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本記事は、病院の電話交換機(PBX)・院内内線・SIP/クラウドPBX移行・ISDN廃止・ナースコール連携・救急ホットライン・災害時電源確保について、総務省・NTT東日本・NTT西日本・厚生労働省・消防庁など公的機関および事業者の公開情報を整理した内容です。特定の製品・サービスの効果を保証するものではなく、契約前の一次情報は各提供元へご確認ください。
この記事でわかること
- 病院で使われる電話システムの類型(レガシーPBX/IP-PBX/クラウドPBX/SIPトランク)の整理
- NTT東西が公表しているISDN(INSネット)ディジタル通信モード提供終了と2024年の電話網IP化の全体像
- 院内内線・ナースコール連携・救急ホットライン・地域連携電話の設計論点
- 停電・災害時における病院電話設備の電源確保とBCPとの整合
- PBX更新(改修・リプレース・クラウド移行)の費用感の整理とFAQ5問
1. 病院電話システムの類型——レガシーPBX/IP-PBX/クラウドPBX/SIP
病院の電話交換機(PBX)は、外線・内線・PHS・ナースコール・災害時放送などの多用途を一つの設備で束ねる基幹インフラです。総務省「情報通信白書(2026-07-18 取得)」でも、企業向け音声通信の中心がTDM(時分割)方式からIP(インターネットプロトコル)方式へ移行してきた経緯が整理されています。病院現場でも、老朽化した交換機の更新時期に合わせて、以下の類型のいずれを選ぶかが検討テーマになります。
1-1. 4類型の比較整理
| 類型 | 概要 | 特徴と論点 |
|---|---|---|
| レガシーPBX(TDM) | 専用の交換機ハードで内線・外線を束ねる従来型 | 信頼性は高いが保守部品の入手が難しくなる時期がある |
| IP-PBX(オンプレ) | 院内サーバーでSIPプロトコルを扱う交換機 | 院内LAN上で内線化・柔軟な席数変更が可能 |
| クラウドPBX | 事業者データセンター側でPBX機能を提供 | 初期費用を抑えやすい/院外通信品質の設計が論点 |
| SIPトランク | 外線側をIP化して電話事業者と接続する回線サービス | PBXは院内、外線側だけIP化する構成にも使える |
実務上は「オンプレIP-PBX+SIPトランク外線」「クラウドPBX+院内SIP端末」など複数の折衷パターンがあり、病院規模・拠点数・ナースコール連携要件・BCP要件によって選択肢が変わります。既存設備の保守期限と、後述するISDNの提供終了時期を突き合わせて更新計画を立てる考え方が現実的です。
2. ISDN(INSネット)ディジタル通信モードの提供終了
病院のレガシー電話設備で長く使われてきた「INSネット64/1500」のうち、ディジタル通信モード(データ通信用)は、NTT東日本・NTT西日本の公開情報において提供終了・切替の対象として案内されています。詳細は各社の公式案内をご確認ください。
- NTT東日本「サービスのご案内(2026-07-18 取得)」——INSネットに関する案内・後継サービスの整理
- NTT西日本「サポート情報(2026-07-18 取得)」——ISDN/メタル電話に関する公表情報
- 総務省「電気通信サービスに関する情報(2026-07-18 取得)」——電話網のIP移行に関する政策資料
病院現場では、検体検査結果の外部センターとのデータ伝送、G4FAX、災害時優先電話、警備・防災盤の通報回線などに旧来のISDN回線が残っているケースが少なくありません。これらの用途は、後継の光回線・IP-VPN・モバイル閉域網・SIPトランクに置き換える設計変更が必要です。単純に「番号だけ引き継ぐ」では済まないため、上流アプリケーション側の対応可否を含めて棚卸しする作業が要点になります。
3. 2024年 公衆電話網のIP化(PSTNマイグレーション)
