技術要件・要員能力・精度管理体制が国際規格に適合していることが第三者機関により保証され、検査結果の国際的信頼性が担保されます。国内の認定取得検査室数は年々増加しており、大学病院・特定機能病院を中心に取得が進んでいます。

認定取得のメリットは、検査結果の信頼性向上・国際共同治験への参画資格・院内医療安全体制の強化・要員教育の体系化等です。一方で、認定準備・審査対応・維持管理には、文書管理・要員教育・機器保守記録・是正措置記録等の運用工数が発生し、複数年計画での取得準備が求められます。認定対象の検査項目範囲(スコープ)は施設の判断で設計でき、段階的なスコープ拡大も可能です。

6. 検体検査精度管理責任者

2018年施行の改正医療法および関連省令により、医療機関が自ら実施する検体検査についても精度確保基準への適合が義務付けられ、責任者の配置が求められることとなりました。基準では、標準作業書(SOP)の作成・作業日誌・台帳の記録・機器保守記録・内部精度管理の実施・外部精度管理調査への参加・精度管理責任者の配置等が定められています。

検体検査の精度確保に係る責任者は、医師・臨床検査技師のいずれかの資格を有する者から選任することとされています。遺伝子関連検査・染色体検査については、より高度な精度確保が求められ、専任の責任者配置と実施状況の記録・保存が運用されます。改正の背景には、検査の品質・信頼性の向上、遺伝子関連検査の実施拡大、ISO15189との整合性確保等の政策的意図があります。

7. 臨床検査技師のタスクシフト/シェア

2021年5月に成立した「良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進するための医療法等の一部を改正する法律」に基づき、臨床検査技師等に関する法律が改正され、臨床検査技師が実施可能な業務が追加されました(2021年10月施行)。具体的には、採血に伴う静脈路確保および輸液(電解質輸液等の一定の範囲)、超音波検査に伴う造影剤の血管内投与等の業務、直腸内圧測定・肛門括約筋等の生理学的検査、運動誘発電位・体性感覚誘発電位の測定等が追加業務として整理されています。

これらの追加業務の実施には、厚生労働大臣指定の研修機関で実施される「厚生労働大臣指定講習」の受講が要件とされています。研修修了により追加業務の実施が可能となり、厚生労働省のタスクシフト/シェア推進の枠組みのもと、医師・看護師の業務負担軽減と臨床検査技師の専門性発揮の両立を図る制度として位置づけられています。

8. 2024年度診療報酬改定における関連項目

2024年度診療報酬改定では、医療従事者の負担軽減・医師の働き方改革の推進を柱のひとつとし、タスクシフト/シェア関連の加算・要件見直しが行われました。臨床検査分野では、検体検査管理加算(I〜IV)、外来迅速検体検査加算、国際標準検査管理加算、遺伝子関連検査加算、感染防止対策加算、抗菌薬適正使用支援加算等において、臨床検査技師の配置要件・外部精度管理調査への参加・ISO15189認定取得等が施設基準の要件として整理されている項目があります(厚生労働省 令和6年度診療報酬改定関連資料)。

特に国際標準検査管理加算は、ISO15189認定を取得した検査室で算定可能とされる加算で、認定取得のインセンティブとして機能しています。加算算定要件・施設基準の詳細は、厚生労働省の公表資料と地方厚生局の通知をご確認ください。

9. よくある質問(FAQ)

