※本記事には広告(PR)が含まれます。mitoru編集部は公開情報を整理して比較・解説しており、表示順位や評価は広告主からの依頼ではなく編集部の独自判断によります。
医療機関に入院する患者に対しては、病名・症状・治療計画・推定される入院期間などを記載した入院診療計画書を作成し、患者本人(および家族)にわかりやすく説明することが、診療報酬上の入院基本料等の算定要件として、また医療法が定める説明努力義務の実践として位置づけられています。入院時の説明業務は書面交付にとどまらず、主治医による病状説明、クリニカルパスを用いた見通しの共有、患者の権利・義務の案内、インフォームドコンセントに基づく同意取得、家族への説明・同席の調整、未成年・認知症・外国人患者への配慮など、多岐にわたる実務を含みます。本記事では、厚生労働省・e-Gov法令検索などの公開情報を整理した内容として、医事課・看護部・医療安全管理部門が入院時患者説明業務を運営するうえで押さえておきたいポイントを体系的に取り上げます。個別の同意書様式・院内規程・法的解釈の判断は、担当の医事課・顧問弁護士・所轄の厚生局にご相談ください。
この記事の対象読者:医事課長・看護部長・医療安全管理者・患者相談窓口担当者など、医療機関で入院時の患者説明業務・同意取得の体制構築を担う立場の方。
この記事でわかること
- 入院診療計画書の作成・説明が求められる法的根拠と診療報酬上の位置づけ
- 主治医による入院時説明の実施体制と、説明を行う担当者の考え方
- クリニカルパスを活用した治療の見通し共有の実務
- 入院時における患者の権利と、療養上の義務(院内規則の遵守等)の案内の仕方
- インフォームドコンセントの基本と、入院時同意書に盛り込むべき項目
- 家族への説明・同席をめぐる同意確認と個人情報保護上の留意点
- 未成年患者・認知症患者・外国人患者への説明配慮
- 説明記録の残し方と、セカンドオピニオンへの案内の実務
1. 入院診療計画書の作成義務と法的根拠(医療法)
医療法第1条の4第2項は、医師・歯科医師・薬剤師・看護師その他の医療の担い手に対して「医療を提供するに当たり、適切な説明を行い、医療を受ける者の理解を得るよう努めなければならない」という説明努力義務を定めています(出典:e-Gov法令検索「医療法」https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000205、取得日:2026-09-12)。入院診療計画書は、この説明努力義務を入院診療の場面で具体化する書面の一つとして位置づけられており、あわせて診療報酬における入院基本料等の施設基準でも、入院した日から一定期間以内に文書で病状・治療計画・推定される入院期間等を説明し、その写しを診療録に添付することが求められる運用が整理されています。医療機関としては、両方を満たす書面・運用として位置づけておくことが実務的です。
| 記載項目 | 内容の例 |
|---|---|
| 担当医師名・担当看護師名 | 主治医・受け持ち看護師の氏名 |
| 病名・症状 | 入院時点で説明可能な範囲の病名・症状 |
| 治療計画 | 検査予定・治療方針・手術予定の概要 |
| 推定される入院期間 | 症状・治療内容を踏まえたおおよその見通し |
| 特別な栄養管理の必要性 | 該当する場合の栄養管理方針 |
入院診療計画書は一度作成すれば終わりというものではなく、病状の変化や治療方針の変更があった場合には、その都度内容を見直し、変更点を患者・家族に説明し直す運用が望ましいと言えます。特に急性期病棟では入院期間が短く、初回の説明内容と実際の治療経過にずれが生じやすいため、退院支援計画とあわせて定期的に内容を確認する仕組みを設けておくと、説明業務の抜け漏れを防ぎやすくなります。
2. 主治医による入院時説明の実施体制とクリニカルパスの活用
入院時の病状説明は、原則として主治医が担う業務ですが、実際の運用では、主治医の指示のもとで受け持ち看護師が入院診療計画書の内容確認・補足説明を行う役割分担も広く見られます。多くの医療機関では、入院した日からできるだけ早い段階、目安として数日以内に説明を行う運用が整理されており、説明のタイミングが遅れると、患者・家族が治療の見通しを把握できないまま入院生活が進んでしまう懸念があります。病棟業務が繁忙な時間帯に説明が後回しにされないよう、入院時オリエンテーションのスケジュールに説明時間をあらかじめ組み込んでおく運用が実務的です。
クリニカルパス(診療スケジュール表)は、特定の疾患・手術に対する標準的な治療の流れを、検査・処置・食事・安静度・退院時期の見通しとともに一覧化した院内文書です。入院時説明に活用することで、担当医師・看護師が変わっても説明内容にばらつきが生じにくくなり、患者・家族にとっても入院生活全体の見通しを視覚的に把握しやすくなります。一方で、あくまで標準的な経過を示すものであり、個別の病状によって経過が変わり得る旨を口頭で補足しておくことが、後の認識のずれを防ぐうえで望ましいと言えます。

