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退院前カンファレンスは、入院患者の退院後の生活を見据え、医師・看護師・医療ソーシャルワーカー(MSW)・理学療法士(PT)・作業療法士(OT)・薬剤師・介護支援専門員(ケアマネジャー)等の多職種と、患者本人・家族が一堂に会し、退院後の療養方針・在宅サービスの利用計画・注意点を共有する会議です。診療報酬制度では、入院医療機関の医師・看護師等が、在宅療養を担う医師・訪問看護ステーションの看護師等と共同で退院後の指導を行い、診療情報等を文書で提供した場合の評価として退院時共同指導料1・2が設けられており、退院前カンファレンスはその実施形態の一つとして位置づけられています(厚生労働省「保険診療における施設基準等」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/iryouhoken15/index.html )。
本記事は病院の院長・事務長・地域連携室(入退院支援部門)責任者・病棟看護師長・退院支援担当看護師・医療ソーシャルワーカーを主な読者として想定し、退院前カンファレンスの制度的位置づけと退院時共同指導料の算定要件、参加職種ごとの役割分担、情報共有シートの設計、家族参加の運営、ICTを活用したオンライン参加、入退院支援加算との連動、在宅療養移行支援、看取り期の対応までを、厚生労働省の公開情報を整理した内容としてまとめています。個別の算定要件の該当性・診療報酬の解釈・治療方針に関する判断は、地方厚生(支)局・主治医等の所定の専門人材にご確認ください。
この記事で分かること
- 退院前カンファレンスの制度的位置づけと退院時共同指導料1・2の算定要件の考え方
- 参加職種(医師・看護師・MSW・PT/OT・薬剤師・ケアマネジャー)の役割分担
- 情報共有シートの設計項目と電子カルテ連携の考え方
- 家族参加の運営(同意取得・日程調整・説明資料)
- ICTを活用したオンライン参加と情報セキュリティ上の配慮
- 加算算定パスと入退院支援加算との連動
- 在宅療養移行支援(訪問看護・介護保険サービスとの調整)
- 看取り期・看取り目的の退院時における対応
1. 退院前カンファレンスの位置づけと退院時共同指導料
1-1. 退院支援プロセスにおける位置づけ
退院支援は、入院後早期のスクリーニングによる退院困難な要因の把握に始まり、退院支援計画の策定、多職種・院外関係者との調整、退院前カンファレンスの開催、退院後のフォローアップという一連のプロセスとして整理されます。退院前カンファレンスはこのプロセスの中でも、在宅療養に向けた最終的な合意形成の場として位置づけられ、入院中に把握した医学的情報・ADL(日常生活動作)の状況・介護状況・住環境等を、在宅側の関係者に引き継ぐ機能を担います(厚生労働省「地域包括ケアシステム」関連資料 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/chiiki-houkatsu/index.html )。
1-2. 退院時共同指導料1・2の算定要件の考え方
退院時共同指導料は、入院中の患者について、入院医療機関の医師・看護師等と、退院後の在宅療養を担う保険医療機関の医師・看護師等または訪問看護ステーションの看護師等が、共同で退院後の療養に必要な指導を行い、その内容を文書で提供した場合に算定できる診療報酬項目です。区分は在宅療養担当医療機関の種別等により1・2に分かれ、対象患者の状態(厚生労働大臣が定める疾病等)によって加算が設けられる区分もあります。具体的な算定要件は診療報酬点数表・地方厚生局の通知の最新版で確認する運用が求められます(厚生労働省「令和6年度診療報酬改定」関連資料 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00037.html )。院内での算定漏れ防止には、退院支援担当看護師・医事課・地域連携室が連携し、実施記録と算定要件を突き合わせる運用が有用です。
2. 参加職種と役割分担(医師・看護師・MSW・PT/OT・薬剤師・ケアマネジャー)
2-1. 病院側の参加職種
病院側からは、主治医(退院後の病状予測・急変時対応方針の説明)、病棟看護師(日々のケア内容・服薬管理状況の説明)、退院支援担当看護師・MSW(在宅サービス調整の進捗・社会資源導入の説明)、リハビリテーション部門のPT・OT(ADL評価・住環境改善の助言)、薬剤師(服薬管理・持参薬整理・在宅での服薬支援方法の説明)が参加する構成が広く見られます。管理栄養士が在宅での食事形態について説明を加える場合もあります。参加職種数は算定要件にも関わるため、患者の状態に応じて必要な職種を招集する体制設計が重要です。病院MSWの配置・役割分担の詳細は、病院MSW(医療ソーシャルワーカー)配置設計 完全ガイドでも整理しています。
