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訪問看護ステーションでは、医師が交付する手順書に基づき一定の診療の補助(特定行為)を行うことができる看護師の活用が、在宅医療の担い手不足を補う選択肢として注目されています。特定行為研修制度は2015年10月に保健師助産師看護師法の改正を受けて創設され、38行為が21区分に整理されています(出典:厚生労働省「特定行為に係る看護師の研修制度」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000077077.html)。訪問看護の現場では、気管カニューレの交換や胃ろうカテーテルの管理、褥瘡の壊死組織除去など、医師の訪問を待たずに看護師が対応できる場面が増えることで、利用者・家族の負担軽減や在宅療養の継続性向上につながる可能性があります。一方で、研修機関の選定・費用負担・手順書の整備・医師との連携体制の構築など、事業所として準備すべき事項は多岐にわたります。本記事は、厚生労働省等の公開情報を整理した内容として、特定行為研修修了看護師を訪問看護ステーションで活用するための制度理解と実務のポイントを解説します。個別の算定可否・制度適用の詳細は、地方厚生局・都道府県・所属団体への確認や、最新の告示・通知を参照してください。
この記事でわかること
- 特定行為研修制度の全体像(21区分38行為)
- 訪問看護で頻用される特定行為区分(気管カニューレ交換・胃ろう管理・創傷管理)
- 指定研修機関の選び方とeラーニング活用の考え方
- 研修費用の助成制度・給付制度の考え方
- 手順書の作成と運用上の注意点
- 医師との連携協定・報告体制の構築ポイント
- 加算算定の現状と収益面の課題
- 採用・処遇・キャリアパスへの活かし方
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1. 特定行為研修制度とは——21区分38行為の全体像
特定行為研修制度は、医師または歯科医師が作成した手順書により、看護師が一定の診療の補助(特定行為)を行うことができるようにするための研修制度です。2014年の保助看法改正を経て2015年10月に施行され、在宅医療等の推進とタスク・シフト/シェアの受け皿として位置づけられています(出典:厚生労働省「特定行為に係る看護師の研修制度の概要」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000077114.html)。
1-1. 21区分38行為の構成
特定行為は、厚生労働省告示により21区分・38行為に整理されています(出典:厚生労働省「特定行為区分について」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000077113.html)。区分は呼吸器・循環器・創傷管理・栄養・薬剤投与関連など多岐にわたり、受講者は自らの活動領域に応じて必要な区分のみを選択して受講する運用が一般的です。訪問看護ステーションが特定行為研修修了看護師を活用する場合も、全区分を網羅する必要はなく、利用者層に照らして優先順位をつけて研修計画を立てる考え方が実務的です。
1-2. 訪問看護における位置づけ
厚生労働省「在宅医療の推進について」では、訪問看護ステーション・在宅療養支援診療所における特定行為研修修了者の活用が、在宅医療の質と継続性を支える取り組みの一つとして紹介されています(出典:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000061944.html)。医師の訪問頻度に制約がある在宅の現場では、手順書に基づき看護師が対応できる範囲が広がることで、利用者・家族の安心につながる場面が想定されます。
2. 訪問看護で頻用される特定行為区分——気管カニューレ交換・胃ろう管理・創傷管理
訪問看護の現場で活用機会が比較的多いとされる特定行為区分として、呼吸器関連・ろう孔管理関連・創傷管理関連の3つが挙げられます。
2-1. 気管カニューレの交換(呼吸器・長期呼吸療法関連)
気管切開下人工呼吸療法や長期の気管切開管理を行う利用者では、気管カニューレの定期交換が必要になります。特定行為研修(呼吸器(長期呼吸療法に係るもの)関連区分)を修了した看護師は、医師が交付する手順書の範囲内で交換を実施でき、医師の訪問日程に左右されずに交換時期を調整しやすくなる点が在宅療養継続の観点から期待されています。
2-2. 胃ろう・腸ろうカテーテルの交換(ろう孔管理関連)