- 説明担当者の明確化:主治医が説明を行い、看護師が補足・確認を担う役割分担をあらかじめ決めておく
- 説明時期の目安:入院後できるだけ早い段階で説明時間を確保し、後回しにしない運用にする
- クリニカルパスの提示:標準的な治療の流れを共有し、個別性がある旨をあわせて補足する
- 説明環境の配慮:他患者に聞こえない個室・面談室等で説明を行う
3. 入院時における患者の権利と義務(療養上の遵守事項)
入院時の説明では、治療内容の案内とあわせて、患者が入院生活の中で持つ権利と、療養上求められる義務(院内規則の遵守事項)の両方を案内することが一般的です。権利の面では、自身の病状・治療内容について説明を受ける権利、治療方針について自ら選択・決定する権利、他の医師の意見を求めるセカンドオピニオンを利用する権利などが挙げられます。義務の面では、正確な症状・既往歴の申告、院内の療養環境を守るための規則(面会時間・喫煙ルール・外泊時の届出等)の遵守、他の患者の療養環境を妨げない行動などが一般的に案内される内容です。
- 患者の主な権利:説明を受ける権利/治療方針を自ら決定する権利/セカンドオピニオンを求める権利/診療記録の開示を求める権利
- 患者に案内する主な療養上の事項:正確な症状・既往歴の申告/院内規則(面会・喫煙・外泊届出等)の遵守/他の患者への配慮
権利と義務を一方的に書面で渡すだけでは、患者側の理解が形式的なものにとどまりやすいため、入院診療計画書の説明時にあわせて口頭で要点を伝え、質問があればその場で確認できる時間を設けておくことが、患者の理解を得るうえで実務的です。特に権利の説明は、患者が遠慮して質問しにくい雰囲気にならないよう、説明する側の言葉選びにも配慮が求められます。
4. インフォームドコンセントの基本と入院時同意書の運用
インフォームドコンセント(説明と同意)は、医師が病状・治療方針・予想される効果とリスク・代替となる治療法の有無などを患者にわかりやすく説明し、患者がその内容を理解したうえで治療方針に同意する、あるいは同意しないことを自ら選択できるようにする考え方です。医療法第1条の4第2項の説明努力義務は、この理念を法文上に位置づけたものと整理されています。入院時に取得する同意書には、入院診療計画に対する包括的な同意書と、手術・輸血・侵襲的検査など個別の医療行為ごとの個別同意書の2種類があり、目的が異なるため、包括同意があっても個別の同意取得を省略できるものではありません。

入院時同意書の様式には、説明を行った日時・説明者・同席者、説明した内容の要点、患者本人の署名(本人による署名が困難な場合は代筆者・代諾者の記載)、同意の撤回がいつでも可能である旨の案内などを盛り込んでおくことが望ましいと言えます。同意は一度得たら固定されるものではなく、患者が同意を撤回したい場合や、治療方針の変更に伴って再同意が必要になった場合に、円滑に手続きできる運用をあらかじめ整えておくことが、患者の自己決定権を尊重するうえで重要です。
- 説明を行った日時・説明者・同席者の記録欄
- 病状・治療方針・想定されるリスク・代替治療の有無の説明要旨
- 患者本人(または代諾者)の署名・続柄の記載欄
- 同意はいつでも撤回できる旨の案内文
5. 家族への説明・同席の実務
入院時の説明に家族が同席する場合、まず患者本人に対して、家族への説明内容の共有についてどこまで同意するかを確認しておく必要があります。個人情報保護法上、患者の病状は要配慮個人情報に該当し得るため、本人の同意なく家族に詳細な病状を伝えることは、原則として避けるべき対応です(出典:e-Gov法令検索「個人情報の保護に関する法律」https://laws.e-gov.go.jp/law/415AC0000000057、取得日:2026-09-12)。多くの医療機関では、入院時に「病状説明を誰にどこまで伝えてよいか」を確認する欄を入院時の書面に設け、患者本人の意向を事前に把握する運用を取り入れています。
意識障害・重度の認知機能低下などにより患者本人の意思確認が難しい場合は、家族などの代諾者から病状の理解・治療方針への同意を得る運用が一般的です。この場合も可能な範囲で本人にわかりやすい言葉で説明を試み、意思を尊重する姿勢を保つことが望ましいとされています。複数の家族が関わるケースでは、説明窓口となる代表者をあらかじめ決めておくと、繰り返し説明する負担を軽減しやすくなります。
6. 未成年患者・認知症患者への説明配慮
