※本記事には広告(PR)が含まれます。mitoru編集部は公開情報を整理して比較・解説しており、表示順位や評価は広告主からの依頼ではなく編集部の独自判断によります。
本記事は、クリニックがオンライン診療を院内で運用開始・拡大するにあたって必要となる機器・システム・通信環境・セキュリティ対策を、厚生労働省「オンライン診療の適切な実施に関する指針」および「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン第6.0版」等の公開情報を整理した内容です。医師側の端末構成、患者側の案内フロー、回線・VPN設計、主要オンライン診療プラットフォームの比較観点、決済連携、電子カルテとのデータ連携、導入費用の相場観、直近の制度動向、実務Q&Aまでを体系的にまとめ、クリニック院長・DX担当・情報システム担当が導入検討の初期資料として活用できる構成にしています。
この記事で分かること
- 厚生労働省指針が求めるオンライン診療機器・通信の基本要件
- 医師側の推奨端末構成(PC・タブレット・カメラ・マイク)の考え方
- 患者側の端末・通信・案内に関する留意点
- 院内ネットワーク・VPN・帯域設計の実務ポイント
- 3省2ガイドラインに準拠したセキュリティ設計
- 主要オンライン診療プラットフォームの比較観点
- クレジットカード・キャッシュレス決済との連携方式
- 電子カルテ連携(HL7 FHIR・CSV・API)の選び方
- 導入初期費用・月額費用の一般的な相場観
- 2024年度診療報酬改定後のオンライン診療をめぐる動向
1. オンライン診療機器に求められる基本要件
厚生労働省「オンライン診療の適切な実施に関する指針」(2018年策定・2022年1月改訂・以降随時更新)は、オンライン診療で使用する情報通信機器について、①医師と患者が相互に表情・声色を確認できる映像・音声品質、②診療録を含む医療情報を安全に取り扱える通信環境、③本人確認と個人情報保護に配慮した運用、の3点を求めています。特定の機種・スペックを名指しで指定してはいませんが、映像・音声が中断・遅延で診察に支障を来す場合は診療を中止すべきとされており、機器選定は「診察に足る品質」を確保できるかで判断します。
あわせて、厚生労働省・総務省・経済産業省による「3省2ガイドライン」(医療機関側は「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン第6.0版」、事業者側は「医療情報を取り扱う情報システム・サービスの提供事業者における安全管理ガイドライン」)の遵守が求められます。使用する端末・回線・クラウドサービスすべてが、このガイドラインの管理策と整合していることを、導入前に確認する必要があります。
2. 医師側端末:PC・タブレット・カメラ・マイクの構成
2-1. PCの推奨スペック
医師側の主要端末は、電子カルテと同時起動しても余裕を持って動作する程度のスペックが望まれます。一般的な目安としては、CPUがミドルレンジ以上(Intel Core i5/Ryzen 5 相当以降)、メモリ16GB以上、SSD 256GB以上、13〜15インチのフルHD以上のディスプレイが挙げられます。ノート型で運用する場合は電源常時接続を前提にし、診察中のスリープ・自動更新を抑止する電源プロファイル設定を行うと、通信断のリスクを下げられます。
2-2. タブレット活用の可否
iPad・Androidタブレットも各社オンライン診療プラットフォームのアプリに対応しており、往診・訪問診療との併用や、狭い診察スペースでの取り回しに強みがあります。一方でウェブ問診・電子カルテ・オンライン診療ツールを同時参照する運用には、画面サイズ・マルチウィンドウ制約から不向きな場面もあります。院内固定席はPC、往診・院外はタブレット、という併用構成が現実的です。
2-3. カメラ・マイク・ヘッドセット
ノートPC内蔵カメラでも診察は可能ですが、患者から医師の表情・皮膚色が判別しづらいとの声が出やすいため、外付けの1080p以上のUSB Webカメラを推奨するクリニックが増えています。マイクは環境音を拾いにくい単一指向性のUSBマイクまたはノイズキャンセリング機能付きヘッドセットが有力で、待合室・受付の話し声が診察音声に混入することを避けられます。医師のプライバシー確保と患者の聞き取りやすさを両立するため、診察ブース内に吸音パネルを設置する運用例もあります。
2-4. サブディスプレイ・ドキュメントスキャナ
電子カルテ・オンライン診療ツール・ウェブ問診結果・処方箋作成画面を同時参照する場合、サブディスプレイ(24インチ前後)を追加すると視線移動が減り、診察の中断が起きにくくなります。患者が事前送付する保険証・お薬手帳等の画像は、スマホ撮影画像のアップロードで代替できるため、院内で紙資料を追加で受け取るケースが少ない診療所ではドキュメントスキャナ導入は必須ではありません。
3. 患者側の案内:端末・通信・受診環境
