認知症対応型共同生活介護(グループホーム)運営完全ガイド【2026年版・指定要件/人員配置/介護報酬/医療連携】

📅公開日:2026-06-20
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認知症対応型共同生活介護(以下、グループホーム)は、認知症の状態にある要介護者を対象に、1ユニット5〜9人の少人数共同生活住居で食事・入浴・排せつ等の介護および機能訓練を行う地域密着型サービスです。介護保険制度上の位置づけは介護保険法第8条第20項(認知症対応型共同生活介護)および第8条の2第15項(介護予防認知症対応型共同生活介護)に規定され、市町村長が指定権者となる地域密着型サービスに区分されます。1ユニットあたり利用定員9人以下・1事業所あたり最大3ユニットという小規模性が制度上の特徴であり、家庭的な雰囲気の中で認知症ケアを提供するという理念に基づいて運用されています。

本記事は、グループホームの新規開設を検討する介護事業者・参入を検討する異業種事業者・既設グループホームの運営者向けに、厚生労働省告示・通知および社会保障審議会介護給付費分科会資料等の公開情報を整理した内容です。指定要件、人員配置基準、介護報酬の体系、医療連携体制、認知症ケアの質確保、看取り対応、2024年度(令和6年度)介護報酬改定の反映、2027年度(令和9年度)改定に向けた論点までを通しで解説します。

なお本記事は制度情報の整理を目的としており、個別事業所の指定申請代行・運営コンサルティング・加算算定の代行は行っておりません。指定申請の最終判断・解釈確認は各市町村の地域密着型サービス担当窓口および顧問の社労士・行政書士・税理士にご相談ください。医療行為に関する助言は行いません。

この記事でわかること

  • グループホーム(認知症対応型共同生活介護)の制度上の全体像と地域密着型サービスとしての位置づけ
  • 指定要件(1ユニット定員・共同生活住居・防火管理・立地・市町村公募)の整理
  • 人員配置基準(管理者・計画作成担当者・介護従業者)の根拠条文と実務運用
  • 介護報酬体系(基本報酬・主要加算・地域区分)の構造
  • 医療連携体制(協力医療機関・医療連携体制加算・訪問看護との連携)の要件
  • 認知症介護実践リーダー研修・認知症介護指導者研修の階層構造
  • 看取り介護加算と終末期対応の運営要件
  • 2024年度改定の主要論点と2027年度改定に向けた検討状況
  • 指定申請から開設までの実務スケジュール
  • 運営者・参入事業者からよくある質問への回答

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1. グループホーム制度の全体像

認知症対応型共同生活介護(グループホーム)は、2006年4月の介護保険法改正に伴い創設された「地域密着型サービス」の代表的サービスの一つです。地域密着型サービスは、原則として事業所が所在する市町村の住民のみが利用できるサービス類型であり、指定・指導監査の権限は都道府県ではなく市町村長にあります。介護保険法第42条の2に基づき、指定地域密着型サービス事業者は市町村長が指定する仕組みです。制度の趣旨と位置づけは厚生労働省「介護・高齢者福祉」および「地域包括ケアシステム」のページに整理されています。

厚生労働省「介護サービス施設・事業所調査」によれば、グループホーム(認知症対応型共同生活介護)の事業所数は全国で約1万4千事業所規模で推移しており、地域密着型サービスの中でも事業所数の多い類型に位置づけられます。1事業所あたりの利用定員は最大27人(9人×3ユニット)と小規模ですが、認知症高齢者数の増加を背景に、地域における認知症ケア提供基盤として位置づけられています。認知症施策の全体像は厚生労働省「認知症施策」に整理されています。

運営の基本指針となるのは、厚生労働省令「指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準」(平成18年厚生労働省令第34号)です。同省令の第7章(第89条〜第108条)に認知症対応型共同生活介護の運営基準が規定されており、指定要件・人員配置・設備基準・運営規程・記録の整備・身体的拘束等の禁止・苦情処理・事故発生時の対応など、運営上必要なすべての要件が条文化されています。条文本体はe-Gov法令検索「指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準」で参照可能です。