2-2. 在宅側・介護保険サービス側の参加職種
在宅側からは、在宅療養を担う診療所の医師、訪問看護ステーションの看護師、居宅介護支援事業所のケアマネジャーが中心に参加します。要介護認定が未了の場合や福祉用具貸与・住宅改修等を検討する場合は、地域包括支援センターの担当者が参加することもあります。訪問リハビリ・訪問薬剤管理指導・訪問栄養食事指導の導入を検討する患者については、担当職種が参加し在宅生活の課題をすり合わせる運用が有用です。
| 参加職種 | 主な説明・共有内容 | 算定・加算上の留意点 |
|---|---|---|
| 医師(病院・在宅側) | 病状・予後の見通し、急変時対応方針、指示内容 | 退院時共同指導料は医師の説明・指導が算定の前提 |
| 看護師(病棟・訪問看護) | 日常のケア方法、医療処置の手技、観察ポイント | 参加職種として加算の対象に含まれる区分がある |
| MSW・ケアマネジャー | 介護保険サービス調整、社会資源導入、経済的支援制度 | 入退院支援加算の要件人材として位置づけられる場合がある |
| PT/OT(リハビリ職) | ADL評価、住環境改善、福祉用具の提案 | 訪問リハビリ導入の要否判断に直結 |
| 薬剤師 | 服薬管理方法、持参薬整理、在宅での服薬支援 | 在宅患者訪問薬剤管理指導との連携要否を確認 |
3. 情報共有シートの設計
3-1. 共有すべき情報項目
退院前カンファレンスを効率的に運営するには、事前に情報共有シート(サマリー)を作成し、参加者が共通の資料をもとに議論できる状態を整えることが実務上重要です。共有項目としては、①基本情報(診断名・既往歴・アレルギー)、②入院経過と治療内容、③現在のADL・認知機能の状況、④医療処置・服薬内容(在宅での継続要否)、⑤退院後の生活場所と介護者の状況、⑥利用予定の介護保険サービス・社会資源、⑦緊急時の連絡体制・急変時対応方針の希望が挙げられます。項目を標準化したテンプレートを整備することで、記載のばらつきを抑え、初めて患者に接する在宅側にも情報が伝わりやすくなります。
3-2. 様式の標準化と電子カルテ連携
情報共有シートは、電子カルテの退院支援テンプレート機能と連動させることで、看護記録・診療記録から必要な情報を転記する手間を軽減できます。地域医療連携ネットワークに参加している場合は、共通様式(地域連携パスや退院時サマリー標準様式等)に沿って作成することで、地域の医療機関・介護保険事業所との情報連携がスムーズになります。個人情報を含む資料の取り扱いには、院内の個人情報保護規程に沿った管理(配布部数の管理・回収・アクセス制限)が求められます(厚生労働省「医療DXの推進について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/iryoudx_00001.html )。
4. 家族参加の運営(同意取得・日程調整・説明資料)
退院前カンファレンスへの家族参加は、在宅療養に向けた合意形成の質を左右する重要な要素です。運営上は、①開催候補日を早めに複数提示し家族の就労状況等に配慮した日程調整を行う、②参加できない家族がいる場合は電話やオンラインでの参加、または後日の個別説明で補う代替手段を用意する、③説明資料は専門用語を控えた平易な表現で作成し図表を交えて分かりやすく伝える、④家族の不安や希望を聞き取る時間を議事の中に確保する、という運用が有用とされています。家族への説明・面談を行う物理的な環境(防音性・プライバシー配慮)の整備も対話の質に影響します。面談室の設計・運用の考え方は、病院の面談室設計 完全ガイドでも整理しています。同意取得は、院内の説明・同意(インフォームドコンセント)に関する規程に沿って実施します。
5. ICTを活用したオンライン参加とオンライン連携拡充
5-1. オンライン会議システムの導入
就労中の家族が遠方に在住している場合や、在宅側の関係者の移動時間の確保が難しい場合には、オンライン会議システムを活用した退院前カンファレンスの開催が選択肢となります。診療報酬上も、情報通信機器を用いた退院時共同指導の実施が一定の要件のもとで評価される区分が整備されており、対面開催が難しい場合の運用の幅を広げる仕組みとして活用が進んでいます。導入にあたっては、参加者の通信環境・機器操作への習熟度に差があることを踏まえ、事前の接続テストや案内資料の用意など運用面での配慮が課題になりやすい点です。