患者側は基本的にスマートフォン(iOS・Android)またはPCから受診します。予約時の案内ページに、「静かで明るい個室」「安定した通信環境(Wi-Fiまたは4G/5G)」「カメラ・マイクの動作確認」「本人確認書類の準備」の4点を明記しておくと、当日の接続トラブルを減らせます。指針は「診療録の作成・保存を医療機関側で確実に行う」ことを求めているため、患者側の録音・録画は禁止する旨と、遵守いただけない場合は診察を中止する可能性があることを、同意書・案内ページに明示しておくのが実務的です。
高齢患者を主な対象とするクリニックでは、患者自身のスマホ操作に不安が残るケースが少なくありません。初回のみ院内スタッフが電話でアプリインストール・ログインを支援する、家族の同席受診を推奨する、初回のみ対面診察と組み合わせる、といった運用でハードルを下げる工夫が現場で共有されています。
4. 通信環境:回線・帯域・VPN設計
4-1. 回線種別と実効帯域
光回線(1Gbps級)と法人向けCATVが主流で、ビデオ通話の1セッションあたり上下2〜4Mbps程度の実効帯域があれば、HD映像を維持しやすいとされています。院内で同時に電子カルテ・レセコン・院内Wi-Fi・防犯カメラ等が稼働することを踏まえ、余裕率2〜3倍を持たせた帯域を確保します。事業者提供のインターネット回線が不安定な立地では、モバイル回線(LTE/5G)による予備回線を用意し、ルーターのフェイルオーバー機能で自動切替する構成が採られる例もあります。
4-2. 院内Wi-FiとVLAN分離
患者向けフリーWi-Fi・スタッフ用Wi-Fi・診療系ネットワークを同一SSIDに同居させることは、「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン第6.0版」が求めるネットワーク分離の観点から避けたい構成です。SSIDを分けたうえでVLAN分割し、患者向けからは診療系ネットワークにアクセスできない設定にします。オンライン診療専用端末は原則有線LAN接続、Wi-Fi利用時はWPA3・強度の高いパスワード・MACアドレス制御などの多層防御を組み合わせます。
4-3. VPN・専用線の選択
クラウド型オンライン診療プラットフォームは、通信自体はTLSで暗号化されるため、追加のVPNは基本的に不要です。一方で電子カルテがクラウド型でVPN接続を前提とする場合や、複数拠点間で診療情報をやり取りする場合は、IPsec-VPN・SD-WAN・IP-VPNなどの選択肢を比較検討します。回線・VPN構成の変更時は、事前にベンダーに接続要件(利用ポート・宛先ホスト等)を確認し、通信断・不達のリスクを下げます。
5. セキュリティ:3省2ガイドライン準拠の設計
「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン第6.0版」は、①組織的安全管理措置(規程・体制・研修)、②物理的安全管理措置(施錠・持出制限)、③技術的安全管理措置(アクセス制御・暗号化・ログ)、④人的安全管理措置(守秘義務・退職時対応)の4区分で管理策を整理しています。オンライン診療の導入時は、既存の院内規程が診療端末・持ち出しPC・SaaS利用まで網羅しているかを見直し、不足分を追記します。
技術的対策としては、端末ログイン時の二要素認証、画面ロック時間の短縮(無操作数分でロック)、USBメモリの利用制限、EDR・アンチマルウェアの常時稼働、OS・アプリのパッチ適用管理が中心です。事業者側については、契約前に「医療情報を取り扱う情報システム・サービスの提供事業者における安全管理ガイドライン」への適合状況を、ヒアリングシート等で確認します。医療情報の外部保存を伴う場合は、通則ガイドライン・事業者ガイドラインの双方の要件を満たしているかを、法務・情報システムと合意のうえで採否を判断します。
個人情報保護法・医療分野ガイダンスの観点では、個人情報保護委員会「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」が、診療録を含む要配慮個人情報の取扱いを整理しています。オンライン診療で取得する映像・音声・チャットログの保存期間・保存場所・アクセス権限を、院内規程に明文化しておくことが実務のポイントです。
6. 主要オンライン診療プラットフォームの比較観点
主要プラットフォームとしては、CLINICS オンライン診療(メドレー)、curon(MICIN)、YaDoc(インテグリティ・ヘルスケア)、SOKUYAKU(ジーニー)などが挙げられます。各社とも指針・3省2ガイドラインを踏まえた設計を公表していますが、機能・料金・カバー範囲は異なります。比較時は次の観点で自院の運用にフィットするかを確認します。
- 予約・問診・診察・処方箋発行・決済・服薬指導連携までの機能カバー範囲
- 電子カルテとの連携方式(API連携/CSV連携/単方向連携/未対応)
- 本人確認(マイナンバーカード・運転免許証等の画像アップロード・オンライン資格確認との連携)
- 患者側アプリの使いやすさ・アカウント登録不要のブラウザ受診対応可否