新規参入を検討する事業者にとって特に重要な制度上の特徴は、(1) 市町村長による指定(地域密着型サービス特有)、(2) 公募制(事業所を新設する場合、市町村の介護保険事業計画における整備計画に基づき公募が実施される自治体が多い)、(3) 利用対象の地域限定性、(4) 小規模性ゆえの収益構造の特性、(5) 認知症ケアに特化した人員要件、の5点です。一般的な介護事業所とは指定スキームが異なり、都道府県への申請ではなく市町村への申請である点を最初に押さえる必要があります。

2. 指定要件(1ユニット定員/共同生活住居/防火管理)

グループホームの指定要件は、前述の厚生労働省令第90条(基本方針)以下に規定されています。基本方針として「家庭的な環境と地域住民との交流の下で、入浴、排せつ、食事等の介護その他の日常生活上の世話及び機能訓練を行うことにより、利用者がその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう支援するものでなければならない」と定められており、家庭的環境と地域交流の確保が制度趣旨として明文化されています。

ユニット構成の要件は、(a) 1ユニットの利用定員は5人以上9人以下、(b) 1事業所のユニット数は3以下、(c) 各ユニットには居間・食堂・台所・浴室・消火設備その他必要な設備を備えること、(d) 居室は原則個室(夫婦等で同室入居を希望する場合は2人部屋も可)でおおむね7.43平方メートル以上、(e) 居間及び食堂は同一の場所とすることができる、と整理されています。共同生活住居の構造は「家庭的な雰囲気」を制度的に担保する設計となっており、長い廊下と居室が並ぶ施設型レイアウトとは異なる設計思想です。

立地に関しては、入居者の家族や地域住民との交流の機会が確保される地域にあることが求められます。利用対象者は事業所所在地市町村の被保険者が原則であり、隣接市町村住民の利用には市町村間の協議が必要です。新規開設においては、市町村の介護保険事業計画における地域密着型サービスの整備計画と整合的であることが事実上の前提となり、計画外での新設は指定を受けにくい運用が一般的です。地域包括ケアシステム下での整備計画の考え方は厚生労働省「地域包括ケアシステム」に整理されています。

防火管理は新規参入時に見落とされやすい論点です。グループホームは消防法上の「(6)項ロ」に該当する社会福祉施設として、原則としてスプリンクラー設備の設置が求められます(延べ面積による段階的経過措置あり)。これは2006年長崎県大村市・2010年札幌市・2013年長崎市等のグループホーム火災事故を受けて消防法施行令が改正された結果であり、自動火災報知設備・消火器・誘導灯・避難経路の確保等、消防用設備等の基準が一般住宅より厳格に設定されています。建築計画段階で所轄消防署との事前協議が必須であり、消防同意なしには建築確認が下りません。消防法令の概要は総務省消防庁「予防行政」の関連通知で公開されています。

建築基準法上は、グループホームは原則「寄宿舎」または「児童福祉施設等(高齢者グループホームを含む)」として扱われます。用途地域上の建築可否、耐火構造要件、避難経路、廊下幅・階段幅等の規制が一般住宅と異なるため、既存住宅の用途変更による開設は構造改修コストが想定外に膨らむケースが多く、新築または事業用建物の活用が選択肢として現実的です。詳細は所管行政庁の建築指導課に事前相談することが推奨されます。

3. 人員配置基準(管理者/計画作成担当者/介護従業者)

グループホームの人員配置基準は、厚生労働省令第90条第1項(従業者の員数)に規定されています。主要な配置区分は (a) 介護従業者、(b) 計画作成担当者、(c) 管理者、(d) 代表者、の4区分です。各区分の要件は次の通りです。