経管栄養を行う利用者に対する胃ろうカテーテル・腸ろうカテーテル・胃ろうボタンの交換は、ろう孔管理関連区分に位置づけられます。交換時期を逃すとろう孔の閉鎖リスクがあるため、手順書に基づき看護師が対応できる体制は、在宅での栄養管理の安定性に寄与すると考えられます。
2-3. 褥瘡・慢性創傷の壊死組織除去(創傷管理関連)
創傷管理関連区分には、褥瘡または慢性創傷における血流のない壊死組織の除去(デブリードマン)が含まれます。在宅療養者に褥瘡が生じた場合、壊死組織の存在は治癒の妨げになるため、手順書の範囲内で計画的に処置できる体制は、創傷ケアの質に直結する要素です。
| 特定行為 | 在宅での主な場面 | 関連する特定行為区分 |
|---|---|---|
| 気管カニューレの交換 | 気管切開下人工呼吸療法・長期気管切開管理 | 呼吸器(長期呼吸療法に係るもの)関連 |
| 胃ろう・腸ろうカテーテルの交換 | 経管栄養を行う利用者の定期管理 | ろう孔管理関連 |
| 褥瘡・慢性創傷の壊死組織除去 | 在宅での褥瘡ケア・創傷管理 | 創傷管理関連 |
3. 指定研修機関の選び方とeラーニング活用
特定行為研修は、厚生労働大臣が指定する研修機関(指定研修機関)で受講します。
3-1. 指定研修機関の探し方
厚生労働省「特定行為に係る看護師の研修制度」のサイトでは、区分ごとの指定研修機関一覧が公開されています(出典:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000077114.html)。訪問看護ステーションが職員を派遣する場合、通学のしやすさに加えて、対象とする特定行為区分を開講しているか、eラーニングとの併用が可能かを確認する運用が実務的です。
3-2. eラーニングを活用した受講スタイル
研修は共通科目と区分別科目で構成されており、指定研修機関の多くは共通科目の一部または全部をeラーニングで提供しています。訪問看護ステーションのように少人数体制で勤務調整が難しい事業所では、eラーニングとオンサイト実習を組み合わせた受講スタイルを選ぶことで、通学負担とシフトへの影響を抑えながら受講を進めやすくなります。
4. 研修費用の助成制度
特定行為研修の受講には、共通科目・区分別科目それぞれに数十時間規模の履修が必要であり、受講料負担が事業所・受講者双方にとって課題となる場合があります。
4-1. 地域医療介護総合確保基金の活用
都道府県に設置される地域医療介護総合確保基金では、医療従事者の確保・養成を目的とした事業区分の中で、特定行為研修受講者への支援策が実施される場合があります(出典:厚生労働省「地域医療介護総合確保基金」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000061954.html)。事業内容・対象要件は都道府県ごとに異なるため、事業所所在地の担当課への確認が必要です。
4-2. 教育訓練給付制度の対象講座
一般教育訓練給付・専門実践教育訓練給付の対象講座として登録されている特定行為研修プログラムがある場合、受講料の一部について給付を受けられる可能性があります(出典:厚生労働省「教育訓練給付制度」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000198356.html)。対象講座は限定的であるため、受講前に厚生労働省の教育訓練給付制度検索システムで確認する運用が前提です。
5. 手順書の作成と運用

特定行為研修修了看護師が特定行為を実施するには、医師または歯科医師が作成した手順書が必要です。
5-1. 手順書の記載事項
手順書には、看護師に診療の補助を行わせる患者、対象となる特定行為の内容、患者の病状の範囲、看護師が確認すべき事項、医療の安全を確保するための連絡体制など、省令で定められた事項を記載する必要があります。訪問看護ステーションでは、利用者ごとの病状や在宅環境を踏まえて、主治医と協議のうえ個別に手順書を整備する運用が求められます。
5-2. 運用上の注意点
手順書は一度作成して終わりではなく、利用者の病状変化や治療方針の見直しに応じて、主治医と定期的に見直す運用が実務的です。訪問看護記録には、手順書に基づき実施した特定行為の内容・実施時の判断根拠・結果を具体的に記載し、後から確認できる形で残しておくことが、安全管理と実地指導対応の両面から重要です。
6. 医師との連携協定・報告体制
特定行為研修修了看護師の活用は、手順書を交付する医師との継続的な連携体制があって初めて成り立ちます。
6-1. 連携協定・合意形成のポイント
