認知症初期集中支援チーム 完全ガイド【2026年版・地域包括支援センター/構成員/設置要件/活動実績】

📅公開日:2026-06-16
本記事は公開情報を整理した内容です。掲載情報は2026年6月時点の公開資料に基づき作成しています。最新情報は各公式発表をご確認ください。

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認知症の方が住み慣れた地域で生活を続けるためには、症状が顕在化する前の早期段階で適切な医療・介護サービスにつなぐ仕組みが欠かせません。その入口の機能として、各市町村が地域包括支援センターや認知症疾患医療センター等に設置しているのが「認知症初期集中支援チーム」です。複数の専門職が家庭訪問を行い、認知症が疑われる人やその家族を最大おおむね6か月間集中的に支援し、医療・介護サービス利用へとつなげる役割を担います。厚生労働省「認知症施策」のページや「認知症初期集中支援チーム員研修」関連通知で、設置根拠・運営要件・標準的フローが公開されています。

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本ガイドは、市町村職員・地域包括支援センター職員・参入を検討するクリニック・認知症疾患医療センター関係者が、認知症初期集中支援チームの制度概要・新オレンジプラン以降の経緯・チーム員と認知症サポート医の要件・設置形態・訪問支援フロー・認知症地域支援推進員との役割分担・自治体への活動実績報告・2024年介護報酬改定の影響までを公開情報ベースで整理した内容です。具体的な設置・運営は、各市町村の認知症施策推進計画や委託要綱、認知症疾患医療センター指定状況により異なるため、所属市町村認知症担当課・都道府県認知症施策担当課への確認を前提にご活用ください。

認知症初期集中支援チームとは(制度概要)

認知症初期集中支援チームは、複数の専門職が家族の訴え等により認知症が疑われる人や認知症の人およびその家族を訪問し、アセスメント・家族支援などの初期の支援を包括的・集中的(おおむね最長6か月)に行い、自立生活のサポートを行うチームです。介護保険法に基づく地域支援事業のうち「包括的支援事業(認知症総合支援事業)」の一つとして位置づけられ、全市町村への設置が求められています。厚生労働省「認知症施策の総合的な推進について」関連資料で、その位置づけと運営の考え方が示されています。

「初期」「集中」「支援」の意味

名称の「初期」は、認知症発症からの時間的な早さだけを指すものではなく、「医療・介護サービスにつながっていない状態」を意味する点が運用上のポイントです。すでに重度であっても、適切な支援につながっていなければ対象に含まれ得ます。「集中」は、おおむね最長6か月という期間の中で複数回の訪問・カンファレンスを集中的に実施することを指します。「支援」は、本人の自立生活継続を目的に、医療受診・介護保険申請・家族の介護負担軽減等を多面的に支えることを指します。

対象者の要件

標準的には、40歳以上で在宅で生活しており、かつ認知症が疑われる人または認知症の人で、(1)医療・介護サービスを受けていない人、または中断している人、(2)医療・介護サービスを受けているが、認知症の行動・心理症状(BPSD)が顕著なため対応に苦慮している人、いずれかの状態にある人が対象とされます。家族のみの相談からスタートし、本人が支援を拒否しているケースも含めて、訪問アプローチを行うのがチームの特徴です。市町村ごとに対象者選定の細則を運用要綱で定めている場合があるため、自地域の要綱確認が出発点となります。

  • 位置づけ:介護保険法の地域支援事業(包括的支援事業・認知症総合支援事業)
  • 設置主体:市町村(地域包括支援センター・認知症疾患医療センター・診療所等へ委託可)
  • 支援期間:おおむね最長6か月の集中支援
  • 支援目的:医療・介護サービスへの橋渡しと自立生活継続の支援
  • 対象者:40歳以上・在宅・認知症疑い等で医療介護未接続またはBPSD顕著

オレンジプランから認知症基本法までの経緯

認知症初期集中支援チームは、2013年度に策定された「認知症施策推進5か年計画(オレンジプラン)」で初めてモデル事業として導入され、2015年の「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」で全市町村への設置目標が掲げられました。その後、2019年6月の「認知症施策推進大綱」、2023年6月公布の「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」、2024年12月に閣議決定された「認知症施策推進基本計画」へと施策の枠組みが発展する中で、初期集中支援チームは認知症の早期発見・早期対応を担う中核的な仕組みとして位置づけが継続されています。

オレンジプラン(2013)・新オレンジプラン(2015)

オレンジプランでは「標準的な認知症ケアパス」の作成や認知症初期集中支援チームのモデル事業実施が打ち出され、新オレンジプランでは「認知症の人の意思が尊重され、できる限り住み慣れた地域のよい環境で自分らしく暮らし続けることができる社会の実現」が基本理念として掲げられました。新オレンジプランの7つの柱の中で、初期集中支援チームと認知症地域支援推進員は「認知症の容態に応じた適時・適切な医療・介護等の提供」の柱に位置づけられ、原則すべての市町村への配置が目標とされた経緯があります。