介護従業者は、利用者3人またはその端数を増すごとに1人以上を配置する(常勤換算)。夜間及び深夜の時間帯を除く時間帯では、1ユニットごとに常時1人以上の介護従業者を配置することが求められます。さらに夜間及び深夜の時間帯は、1ユニットごとに常時1人以上の宿直または夜勤の介護従業者を置くことが必要です(2ユニット隣接配置で兼務可とする取扱いは2021年度改定で条件付きで一部緩和)。介護福祉士・初任者研修以上・実務者研修修了等の資格要件は介護従業者全員に課されてはいませんが、認知症介護基礎研修の修了は2024年4月から原則必須化されています(経過措置を経て本格適用)。

計画作成担当者は、ユニットごとに1人以上配置することが必要で、うち1人は介護支援専門員(ケアマネジャー)であることが求められます。3ユニット事業所の場合、3人の計画作成担当者のうち少なくとも1人が介護支援専門員、残り2人は「認知症介護実践者研修」修了者で介護従業者の経験を有する者であれば可、という構成が一般的です。計画作成担当者は認知症対応型共同生活介護計画(ケアプランに相当)の作成・モニタリング・サービス担当者会議の開催を担います。

管理者は、ユニットごとに専従の常勤管理者の配置が求められます(一定の条件下で他職務との兼務可)。要件は (1) 特別養護老人ホーム、老人デイサービスセンター、認知症対応型共同生活介護事業所等で3年以上認知症介護に従事した経験があり、(2)「認知症対応型サービス事業管理者研修」を修了している者、と規定されています。「認知症対応型サービス事業管理者研修」は都道府県または指定研修事業者が実施する研修で、開設前または開設後速やかな受講が指定要件上重要です。

代表者(法人の代表者または事業所運営を実質的に統括する役員等)も要件があり、(1) 認知症高齢者の介護従事経験または認知症ケアに関する事業の経営経験があり、(2)「認知症対応型サービス事業開設者研修」を修了している者である必要があります。法人代表者と現場管理者が別人の場合、両者ともそれぞれの研修要件を満たす必要があります。これらの研修制度の枠組みは厚生労働省「認知症施策」配下の認知症介護研修体系で示されています。

夜勤体制については、近年の運営基準改正により、利用者の安全確保等の条件を満たす場合に2ユニットを1人で対応する取扱いの可否や、ICT・見守り機器の活用と組み合わせた人員配置の柔軟化が論点となっています。具体的な要件は告示・通知で詳細に定められており、自事業所のケースに該当するかは市町村の地域密着型サービス担当窓口に事前確認することが運用上の現実解です。

4. 介護報酬体系(基本報酬と加算)

グループホームの介護報酬は、要介護度別の1日あたり単位数(基本報酬)に各種加算・減算を積算する構造です。基本報酬は1ユニット運営・2ユニット以上運営・短期利用認知症対応型共同生活介護の区分があり、要介護1〜5までの段階別に単位数が設定されています。要支援2を対象とする介護予防認知症対応型共同生活介護の単位数は別建てです。具体的な単位数は厚生労働省「令和6年度介護報酬改定について」の告示で確認できます。

主要な加算は、以下のような項目で構成されます(2024年度改定後)。

  • 夜間支援体制加算(I・II):夜勤職員の配置・宿直職員の追加配置を評価する加算
  • 認知症専門ケア加算(I・II):認知症介護実践リーダー研修修了者・認知症介護指導者研修修了者の配置と認知症ケアに関する事業所内研修体制を評価
  • 医療連携体制加算(I・II・III):協力医療機関との連携体制および看護職員(看護師・准看護師)の確保状況を評価
  • 看取り介護加算:終末期の利用者に対する介護を医療機関・家族との連携のもとで提供する体制を評価
  • 初期加算:入居後30日以内の介護計画作成・初期対応を評価
  • 退居時情報提供加算:退居先施設・医療機関への情報提供を評価
  • 口腔・栄養スクリーニング加算:定期的な口腔・栄養状態のスクリーニング実施を評価
  • 科学的介護推進体制加算:LIFE(科学的介護情報システム)へのデータ提出とフィードバック活用を評価
  • 介護職員等処遇改善加算(I〜IV):2024年度改定で3区分から4区分の新加算へ統合された処遇改善関連加算
  • サービス提供体制強化加算(I・II・III):介護福祉士の配置割合・勤続年数等を評価

