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本記事は、介護施設(特養・老健・介護付き有料老人ホーム・グループホーム等)における排泄ケアの専門化・失禁ケア運営について、厚生労働省の公開情報をもとに整理した内容です。排せつ支援加算(排泄自立支援加算)の考え方、おむつ・尿取りパッドの選定、トイレ誘導プログラム、認知症のある利用者への対応、皮膚トラブル予防と褥瘡連動対策、夜間排泄支援、デリケートゾーンケア、職員研修と排尿排便日誌の活用まで、施設の管理者・介護職員・看護職員が実務で参照できる形でまとめています。個別利用者の排泄状態のアセスメント・医療的判断は看護職員・医師の指示に基づくものであり、本記事は個別の医療行為の代替や助言を行うものではありません。
この記事でわかること
- 排泄ケアの専門化が施設運営で重要になっている背景
- 排せつ支援加算(排泄自立支援加算)の仕組みとLIFEの活用
- おむつ選定の基本(パンツ型・テープ型・尿取りパッドの使い分け)
- トイレ誘導プログラムの設計と排泄予測の考え方
- 認知症のある利用者への排泄ケア対応の工夫
- 皮膚トラブル予防とデリケートゾーンケア(失禁関連皮膚炎・褥瘡連動対策)
- 夜間排泄支援と職員の負担軽減の考え方
- 職員研修・排尿排便日誌・専門アドバイザーの活用
- Q&A・排泄ケア体制の点検チェックリスト
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1. 排泄ケアの専門化が求められる背景
排泄は食事・入浴と並ぶ日常生活動作(ADL)の基本要素であり、羞恥心や自尊心と密接に結びつくデリケートな領域です。要介護度が上がるほど、排泄の一部または全部に介助を要する利用者の割合が高まる傾向があり、おむつ交換やトイレ誘導にかかる時間は、介護職員の業務のなかでも大きな比重を占めます。排泄ケアの質は、利用者の生活の質(QOL)だけでなく、皮膚トラブル・褥瘡といった二次的な健康リスク、職員の腰痛等の身体的負担、夜間帯の人員配置にも直結します。
そのため、排泄ケアを「おむつ交換の作業」として個別対応するのではなく、アセスメント・支援計画・多職種連携を伴う体系的な運営として位置づける「専門化」の視点が重要になっています。具体的には、利用者ごとの排泄パターンの把握、おむつ・パッドの適正な選定、トイレでの排泄自立に向けた支援、認知症のある利用者への配慮、皮膚トラブル予防のためのスキンケア、夜間帯の運用設計、職員研修による技術の標準化といった要素を、施設全体の仕組みとして整えていく取り組みが求められています。
2. 排せつ支援加算(排泄自立支援加算)の仕組みとLIFEの活用
介護保険の施設サービス等には、排泄状態の改善が見込まれる利用者に対して多職種で支援計画を作成・実施した場合に算定できる「排せつ支援加算」(現場では排泄自立支援加算とも呼ばれます)が設けられています。詳細な算定要件・単位数・区分は改定のたびに見直されるため、最新の内容は厚生労働省「介護報酬」のページで確認する必要があります。
加算の基本的な考え方は、(1)医師または医師と連携した看護師等が排尿・排便の状態、おむつ使用の有無等を評価すること、(2)評価結果をもとに、介護支援専門員・看護職員・介護職員等の多職種が支援計画を作成すること、(3)計画に基づく支援を実施し、一定期間ごとに評価・見直しを行うこと、(4)評価内容をLIFE(科学的介護情報システム)へ提出し、フィードバックをケアの改善に活用すること、の4点に整理できます。LIFE関連加算全体の枠組みは厚生労働省「介護保険最新情報」で随時通知されており、排せつ支援加算も科学的介護推進体制加算・褥瘡マネジメント加算等と並ぶLIFE関連加算の一つに位置づけられています。算定可否・区分(Ⅰ・Ⅱ等)の具体的な判断は、施設種別・利用者の状態により異なるため、地方厚生局・都道府県の指定基準や最新の告示・通知を確認したうえで対応することが推奨されます。
3. おむつ選定の基本 ― パンツ型・テープ型・尿取りパッドの使い分け
