病院の救急外来(ER)運営 完全ガイド【2026年版・二次三次救急/トリアージ/加算/看護配置】

📅公開日:2026-08-01
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病院の救急外来(ER:Emergency Room)は、地域住民の生命に直結する初期対応拠点であると同時に、病院経営・地域医療構想・医師の働き方改革・診療報酬改定の交点に位置する部門です。二次救急・三次救急の役割分担、トリアージ運用、救急医療管理加算、看護配置基準、救急救命士との院内連携、応召義務、地域医療連携、2024年度診療報酬改定への対応等、ER運営に関与する制度・実務は多岐にわたり、院長・救急部長・看護部長・事務長が横断的に把握しておく必要があります。

本記事は病院院長・救急部長・ER責任者・救急看護師・事務長を主な読者と想定し、ERの位置づけ、トリアージ、加算算定要件、看護配置、救急救命士連携、応召義務、地域連携、2024年度診療報酬改定、よくある質問までを、厚生労働省・総務省消防庁・一般社団法人日本救急医学会・一般社団法人日本臨床救急医学会等の公開情報を整理した内容としてまとめています。個別の施設基準届出・加算算定・地域連携協定の判断は、自院の医事課・診療報酬委員会・所轄地方厚生局にご確認ください。

この記事で分かること

  • 一次救急・二次救急・三次救急の役割分担と病院の位置づけ
  • 院内トリアージ(JTAS等)の運用と院内トリアージ実施料
  • 救急医療管理加算1・加算2の対象病態と算定要件
  • 救急外来における看護師配置(重症度・医療看護必要度との関係)
  • 救急救命士の院内業務拡大(2021年10月施行)と連携運用
  • 応召義務の解釈(2019年12月厚生労働省通知)と院内対応
  • 地域医療連携・救急搬送受入体制(メディカルコントロール協議会)
  • 2024年度診療報酬改定における救急関連の変更点

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1. ERの位置づけ(一次救急/二次救急/三次救急)

日本の救急医療体制は、症状の重症度に応じて一次救急(初期救急医療機関)・二次救急(入院を要する救急医療機関)・三次救急(救命救急センター)の3層構造で整備されています。厚生労働省「救急医療体制の現状」に示される枠組みでは、一次救急は在宅当番医制・休日夜間急患センターが中心、二次救急は病院群輪番制病院・共同利用型病院、三次救急は救命救急センター(高度救命救急センターを含む)が担い、地域の救急医療圏内で機能分化と連携を図る設計となっています。

区分主な役割代表的な体制
一次救急比較的軽症の外来診療在宅当番医制・休日夜間急患センター
二次救急入院・手術を要する救急医療病院群輪番制病院・共同利用型病院
三次救急重篤患者への高度救急医療救命救急センター・高度救命救急センター

近年は「ER型救急」(North American ER型)を志向し、初療から入院適応判断までを救急科医師が一元的に担当する運用を採用する施設も増えています。従来型の「各科当直型」との中間形態を含め、地域の医療資源・搬送実態・専門科構成に応じた設計判断が求められます。厚生労働省「第8次医療計画」および都道府県の救急医療体制整備計画では、救急医療圏ごとの需給、二次救急輪番の維持、三次救急の広域搬送体制等が体系的に整理されています。

2. 院内トリアージの運用

院内トリアージは、救急外来受診者を来院時に緊急度別に分類し、診療順序を決定する運用で、待ち時間中の重症化リスクを抑制する目的で行われます。国内では日本救急医学会等が監修したJTAS(Japan Triage and Acuity Scale)が広く採用されており、5段階(蘇生・緊急・準緊急・低緊急・非緊急)で分類する手法が標準的です。小児にはJTAS小児版(PaedJTAS)が用いられます。

診療報酬上は「院内トリアージ実施料」が設定されており、施設基準を満たす救急外来において専任の医師または救急業務研修を修了した看護師が実施した場合に算定できる位置づけです。算定にあたっては院内トリアージ基準の策定・掲示、研修修了、記録保管等が要件となります。詳細は厚生労働省告示・診療報酬点数表・所轄地方厚生局への確認により最新版をご参照ください。

運用設計では、(1)トリアージスペース(初療室に近接・プライバシー配慮)、(2)トリアージ看護師の勤務帯配置、(3)再評価タイミングの明文化、(4)家族・付添者への説明、(5)JTAS電子入力ツールと電子カルテの連動、(6)オーバー/アンダートリアージの事後検証、といった要素が実務的な論点となります。定期的な質評価は院内医療安全管理委員会・救急委員会の議題として扱われます。