- 初期費用・月額費用・従量課金の有無
- 導入支援・研修・サポート体制の内容
- サーバー所在・監査ログ提供・データ持ち出し方針など安全管理関連の情報開示
各社の細目は改定・機能追加が続くため、公式サイトの最新資料を取り寄せ、複数社にデモ・トライアル環境を依頼して、自院の電子カルテ・レセコン・決済端末との組み合わせで端末動作確認を行うのが選定の中心工程です。
7. 決済連携:カード・キャッシュレスとの接続
オンライン診療の会計は、対面会計と異なり患者が診察後に自宅から決済するため、①プラットフォーム内蔵の決済機能を利用する、②外部決済代行(Stripe・GMOペイメントゲートウェイ等)と連携する、③振込・請求書払いに切り替える、の3方式が中心です。クレジットカード・デビットカード・一部QRコード決済に対応するプラットフォームが多く、患者体験・入金サイクル・手数料(一般に決済額の3〜4%前後)・売上管理の煩雑さのバランスで採否を判断します。
公費負担医療・自賠責・労災など、保険外の会計処理が発生する診療科では、プラットフォーム内蔵決済でカバーできない項目が出るケースがあります。既存のレセコン・会計ソフトへの売上取込方法をあわせて確認し、月次締めの二重管理が発生しないかを事前にシミュレーションします。
8. 電子カルテ連携:API・HL7 FHIR・CSV
オンライン診療プラットフォームと電子カルテの連携は、以下のいずれかで実装されるのが一般的です。①ベンダー間の専用APIによる双方向連携、②HL7 FHIR等の標準規格を介した連携、③CSVエクスポート/インポートによる手動連携、④連携なし(別システムとして手入力運用)。連携が薄いほど日常運用の入力工数が増え、逆に連携が濃いほどベンダーロックインのリスクが高まる、というトレードオフがあります。
厚生労働省が推進する電子処方箋管理サービスとの連携可否も要確認事項です。電子処方箋への対応が進むにつれ、オンライン診療で処方箋を発行するフロー(電子処方箋の発行・引換番号の通知・薬局側での取得)が標準化されつつあり、既存電子カルテ・オンライン診療プラットフォーム双方が電子処方箋管理サービスに接続できているかで、患者導線の負荷が変わります。
9. 導入費用相場:初期・月額・追加コスト
クリニックのオンライン診療導入費用は、選定するプラットフォームと機器構成により幅があります。あくまで一般的なレンジとして、公開資料・過去の導入事例から次のような目安が語られています。
- オンライン診療プラットフォーム:初期費用0円〜20万円台、月額1万円〜5万円台の設定が中心。決済手数料・患者側アプリ課金は別建てのケースもある
- PC・タブレット・カメラ・マイク:1診察ブースあたり10〜25万円前後
- 院内ネットワーク増強:VLAN対応スイッチ・業務用ルーター・アクセスポイントで数十万円規模
- 電子カルテ連携カスタマイズ:ベンダー・連携方式により幅がある
- セキュリティ運用(EDR・二要素認証・ログ監査):既存の情報システム保守契約に組み込まれるケースが多い
詳細な料金は各社見積時点の条件で変動します。導入後の運用工数(予約対応・患者サポート・電子カルテ入力)を含めた「ランニング総額」で比較する視点が、費用対効果の判断ではより実務的です。
10. 2024年度改定後の動向
2024年度診療報酬改定では、情報通信機器を用いた診察料の体系が整理され、生活習慣病管理料・特定疾患療養管理料など慢性疾患管理料との組み合わせや、在宅医療領域における「在宅患者オンライン診療料」の運用が見直されました。あわせて医療DX全体では、電子処方箋・オンライン資格確認・電子カルテ情報共有サービスなどの基盤整備が進んでおり、オンライン診療機器の選定においても、これら周辺サービスとの接続性が重要な要素になっています。
個別の詳細要件・点数の適用可否は、地方厚生(支)局・社会保険事務所への確認と、公式資料(厚生労働省「令和6年度診療報酬改定説明資料」・「医療DXの推進に関する工程表」等)の随時参照が実務の前提となります。
11. よくある質問(FAQ)
- Q1. カメラ・マイクは高価な業務用機器を用意する必要がありますか
- A. 指針は具体的な機種を指定していません。診察に足る映像・音声品質が確保できていれば、市販の1080p Webカメラ・USB単一指向性マイクの組み合わせでも実運用に耐えているクリニックが多く見られます。診察環境の照明・背景・雑音のほうが、機器の価格差より診察品質への影響が大きい傾向があるため、まずは環境整備を優先する考え方が現実的です。
- Q2. iPad一台で運用を始められますか
- A. 主要プラットフォームの多くがiPad対応アプリを提供しているため、電子カルテがクラウド型でiPadから利用可能な場合、iPad一台で診察を開始することも可能です。ただし、ウェブ問診結果・処方箋作成画面・診療情報を同時参照する運用ではウィンドウ制約が課題になりやすく、診察件数の増加に伴いPC+サブディスプレイ構成へ移行する例が多く見られます。
