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特定保健指導は、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)に着目した特定健康診査(特定健診)の結果に基づき、生活習慣病の発症リスクが高い対象者に対して、医師・保健師・管理栄養士等が生活習慣の改善を支援する制度です。高齢者の医療の確保に関する法律に基づき、健康保険組合・協会けんぽ・市町村国保等の保険者に実施義務が課されており、保険者は自前実施に加え、健診クリニック・産業保健サービス事業者・医療機関等への委託によって実施体制を整えています。2024年度からは第4期特定健診・特定保健指導(2024〜2029年度)が開始され、アウトカム評価を中心とした評価指標の見直し、ICTを活用した遠隔保健指導の位置づけの整理等が進められています。
本記事は、健診クリニック・健康保険組合・特定保健指導参入を検討する医療機関の担当者を主な読者と想定し、第4期特定健診・特定保健指導の基本構造、動機付け支援・積極的支援の対象基準、保険者との委託契約のフロー、実施機関の届出要件、単価・実施回数、ICT活用、終了報告・実施率の評価、アウトカム評価指標について、厚生労働省・地方厚生局等が公表する公開情報を整理した内容です。本記事は公的情報の整理を目的としており、個別の届出要件・委託契約・単価の可否については、厚生労働省・地方厚生(支)局・委託元保険者・国民健康保険団体連合会(国保連)への照会、または社会保険労務士・行政書士等の専門人材にご確認ください。
この記事で分かること
- 第4期特定健診・特定保健指導(2024〜2029年度)の制度概要と保険者の実施義務
- 動機付け支援・積極的支援の階層化判定の対象基準(腹囲・BMI・血糖・脂質・血圧・喫煙)
- 保険者との委託契約のフロー(契約締結・実施・終了報告・請求)
- 特定保健指導の実施機関に求められる基準・体制(高確法施行規則関連)
- 単価・実施回数の考え方と保険者ごとの差異
- ICT活用(遠隔面接・オンライン保健指導)の位置づけ
- 終了報告・実施率の評価と保険者インセンティブ制度との関係
- 第4期で重視されるアウトカム評価指標の考え方
- 特定保健指導参入・運営における10項目のチェック観点
1. 特定保健指導の制度概要(第4期計画 2024-2029)
特定健康診査・特定保健指導は、高齢者の医療の確保に関する法律(高確法)に基づき、医療保険者に対して、40歳から74歳までの被保険者・被扶養者を対象に実施が義務づけられている制度です。生活習慣病の予防・重症化予防、医療費の適正化を目的とし、特定健診で内臓脂肪蓄積に起因するリスク要因が一定以上に該当した対象者に対して、特定保健指導が実施されます。制度の運用ルールは、厚生労働省告示・通知・「特定健康診査・特定保健指導の円滑な実施に向けた手引き」等に基づいて整理されています(厚生労働省「特定健康診査・特定保健指導について」関連資料)。
特定健診・特定保健指導は、おおむね6年を1期とする計画サイクルで運用されており、2024年度から2029年度までが第4期に当たります。第4期では、第3期までの実績と課題を踏まえ、評価指標の見直し、ICT活用(遠隔面接・オンライン保健指導)の整理、対象者の特性に応じた指導内容の柔軟化等が論点として進められています。保険者は、第4期計画に即した実施計画を策定し、自前実施・外部委託の組み合わせによって対象者全員に保健指導の機会を提供する体制づくりが求められます(厚生労働省「特定健診・特定保健指導の見直し」関連資料)。
特定保健指導は、リスクの程度に応じて「動機付け支援」「積極的支援」の2つの階層に分けて提供されます。動機付け支援は、原則1回の個別面接または小集団指導を中心に行動目標を設定し、おおむね3か月以上経過後に成果を確認する構成です。積極的支援は、初回面接の後、3か月以上の継続的な支援を行い、対象者の行動変容を支援する構成です。第4期では、これらの支援の組み立てが、対象者の状況・保健指導の質に応じて柔軟に運用できるよう整理されつつあります。