Q1. 中央検査部の24時間対応体制はどのように整備するのが一般的ですか?
A. 病院規模・救急対応区分・診療科構成により幅があります。救急告示病院・二次救急以上では、夜間・休日の当直体制または宿日直体制での対応が広く運用され、緊急検査項目(血算・生化学の一部・凝固・血液ガス・心筋マーカー・血液型・交差適合試験等)に絞った運用が一般的です。救命救急センター・特定機能病院では、より広範な項目対応と複数名当直体制の事例が見られます。
Q2. 外部精度管理調査はどの調査に参加するのが標準的ですか?
A. 公益社団法人日本医師会の「日本医師会臨床検査精度管理調査」、一般社団法人日本臨床衛生検査技師会の「日臨技臨床検査精度管理調査」への参加が広く行われています。また、都道府県医師会・地区医師会・専門学会(日本臨床化学会・日本血液学会・日本臨床微生物学会等)が実施する精度管理調査への参加も、領域別の精度確認手段として活用されています。参加調査の選択は、実施検査項目・施設規模・関連する加算算定要件を踏まえた設計が求められます。
Q3. ISO15189認定取得にはどの程度の準備期間・工数が必要ですか?
A. 施設規模・既存の品質管理体制の成熟度・対象スコープの広さにより幅があります。一般的には準備開始から認定取得まで2〜3年程度の期間を要するケースが多く、品質マネジメントシステム(QMS)構築・文書体系整備・要員教育・内部監査・是正措置対応の一連工程が必要です。認定機関である公益財団法人日本適合性認定協会(JAB)の公表資料と、既認定施設のケーススタディを踏まえた計画設計が求められます。
Q4. 検体検査精度管理責任者の要件と、既存の技師長との役割分担はどう整理しますか?
A. 検体検査の精度確保に係る責任者は、医師または臨床検査技師の資格を有する者から選任することとされています。既存の検査技師長が兼任する運用が広く見られ、責任者名を院内文書と行政報告に明記する運用が求められます。遺伝子関連検査・染色体検査については、より高度な精度確保が求められ、専任の責任者配置と、精度確保の実施状況の記録・保存が求められます。詳細は厚生労働省の公表資料と、都道府県所管部局の通知をご確認ください。
Q5. 2021年施行の追加業務のうち、超音波造影剤投与を実施するには、既存の臨床検査技師も研修受講が必要ですか?
A. 厚生労働大臣指定講習の受講が要件となる業務については、既存の臨床検査技師であっても、追加業務を実施する場合は指定講習の受講が求められます。研修実施機関・カリキュラム・修了要件は、厚生労働省・実施団体の公表資料をご確認ください。院内での実施可否は、講習修了状況・院内医療安全管理体制・関連診療科との合意形成を踏まえた設計が求められます。

10. 関連内部リンク・次のステップ

中央検査部の運営は、院内感染対策・輸血管理・救急検査体制・診療報酬算定・BCPなど、複数の運営テーマと接続します。自院の状況に応じて、以下の関連記事も参考にしながら、体制整備と業務改善を並行して進めることが有用です。

11. 出典・参考資料

  • 厚生労働省「臨床検査技師等に関する法律」関連資料 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/index.html (取得日:2026-07-26)
  • 厚生労働省「医療機関等における検体検査の精度管理等について」(改正医療法関連通知) https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/rinshou/index.html (取得日:2026-07-26)
  • 厚生労働省「現行制度の下で実施可能な範囲におけるタスク・シフト/シェアの推進について(通知)」 https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000661509.pdf (取得日:2026-07-26)
  • 厚生労働省「医療従事者の需給に関する検討会/タスクシフト/シェア推進」関連資料 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_11340.html (取得日:2026-07-26)
  • 厚生労働省「令和6年度診療報酬改定」関連資料 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00037.html (取得日:2026-07-26)
  • 厚生労働省「医療法・医療提供体制」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/iryou_keikaku/index.html (取得日:2026-07-26)
  • 一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会「臨床検査精度管理調査」関連資料 https://www.jamt.or.jp/ (取得日:2026-07-26)
  • 公益社団法人 日本医師会「臨床検査精度管理調査」関連資料 https://www.med.or.jp/doctor/lab/ (取得日:2026-07-26)
  • 公益財団法人 日本適合性認定協会(JAB)「ISO15189 臨床検査室認定」 https://www.jab.or.jp/ (取得日:2026-07-26)
  • 一般社団法人 日本臨床化学会 https://jscc-jp.gr.jp/ (取得日:2026-07-26)

【免責事項】本記事は厚生労働省・一般社団法人日本臨床衛生検査技師会・公益社団法人日本医師会・公益財団法人日本適合性認定協会(JAB)・関連学会等の公開情報を整理することを目的としており、個別の検査項目の実施可否判断、施設基準の該当性判断、加算算定要件の適用可否判断、ISO15189認定取得判断を保証するものではありません。関係法令・告示・通知・診療報酬点数表・認定機関の規定は改正・改訂により見直されるため、個別判断は所定の専門人材(臨床検査技師会・認定機関・保険医療機関の指導部門等)と、厚生労働省・地方厚生局・関係学会にご確認ください。本記事の情報利用によって生じた損害について、mitoru編集部は責任を負いません。

最終更新日:2026年7月26日|編集方針

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