未成年患者の入院にあたっては、民法上の親権者(法定代理人)から治療方針への同意を得ることが基本的な運用となります(出典:e-Gov法令検索「民法」https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089、取得日:2026-09-12)。あわせて、患者本人が年齢・発達段階に応じて理解できる言葉で、これから受ける検査・治療について説明を行い、本人なりの納得(インフォームド・アセントと呼ばれる考え方)を得るよう努めることが、子ども本人の権利を尊重するうえで望ましいとされています。説明の際は、絵図や模型を用いるなど、年齢に応じた工夫を取り入れている医療機関も見られます。
認知症のある患者への説明では、判断能力の程度に応じて理解を確認しながら段階的に進める配慮が求められます。厚生労働省は認知症施策に関する情報を公表しており、本人の意思をできる限り尊重した意思決定支援の考え方が示されています(出典:厚生労働省「認知症施策」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/ninchi/index.html、取得日:2026-09-12)。判断能力の低下が大きい場合は、家族や成年後見人等と連携しながら同意を得る運用となりますが、この場合も本人にわかりやすい言葉で説明を試み、意向を可能な限り確認する姿勢が望ましいと言えます。
7. 外国人患者への配慮(やさしい日本語・通訳体制)
日本語を母語としない患者への入院時説明では、専門用語を避けた「やさしい日本語」での説明や、医療通訳者・多言語対応の説明資料の活用が実務上の対応として挙げられます。厚生労働省は外国人患者受入れ体制の整備に関する情報を公表しており、医療機関における通訳体制・多言語資料の整備に関する取り組みが紹介されています(出典:厚生労働省「外国人患者受入れ体制整備事業」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/kokusai/index.html、取得日:2026-09-12)。院内に医療通訳者を常駐させることが難しい医療機関では、電話・映像による通訳サービスの活用や、多言語対応の入院案内文書をあらかじめ準備しておく方法が現実的な選択肢となります。

言語の違いに加えて、宗教上の食事制限、面会に関する家族観の違いなど、文化的な背景への配慮が必要になる場合もあります。入院時のオリエンテーションで、こうした点についてもあわせて確認しておくと、入院生活の中でのトラブルを未然に防ぎやすくなります。説明が正確に伝わったかどうかを、通訳を介した一方向の説明だけで終わらせず、患者本人に理解度を確認する質問を挟みながら進める運用が望ましいと言えます。
8. 説明記録の残し方とセカンドオピニオンへの案内
入院時に行った説明の内容は、診療録に記載し、可能であれば説明に用いた書面の写しを添付しておくことが、後日の振り返りやトラブル対応の観点から重要です。記録には、説明日時、説明者・同席者、説明した内容の要点、患者・家族の反応や質問内容、同意の有無を残しておくと、担当者が交代した場合や、後日説明内容について確認が必要になった場合にも経緯をたどりやすくなります。説明記録のテンプレートを院内で統一しておくことで、記載の抜け漏れや、担当者ごとの記載レベルのばらつきを抑えやすくなります。
| 記録項目 | 記載内容の例 |
|---|---|
| 説明日時・場所 | 説明を行った年月日・時刻・場所 |
| 説明者・同席者 | 説明を行った医師・看護師、同席した家族の氏名・続柄 |
| 説明内容の要点 | 病状・治療方針・リスク・代替治療の説明要旨 |
| 患者・家族の反応 | 質問内容、理解度の確認結果 |
| 同意の有無・撤回の可能性 | 同意書への署名有無、撤回できる旨の案内実施記録 |
患者が現在の治療方針について他の医師の意見も聞いてみたいと希望した場合には、セカンドオピニオンの利用を案内する対応が求められます。国立がん研究センターは、セカンドオピニオンの一般的な流れや、診療情報提供書を準備して他院を受診する手順について情報を公表しています(出典:国立がん研究センター「がん情報サービス セカンドオピニオン」https://ganjoho.jp/public/dia_tre/second_opinion/index.html、取得日:2026-09-12)。医療機関としては、診療情報提供書の作成・検査データの提供を円滑に行える体制を整えたうえで、院内の医師・看護師がセカンドオピニオンの利用を患者の当然の権利として案内できるよう、対応方針を周知しておくことが望ましいと言えます。
9. Q&A・チェックリスト
Q1. 入院診療計画書は入院するすべての患者に対して作成する必要がありますか?