NTT東日本・NTT西日本は、加入電話(アナログ電話)などの公衆交換電話網(PSTN)中継網を2024年1月にIP網へ切り替えたことを公開情報で案内しています。総務省でも、電気通信サービスに関する政策資料でPSTNマイグレーションの経緯が整理されています(前掲の総務省公表資料)。
3-1. 病院設備側で確認すべきポイント
- PBXが接続している回線種別(アナログ/ISDN/ひかり電話/SIPトランク)の棚卸し
- ナースコール・防災盤・エレベーター緊急通報など、電話回線を使う周辺設備の対応可否
- FAX・POS端末・自動発報端末(透析装置・警報装置)の切替可否
- G4FAXなどISDN前提の高速FAXの後継運用方式
IP網切替後も、加入電話サービス自体は継続提供されると公表されていますが、細かな仕様(品質クラス・特殊サービス対応など)に変更点があります。院内の周辺設備側で、電話回線終端の仕様変更に耐えられるかを、機器メーカー・設備業者への書面確認で押さえておく運用が現実的です。
4. 院内内線設計——PHS/構内DECT/スマートフォン内線
病院内線は、医師・看護師・技師・事務職員が院内を歩き回りながら通話する必要があり、固定電話だけでは業務が回りません。従来はDECT準拠のデジタルコードレスホン(構内PHS/sPHSと呼ばれる方式や、後継の構内無線方式)が主流でしたが、公衆PHSサービスは提供終了しており、後継として業務用DECT/院内無線LAN経由のSIP端末(スマートフォン内線)といった選択肢が広がっています。
4-1. 院内モバイル内線の主な方式
| 方式 | 特徴 | 設計上の注意 |
|---|---|---|
| 業務用DECT/構内無線 | 専用電波を院内基地局で提供 | 基地局配置・電波干渉検証が要点 |
| Wi-Fi経由SIP端末(VoWiFi) | 院内無線LANでSIPスマホを内線化 | QoS設計・APハンドオーバ性能の検証必須 |
| キャリアIP内線 | キャリア網経由で外出先も内線化 | 圏外エリア・電池持ちが論点 |
| ハイブリッド構成 | 院内はDECT/管理職はスマホ内線 | 短縮ダイヤル体系の統一が要点 |
いずれの方式でも、通話品質(遅延・パケット損失・エコー)と、緊急コール(コードブルー等)の到達時間が要件です。医療機器と同じ無線帯域で影響が出ないよう、電波環境調査を院内改修に合わせて実施する運用が推奨されます。
5. ナースコール/看護師コールとの連携
ナースコール設備は、病棟の各ベッドから看護師を呼び出す独立系統ですが、近年は院内内線・院内スマホ・カルテシステム・生体モニタと連携する構成が広がっています。PBX更新時には、ナースコール盤の後継機との接続互換性が要点になります。
5-1. 連携で確認すべき論点
- ナースコール呼出時に、院内SIPスマホへ着信転送できるか
- コードブルー等の緊急放送を、PBX経由で院内一斉放送に流せるか
- 患者取り違えを避けるための患者ID・ベッド番号のシステム連携仕様
- 離床センサー・見守り機器からのアラートをどこで統合するか
厚生労働省「医療情報化の推進(2026-07-18 取得)」に沿った医療情報システム全体の設計方針とも整合を取り、院内サブシステム間の接続で個人情報保護・アクセス制御が担保できる構成にする考え方が実務上の要点です。
6. 救急ホットライン・地域連携電話の設計
救急告示病院・二次/三次救急を担う病院では、消防機関からのホットライン、他院からの転院依頼、地域連携室宛の紹介受付など、専用回線・優先着信の設計が求められます。総務省消防庁「救急業務に関する情報(2026-07-18 取得)」でも、救急搬送における医療機関との連絡体制の重要性が整理されています。
6-1. 救急・地域連携電話の設計要点
- 救急ホットライン:受入判断者に直通・混雑時に自動転送する着信設計
- 地域連携室代表:紹介元病院・クリニック向けの受電窓口分離
- 災害時優先電話:災害時優先扱いの回線を独立系統で維持
- 録音と記録:受入可否の口頭合意を残す運用(個人情報保護に配慮)