5-2. 情報セキュリティとプライバシー配慮
オンライン開催では、患者の病状・生活状況といった要配慮個人情報を含む会話が第三者に漏れることのないよう、参加者の本人確認、通信の暗号化、録画・録音の取り扱いルールの明確化が求められます。医療機関における個人情報の適切な取扱いに関するガイダンスに沿った運用体制の整備が前提となります(厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」関連資料 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/johoka/index.html )。使用する情報通信機器の選定は、オンライン診療に関する厚生労働省の指針も参考になります(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/rinsyo/index_00010.html )。
6. 加算算定パスと入退院支援加算との連動
退院前カンファレンスの算定は、入院早期からの退院支援プロセス全体と連動させて設計すると算定漏れを防ぎやすくなります。入退院支援加算は、入院早期のスクリーニングと退院支援計画の作成を要件とする加算で、1・2・3の区分ごとに専従・専任の看護師または社会福祉士の配置等の施設基準が定められています。退院前カンファレンスは、この計画の実行段階として位置づけられる場合が多く、両者を一体的に管理する運用が負担軽減につながります。
| 段階 | 主な業務 | 関連する加算・要件 |
|---|---|---|
| 入院早期 | 退院困難要因のスクリーニング | 入退院支援加算の算定要件(入院後の一定期間内の実施) |
| 支援計画策定 | 退院支援計画の作成・説明 | 入退院支援加算の計画作成要件 |
| 多職種調整 | 院内カンファレンス、在宅側との連絡調整 | 退院前カンファレンス開催の準備 |
| 退院前カンファレンス | 患者・家族・在宅側関係者との合同説明 | 退院時共同指導料1・2、状態区分による加算 |
| 退院後 | 在宅側からのフィードバック確認 | 地域連携パス・退院時サマリーの活用 |
算定要件・施設基準の詳細は術式・患者の状態区分ごとに異なる部分があるため、地方厚生(支)局への届出内容と、院内の運用マニュアルを定期的に突き合わせて確認する体制が求められます。
7. 在宅療養移行支援(訪問看護・介護保険サービスとの調整)
退院前カンファレンスで合意された方針を実際の在宅生活に落とし込むには、訪問看護ステーション・居宅介護支援事業所・訪問介護事業所等との調整を、退院日を起点に逆算したスケジュールで進める運用が有用です。要介護認定の申請状況、福祉用具の貸与手配、住宅改修の実施状況、訪問診療医の確保状況等は、退院日までに一定の準備期間を要する事項であり、進捗を確認し遅れが見込まれる場合は退院日の調整や代替サービスの検討が必要になります。地域の医療・介護資源の連携体制整備は、地域医療連携室の機能とも密接に関わります。地域医療連携室の運営体制は、地域医療連携室の運営 完全ガイドでも取り上げています(厚生労働省「介護保険制度」関連資料 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/index.html )。
8. 看取り期・看取り目的の退院時における対応
終末期にある患者が、在宅での看取りを希望して退院する場合、退院前カンファレンスの位置づけと配慮すべき点は通常の在宅移行と異なる部分があります。患者本人の意思を確認し、家族・医療従事者を含む関係者で繰り返し話し合いを行う意思決定プロセス(アドバンス・ケア・プランニング:ACP)の考え方を踏まえ、症状急変時の対応方針(救急搬送の要否・蘇生処置に関する希望等)を、在宅療養を担う医師・訪問看護師と事前にすり合わせておくことが重要です。厚生労働省は「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」を公表しており、本人の意思決定を基本としたうえで、医療・ケアチームによる話し合いを通じて方針を決定していく考え方が示されています(https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000197665.html )。看取り期のカンファレンスでは、症状緩和のための薬剤の取り扱いや訪問看護・在宅医の対応体制、家族の介護負担への配慮を短い準備期間で整理する場面が多く、多職種の迅速な連携が要点となります。
9. よくある質問(FAQ)
- Q1. 退院前カンファレンスは全ての患者に開催が求められますか?