主要な減算は、(1) 身体拘束廃止未実施減算、(2) 高齢者虐待防止措置未実施減算、(3) BCP(業務継続計画)未策定減算、(4) 感染症対策計画未策定減算、(5) 定員超過利用減算、(6) 人員基準欠如減算、です。BCP・感染症対策計画関連減算は2021年度改定で導入された3年間の経過措置(2024年3月31日まで)の終了に伴い、2024年4月以降本格適用された項目です(地域密着型サービスの一部については2025年3月31日までの追加経過措置あり)。詳細は厚生労働省「介護施設・事業所における業務継続ガイドライン等」で整理されています。

地域区分による単価補正も収支に影響します。介護報酬の1単位の単価は、地域別・サービス類型別に7区分(1級地〜7級地)・その他地域で定められており、認知症対応型共同生活介護は人件費比率の高いサービスとして単価設定されています。1級地(東京23区等)と「その他」地域では1単位あたり数円の差が生じるため、立地により同じ単位数でも実額が異なります。地域区分は厚生労働省「介護保険最新情報」配下の関連通知で確認可能です。

5. 医療連携体制(協力医療機関/訪問看護)

グループホームには医師・看護職員の配置義務がないため、医療面の支援は外部の医療機関との連携で確保する制度設計です。運営基準では、(a) 入居者の主治医との連携体制を整えること、(b) 協力医療機関を定めておくこと、(c) 協力歯科医療機関を定めるよう努めること、が求められます。協力医療機関は、利用者の病状の急変等に対応できる体制を有することが要件で、実務的には在宅療養支援診療所等との連携が一般的です。

医療連携体制加算(I・II・III)は、看護職員の確保状況により段階的に評価される加算です。区分Iは事業所職員または病院・診療所・訪問看護ステーション等の看護職員(看護師)を1人以上確保し、看護職員により24時間連絡体制を確保している場合、区分IIは加えて医療的ケアが必要な利用者を1人以上受け入れている場合、区分IIIは医療的ケアの実績が一定水準以上ある場合、という構造です。具体的な要件・単位数は2024年度改定の告示で示されています。

訪問看護ステーションとの連携は、特に医療依存度の高い利用者を受け入れる場合や看取り介護を実施する場合に重要となります。介護保険と医療保険の給付調整の整理が必要で、グループホーム入居者への訪問看護は原則として介護報酬の医療連携体制加算で評価される枠組みのため、訪問看護ステーションからの訪問看護料の請求は原則行わない取扱いです(ただし末期がん利用者等、医療保険からの訪問看護が認められるケースあり)。詳細は厚生労働省「訪問看護」配下の関連通知で確認できます。

協力医療機関契約の実務的論点としては、(1) 24時間連絡対応可能な体制の確保、(2) 入院が必要な場合の受入可否、(3) 往診体制の有無、(4) 主治医意見書の作成協力、(5) 看取り対応への協力姿勢、の5点を契約前に明確化することが、利用者の状態急変時の対応スピードに直結します。診療報酬上の在宅療養支援診療所・在宅療養支援病院との連携は、24時間連絡体制・往診体制が制度的に担保されているため、現実的な選択肢となります。

6. 認知症ケアの質確保(実践者研修/実践リーダー研修/指導者研修)