診療報酬上の施設基準では、入院基本料等を算定する多くのケースで入院診療計画書の作成・説明が求められる運用となっています。個別の算定要件・適用範囲は診療報酬点数表の最新の告示・通知で確認したうえで、院内の運用ルールに落とし込む進め方が実務的です。
Q2. 患者が説明内容に納得できず、同意書へのサインを拒否した場合はどうすればよいですか?
患者には治療方針を自ら選択・決定する権利があるため、拒否理由を丁寧に確認し、説明不足があれば補足します。それでも同意が得られない場合は、意思を尊重しつつ、代替の治療選択肢やセカンドオピニオンの利用も案内する対応が望ましいと言えます。
Q3. 家族から「本人には病状を伝えないでほしい」と言われた場合の対応はどうすればよいですか?
患者本人が説明を受ける権利を持つことが原則である一方、家族の意向にも配慮が必要な難しい判断となる場面です。院内の倫理委員会や医療安全管理部門と相談しながら、本人の意思確認の可能性、伝える範囲・伝え方について個別に検討する体制を整えておくことが望ましいと言えます。
Q4. 外国人患者への説明で通訳者を確保できない場合はどうすればよいですか?
院内に医療通訳者がいない場合は、電話・映像を通じた通訳サービスの活用や、多言語対応の説明資料をあらかじめ準備しておく方法が現実的です。やさしい日本語での説明にとどめず、理解度を確認しながら段階的に進める姿勢が求められます。
入院時説明業務チェックリスト
- 入院診療計画書の記載項目・作成期限の運用を院内規程で明文化したか
- 主治医・看護師の役割分担とクリニカルパスの活用方針を整理したか
- 患者の権利・療養上の事項を案内する説明時間を確保しているか
- 入院時同意書と個別同意書の使い分けを職員に周知しているか
- 家族への説明範囲を本人に確認する運用を導入しているか
- 未成年・認知症・外国人患者への説明配慮の手順を整備しているか
- 説明記録のテンプレートと、セカンドオピニオン案内の対応方針を整えたか
10. 次の1ステップ
本記事を読み終えたら、まず「現在使用している入院診療計画書・入院時同意書の様式を1部取り出し、記載項目に抜け漏れがないか確認する」という最小アクションから始めることをお勧めします。様式が古いまま更新されていない医療機関では、セカンドオピニオンの案内欄や、家族への説明範囲を確認する欄が設けられていないケースも見られます。次のステップとして、未成年・認知症・外国人患者への説明配慮の手順が院内マニュアルに明文化されているかどうかを確認する作業に進みます。
関連記事
出典
- e-Gov法令検索「医療法」https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000205(取得日:2026-09-12)
- e-Gov法令検索「個人情報の保護に関する法律」https://laws.e-gov.go.jp/law/415AC0000000057(取得日:2026-09-12)
- e-Gov法令検索「民法」https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089(取得日:2026-09-12)
- 厚生労働省「認知症施策」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/ninchi/index.html(取得日:2026-09-12)
- 厚生労働省「外国人患者受入れ体制整備事業」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/kokusai/index.html(取得日:2026-09-12)
- 厚生労働省「医療計画」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/iryou_keikaku/index.html(取得日:2026-09-12)
- 国立がん研究センター「がん情報サービス セカンドオピニオン」https://ganjoho.jp/public/dia_tre/second_opinion/index.html(取得日:2026-09-12)
免責事項
本記事は厚生労働省・e-Gov法令検索・国立がん研究センター等の公開情報を整理した内容として、医療機関における入院時患者説明業務に関する一般的な情報を提供するものです。個別の同意書様式・院内規程・診療報酬の算定可否・法的解釈の判断は、担当の医事課・顧問弁護士・所轄の厚生局にご相談ください。関連法令・制度・診療報酬の内容は改正・改定されることがあるため、実務適用時は最新の公式情報を確認してください。記載内容は2026-09-12時点の公開情報に基づきます。
関連記事(mitoru編集部おすすめ)
mitoru編集部の見解
医療法人の会計・税務は、定期同額給与の3ヶ月ルール、事前確定届出給与の届出期限、分掌変更否認のリスクなど、一般法人と異なる運用が必要です。クラウド会計の導入だけでなく、税理士との連携体制を併せて整えることをmitoru編集部は推奨します。