特定処遇改善加算・介護職員等ベースアップ支援加算運用 完全ガイド【2026年版・一本化/賃金改善/実績報告】

📅公開日:2026-08-31

※本記事には広告(PR)が含まれます。mitoru編集部は公開情報を整理して比較・解説しており、表示順位や評価は広告主からの依頼ではなく編集部の独自判断によります。

本記事は、2024年度(令和6年度)介護報酬改定で一本化された「介護職員等処遇改善加算」の運用について、公開情報を整理した内容です。特に旧「介護職員等特定処遇改善加算」と旧「介護職員等ベースアップ等支援加算」が新加算にどのように吸収されたか、賃金改善計画書・実績報告書で押さえるべき論点、経過措置終了後の運用の勘所を、厚生労働省告示・通知・QA集をベースに解説します。個別事業所の申請代行・コンサルティング・返還額の試算等は行っておらず、実務判断は指定権者および顧問社労士へご確認ください。

この記事でわかること

  • 旧「特定処遇改善加算」の位置付けと配分ルール(経験・技能のある介護職員への重点配分)
  • 旧「介護職員等ベースアップ等支援加算」の成立経緯と月額賃金要件の意味
  • 2024年6月施行の一本化(新「介護職員等処遇改善加算」加算I〜IV)と経過措置
  • 旧3加算から新加算への読み替え表と、算定率の実務的な捉え方
  • 賃金改善計画書の記載ポイント(配分方法・職種横断配分・月額要件)
  • 実績報告書の提出期限・添付資料・不足額発生時の取り扱い
  • 移行時に現場で頻発する論点(就業規則改定・手当名称・非常勤配分)
  • FAQ(区分変更・年度途中の見直し・未算定期間の遡及)

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1. 旧「特定処遇改善加算」とは — 経験・技能重点配分の趣旨

介護職員等特定処遇改善加算は、2019年10月の消費税引き上げに伴う社会保障充実策の一環として創設された加算です。従来の介護職員処遇改善加算が「介護職員全体の賃金水準の底上げ」を目的としていたのに対し、特定処遇改善加算は「経験・技能のある介護福祉士」への重点配分を軸に据え、リーダー級職員の処遇を他産業と比較して遜色ない水準に引き上げることを狙いとしていました。

配分ルールとして、経験・技能のある介護職員(勤続10年以上の介護福祉士を基本としつつ事業所が独自基準を設定可能)、その他の介護職員、その他職種の3グループを設定し、各グループの平均処遇改善額の比率に制約が設けられていました(例えば経験・技能グループとその他介護職員グループの比率、その他職種への配分上限など)。この配分ルールが事務負担の一因となっていた点が、後の一本化議論の伏線でもあります。

算定要件では、既存の介護職員処遇改善加算I〜IIIを取得していること、職場環境等要件について複数区分での取組を実施していること、加算を取得している事実および賃金改善実施の見える化(ホームページ等での公表)を行っていることが求められました。加算I(サービス種別ごとに算定率が異なる)と加算II(配分ルールが緩和される代わりに算定率が下がる)の2区分で運用されてきました。

2. 旧「ベースアップ等支援加算」とは — コロナ禍賃金対策の恒久化

介護職員等ベースアップ等支援加算は、2022年2月から9月まで実施された「介護職員処遇改善支援補助金」を後継する形で、同年10月に加算化された制度です。新型コロナウイルス感染症への対応で人材確保が課題化した局面において、収入を月額平均9,000円相当引き上げるための恒久財源として位置付けられました。

この加算で特徴的だったのが「加算額の3分の2以上を基本給または毎月支給される手当として支給する」という月額賃金改善要件です。従前の処遇改善加算・特定処遇改善加算では一時金・賞与への充当割合について明確な下限がなく、事業所判断で月額と一時金のバランスを調整できていました。ベースアップ支援加算は、月々の給与としての賃金水準そのものを引き上げる意図を要件に落とし込んだ点が新しかったといえます。