- A. 診療報酬上の退院時共同指導料の算定を目的とする場合は、対象患者の状態や在宅療養担当医療機関との共同指導の実施が要件となります。全ての退院患者に一律の開催が制度上求められているわけではなく、退院支援計画に基づき、在宅生活への移行に際して多職種の合同説明が必要と判断される患者を対象に開催する運用が一般的です。具体的な対象範囲は院内の退院支援マニュアルで整理しておくことが実務上有用です。
- Q2. オンライン開催の退院前カンファレンスでも診療報酬は算定できますか?
- A. 情報通信機器を用いた退院時共同指導の実施が一定の要件のもとで評価される区分が整備されています。適用可否は患者の状態や実施方法によって異なるため、算定を検討する場合は診療報酬点数表の該当項目と地方厚生(支)局の通知の最新版を確認する運用が求められます。
- Q3. 家族の一部しか参加できない場合はどう対応すればよいですか?
- A. 主たる介護者を含む一部の家族のみの参加であっても開催自体は可能です。参加できなかった家族には、電話・オンライン通話での個別説明や資料送付といった代替手段で情報を補う運用が一般的です。合意形成に関わる重要な内容は、後日の食い違いを避けるため書面で記録を残しておくことが望まれます。
- Q4. ケアマネジャーが決まっていない段階でもカンファレンスは開催できますか?
- A. 要介護認定の申請中でケアマネジャーが未確定の段階でも、退院前カンファレンス自体の開催は可能です。この場合は地域包括支援センターの担当者に暫定的な調整役を依頼したり、居宅介護支援事業所の選定を並行して進めたりする運用が見られます。ケアマネジャーが決定次第、速やかに情報共有シートを引き継ぐ体制を整えておくことが望まれます。
- Q5. 情報共有シートの様式は院内で独自に作成してよいのですか?
- A. 情報共有シートの様式に法令上の統一書式が定められているわけではなく、院内で独自に設計する運用が一般的です。ただし、地域医療連携ネットワークに参加している場合は、地域で共有されている連携パスや標準様式に整合させることで情報連携が円滑になります。個人情報を含む資料のため、院内の個人情報保護規程に沿った作成・配布・保管のルールを明確にしておくことが求められます。
10. 出典・参考資料
- 厚生労働省「保険診療における施設基準等」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/iryouhoken15/index.html (取得日:2026-09-12)
- 厚生労働省「令和6年度診療報酬改定」関連資料 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00037.html (取得日:2026-09-12)
- 厚生労働省「地域包括ケアシステム」関連資料 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/chiiki-houkatsu/index.html (取得日:2026-09-12)
- 厚生労働省「介護保険制度」関連資料 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/index.html (取得日:2026-09-12)
- 厚生労働省「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」 https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000197665.html (取得日:2026-09-12)
- 厚生労働省「オンライン診療の適切な実施に関する指針」関連資料 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/rinsyo/index_00010.html (取得日:2026-09-12)
- 厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」関連資料 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/johoka/index.html (取得日:2026-09-12)
- 厚生労働省「医療DXの推進について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/iryoudx_00001.html (取得日:2026-09-12)
【免責事項】本記事は厚生労働省の公開情報を整理することを目的としており、個別患者の治療方針、退院時共同指導料・入退院支援加算をはじめとする診療報酬の算定要件の該当性、施設基準の適合性を保証するものではありません。関係法令・告示・通知・診療報酬点数表は改正・改訂により見直されるため、個別判断は主治医・退院支援担当者・地方厚生(支)局等の所定の専門人材にご確認ください。本記事の情報利用によって生じた損害について、mitoru編集部は責任を負いません。
最終更新日:2026年9月12日|編集方針
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mitoru編集部の見解
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