おむつ・パッド選定は、利用者の身体機能・排泄パターン・介助量に合わせて見直すことが基本です。選定を誤ると、漏れによる皮膚トラブルや交換頻度の増加、利用者の不快感・尊厳の低下につながるため、定期的な見直しの機会を運用に組み込むことが重要です。代表的な種類の特徴は次のとおりです。
| 種類 | 主な対象 | 特徴・留意点 |
|---|---|---|
| パンツ型 | 立位・座位保持がある程度可能で、自分で上げ下げできる利用者 | 下着に近い感覚で使え、トイレでの着脱がしやすい。自立支援を意識した選定に向く |
| テープ型 | 寝たきり等、臥床状態での交換が中心となる利用者 | 体格変化に合わせてテープの位置を調整できる。ギャザーの立ち上げ・当て方が漏れ防止の鍵になる |
| 尿取りパッド | 下着・パンツ型おむつと組み合わせて使う利用者 | パッド単体では防漏性能が不十分になりやすい。重ね使いは蒸れ・ずれの原因になり得るため枚数の見直しが必要 |

選定にあたっては、排尿量・排尿回数・体格・活動量・皮膚状態を踏まえ、看護職員・介護職員が情報を共有しながら判断することが望まれます。吸収量が過剰なおむつ・パッドを漫然と使い続けると、コスト面だけでなく、厚みによる動作制限やムレによる皮膚トラブルにつながる場合があります。逆に吸収量が不足していると漏れによる交換頻度の増加・皮膚への刺激が生じやすくなるため、排尿量に見合った吸収量の製品を選び、定期的にフィッティング(あて方)を確認する運用が実務上のポイントです。
4. トイレ誘導プログラムの設計と排泄予測
トイレでの排泄を継続・回復できる利用者に対しては、排泄パターンを把握したうえで誘導のタイミングを設計する「トイレ誘導プログラム」が有効とされています。まず、排尿排便日誌(排泄チェック表)を用いて、個々の利用者の排尿・排便の時間帯・量・性状を一定期間記録し、パターンを把握します。そのうえで、パターンに合わせた声かけ・誘導の時間帯を設定し、失禁が起こる前のタイミングでトイレへ誘導する運用を組み立てます。
支援の段階は、利用者の状態に応じて(1)見守りのみ、(2)移動・移乗の一部介助、(3)誘導と声かけを中心とした介助、(4)全介助、といった段階で整理できます。段階を固定的に捉えず、体調や時間帯によって柔軟に対応を調整する視点も重要です。夜間・移動時の転倒リスクを踏まえ、トイレまでの動線に手すりを設置する、足元の照明を確保する、床の水濡れをこまめに確認するといった環境整備も、誘導プログラムの効果を左右する要素です。
5. 認知症のある利用者への排泄ケア対応
認知症のある利用者では、尿意・便意をうまく言葉で伝えられない、トイレの場所や使い方がわからなくなる、失禁への不安や混乱から落ち着きがなくなる、といった特性が見られる場合があります。表情の変化・そわそわした動き・衣類を触る仕草など、言葉以外のサインを職員が観察し、早めに声かけ・誘導につなげる関わりが基本になります。
失敗した場合に叱責するような対応は、利用者の自尊心を傷つけ、トイレそのものへの拒否感を強めるおそれがあるため避け、生活歴や本人のペースを踏まえた個別的な関わりが望まれます。トイレの場所がわかりにくいことが要因であれば、案内表示や照明、扉の色分けなど環境面の工夫で改善できる場合もあります。落ち着かない様子や意図的でない排泄行動が見られる際も、本人なりの理由(尿意の切迫、環境への戸惑い等)がある可能性を踏まえ、原因を探りながら対応方針をケア計画に反映させることが重要です。
6. 皮膚トラブル予防とデリケートゾーンケア ― 失禁関連皮膚炎・褥瘡連動対策
失禁関連皮膚炎(IAD)の予防
失禁関連皮膚炎(IAD:Incontinence-Associated Dermatitis)は、尿・便が皮膚に長時間付着することで生じる皮膚のふやけ・炎症・びらん等を指します。予防の基本は「洗浄・保湿・保護」の順で整理され、(1)おむつ交換のたびにこすらず優しく洗浄する、(2)水分を拭き取ったうえで保湿を行う、(3)撥水性のある皮膚保護剤(クリーム・軟膏等)を用いて次の排泄物から皮膚を守る、という流れが基本です。おむつ交換の間隔が長すぎないか、当て方が皮膚に摩擦を生じさせていないかを定期的に見直すことも予防の一環です。
褥瘡予防との連動