特定保健指導の実施主体は保険者ですが、実施の多くが委託によって行われています。委託先には、健診機関・健康保険組合の関連法人・産業保健サービス事業者・病院・診療所・薬局等の医療機関、地方公共団体や地域の保健福祉センター等が含まれます。委託契約の締結、実施機関の基準確認、終了報告・請求の運用が、保険者と委託先の双方で確実に運用されることが、制度全体の円滑な実施を支えます。

2. 動機付け支援・積極的支援の対象基準
特定保健指導の対象者は、特定健診の結果から「腹囲・BMI(追加リスクの判定の前提)」と「血糖・脂質・血圧・喫煙歴」の追加リスクの組み合わせ、年齢区分を踏まえた階層化判定によって決まります。階層化の基本ロジックは厚生労働省告示・通知で示されており、保険者・委託先実施機関はこれに基づいて対象者を特定します。ここでは判定の基本構造と、動機付け支援・積極的支援それぞれの対象範囲の考え方を整理します。
2-1. 階層化判定の基本構造
階層化判定では、まず「腹囲」が一定値以上、または「腹囲」が一定値未満でもBMIが一定値以上の場合に、内臓脂肪蓄積に該当する候補として抽出されます。続いて、追加リスクとして「血糖(空腹時血糖またはHbA1c等)」「脂質(中性脂肪・HDLコレステロール)」「血圧」の3項目と、喫煙歴の有無を組み合わせて評価し、リスクの集積度と年齢区分(おおむね40〜64歳・65〜74歳)に応じて支援区分が決まる構成とされています。具体的な判定値・組み合わせは厚生労働省告示・通知で示されており、保険者・実施機関はこれを参照して階層化を行います。
2-2. 動機付け支援の対象
動機付け支援は、内臓脂肪蓄積に該当し、追加リスクの集積度が積極的支援に至らない範囲にある対象者や、65〜74歳の対象者で一定の条件を満たす場合に提供されます。原則1回の個別面接または小集団指導により、対象者自身が生活習慣の改善目標を設定し、自ら行動できるよう動機付けを行うことが中心となります。おおむね3か月以上経過後に、生活習慣の改善状況や身体状況の変化を確認し、終了報告を行う構成が基本とされています(厚生労働省「特定健康診査・特定保健指導の円滑な実施に向けた手引き」関連資料)。
2-3. 積極的支援の対象
積極的支援は、内臓脂肪蓄積に該当し、追加リスクが複数集積している40〜64歳の対象者を中心に提供されます。初回面接で行動目標と支援計画を立てたうえで、3か月以上の継続的な支援(個別面接・電話・電子メール・チャット・対面以外の手段の組み合わせ等)を行い、最終評価で行動変容と身体状況の変化を確認する構成が基本です。第4期では、支援内容の構成や手段の柔軟化、ICT活用の位置づけ整理が進められており、保険者・実施機関は最新の告示・通知に即した運用が求められます。
2-4. 服薬中・治療中の対象者の取り扱い
高血圧・脂質異常症・糖尿病等の治療のため服薬中の対象者は、原則として特定保健指導の対象外として整理されています。これは、生活習慣病の治療が主治医のもとで行われている場合、保健指導の枠組みではなく医療の枠組みで対応することが適切とされるためです。保険者・実施機関は、健診の問診票・レセプト情報等から服薬状況を確認し、対象範囲を適切に切り分ける運用が求められます。
2-5. 階層化判定の整理表
| 判定要素 | 主な指標 | 支援区分への影響 |
|---|---|---|
| 内臓脂肪蓄積 | 腹囲・BMI | 対象候補抽出の前提 |
| 追加リスク | 血糖・脂質・血圧 | 集積度で動機付け/積極的支援を区分 |
| 喫煙歴 | 有無 | 追加リスクが1以上ある場合の調整要素 |
| 年齢区分 | 40〜64歳/65〜74歳 | 65〜74歳は積極的支援対象外の整理 |
| 服薬状況 | 降圧・脂質・血糖 | 服薬中は原則対象外 |
3. 委託契約のフロー(保険者との契約)
特定保健指導の実施は、保険者の自前実施に加え、外部の実施機関への委託によって担われるケースが多数を占めます。保険者と実施機関の委託契約は、契約書面の整備、対象者リストの受け渡し、実施記録・終了報告の管理、請求・支払の運用までを一連の業務フローとして設計する必要があります。ここでは委託契約フローの基本的な流れと、契約上の主な論点を整理します。