訪問看護ステーションと連携する主治医・医療機関との間で、対象とする特定行為の範囲、手順書の見直し頻度、緊急時の連絡・指示体制について、あらかじめ合意しておくことが望まれます。複数の主治医と連携する事業所では、医師ごとに手順書の様式や確認事項が異なる場合があるため、事業所内で一覧化して管理する仕組みを整えておくと、運用の抜け漏れを防ぎやすくなります。
6-2. 報告・緊急時対応の仕組み
特定行為を実施した際は、実施内容・利用者の状態変化を主治医に報告する仕組みを整えておく必要があります。手順書の範囲を超える病状変化が見られた場合や、判断に迷う場面が生じた場合には、速やかに主治医の指示を仰ぐ体制を、事業所のオンコール体制とあわせて設計しておくことが、安全な運用につながります。
7. 加算算定の現状——収益面の課題

特定行為研修修了看護師の配置・活用は、利用者ケアの質の面で意義がある一方、事業所の収益面では課題も指摘されています。
7-1. 特定行為の実施を直接評価する加算は限定的
令和6年度診療報酬改定では、訪問看護管理療養費に専門管理加算が新設されましたが、対象となる状態像や算定要件は限定的に定められており、21区分すべての特定行為の実施を包括的に評価する仕組みにはなっていません(出典:厚生労働省「令和6年度診療報酬改定について」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00041.html)。気管カニューレの交換や胃ろう管理など、日常的に発生する特定行為の実施自体に対して、個別の加算が設定されているわけではないのが現状です。具体的な算定要件・点数は、改定のたびに見直される可能性があるため、最新の告示・通知で確認する取り扱いが必要です。
7-2. 機能強化型訪問看護ステーションの要件との関わり
診療報酬・介護報酬の機能強化型訪問看護管理療養費等の施設基準では、重症度の高い利用者への対応実績や人員体制が問われる場合があり、特定行為研修修了看護師の配置は、こうした施設基準を満たすうえでの間接的な要素として位置づけられる可能性があります(出典:厚生労働省「令和6年度介護報酬改定について」https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_37687.html)。直接的な加算がない現状を踏まえ、事業所としては、利用者満足度や連携医療機関からの信頼向上、緊急往診・入院の回避といった間接的な効果を含めて、活用の意義を評価する視点が実務的です。
8. 採用・処遇とキャリアパス
特定行為研修修了看護師は、訪問看護分野においてもまだ限られた人材であり、採用市場での希少性が高い状態にあります。
8-1. 採用・処遇の考え方
特定行為研修修了看護師の採用にあたっては、資格手当や職務手当の形で処遇に反映している事業所の事例が見られます。研修受講中の勤務調整(シフト配慮・代替要員の確保)や、受講費用の一部を事業所が負担する運用も、人材確保・定着の観点から検討する価値があります。処遇の設計にあたっては、担当できる特定行為区分の範囲や、事業所内での役割(教育担当・連携窓口等)とあわせて評価する考え方が実務的です。
8-2. キャリアパスとしての位置づけ
特定行為研修修了は、認定看護師・専門看護師とは異なる枠組みの資格ですが、いずれも在宅医療における専門性の高い役割を担う点で共通しています。訪問看護ステーション内で、特定行為研修修了看護師が新人・中堅看護師への技術指導や、手順書運用の中心的な役割を担うことで、事業所全体の医療的ケア対応力の底上げにつながるキャリアパスとして位置づけることができます。
9. よくある質問(FAQ)
- Q1. 特定行為研修とはどのような制度ですか
- 医師または歯科医師が作成した手順書に基づき、看護師が一定の診療の補助(特定行為)を行えるようにするための研修制度です。2015年10月に施行され、38行為が21区分に整理されています。
- Q2. 訪問看護ステーションで特に活用されやすい特定行為区分はどれですか
- 気管カニューレの交換(呼吸器・長期呼吸療法関連)、胃ろう・腸ろうカテーテルの交換(ろう孔管理関連)、褥瘡・慢性創傷の壊死組織除去(創傷管理関連)などが、在宅療養者への対応機会が比較的多い区分として挙げられます。
- Q3. 研修費用の助成制度にはどのようなものがありますか
- 都道府県の地域医療介護総合確保基金による支援事業や、対象講座であれば教育訓練給付制度による給付を活用できる場合があります。対象要件・対象講座は年度・都道府県ごとに異なるため、事前に所管窓口での確認が必要です。
- Q4. 手順書は誰が作成しますか