認知症ケアの質確保は、グループホーム制度の根幹に位置づけられる論点です。厚生労働省が体系化している認知症介護研修体系は、(1) 認知症介護基礎研修、(2) 認知症介護実践者研修、(3) 認知症介護実践リーダー研修、(4) 認知症介護指導者研修、の4階層構造で構成されます。それぞれの位置づけと役割は、厚生労働省「認知症施策」配下の認知症介護研修ページに整理されています。

認知症介護基礎研修は、無資格の介護職員を含む直接介護に従事する全職員を対象とする研修で、2024年4月から介護に直接携わる職員への受講が原則義務化されました(一定の経過措置あり)。eラーニング形式で受講可能で、認知症の基礎理解と基本ケアを学ぶ位置づけです。

認知症介護実践者研修は、認知症ケアの実践力を高めるための研修で、グループホームの計画作成担当者(介護支援専門員以外)の要件として位置づけられています。集合研修と演習を組み合わせた構成で、修了後は計画作成担当者として配置可能となります。

認知症介護実践リーダー研修は、事業所内で認知症ケアの実践指導を担うリーダー職員を育成する研修です。認知症専門ケア加算(I)の算定要件として、認知症介護実践リーダー研修修了者の配置が求められます。具体的には、利用者の総数のうち日常生活自立度のランクIII、IV、Mに該当する者の割合が一定割合以上であること、認知症介護実践リーダー研修修了者を一定数配置していること、事業所全体の認知症ケアに関する研修計画を策定し実施していること、等が要件として整理されています。

認知症介護指導者研修は、認知症介護研修の企画・運営・講師を担う指導者を育成する研修で、認知症介護研究・研修センター(東京・大府・仙台)で実施されます。認知症専門ケア加算(II)の算定要件として、指導者研修修了者の配置が位置づけられています。事業所単位での配置はハードルが高いため、法人内で複数事業所を運営する事業者が法人本部に配置するケースが現実的な運用です。

身体的拘束等の適正化は、認知症ケアの質と表裏の関係にある運営上の重要論点です。運営基準では、(1) 身体的拘束の原則禁止(緊急やむを得ない場合の3要件「切迫性・非代替性・一時性」の充足時のみ可)、(2) 身体的拘束等の適正化のための委員会を3か月に1回以上開催すること、(3) 適正化のための指針を整備すること、(4) 職員研修を定期的に実施すること、が求められます。これらが実施されていない場合は身体拘束廃止未実施減算の対象となります。記録・委員会議事録・研修記録の保管は指導監査対応の前提です。

7. 看取り対応(看取り介護加算)

グループホームでの看取りは、住み慣れた環境で人生の最終段階を過ごしたいという利用者・家族の希望に応える対応として位置づけられ、看取り介護加算によって評価されています。看取り介護加算は、(a) 医師が一般に認められている医学的知見に基づき回復の見込みがないと診断した利用者であること、(b) 医師・看護職員・介護職員・介護支援専門員等が共同で作成した利用者の介護に関する計画について利用者または家族等の同意を得ていること、(c) 計画について随時の見直しを実施していること、等の要件のもとで算定可能です。

看取り介護加算を算定する事業所は、(1) 看取りに関する指針の整備、(2) 看取りに関する職員研修の実施、(3) 利用者の希望および家族の意向を確認する仕組みの整備、(4) 個別の看取り介護計画の作成、(5) 看取り後のグリーフケア(家族支援)、(6) 看取り事例の振り返り、を運用に組み込むことが運営上必要となります。看取り対応の制度設計の背景には、人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドラインがあり、厚生労働省「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」(厚生労働省策定)が判断の基準として参照されます。

看取り実施における協力医療機関との連携は重要です。死亡診断書の交付は医師の業務であり、グループホーム内で看取りを行う場合、24時間以内に医師が診察可能な体制または連絡体制が必要です。協力医療機関契約の段階で看取り対応の方針を確認し、夜間・休日の対応体制を文書化しておくことが、実施時の混乱を避ける運用となります。事業所職員には、看取りに伴う心理的負担への配慮(職員へのデブリーフィング・カウンセリング機会の確保)も運営上の論点として位置づけられます。