3-1. 委託契約締結までの流れ
委託契約締結の一般的な流れは、(1) 保険者が委託先候補の実施機関に対し、実施体制・単価・対応可能エリア等を照会、(2) 実施機関が見積・提案書を提示、(3) 双方で契約条件(実施区分・単価・契約期間・対象者数の見込み・個人情報保護・終了報告の様式・請求方法等)をすり合わせ、(4) 契約書面を取り交わす、という構成が基本です。健康保険組合の場合、組合会や理事会での承認プロセスを経るケースもあるため、契約締結までに一定の期間を見込む必要があります。
3-2. 集合契約(代表保険者経由)の活用
多数の保険者と個別に委託契約を結ぶ負担を軽減するため、健診・特定保健指導の分野では「集合契約」と呼ばれる仕組みが活用されています。健康保険組合連合会・全国健康保険協会・国民健康保険中央会等が代表保険者となり、複数保険者と実施機関の間で共通の契約様式・単価表に基づく契約を結ぶ枠組みです。集合契約に参加することで、実施機関は1件ごとの契約交渉の負担を抑え、保険者は対応可能な実施機関の選択肢を広げられる利点があります(健康保険組合連合会等の公表資料参照)。
3-3. 個人情報の取り扱いと安全管理措置
特定保健指導の実施には、健診結果・問診情報・指導記録等の機微な個人情報の授受が伴います。委託契約では、個人情報保護法・関連ガイドライン(医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス等)に基づき、安全管理措置・委託先監督・再委託の可否・漏えい時対応等を契約条項として明記することが基本です。電子的なやり取りを行う場合の通信経路・保存先の管理、退職者対応、監査受入等も契約上の論点になります(厚生労働省「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」関連資料)。
3-4. 終了報告・請求の運用
実施機関は、保健指導の実施完了後、保険者に対して所定の様式で終了報告(XML形式の電子データを含む)を行い、これに基づいて委託料の請求を行います。終了報告の様式・データ仕様は厚生労働省告示・通知で定められており、国民健康保険団体連合会(国保連)等の集合機関を経由するデータ授受もあります。終了報告に不備があると請求が確定しないため、実施機関は終了基準・記録要件をあらかじめ整理し、実施段階で必要事項を漏れなく記録する体制が重要です。
3-5. 委託契約フローの整理表
| フェーズ | 主な業務 | 主な留意点 |
|---|---|---|
| 引合・見積 | 体制・単価・エリア照会 | 対応可能件数の見込み確認 |
| 契約締結 | 契約条件すり合わせ・書面化 | 個人情報・再委託の条項整備 |
| 対象者引渡 | 対象者リスト受領 | 連絡先・健診結果の取扱 |
| 保健指導実施 | 面接・継続支援・記録 | 支援計画・記録の保存 |
| 終了報告・請求 | XMLデータ提出・請求 | 様式不備・期限超過の防止 |

4. 実施機関の届出要件
特定保健指導を実施する機関は、高齢者の医療の確保に関する法律施行規則および厚生労働省告示で定められた基準を満たす必要があります。具体的には、保健指導を担当する医師・保健師・管理栄養士等の専門職の配置、実施体制・施設要件、個人情報保護・安全管理措置、運営に関する基準等が示されています。集合契約に参加する場合は、これらの基準に加えて契約様式上の要件も求められます。
4-1. 専門職の配置
特定保健指導の初回面接・継続支援・最終評価は、医師・保健師・管理栄養士等の専門職が担うことが基本とされています。動機付け支援・積極的支援の支援区分や、面接・継続支援の手段に応じて、必要となる専門職の組み合わせや業務分担が整理されています。実施機関は、対象者数の見込み・支援区分の構成を踏まえ、必要な専門職を確保したうえで運営する体制づくりが求められます(厚生労働省「特定健康診査・特定保健指導の円滑な実施に向けた手引き」関連資料)。
4-2. 運営基準・実施体制