- 手順書は医師または歯科医師が作成します。訪問看護ステーションは、利用者の病状や在宅環境を踏まえて主治医と協議し、記載事項を確認しながら整備を進める立場になります。
- Q5. 特定行為研修修了看護師を配置すれば加算を算定できますか
- 現時点では、特定行為の実施実績や研修修了者の配置そのものを直接評価する包括的な加算は設定されていません。専門管理加算など一部の加算が特定の状態像に限って関わる場合があるため、算定可否は個別の告示・通知で確認する必要があります。
- Q6. 特定行為研修修了看護師の採用・処遇はどのように考えればよいですか
- 資格手当・職務手当としての処遇反映や、研修受講中の勤務調整・費用負担支援を通じて、人材確保・定着につなげている事業所の事例があります。担当できる特定行為区分や事業所内での役割とあわせて評価する考え方が実務的です。
10. まとめ——特定行為研修修了看護師活用チェックリスト
- 21区分38行為の全体像と訪問看護での頻用区分を事業所内で共有しているか
- 気管カニューレ交換・胃ろう管理・創傷管理など利用者層に応じた優先区分を整理しているか
- 指定研修機関の開講状況とeラーニング併用の可否を確認しているか
- 地域医療介護総合確保基金・教育訓練給付制度等の助成情報を把握しているか
- 手順書の記載事項を医師と協議のうえ個別に整備しているか
- 医師との連携協定・報告体制・緊急時対応の仕組みを構築しているか
- 加算算定の現状(包括的な加算がないこと)を踏まえた収支の考え方を持っているか
- 採用・処遇・キャリアパスへの反映方法を検討しているか
- 実施記録を訪問看護記録に具体的に残す運用ができているか
特定行為研修修了看護師の活用は、訪問看護ステーションが在宅医療の受け皿としての機能を高めるうえで意義のある取り組みです。一方で、研修機関の選定・費用負担・手順書整備・医師との連携体制など、準備すべき事項は多岐にわたり、加算算定の面でも包括的な評価制度が整っていないのが現状です。制度の枠組みを正確に理解し、利用者の安全確保と事業所の持続可能な運営の両立を図りながら、段階的に活用を進めることが重要です。本記事の内容は公開情報を整理した一般的な解説であり、個別の算定可否・制度適用の詳細については、地方厚生局・都道府県・所属団体への確認や、最新の告示・通知にしたがってください。
関連リンク
出典
- 厚生労働省「特定行為に係る看護師の研修制度」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000077077.html
- 厚生労働省「特定行為に係る看護師の研修制度の概要」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000077114.html
- 厚生労働省「特定行為区分について」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000077113.html
- 厚生労働省「在宅医療の推進について」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000061944.html
- 厚生労働省「地域医療介護総合確保基金」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000061954.html
- 厚生労働省「教育訓練給付制度」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000198356.html
- 厚生労働省「令和6年度診療報酬改定について」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00041.html
- 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定について」https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_37687.html
- 公益財団法人日本訪問看護財団https://www.jvnf.or.jp/
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mitoru編集部の見解
訪問看護ステーションの開業・運営は、看護師人員確保と地域医療機関との連携体制が成功要因です。mitoru編集部は、開業前の事業計画段階で、地域包括ケアシステムにおける位置づけを保健所・地域包括支援センターへヒアリングすることを推奨します。