8. 2024年度介護報酬改定の影響と2027年度改定見込み

2024年度(令和6年度)介護報酬改定は、+1.59%(介護職員の処遇改善分+0.98%、その他+0.61%)の改定率で、診療報酬・障害福祉サービス等報酬の同時改定(トリプル改定)として施行されました。グループホームに関連する主な改定論点は、(1) 認知症対応力向上の取組評価、(2) 医療連携体制加算の見直し、(3) 短期利用認知症対応型共同生活介護の見直し、(4) 業務継続計画未策定減算・感染症対策計画未策定減算・身体拘束廃止未実施減算・高齢者虐待防止措置未実施減算の本格適用、(5) 処遇改善加算の3区分から4区分の新加算への統合、(6) 科学的介護推進体制加算の対象拡大、等です。改定の詳細は厚生労働省「令和6年度介護報酬改定について」で告示・通知・Q&Aが順次公開されています。

処遇改善関連の改定は、グループホーム運営者にとって人件費・職員処遇の設計に直接影響します。旧3加算(介護職員処遇改善加算・特定処遇改善加算・ベースアップ等支援加算)が「介護職員等処遇改善加算(I〜IV)」に統合され、新加算の区分判定と賃金改善計画書の新様式での届出が必要となりました。具体的な切替手続きは厚生労働省「介護職員等処遇改善加算等」のQ&Aで整理されています。

科学的介護情報システム(LIFE)は、認知症対応型共同生活介護も対象サービスに含まれます。LIFEへのデータ提出とフィードバック活用により科学的介護推進体制加算が算定可能で、加算対象は2024年度改定でさらに整理されました。LIFE活用の制度趣旨と運用は厚生労働省「科学的介護情報システム(LIFE)」で公開されています。介護記録ソフトのLIFE連携機能のバージョン更新・提出担当者の明確化・多職種カンファレンスでのフィードバック活用、がデータ提出・活用の運用上のポイントです。

2027年度(令和9年度)改定に向けた検討は、社会保障審議会介護給付費分科会で順次行われます。2024年度改定の効果検証、認知症ケアの一層の評価、医療と介護の連携強化、ICT・介護ロボット活用評価のさらなる進展、地域差を踏まえた基準の見直し、等が論点として想定されますが、具体的な改定内容は今後の分科会審議によって決定されます。最新の検討状況は厚生労働省「社会保障審議会介護給付費分科会」の資料で確認可能です。改定見込みを断定的に語ることは適切ではなく、分科会資料を継続的にフォローする運用が事業者対応の現実解となります。

9. 指定申請から開設までの実務スケジュール

新規開設の実務フローは、(1) 市町村介護保険事業計画の整備計画確認、(2) 公募への応募または事前相談、(3) 法人設立または定款変更、(4) 用地確保・建築計画、(5) 所轄消防・建築指導課・地域密着型サービス担当課との事前協議、(6) 建築確認・建築工事、(7) 認知症対応型サービス事業開設者研修・管理者研修・実践者研修等の修了、(8) 人員採用・教育、(9) 指定申請書類提出、(10) 現地調査、(11) 指定告示・運営開始、という流れが標準です。全体で18〜24か月程度を見込むケースが多く、研修受講のスケジューリングと公募タイミングが律速要因となる傾向があります。

指定申請書類は市町村ごとに様式が定められており、(a) 指定申請書、(b) 法人登記事項証明書、(c) 事業所の図面、(d) 運営規程、(e) 従業者の勤務体制・勤務形態一覧表、(f) 管理者・計画作成担当者の経歴書・研修修了証、(g) 協力医療機関等の承諾書、(h) 消防検査結果通知書、(i) 建物の登記事項証明書または賃貸借契約書、(j) 損害賠償保険加入を証する書類、等が一般的な提出書類です。様式・添付書類は市町村により細部が異なるため、所管市町村のHPまたは窓口で最新様式を確認することが運用上の出発点となります。