3. 救急医療管理加算1・加算2

救急医療管理加算は、緊急に入院を必要とする重症患者を受け入れた際に算定できる入院基本料加算で、加算1と加算2に区分されています。加算1は「意識障害」「呼吸不全・心不全で重篤な状態」「急性薬物中毒」「ショック」「重篤な代謝障害」「広範囲熱傷」「外傷・破傷風等で重篤な状態」「緊急手術・カテーテル治療等を必要とする状態」等、対象病態が具体的に列挙され、加算2はこれらに準ずる状態が対象となります。算定にあたっては、対象病態の該当性を医師が診療録に記載する要件があります。

算定運用上の論点としては、(1)診療録記載の粒度(症状・所見・臨床判断の記載)、(2)加算1と加算2の切り分け根拠、(3)救急搬送診療料・救命救急入院料・特定集中治療室管理料等との併算定関係、(4)DPC/PDPS対象病院での取扱い、(5)事後の指導・監査対応、が挙げられます。過去の個別指導では記載不備による返還事例が報告されており、定期監査・判定チェックリスト整備・電子カルテテンプレート化等の対策が採用されています。

算定要件・対象病態の詳細・点数は診療報酬改定ごとに見直されるため、厚生労働省告示・診療報酬点数表・所轄地方厚生局への確認により最新版をご参照ください。2024年度改定における救急関連の主な変更点は本記事「8. 2024年度診療報酬改定」で整理します。

4. 救急外来における看護師配置

救急外来の看護師配置は、入院基本料の看護配置(7対1・10対1等)とは別に、救急外来固有の勤務体制・受診数・トリアージ実施要件・救急救命士連携要件を踏まえて設計されます。夜間・休日・深夜帯の看護師配置は、二次救急輪番当番日・三次救急24時間体制の要件に応じて厚めに配置する運用が広く採用されており、看護部長・救急部門責任者・事務長で調整する運用となります。

診療報酬上、看護師配置に関連する加算・施設基準としては、看護職員夜間配置加算、夜間看護体制加算、看護補助体制充実加算等があり、救命救急入院料・特定集中治療室管理料には別途看護配置の施設基準が定められています。救急認定看護師・救急看護専門看護師の配置は、院内トリアージ運用・救急外来教育・多職種連携の要として重要性が高まっており、日本看護協会・日本救急看護学会の認定制度に基づく人材育成が広く進められています。

2024年4月施行の医師の働き方改革(医師の時間外・休日労働の上限規制)を受け、救急部門ではタスク・シフト/シェア(医師業務の看護師・救急救命士・臨床工学技士等への役割分担)が加速しています。看護師の役割拡大には特定行為研修(特定行為に係る看護師の研修制度)の活用、救急領域パッケージ研修の受講等が制度的に整備されています。

5. 救急救命士との院内連携

2021年10月施行の救急救命士法改正により、救急救命士が実施可能な救急救命処置の場が、従来の「病院前・搬送中」に加え「病院内(救急外来)」まで拡大されました。これに伴い、消防機関に所属する救急救命士に加え、病院に勤務する救急救命士(院内救急救命士)を配置し、救急外来での初期対応・処置補助・医師の指示下業務を分担する運用が広がっています。

院内救急救命士の運用要件として、(1)院内委員会による院内プロトコル策定、(2)医師の具体的指示・包括的指示の枠組み整備、(3)実施可能処置の範囲明文化、(4)記録・振り返り体制、(5)継続研修・症例検討会の実施、(6)医療事故発生時の責任・報告フロー、が挙げられます。厚生労働省「救急救命士法及び関連通知」の枠組みに沿った院内規程整備が求められます。

消防機関の救急救命士(119番搬送体制)との連携は、メディカルコントロール協議会の枠組みで整理され、搬送プロトコル・特定行為指示・搬送困難事例受入・事後検証が体系化されています。総務省消防庁「救急業務のあり方に関する検討会」の関連資料も参照しつつ、地域協議会での協議に基づく運用が実務的です。

6. 応召義務の解釈(2019年12月通知)