運営基準としては、保健指導の質を確保するための研修体制、利用者への説明・同意取得の手順、苦情対応、記録の作成・保存、評価・改善の仕組み等が論点となります。継続支援を電話・電子メール・チャット・遠隔面接等で行う場合、機材・通信環境・本人確認・記録の整備等も含めた体制設計が必要です。地方厚生(支)局は、実施機関の届出受理や、必要に応じた指導・監督を行う立場にあります(地方厚生局「特定健康診査・特定保健指導」関連ページ参照)。
4-3. 施設要件・プライバシー確保
対面で初回面接や継続支援を行う場合、対象者のプライバシーを確保できる相談スペースの確保が前提となります。診療所・健診クリニックでは、診察室や面談室を時間帯で使い分ける、健康保険組合・産業保健サービス事業者では、事業所内の会議室や保健相談室を活用する等、提供体制に応じた運用設計が考えられます。遠隔面接の場合も、対象者側・実施機関側双方のプライバシー確保が重要です。
4-4. 集合契約参加機関の基準
集合契約に参加する実施機関は、契約様式・単価表のほか、健康保険組合連合会・全国健康保険協会等の代表保険者が示す参加要件(実施体制・データ提出の要件等)を満たす必要があります。集合契約への参加は、保険者からの委託先選定の対象となる機会を広げる一方で、契約様式に沿った運用が前提となります。参加要件・契約様式は年度ごとに見直されるため、最新の公表資料・通知の確認が必要です。
5. 単価・実施回数
特定保健指導の単価は、保険者と実施機関の委託契約によって個別に定められ、集合契約においては代表保険者が示す単価表に基づいて運用されます。単価は支援区分(動機付け支援・積極的支援)、実施手段(対面・遠隔・電話・メール等の組み合わせ)、地域、保険者の方針等によって異なります。本記事は具体的な金額の提示を目的としておらず、単価設計の考え方と確認すべき情報源を整理します。
5-1. 単価設計の基本的な考え方
単価は、初回面接・継続支援・最終評価といった一連の支援プロセスにかかる専門職の稼働時間・施設費用・システム費用等を踏まえて設計されることが一般的です。動機付け支援は原則1回の面接を中心とした構成、積極的支援は3か月以上の継続支援を含む構成という違いがあり、単価水準には差異が生じる構造です。完了型(最終評価まで実施した場合のみ請求)と段階型(初回面接実施時点・継続支援実施時点・最終評価時点等に分けて請求)の請求モデルがあり、契約ごとに整理されます。
5-2. 集合契約の単価表参照
集合契約の単価は、健康保険組合連合会・全国健康保険協会等の代表保険者が公表する単価表で確認できます。単価は年度ごとに見直される場合があり、また、支援区分・実施手段の組み合わせ別の単価が示される構造です。実施機関の収支見通しを立てる際は、集合契約単価を基準とし、自前で交渉する個別契約との差異を踏まえて、対応可能な対象者数・支援構成を設計することが現実的です(健康保険組合連合会・全国健康保険協会の公表資料参照)。
5-3. 実施回数・支援ボリュームの整理
動機付け支援は、原則として初回面接(個別面接または小集団指導)と、おおむね3か月以上経過後の最終評価の構成が基本です。積極的支援は、初回面接の後、3か月以上の継続支援を行い、最終評価を実施する構成が基本です。第4期では、支援の組み立てを対象者の状況に応じて柔軟に行えるよう整理が進められており、実施回数・支援手段の組み合わせは、保険者・実施機関の運用方針と告示・通知の最新内容に沿って設計する必要があります。
5-4. 単価・実施回数の論点整理表
| 論点 | 確認すべき情報源 | 運用上の着眼点 |
|---|---|---|
| 集合契約単価 | 健保連・協会けんぽ公表資料 | 年度ごとの改定確認 |
| 個別契約単価 | 保険者との契約書面 | 支援区分・手段別の整理 |
| 請求モデル | 契約書面・終了報告様式 | 完了型/段階型の区別 |
| 実施回数 | 厚労省告示・通知 | 第4期での柔軟化の確認 |

6. ICT活用(遠隔保健指導)
特定保健指導におけるICT活用は、対象者の利便性向上、実施機関の運営効率化、保険者の実施率向上の観点から、第3期以降の重要な論点として整理されてきました。第4期では、ICT活用の位置づけがさらに整理され、初回面接・継続支援・最終評価それぞれにおける遠隔手段の活用余地が明確化される方向で議論が進められています。ここではICT活用の基本的な考え方と、運用設計上の論点を整理します。