開設初年度は稼働率の立ち上がりに時間を要する傾向があります。1ユニット9人・3ユニット27人の小規模性ゆえに、満床到達までのリードタイムが収支に大きく影響します。地域包括支援センター・居宅介護支援事業所・医療機関等のケアマネジャー・MSW・地域のかかりつけ医との関係構築、見学受入体制、入居判定基準の透明化、家族向け説明資料の整備、等の入居促進策が運営初期の中心課題となります。

10. よくある質問(FAQ)

Q1. グループホームの利用対象者は要介護度何から何までですか?
A. 認知症対応型共同生活介護の利用対象は、要介護1以上で認知症の診断を受けた者です。認知症は介護保険法施行令で定義され、医師の診断が前提となります。要支援2の者を対象とする「介護予防認知症対応型共同生活介護」は別建ての制度で、こちらも利用可能ですが算定単位数等は介護給付と異なります。要介護認定区分と認知症診断の組合せにより利用可否が決まる構造です。
Q2. 既存の戸建て住宅を改修してグループホームを開設できますか?
A. 建築基準法上の用途変更・消防法上の防火設備要件・厚生労働省令の設備基準(居室面積・共用部・浴室等)を満たす必要があり、既存住宅の改修開設は構造改修コストが想定以上に膨らむケースが多い形態です。スプリンクラー設備の後付けは費用が大きくなる傾向にあり、廊下幅・階段幅・耐火構造等の建築基準法上の要件充足が困難となる場合もあります。所轄行政庁の建築指導課・所轄消防署との事前協議で改修可能性と概算費用を見極めることが、判断の出発点となります。
Q3. 管理者要件の「認知症対応型サービス事業管理者研修」はどこで受講できますか?
A. 各都道府県および指定研修事業者が実施しており、年間の開催回数・募集時期は都道府県により異なります。開設準備段階で都道府県の認知症介護研修担当窓口に問い合わせ、開催スケジュールを確認のうえ計画的な受講申込みが運営開始時期の前提となります。研修体系の全体像は厚生労働省「認知症施策」で整理されています。
Q4. 医療連携体制加算を算定するには専従の看護師雇用が必須ですか?
A. 専従雇用は必須ではありません。事業所職員として雇用する形態のほか、病院・診療所・訪問看護ステーション等の看護職員との連携契約により確保する形態も認められています。区分(I・II・III)により要件が異なり、医療的ケアの実績が要件化されている区分もあります。具体的な要件は厚生労働省「令和6年度介護報酬改定について」の告示・通知で確認してください。
Q5. グループホームでの看取りは医師の常駐が必要ですか?
A. 医師の常駐は必要ありません。グループホームは医師・看護職員の配置義務がなく、看取り対応は協力医療機関・主治医・訪問看護ステーション等との連携のもとで実施します。死亡診断書の交付は医師の業務のため、夜間・休日の医師の連絡体制・診察可能体制を協力医療機関との契約段階で文書化しておく運用が、実施時の混乱を避ける前提となります。看取りに関する指針整備・職員研修・家族との合意形成等の要件は看取り介護加算の算定要件として整理されています。

11. 関連内部リンク・次のステップ

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12. 出典・参考資料

本記事は2026年6月時点の公開情報を整理した内容です。介護報酬・運営基準・指定要件の解釈は告示・通知・Q&Aの追加発出により逐次更新されるため、最終的な算定可否・指定可否は所管市町村の地域密着型サービス担当窓口・都道府県の介護保険担当課にご確認ください。記載内容に誤りや更新が必要な箇所がある場合は、mitoru編集部「訂正・更新履歴」窓口までご連絡ください。

最終更新日:2026年6月20日編集方針

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