これらの用途は「PBX全体を止められない」制約が強いため、PBX更新時には無停止切替(並行運転からの段階切替)や、旧設備の一時併存が計画に組み込まれるケースが多くなります。
7. 停電・災害時の電源確保
病院電話設備は、停電・災害時にも通話可能である必要があります。厚生労働省「災害医療(2026-07-18 取得)」の各種資料や、災害拠点病院の指定要件のなかで、通信手段の多重化・非常用電源の確保が求められていることが公開されています。
7-1. 電話設備の電源設計チェック
| 設備 | 電源要件の目安 | 設計論点 |
|---|---|---|
| PBX本体 | 非常用電源+UPSでの継続給電 | 切替時のダウンタイム許容範囲 |
| SIP/IP端末 | PoE給電のスイッチ側UPS化 | PoE給電容量とスイッチ電源設計 |
| 基地局(DECT/Wi-Fi) | PoEもしくはローカル電源+UPS | 基地局数分の給電容量確保 |
| 災害時優先電話 | 独立系統・停電対応端末 | 停電時にも発着信できる端末選定 |
| 衛星電話・MCA無線 | 回線バックアップ手段 | 電話回線全断時の代替経路 |
IP化された電話設備は、停電時にネットワーク機器(コアスイッチ・エッジスイッチ・PoEインジェクタ)も同時に停電対策が必要になる点が、旧来のTDM交換機と異なる特徴です。UPS・自家発電・燃料備蓄の計画は電話設備単独ではなく、院内ITインフラ全体と併せた設計に落とし込む考え方が要点です。
8. BCP(事業継続計画)との整合
病院のBCPは、災害・感染症・システム障害などの事象発生時に、診療機能をどの水準まで維持するかを整理した計画です。厚生労働省「災害医療体制の整備(2026-07-18 取得)」に沿い、災害拠点病院・救命救急センター等では業務継続計画の策定が求められています。電話・通信は、その中でも代替性の低い重要インフラです。
8-1. 電話系BCPで整理する要点
- 代表番号・救急ホットライン・地域連携番号の一時転送先(他拠点・携帯電話等)
- クラウドPBX利用時の事業者側障害への備え(代替回線・オンプレ最低構成の残置)
- 災害時優先電話・衛星電話・MCA無線・SNS等の代替通信手段の運用手順
- 停電時の内線・外線利用範囲(フル運用/縮退運用の切り分け)
- 訓練頻度と手順書の版管理
クラウドPBXは自庁設備の被災リスクを分散できる利点がある一方、事業者側の広域障害時に一括で影響を受ける構造上のリスクもあります。地域の災害想定に応じて、オンプレ/クラウドの併存・冗長化を検討する考え方が実務上の落としどころになります。
9. PBX更新のコスト整理
PBX更新の費用は、病床規模・内線数・拠点数・ナースコール連携・BCP要件によって幅広く変動します。以下は公開情報から整理した一般的な費用感の目安です。実際の見積もりは各社に直接確認してください。
| 更新パターン | 初期費用の目安 | 月額の目安 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 既存PBX延命・部品保守延長 | 数十万円〜数百万円 | 保守契約次第 | 短期の延命/IP化計画までのつなぎ |
| オンプレIP-PBXへ更新 | 数百万円〜数千万円 | 保守費用が別途 | 院内資産/ナースコール連携継続向き |
| クラウドPBX+SIPトランク | 抑えやすい | 席数課金 | 拠点間連携・在宅事務との統合向き |
| ハイブリッド構成 | 個別見積もり | 個別見積もり | 基幹はオンプレ/管理職はクラウド等 |
費用試算では、初期費用と月額に加え、電源設備・LAN配線・ナースコール盤の改修・PoEスイッチ増設・UPS更新など「電話設備以外の付帯工事」が計上されがちです。複数事業者から見積を取り、内訳の粒度を揃えて比較する運用が現実的です。
10. FAQ——PBX更新前によくある5つの疑問
- Q1. 既存の代表番号(03/06等)はクラウドPBX/SIPトランクでも継続利用できますか?