医師法第19条第1項に定められる応召義務については、2019年12月に厚生労働省が「応召義務をはじめとした診察治療の求めに対する適切な対応の在り方等について」を通知し、応召義務が「医師個人の私法上の義務」ではなく「国に対する公法上の義務」であること、診療拒否の正当化事由の整理、勤務時間外の対応、迷惑行為・支払能力・専門外・時間外等の場面別対応が明確化されました。救急外来の受入判断・診療拒否の可否判断も、この通知の枠組みに沿って院内規程を整備する運用が広く採用されています。

院内で整備すべき論点として、(1)診療拒否の判断責任者(当直責任者・救急部長・院長)、(2)判断根拠の記録、(3)他院への転送調整、(4)迷惑行為・暴力・支払拒否等への対応フロー、(5)事後の医療安全管理委員会での検証、(6)職員教育(応召義務の解釈・院内規程周知)、が挙げられます。医療従事者への暴言・暴力(ペイシェント・ハラスメント)への対応は、関連公開資料を踏まえた院内対応マニュアルの整備が広く求められています。

7. 地域医療連携(メディカルコントロール協議会)

救急医療の地域連携は、都道府県・二次医療圏ごとに設置されるメディカルコントロール協議会(都道府県MC協議会・地域MC協議会)を中心に運営されます。協議会には、消防機関・救急医療機関・行政(都道府県・保健所)・医師会・関連学会の代表者が参画し、救急搬送プロトコル・特定行為指示・事後検証・救急救命士の再教育・搬送困難事例対策・災害時搬送等について協議する枠組みが構築されています。総務省消防庁・厚生労働省の関連資料に基づき、地域の実情に応じた運用が図られます。

個別病院として関与すべき論点として、(1)二次救急輪番の日程調整・当番日体制、(2)三次救急・専門施設への転院搬送調整、(3)ドクターカー・ドクターヘリの運用連携、(4)救急搬送受入困難事例の低減、(5)救急医療情報システム(EMIS等)への受入可否情報の入力、(6)災害時の搬送・広域搬送体制の確認、が挙げられます。災害拠点病院・DMAT・広域搬送との連携は厚生労働省「災害医療体制」の枠組みで整理されています。

8. 2024年度診療報酬改定における救急関連の変更点

2024年度診療報酬改定では、救急医療関連の項目についても複数の見直しが行われました。主な視点は、(1)救急医療管理加算の対象病態・記載要件の明確化、(2)救命救急入院料・特定集中治療室管理料の施設基準見直し、(3)地域包括医療病棟入院料の新設等を通じた救急医療体制の評価再構成、(4)タスク・シフト/シェア関連加算の整理、(5)医師時間外労働上限規制との整合、といった論点で整理されています。

個別項目の具体的な点数・要件・経過措置は、厚生労働省告示・診療報酬点数表・地方厚生局の疑義解釈・保険局医療課の事務連絡により整理されます。改定後の運用では、事務・医事課・診療報酬委員会が中心となり、施設基準届出・記載要件・算定チェックリストを更新する運用が広く採用されています。次期改定に向けた中央社会保険医療協議会(中医協)の議論も並行して継続されています。

9. よくある質問(FAQ)

Q1. ER型救急と各科当直型救急、どちらを採用すべきですか?
A. 一元的な結論はなく、地域の救急需要・専門科構成・救急科医師の確保状況・二次救急輪番の位置づけ・院内医師の勤務体制等を踏まえた判断が求められます。ER型は救急科医師が一元的に担当する運用で、三次救急・大規模二次救急で採用例が多く、各科当直型は各診療科の当直医が対応する運用で、中小規模・専門科充実型施設で採用例が多い傾向があります。中間形態として併存型を採用する施設も広く見られます。
Q2. 院内トリアージ実施料の算定にあたって、注意すべき記録要件は?
A. 算定要件は診療報酬点数表・関係告示・疑義解釈により定められており、トリアージ実施者・実施時刻・トリアージ結果(緊急度分類)・再評価記録等の診療録記載が求められる位置づけです。JTAS電子入力ツールと電子カルテの連動、記録テンプレートの整備、記録監査の定期実施が実務的な対応となります。詳細は所轄地方厚生局・診療報酬点数表・最新の疑義解釈をご確認ください。
Q3. 救急医療管理加算1と加算2の切り分け根拠を明文化するには?
A. 加算1は対象病態が具体的に列挙され、加算2はこれらに準ずる状態が対象です。院内運用としては、(1)加算1対象病態の判定チェックリスト整備、(2)診療録記載テンプレートの標準化、(3)症状・所見・臨床判断の粒度の明文化、(4)事務・医事課による定期監査、(5)疑義解釈・行政指導事例の共有、が実務的です。過去の個別指導では記載不備による返還事例が報告されており、算定根拠の記録が重要です。
Q4. 院内救急救命士を配置する場合、どのような院内規程整備が求められますか?
A. 2021年10月施行の救急救命士法改正を踏まえ、院内で救急救命処置検討委員会等を設置し、(1)実施可能処置の範囲、(2)医師の具体的指示・包括的指示の枠組み、(3)記録様式、(4)継続研修計画、(5)事故発生時の報告・検証フロー、を院内規程として整備する運用が広く採用されています。厚生労働省「救急救命士法及び関連通知」の枠組みに沿った規程整備、地域MC協議会との整合、教育担当医師の配置が実務的な論点です。
Q5. 応召義務の解釈で、救急外来受入を断ることが認められる場合は?
A. 2019年12月厚生労働省通知「応召義務をはじめとした診察治療の求めに対する適切な対応の在り方等について」において、診療拒否の正当化事由が場面別に整理されました。緊急対応能力を超える重症患者・専門外・診療時間外・迷惑行為等の場面別に判断枠組みが示されており、救急外来固有の対応としては「他院への転送調整」「判断根拠の記録」「事後の医療安全管理委員会での検証」が実務的です。個別事案の判断は通知本文・院内規程・所轄行政機関・弁護士等の助言を踏まえてご検討ください。