6-1. 遠隔面接の基本要件
遠隔面接は、ビデオ通話システム等を用いて、実施担当者と対象者が双方向に映像・音声でコミュニケーションを行う形式です。基本要件としては、本人確認の手順、安定した通信環境、プライバシーが確保される場所での実施、面接記録の作成・保存、本人同意の取得等が整理されています。対面面接と同等の質を確保できる運用設計が前提となります(厚生労働省「特定健康診査・特定保健指導の見直し」関連資料)。
6-2. 継続支援におけるICT活用
積極的支援の継続支援では、電話・電子メール・チャット・専用アプリ等のICT手段が組み合わせて活用されています。対象者の生活習慣・行動状況の記録、振り返り、専門職からのフィードバックを継続的にやり取りすることで、対象者の行動変容を支援する取り組みが行われます。導入にあたっては、対象者の利用環境・ITリテラシーへの配慮、安全管理措置、記録の保存・引き継ぎ等の運用設計が重要です。
6-3. システム選定の検討観点
遠隔保健指導向けのシステムを導入する場合、本人確認・通信暗号化・記録保存・データの安全管理・保険者への報告データ連携・専門職の運用負荷等が選定の観点になります。費用・運用負荷と効果のバランスを踏まえ、自院の対象者規模に応じた選択が現実的です。導入の要否・選定基準は、保険者の方針や集合契約の運用ルールとも整合させる必要があります。本記事は特定の製品・サービスを推奨するものではありません。
6-4. ICT活用の論点整理表
| 場面 | 主なICT手段 | 運用上の着眼点 |
|---|---|---|
| 初回面接 | ビデオ通話 | 本人確認・プライバシー確保 |
| 継続支援 | 電話・メール・チャット・アプリ | 記録保存・専門職の対応負荷 |
| 最終評価 | ビデオ通話・電話等 | 身体状況・行動変容の確認 |
| データ連携 | XML報告データ | 保険者・国保連等への報告様式 |
7. 終了報告・実施率の評価
特定保健指導は、実施後の終了報告と、保険者単位での実施率の評価によって、制度全体の運用状況がモニタリングされています。実施機関は終了報告データを通じて保険者・国保連等にデータを提供し、保険者は集計結果を厚生労働省・関係機関に報告する構造です。実施率は保険者インセンティブ制度等の評価指標とも関連し、保険者にとって重要な経営指標の一つに位置づけられています。
7-1. 終了報告の様式とデータ提出
終了報告は、厚生労働省告示・通知で定められたXML形式のデータ仕様に基づき作成されます。対象者ごとの初回面接・継続支援・最終評価の実施状況、身体状況の変化、行動目標の達成状況等を所定の項目で記録し、保険者または国保連等を経由して提供されます。データ仕様は制度の見直しに応じて改訂されるため、実施機関は最新の様式に対応した記録・出力体制を整える必要があります(厚生労働省「特定健康診査・特定保健指導の電子的なデータの取扱い」関連資料)。
7-2. 実施率の算定の基本
特定保健指導の実施率は、保険者ごとに、対象者数に対する終了者数の割合として算定されることが基本とされています。算定方法・対象範囲・終了基準は告示・通知で示されており、保険者は自前実施分・委託実施分を合算して報告します。実施率は、保険者全体の目標値との比較や、保険者間の比較に用いられ、保健事業の改善計画の策定に活用されます(厚生労働省「特定健康診査・特定保健指導の実施状況」関連資料)。
7-3. 保険者インセンティブ制度との関係
後期高齢者支援金の加算・減算制度や保険者努力支援制度等、保険者の取り組み状況を評価する仕組みでは、特定健診・特定保健指導の実施率が評価指標の一つに含まれています。実施率の向上は、保険者の財政運営にも関連するテーマであり、保険者は委託先実施機関と連携しながら、対象者への案内・受診勧奨・予約調整・継続支援等の運用改善を進めています。実施機関は、こうした保険者側の事情を踏まえた運営協力が、長期的な委託関係の維持に寄与します(厚生労働省「保険者インセンティブ」関連資料)。
7-4. 終了報告・実施率評価の整理表
| 項目 | 主体 | 主な内容 |