失禁による皮膚の浸軟(ふやけ)は、褥瘡が発生しやすくなる要因の一つとして知られています。排泄ケアと褥瘡予防は別々の取り組みではなく、体位変換・体圧分散用具の活用とスキンケアを一体的に行う視点が重要です。特別養護老人ホーム等の施設基準では褥瘡対策に関する計画の作成等が求められており、詳細は厚生労働省「指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準」で確認できます。排泄ケアの記録と褥瘡対策の記録を別々の担当者・別々の様式で管理していると、皮膚の変化に気づくタイミングが遅れる場合があるため、情報を突き合わせやすい記録運用にしておくことが実務上の工夫になります。
デリケートゾーンケアと尊厳への配慮
陰部洗浄・おむつ交換は、利用者にとって羞恥心を伴う場面です。カーテン・スクリーンで視線を遮る、必要以上に肌を露出させない、声かけをしながら手順を進める、可能な範囲で同性介助への配慮を行うといった対応が、尊厳を保つケアの基本になります。洗浄剤は低刺激性のものを選び、洗浄後は押さえるように水分を拭き取ることで、摩擦による皮膚への負担を抑えられます。こうした配慮は、皮膚トラブル予防と利用者の心理的な安心の両面に関わる要素です。

7. 夜間排泄支援と職員の負担軽減
夜間帯は日中に比べて職員体制が薄くなる一方、排泄介助のニーズ自体は継続します。巡回のたびに複数の居室でおむつ交換を行うと、職員1人あたりの身体的負担が大きくなるほか、利用者の睡眠を妨げる要因にもなり得ます。夜間排泄支援を検討する際は、まず排尿排便日誌から利用者ごとの夜間の排泄パターンを把握し、巡回・声かけのタイミングを実際のパターンに合わせて調整することが基本になります。
加えて、排泄予測機器・自動排泄処理装置等の介護テクノロジーの活用は、厚生労働省・経済産業省が整理する介護ロボットの重点分野(排泄支援分野)の一つとして位置づけられています。夜間のみポータブルトイレ・尿器を組み合わせる運用や、吸収量の高いおむつへ夜間限定で切り替える運用など、日中とは異なる設計を検討する余地もあります。導入を検討する際は、機器の特性・費用・利用者の状態への適合を個別に確認し、職員の負担軽減と利用者の快適性の両立を目指す視点が重要です。
8. 職員研修・排尿排便日誌・専門アドバイザーの活用
職員研修の設計
排泄ケアの技術は、新任職員へのOJTだけでなく、施設全体で手順を統一する研修の設計が重要です。おむつ・パッドの当て方、陰部洗浄の手順、体位変換と連動した交換動作、皮膚観察のポイント、認知症のある利用者への声かけの工夫等を、実技を交えて段階的に指導し、受講記録を残しておくことが有効です。ケース検討会を定期的に開き、対応に迷った事例(失禁関連皮膚炎の悪化、トイレ誘導への拒否等)を多職種で共有する場を設けると、個人の経験に頼らない標準化につながります。
排尿排便日誌(排泄チェック表)の活用
排尿排便日誌は、排泄時刻・量の目安・性状・尿意便意の訴えの有無・おむつの汚れ具合等を記録する様式です。単に記録して終わるのではなく、一定期間ごとに集計し、トイレ誘導の時間設定やおむつ・パッドの選定見直し、排せつ支援加算の評価資料として活用するPDCAの流れに組み込むことが実務上の価値を高めます。記録者によって表現がばらつくと分析が難しくなるため、選択式の項目を増やす、記入例を共有するといった工夫で記録の質を揃えることが望まれます。
専門アドバイザーの活用
排泄ケアの知見を高める手段として、費用をかけずに活用できる社会資源も存在します。おむつメーカー・卸売業者の多くは、フィッティング方法や新製品の特徴を紹介する勉強会・相談窓口を提供しており、既存の取引関係のなかで活用できる場合があります。また、皮膚・排泄ケアの分野を専門とする認定看護師(WOCN等)が在籍する医療機関との連携や、地域包括支援センター・自治体の相談窓口への問い合わせも、判断に迷う事例への視点を広げる手段になります。外部の専門的な知見を取り入れる際は、施設の記録・アセスメント結果を整理したうえで相談すると、助言を具体的なケアの見直しに反映しやすくなります。

9. Q&A・チェックリスト
Q1. パンツ型とテープ型はどちらを選ぶべきですか?