10. 関連内部リンク・次のステップ

救急外来運営は、院内急変対応・災害医療・地域医療連携・診療報酬改定・医師の働き方改革等の関連テーマと接続します。自院の状況に応じて、以下の関連記事も参考にしながら、体制整備と業務改善を並行して進めることが有用です。

11. 出典・参考資料

  • 厚生労働省「救急・災害医療」関連資料 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000123114.html (取得日:2026-08-01)
  • 厚生労働省「応召義務をはじめとした診察治療の求めに対する適切な対応の在り方等について(2019年12月25日医政発1225第4号)」 https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000582043.pdf (取得日:2026-08-01)
  • 厚生労働省「救急救命士法及び関連通知」関連資料 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000122397.html (取得日:2026-08-01)
  • 厚生労働省「特定行為に係る看護師の研修制度」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000077077.html (取得日:2026-08-01)
  • 厚生労働省「医師の働き方改革」関連資料 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/ishi-hatarakikata/index.html (取得日:2026-08-01)
  • 厚生労働省「2024年度診療報酬改定」関連資料 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00037.html (取得日:2026-08-01)
  • 厚生労働省「医療計画(第8次医療計画)」関連資料 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/iryou_keikaku/index.html (取得日:2026-08-01)
  • 厚生労働省「災害医療体制」関連資料 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000199233.html (取得日:2026-08-01)
  • 総務省消防庁「救急業務のあり方に関する検討会」関連資料 https://www.fdma.go.jp/singi_kento/kento/kento017.html (取得日:2026-08-01)
  • 総務省消防庁「救急・救助の現況」 https://www.fdma.go.jp/publication/rescue/ (取得日:2026-08-01)
  • 一般社団法人 日本救急医学会 https://www.jaam.jp/ (取得日:2026-08-01)
  • 一般社団法人 日本臨床救急医学会 https://jsem.me/ (取得日:2026-08-01)
  • 一般社団法人 日本救急看護学会 https://jaen.umin.ac.jp/ (取得日:2026-08-01)
  • 公益社団法人 日本看護協会「認定看護師制度」関連資料 https://www.nurse.or.jp/nursing/qualification/vision/cn/ (取得日:2026-08-01)

【免責事項】本記事は厚生労働省・総務省消防庁・一般社団法人日本救急医学会・一般社団法人日本臨床救急医学会・一般社団法人日本救急看護学会・公益社団法人日本看護協会等の公開情報を整理することを目的としており、個別施設の救急外来運営・施設基準届出・加算算定・院内規程の妥当性・法令適合性を保証するものではありません。関係法令・告示・通知・診療報酬点数表・ガイドラインは改正・改訂により見直されるため、個別判断は所定の専門人材(所轄地方厚生局・都道府県メディカルコントロール協議会・所轄医師会・関係学会・弁護士等)にご確認ください。本記事は医療行為・診断・治療に関する助言を目的とするものではありません。本記事の情報利用によって生じた損害について、mitoru編集部は責任を負いません。

最終更新日:2026年8月1日|編集方針

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