|---|---|---|
| 終了報告データ作成 | 実施機関 | XML形式での出力 |
| 終了報告受領 | 保険者・国保連 | データ受領・集計 |
| 実施率算定 | 保険者 | 対象者数に対する終了者数 |
| 厚労省への報告 | 保険者 | 集計結果の提出 |
| インセンティブ評価 | 関係機関 | 支援金加減算・努力支援制度 |
8. アウトカム評価指標
第4期特定健診・特定保健指導では、これまでの「実施プロセス」中心の評価に加えて、「アウトカム(成果)」をより重視する方向で評価指標の見直しが進められてきました。具体的には、保健指導終了後の腹囲・体重・行動変容の改善等を、対象者ごとに把握し、保健指導の成果を多面的に評価する構造です。アウトカム評価の考え方を踏まえて支援設計を行うことが、第4期における運営の重要なテーマとなります。
8-1. アウトカム評価の基本的な考え方
アウトカム評価では、保健指導終了時点の身体状況の改善(腹囲・体重の一定の減少等)、行動変容の達成状況(食事・運動・睡眠・喫煙等の改善)、生活習慣に関するセルフチェックの変化等が評価項目となります。指標の具体的な水準・算定方法は告示・通知で示されており、運用は年度ごとに整理されています。実施機関は、最新の指標に対応した記録・評価プロセスを設計し、対象者ごとに必要な情報を漏れなく収集する体制が求められます(厚生労働省「第4期特定健診・特定保健指導の見直し」関連資料)。
8-2. プロセス評価との組み合わせ
アウトカム評価重視の方向性は、実施プロセスを軽視するものではありません。初回面接の質、継続支援の頻度・内容、最終評価の手順等のプロセスは、アウトカムを支える基盤として引き続き重要です。実施機関は、プロセスとアウトカムを組み合わせて自己点検を行い、改善余地を見極めることが、保健指導の質向上に寄与します。
8-3. 保健指導の質改善サイクル
アウトカム評価のデータを継続的に蓄積し、対象者層別・支援手段別・担当者別の成果傾向を分析することで、保健指導の質改善サイクルを回すことが可能になります。例えば、ICT手段中心の支援と対面中心の支援で行動変容率に差があれば、要因(対象者特性・支援内容・運用負荷)を掘り下げ、組み合わせを調整する材料になります。改善活動は、対象者の同意・個人情報保護を前提として、組織的な仕組みの中で進めることが望まれます。
8-4. アウトカム評価指標の整理表
| 評価軸 | 主な指標 | 運用上の着眼点 |
|---|---|---|
| 身体状況 | 腹囲・体重の変化 | 初回・最終時点の正確な計測 |
| 行動変容 | 食事・運動・喫煙等 | セルフチェックの記録 |
| 支援プロセス | 面接・継続支援の実施 | 支援頻度・内容の記録 |
| 対象者満足度 | アンケート等 | 運営改善の参考情報 |
| 傾向分析 | 層別・手段別集計 | 質改善サイクルへの活用 |
9. 特定保健指導参入・運営の10項目チェック観点
特定保健指導への参入や、現在の運営の点検にあたって確認すべき観点を10項目に整理します。本リストは網羅的なチェックリストではなく、運営設計の出発点として活用いただくための概観です。具体的な要件・基準は厚生労働省告示・通知、地方厚生(支)局・委託元保険者の方針に従って確認してください。
- 第4期特定健診・特定保健指導の基本枠組みを把握しているか
- 動機付け支援・積極的支援の対象基準と階層化判定を理解しているか
- 対象者数の見込みに対応する専門職(医師・保健師・管理栄養士等)を確保しているか
- 個人情報保護・安全管理措置の体制を整備し、契約条項に反映しているか
- 委託契約(個別契約・集合契約)の運用フローを設計しているか
- 遠隔面接・継続支援に活用するICT手段の運用要件を整理しているか
- 終了報告のXMLデータ作成・提出体制を整備しているか
- 単価・請求モデル(完了型・段階型)を契約ごとに整理しているか
- アウトカム評価指標を踏まえた記録・評価プロセスを設計しているか
- 保険者・国保連等との連携窓口・問い合わせフローを明確化しているか
10. よくある質問(FAQ)
- Q1. 第4期と第3期の主な違いは何ですか?