- Q3. 患者向けフリーWi-Fiを診療端末と同じ回線で使っても問題ありませんか
- A. 「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン第6.0版」ではネットワーク分離の考え方が示されており、患者向けWi-Fiと診療系ネットワークを技術的に分離することが推奨されます。同じ物理回線を共用する場合でも、SSID・VLAN・ファイアウォールで論理分離し、患者側から診療系ネットワークにアクセスできない構成を採るのが現実的な対応です。
- Q4. 電子処方箋への対応は導入時に済ませておくべきですか
- A. 電子処方箋管理サービスへの参加はクリニック単位で任意ですが、患者・薬局側の対応が広がる中で、対応可否が受診導線の使いやすさに影響し始めています。既存電子カルテ・オンライン診療プラットフォームの双方の対応状況を確認したうえで、参加時期を経営判断として決めていく整理が現実的です。詳細は厚生労働省「電子処方箋」の公式ページで最新情報をご確認ください。
- Q5. トラブル時のバックアッププランはどう設計しますか
- A. 想定される障害としては、①インターネット回線障害、②プラットフォーム側の障害、③端末・周辺機器の故障、④患者側の通信・端末トラブルが挙げられます。それぞれについて、代替回線(モバイルルーター等)・電話診療への切替可否・予備端末の確保・代替日程への振替手順を事前に文書化し、患者向け案内ページと院内マニュアルの両方に反映しておく運用が推奨されます。
12. 出典・関連リンク
- 厚生労働省「オンライン診療の適切な実施に関する指針」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/rinsyo/index_00010.html
- 厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン(第6.0版)」 https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/0000516275_00002.html
- 厚生労働省「令和6年度診療報酬改定説明資料(医科)」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000196352_00012.html
- 厚生労働省「電子処方箋管理サービス」 https://www.mhlw.go.jp/stf/denshishohousen.html
- 厚生労働省「医療DXの推進に関する工程表」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_29653.html
- 経済産業省「医療情報を取り扱う情報システム・サービスの提供事業者における安全管理ガイドライン」 https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/privacy/iryou_gl.html
- 個人情報保護委員会「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」 https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/guidelines_medical/
- 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA) https://www.pmda.go.jp/
関連記事
- オンライン診療 完全ガイド【2026年版・制度/施設基準/システム/運用】
- オンライン診療拡充ガイド【2026年版・市場/システム/運用フロー】
- クリニック オンライン自費診療 運用ガイド【2026年版】
- ウェブ問診システム比較【2026年版・クリニック導入ガイド】
最終更新日:2026-08-21
免責事項:本記事は厚生労働省・経済産業省・個人情報保護委員会・PMDA等の公開情報を整理した内容であり、特定のオンライン診療プラットフォーム・機器・回線サービス・電子カルテの優位性や、個別診療の効果・成果を保証するものではありません。オンライン診療の制度要件・診療報酬算定・施設基準・情報セキュリティ関連ガイドラインは改定・改訂により変動します。個別の導入判断・法令適合確認は、所管の地方厚生(支)局・保健所・顧問の弁護士・情報システム専門家等へご確認ください。本記事は医療行為の助言を目的とするものではありません。本記事の情報利用によって生じた損害について、mitoru編集部は責任を負いません。
関連記事(mitoru編集部おすすめ)
mitoru編集部の見解
電子カルテ選定では、初期費用だけでなく10年TCO(運用・保守・移行・解約コスト)と、医療情報システム安全管理ガイドライン6.0版への準拠状況を併せて評価することが重要です。クラウド型は通信障害リスク、オンプレ型は更新コストという固有リスクがあり、規模・診療科で最適解は異なります。