立位・座位保持がある程度可能で、自分で上げ下げできる利用者にはパンツ型が適する場合が多く、寝たきり等で臥床状態での交換が中心となる利用者にはテープ型が適する場合が多いとされます。ただし体格・活動量・排尿量によっても適否は変わるため、看護職員・介護職員で情報を共有しながら個別に判断することが基本です。
Q2. 排せつ支援加算はどの施設でも算定できますか?
算定できるサービス種別・要件・区分は制度上定められており、対象となる利用者の状態やアセスメント・計画作成・LIFEへのデータ提出等の要件を満たす必要があります。詳細な算定可否は、最新の告示・通知や地方厚生局・都道府県の指定基準を確認したうえで判断してください。
Q3. 失禁関連皮膚炎(IAD)と褥瘡はどう違いますか?
IADは尿・便の付着による皮膚のふやけ・炎症が主な原因であるのに対し、褥瘡は骨突出部への持続的な圧迫・ずれが主な原因とされ、発生の仕組みが異なります。ただし、失禁による皮膚の浸軟は褥瘡の発生リスクを高める要因の一つとされており、両者を別々に管理するのではなく、スキンケアと体位変換・体圧分散を一体的に行う視点が重要です。
Q4. 夜間のおむつ交換の回数に決まりはありますか?
法令上、交換回数が一律に定められているわけではありません。利用者ごとの排尿排便パターン、皮膚状態、使用しているおむつ・パッドの吸収量を踏まえ、看護職員・介護職員が個別にタイミングを判断することが基本です。排尿排便日誌の記録を活用し、パターンに応じた交換タイミングを検討してください。
Q5. 認知症の利用者がおむつを触ってしまう・外してしまう場合、どう対応しますか?
強く叱ったり行動を力で止めたりする対応は避け、まず不快感(蒸れ、皮膚トラブル、排泄後の不快感等)や環境要因(気温、衣類のサイズ等)がないかを確認してください。原因が特定できない場合も、生活歴や本人のペースを踏まえた声かけの工夫、衣類の見直し等をケア計画に反映し、多職種で対応方針を共有することが望まれます。
排泄ケア体制の点検チェックリスト
- 利用者ごとの排尿排便パターンを排尿排便日誌で把握し、定期的に見直しているか
- おむつ・パッドの種類(パンツ型/テープ型/尿取りパッド)を排尿量・活動量に合わせて選定しているか
- 排せつ支援加算の対象となる利用者のアセスメント・多職種での計画作成を行っているか
- トイレ誘導プログラムの段階(見守り〜全介助)を利用者ごとに設定し、定期的に見直しているか
- 認知症のある利用者への声かけ・環境整備(案内表示・動線)を工夫しているか
- 失禁関連皮膚炎(IAD)予防の「洗浄・保湿・保護」の手順が現場で徹底されているか
- 褥瘡対策(体位変換・体圧分散)とスキンケアの記録を突き合わせて確認できる体制か
- 夜間帯の排泄支援について、巡回タイミングや介護テクノロジー活用を検討しているか
- 職員研修・ケース検討会を通じて排泄ケアの技術を標準化する仕組みがあるか
10. 出典・参考資料
本記事は2026年9月時点の公開情報を整理した一般的な案内です。加算の算定要件・施設基準・介護報酬の内容は法改正・告示改正により変更される場合があります。最新情報は以下の公式情報をご確認ください。
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出典
- 厚生労働省「介護報酬」(排せつ支援加算 等)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00033.html - 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_37530.html - 厚生労働省「介護保険最新情報」(LIFE関連加算)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000111717_00003.html - 厚生労働省「指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/jigyousya/index.html - 厚生労働省「介護老人保健施設の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/roken/index.html - 厚生労働省「福祉用具・住宅改修」(自動排泄処理装置 等)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000212398.html - 厚生労働省「認知症施策」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/ninchi/index.html - 厚生労働省「介護保険制度の概要」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/gaiyo/index.html
免責事項
本記事は2026年9月時点の公開情報を整理した一般的な案内です。加算の算定要件・施設基準・介護報酬の内容は随時改正・変更されるため、最新の内容は厚生労働省の各ホームページ、および所在地の都道府県・市区町村の介護保険担当課にご確認ください。本記事は個別利用者の排泄状態のアセスメントや医療的判断を提供するものではなく、個別の判断は看護職員・医師にご相談ください。本記事の情報に基づく判断で生じた損害について、当編集部は責任を負いません。
最終更新日:2026年9月6日|情報取得日:2026年9月6日|mitoru編集部
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