- A. 第4期(2024〜2029年度)では、評価指標の見直し(アウトカム評価の重視)、ICT活用の位置づけ整理、支援の組み立ての柔軟化等が論点として進められています。具体的な改正内容は厚生労働省告示・通知、関連審議会資料で公表されており、保険者・実施機関はこれらに基づいた運用を行います。詳細は厚生労働省「特定健康診査・特定保健指導の見直し」関連資料をご参照ください。
- Q2. 動機付け支援と積極的支援はどちらが対象数として多いですか?
- A. 一概には言えません。対象者の年齢構成・腹囲・追加リスクの集積度等によって、保険者単位での比率は異なります。保険者ごとの実施実績は、厚生労働省が公表する特定健康診査・特定保健指導の実施状況の集計や、保険者の事業報告等で参照できます。自院・自組合の実績把握は、対象者リスト・終了報告データの集計を通じて行うのが基本です。
- Q3. 集合契約と個別契約のどちらで参入すべきですか?
- A. 一概には言えません。集合契約は契約交渉の負担を抑え、複数保険者の対象者に対応できる枠組みとして整理されています。一方、個別契約では契約条件を保険者と個別に設計できる余地があります。自院の規模・対応可能件数・地域特性等を踏まえ、両者を組み合わせる構成も含めて検討するのが現実的です。具体的な参加要件・単価は、健康保険組合連合会・全国健康保険協会等の公表資料をご確認ください。
- Q4. 遠隔面接だけで初回面接を完結できますか?
- A. 第4期では、ICT活用の位置づけが整理され、遠隔面接の活用余地が明確化される方向で議論が進められています。実際の運用にあたっては、厚生労働省告示・通知に定められた要件(本人確認・通信環境・プライバシー確保・記録保存等)を満たし、対面と同等の質を確保できる運用設計が前提となります。最新の要件は厚生労働省の関連資料でご確認ください。
- Q5. 終了報告の様式が変わったらどう対応すればよいですか?
- A. 終了報告のXMLデータ仕様は、制度の見直しに応じて改訂される場合があります。厚生労働省の電子データ仕様の公表資料、保険者・国保連からの周知に従い、システム改修・運用手順の更新を計画的に進めることが基本です。改訂時期・適用範囲は告示・通知で示されるため、最新情報の確認と、自院・自社のシステム提供事業者との連携が重要です。
- 📌 あなたが次にやるべき1つの行動
- 関連サービスの公式サイトで、対応規模・料金プラン・申込方法をご確認ください。所要時間や手続きは各サービスの公式情報を参照してください。
11. 出典・参考資料
- 厚生労働省「特定健康診査・特定保健指導について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/seikatsu/index.html (取得日:2026-06-14)
- 厚生労働省「第4期特定健診・特定保健指導の見直しについて」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_27073.html (取得日:2026-06-14)
- 厚生労働省「特定健康診査・特定保健指導の円滑な実施に向けた手引き」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000194155_00004.html (取得日:2026-06-14)
- 厚生労働省「特定健康診査・特定保健指導の電子的なデータの取扱い」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000194155_00007.html (取得日:2026-06-14)
- 厚生労働省「保険者インセンティブ(後期高齢者支援金の加算・減算制度等)」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000075123.html (取得日:2026-06-14)
- 厚生労働省「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000027272.html (取得日:2026-06-14)
- 健康保険組合連合会「特定健診・特定保健指導」関連情報 https://www.kenporen.com/ (取得日:2026-06-14)
- 全国健康保険協会(協会けんぽ)「特定健診・特定保健指導」関連情報 https://www.kyoukaikenpo.or.jp/ (取得日:2026-06-14)
【免責事項】本記事は厚生労働省告示・通知等の公開情報を整理することを目的としており、特定の届出要件・委託契約条件・単価水準・実施率改善効果を保証するものではありません。第4期特定健診・特定保健指導の制度設計・評価指標・データ仕様は、告示・通知の改訂や年度の見直しにより変動するため、個別判断は厚生労働省・地方厚生(支)局・委託元保険者・国民健康保険団体連合会等への照会、または社会保険労務士・行政書士等の専門人材にご確認ください。本記事の情報利用によって生じた損害について、mitoru編集部は責任を負いません。本記事は医療行為に関する助言を行うものではありません。
最終更新日:2026年6月14日|編集方針
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mitoru編集部の見解
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