算定要件は既存の処遇改善加算I〜IIIを取得していること、賃金改善計画書・実績報告書の提出、月額賃金改善要件の充足に集約され、シンプルな設計となっていました。一方で、事業所側は旧3加算(処遇改善・特定処遇改善・ベースアップ支援)をそれぞれ別立てで申請・報告する必要があり、書類作成の重複や配分計画の整合性確保が新たな事務課題として浮上しました。

3. 2024年改定による一本化 — 新加算の全体像

2024年度介護報酬改定では、旧3加算を統合した「介護職員等処遇改善加算」が創設され、2024年6月1日から施行されました。新加算は加算I(最上位)から加算IV(下位)までの4区分で構成され、上位区分ほど算定率が高く要件も厳しくなる階層構造を採ります。旧3加算の要件と算定率が新加算の各区分に再編成される形で移管されました。

一本化の主な狙いは、(1) 事業所の申請・報告事務の負担軽減、(2) 加算取得率の低い小規模事業所へのエントリーポイント整備、(3) 配分ルールの柔軟化による職種横断の賃金改善の実現、の3点です。旧特定処遇改善加算のグループ間比率制約は廃止され、介護職員以外への配分上限も撤廃されました。事業所内の職種構成に応じた柔軟な配分計画が可能になった一方、配分方針の説明責任は事業所側により強く求められる形になっています。

2024年度中(2024年6月〜2025年3月)は経過措置として、旧3加算の区分をそのまま維持して算定を継続する選択肢が用意されました。2025年4月からは新加算への完全移行が原則となり、旧区分の継続算定は認められません。2026年度時点では新加算のみが標準運用となっています。

4. 旧加算と新加算の対応関係 — 読み替え表

旧3加算をどの区分で組み合わせていたかによって、新加算のどの区分が実質的な後継となるかが変わります。以下の対応表は厚生労働省の「介護職員等処遇改善加算等に関するリーフレット」および告示改正の趣旨から整理したものです。あくまで概略の対応であり、実際の要件充足は各区分の詳細要件で判断してください。

旧3加算の組み合わせ新加算の概ねの対応区分移行時の注意点
処遇改善加算I+特定処遇改善加算I+ベースアップ支援加算新加算Iキャリアパス要件V(見える化)の新規充足が必要
処遇改善加算I+特定処遇改善加算II+ベースアップ支援加算新加算II月額賃金改善要件の差額計算方法が変更
処遇改善加算I+ベースアップ支援加算のみ(特定なし)新加算III特定処遇改善加算相当の追加算定余地あり
処遇改善加算II/IIIのみ新加算IVまたは要件追加でIIIキャリアパス要件・職場環境等要件の追加充足で上位区分へ移行可能

算定率については、旧3加算の合算率と新加算区分の率を比較して大きな差が生じないよう設計されていますが、サービス種別によっては微増・微減が発生します。移行時には自事業所のサービス種別ごとの新旧算定率を告示で確認し、月次収入への影響を試算しておくことが推奨されます。

5. 賃金改善計画書 — 一本化後の実務ポイント

賃金改善計画書は、毎年度の加算算定を開始する前に指定権者(都道府県または市区町村)へ提出する書類です。原則として算定開始月の前々月末が提出期限となり、年度当初(4月)から算定する場合は2月末が期限となります。一本化により様式が刷新され、旧3加算で個別に提出していた計画書が1つに統合されました。

記載時に押さえるべき論点

  • 配分方針の説明:介護職員と介護職員以外への配分割合の考え方、経験・技能のある職員への配慮の有無を記載
  • 月額賃金改善要件の充足方法:加算II〜Iでは加算区分間差額の3分の2以上を月額賃金に充てる根拠となる金額計算を明記
  • キャリアパス要件の充足内容:I(任用要件・賃金体系)、II(研修計画)、III(昇給の仕組み)、IV(月額8万円改善または年収440万円配置)、V(介護福祉士配置割合等の見える化)
  • 職場環境等要件の実施状況:入職促進・資質向上・両立支援・腰痛対策・生産性向上・やりがい醸成等の複数領域から実施した具体的取組
  • 周知方法:職員への計画周知の日付・方法(掲示・書面配布・説明会等)