- A. 多くの事業者では番号ポータビリティに対応していますが、回線種別(加入電話/ひかり電話/INSネット等)や地域によって手続き可否・期間が異なります。NTT東日本・NTT西日本の公表資料および契約予定事業者へ、対象番号ごとに書面で可否確認する運用が現実的です。
- Q2. 病院PBXをクラウドPBXへ全面移行しても大丈夫ですか?
- A. 病院規模・救急機能・BCP要件で判断が分かれます。救急ホットライン・ナースコール連携・災害時優先電話などを持つ病院では、基幹部分をオンプレIP-PBXとして残し、事務系・拠点間連携部分をクラウドで補完するハイブリッド構成の検討事例が公開されています。全面クラウド移行は、事業者側障害時の代替経路とBCP訓練を含めた設計をセットで整理することが要点です。
- Q3. ナースコールはPBX更新のタイミングでどう扱うべきですか?
- A. ナースコール盤・院内スマホ内線・PBXの三者はライフサイクルがずれることが多いため、更新スコープを分けて計画する考え方が実務的です。今回のPBX更新でナースコール盤も同時更新するのか、接続互換性を保った延命に留めるのかを、看護部・施設課・情報システム部で早期に合意しておくと後戻りが減ります。
- Q4. ISDN廃止で影響を受ける院内設備を洗い出す方法は?
- A. 電話回線の契約一覧(回線番号・種別)から始め、各回線に接続されている端末(FAX・G4FAX・警報装置・エレベーター緊急通報・防災盤・検体伝送装置など)を現地確認で棚卸しする流れが実務的です。NTT東日本・NTT西日本の公表資料および接続機器メーカーへ後継対応の可否を書面確認することが推奨されます。
- Q5. 停電時にIP-PBXは通話継続できますか?
- A. IP-PBX本体だけでなく、コアスイッチ・エッジスイッチ・PoE給電スイッチ・SIP端末・DECT基地局・Wi-Fi APまでを含めた電源設計が要件です。UPS・自家発電の給電範囲と時間を設計書に落とし、災害時にどの範囲まで通話が維持できるかを縮退運用の手順として整理しておくと、BCP訓練との整合が取りやすくなります。
11. まとめ——PBX更新は「電話単独」ではなく院内ITインフラの再設計
病院PBXの更新は、単なる電話交換機の入れ替えではなく、ISDN廃止・電話網IP化・ナースコール連携・災害時電源・BCPを横串で見直すタイミングです。既存回線の棚卸し、周辺設備の後継対応可否、停電時の電源設計、BCPとの整合を早い段階で整理しておくことで、後戻りの少ない更新計画に落とし込めます。まずは自院の回線契約一覧・接続機器一覧・PBXの保守期限を洗い出し、複数の事業者へRFI(情報提供依頼)を出すところから始めるのが実務的な第一歩です。
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出典・参考情報
- 総務省「情報通信白書」(2026-07-18 取得)
- 総務省「電気通信サービスに関する情報」(2026-07-18 取得)
- 総務省消防庁「救急業務に関する情報」(2026-07-18 取得)
- 厚生労働省「医療情報化の推進」(2026-07-18 取得)
- 厚生労働省「災害医療」(2026-07-18 取得)
- 厚生労働省「災害医療体制の整備」(2026-07-18 取得)
- NTT東日本「サービスのご案内」(2026-07-18 取得)
- NTT西日本「サポート情報」(2026-07-18 取得)
免責事項:本記事は公開情報をもとに作成した比較・参考情報です。記載内容は執筆時点の情報であり、各サービスの機能・料金・回線サービスの提供条件は変更される場合があります。ISDN・電話網IP化の詳細仕様、災害医療体制・BCPの解釈に関する判断は各所管機関・事業者・専門家へ確認してください。
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mitoru編集部の見解
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