特に月額賃金改善要件は、旧ベースアップ支援加算の趣旨を新加算II・Iで引き継いだ形になっており、一時金や賞与のみへの充当では要件を満たせません。基本給の引き上げまたは毎月支給する処遇改善手当の新設・増額として組み立てる必要があります。

6. 実績報告書 — 提出時期と不足額の取り扱い

実績報告書は、加算算定を実施した年度が終了した後、原則として翌年度の7月末までに指定権者へ提出します。前年度に算定した加算総額と、実際に賃金改善に充てた総額を対比し、要件充足状況を報告する書類です。一本化により、旧3加算で別々に提出していた実績報告も1つの様式に統合されました。

添付・保管が求められる主な資料

  • 賃金台帳(1年分・配分対象職員全員)
  • 源泉徴収簿および給与明細の控え
  • 就業規則・賃金規程の改定履歴
  • 職場環境等要件で実施した取組の記録(研修受講記録・会議議事録・購入備品の請求書等)
  • 職員への周知記録(掲示写真・書面配布記録・説明会議事録)

賃金改善実績額が加算算定額を下回った場合、原則として不足分は返還対象となります。ただし「翌年度に不足額を上乗せして賃金改善を実施する」旨を実績報告書に記載することで、返還を回避できるケースがあります。返還または翌年度上乗せのどちらを選択するかは、事業所の資金繰りと職員配分の継続性を踏まえて判断します。判断に迷う場合は指定権者への事前相談が安全です。

また、月額賃金改善要件の不足(加算区分間差額の3分の2未満しか月額賃金に充てていない場合)は、実績報告時に検出されると要件不充足として当該年度の加算区分算定が否認される可能性があります。年度途中のモニタリングで、月額支給額の累計と要件下限を四半期ごとに突合しておく運用が有効です。

7. 移行時に頻発する論点・注意点

論点1:就業規則・賃金規程の改定が追い付かない

新加算では月額賃金改善要件が上位区分の必須条件となるため、既存の一時金中心の配分から月額手当中心の配分へ切り替える事業所が増えました。この場合、就業規則・賃金規程の改定と労働基準監督署への届出(常時10人以上の事業所)が必要です。改定手続きが遅れると、実績報告時に要件充足の根拠資料が不足する形になります。年度切替に合わせた改定スケジュールを、社労士と早めに調整することが推奨されます。

論点2:手当名称の統一と給与明細への反映

旧3加算時代は「処遇改善手当」「特定処遇改善手当」「ベースアップ手当」を給与明細で別建て表示していた事業所も多く見られました。一本化後は「処遇改善手当」1本に統合して表示する運用が主流になりつつありますが、既存の給与ソフトの項目設定変更・年末調整書類との整合が必要です。統合表示への切替時期は年度当初または賞与月に合わせる事業所が多いです。

論点3:非常勤・短時間職員への配分方針

非常勤・短時間職員への配分は、常勤換算での按分または勤務時間比率での按分が一般的です。「非常勤を一律に配分対象外とする」運用は合理的説明が困難とされており、パート職員が多い事業所では配分方針の記載を丁寧に整えておく必要があります。労働契約法上の同一労働同一賃金の観点からも、配分ルールの透明性は年々重要度が増しています。

論点4:新規事業所・年度途中開設の計画書作成

新規開設事業所では前年度の算定実績がないため、計画書に記載する加算見込額は事業計画に基づく試算値となります。試算精度を上げるためには、同一法人内の類似事業所の実績、指定申請時に提出したサービス提供量見込み、地域区分の単価等をもとに、月別・サービス区分別の加算見込額を丁寧に組み立てる必要があります。年度途中開設の場合は算定開始月から年度末までの月数で試算します。

8. よくある質問(FAQ)

Q1. 2024年度中に旧3加算の区分で算定していた場合、2025年度の新加算区分は自動で決まりますか?
自動的には決まりません。2025年4月からの新加算算定に向けて、事業所側で新加算のどの区分を目指すかを決定し、2025年2月末までに賃金改善計画書を提出する手続きが必要です。旧3加算の組み合わせと新加算区分の対応は概ね決まっているものの、キャリアパス要件V(見える化)等の追加要件により実際に取得可能な区分は変動する場合があります。
Q2. 年度途中で加算IVから加算IIIに区分変更したいのですが可能ですか?
可能です。上位区分の要件を充足したうえで変更届出を提出し、賃金改善計画書を修正して再提出する流れとなります。算定開始月は届出受理月の翌々月が一般的です。年度途中の変更は職員への周知・配分計画の再組立てが発生するため、実務上は年度切替(4月)に合わせる事業所が多いです。
Q3. 経過措置期間中に旧特定処遇改善加算IIで算定していた分は、新加算のどこに対応しますか?
旧処遇改善加算・特定処遇改善加算・ベースアップ支援加算の組み合わせと新加算区分の対応は、厚生労働省のリーフレットで概略が示されています。旧特定処遇改善加算IIの組み合わせは新加算II相当となるケースが多いですが、キャリアパス要件・職場環境等要件の充足状況によって実際の取得可能区分が変わります。指定権者に事前相談し、計画書提出前に確認する運用が推奨されます。
Q4. 実績報告書の提出期限に間に合わない場合はどうなりますか?
提出期限(原則7月末)を過ぎると、指導監査対象となる場合があります。やむを得ない事情がある場合は速やかに指定権者に相談してください。長期未提出は当該年度の加算全額返還の対象となる可能性もあるため、期限管理は年間の運用スケジュールに組み込んでおくことが重要です。
Q5. 一本化後も、旧ベースアップ支援加算のような月額賃金要件は残っていますか?
残っています。新加算I・IIでは、加算区分間の差額の3分の2以上を月額賃金として支給する要件が定められています。旧ベースアップ支援加算の趣旨(月々の給与水準そのものの引き上げ)が新加算の上位区分に組み込まれた形です。加算IIIでは緩和された要件、加算IVでは要件そのものが緩やかに設定されています。
Q6. 過去に算定していなかった期間について、遡って加算を算定できますか?
原則として遡及算定はできません。加算算定は計画書提出・受理を経て、受理月の翌々月からの適用となります。過去の未算定期間分は取り戻せない前提で、今後の算定を早期に開始する方向で運用計画を組むことになります。

9. 出典・参考資料

本記事は2026年8月時点の公開情報を整理した一般的な案内です。加算要件・算定率・様式は告示改正・通知改正により変更される場合があります。最新情報は以下の公式情報をご確認ください。

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出典

  1. 厚生労働省「介護職員等処遇改善加算等について」
    https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000207416_00008.html
  2. 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定について」
    https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_37893.html
  3. 厚生労働省「介護職員の処遇改善」(介護保険制度における処遇改善加算等について)
    https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/nintei/index.html
  4. 厚生労働省「介護分野における人材確保のための取組について」
    https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/jinzai/index.html
  5. 厚生労働省「処遇改善加算等に関するよくあるご質問(QA集)」
    https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000207416_00008.html
  6. 厚生労働省「介護給付費等実態統計」
    https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/45-1.html

免責事項

本記事は2026年8月時点の公開情報を整理した一般的な案内です。介護報酬告示・施行通知・QA等は随時改正されるため、最新の要件・算定率・様式は厚生労働省ホームページ、各都道府県・市区町村の介護保険主管課にご確認ください。本記事は加算申請の代行・コンサルティング・返還額の試算等の請負を行うものではなく、個別事業所への適用可否の判断は顧問社労士・行政書士・指定権者への事前相談を推奨します。本記事の情報に基づく判断で生じた損害について、当編集部は責任を負いません。

最終更新日:2026年8月31日|情報取得日:2026年8月31日|mitoru編集部

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