認知症施策推進大綱(2019)

2019年6月に取りまとめられた「認知症施策推進大綱」では、「共生」と「予防」を車の両輪とする方針が明確化され、(1)普及啓発・本人発信支援、(2)予防、(3)医療・ケア・介護サービス・介護者への支援、(4)認知症バリアフリーの推進・若年性認知症の人への支援・社会参加支援、(5)研究開発・産業促進・国際展開、の5つの柱が示されました。初期集中支援チームは(3)の中で、認知症地域支援推進員と並ぶ重要な地域支援機能として継続的に位置づけられました。

認知症基本法(2023)と基本計画(2024)

2023年6月14日に公布、2024年1月1日に施行された「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」では、認知症の人が尊厳と希望をもって暮らせる共生社会の実現を基本理念として、国・地方公共団体・国民等の責務が定められました。これを受けて2024年12月に閣議決定された「認知症施策推進基本計画」では、認知症の本人の意思を尊重した支援の徹底、医療・介護等の提供体制の整備等が重点に位置づけられ、初期集中支援チームを含む地域支援事業の運営は、本人・家族の意思尊重を前提とした運用へと深化が求められています。

チーム員の構成(医師・看護師・社会福祉士等)

認知症初期集中支援チームは、複数の専門職と認知症サポート医によって構成されます。専門職側は、保健師・看護師・作業療法士・精神保健福祉士・社会福祉士・介護福祉士等のうち医療系1名以上、介護系1名以上を含む計2名以上を配置し、これにチーム員会議に参加する認知症サポート医を加えた体制が標準とされます。専門職には所定の「認知症初期集中支援チーム員研修」の受講が求められ、認知症サポート医側にも「認知症サポート医養成研修」「認知症初期集中支援チーム員研修」の受講が要件として設定されています。

専門職の要件(保健医療・福祉の実務経験)

専門職として配置されるチーム員には、認知症ケアまたは在宅ケアの実務・相談業務等に従事した経験を有することが要件とされる運用が一般的です。地域包括支援センターの3職種(保健師・主任介護支援専門員・社会福祉士)からチーム員を兼務させるケース、認知症疾患医療センターの精神保健福祉士・看護師が中心となるケース、診療所の看護師・社会福祉士が委託契約でチーム員として活動するケースなど、設置形態によって編成パターンが異なります。市町村の運用要綱で、地域の実情に応じた要件詳細が定められます。

認知症サポート医の役割

認知症サポート医は、厚生労働省「認知症サポート医養成研修」を修了した医師で、認知症初期集中支援チームのチーム員会議に参加し、専門職へのアセスメント結果に対する医学的助言、医療機関受診への橋渡し、かかりつけ医との連携調整などを担います。サポート医はチームに専従である必要はなく、嘱託・委託契約等での参画が一般的です。地域に認知症サポート医がいない場合は、近隣の認知症疾患医療センターの専門医と連携する運用も認められています。サポート医の養成は国立長寿医療研究センター等が実施する研修を経て行われます。

チーム員研修の構成

「認知症初期集中支援チーム員研修」は、認知症介護研究・研修センター等を実施主体として国レベルで企画される研修で、初期集中支援の理念・対象者把握・アセスメントツール(DASC-21・地域包括ケアシステムにおける認知症アセスメントシート等)・チーム員会議の運営・モニタリング・引継ぎ等のカリキュラムで構成されます。チーム員として活動するためには、原則として配置前または配置後早期の研修受講が求められます。研修の年度別実施情報は、各認知症介護研究・研修センターの公開情報で確認できます。

設置形態と委託先パターン

認知症初期集中支援チームは市町村が設置する責任を負いますが、実際の運営は地域包括支援センター・認知症疾患医療センター・診療所等への委託で行われるケースが多くなっています。委託先の選定は、地域の医療資源・認知症疾患医療センター指定状況・地域包括支援センターの体制・認知症サポート医の有無等を踏まえて、市町村が判断します。複数のチームを設置している政令市・大規模自治体もあれば、複数市町村で広域連携して1チームを運営している小規模自治体もあり、地域実情に応じた多様な形態が見られます。

地域包括支援センター設置型

市町村直営または委託の地域包括支援センターにチームを置く形態です。総合相談支援・権利擁護・包括的継続的ケアマネジメント支援との連動がとりやすく、住民からの相談がチームに直結しやすい点が運用上の強みとされます。一方で、認知症サポート医や精神科医療との連携は別建てで構築する必要があり、認知症疾患医療センターとの連携協定や嘱託医契約の整備が論点となります。地域包括支援センターの3職種をチーム員として兼務させるケースが多いです。

認知症疾患医療センター設置型

都道府県・政令市が指定する認知症疾患医療センター(基幹型・地域型・連携型)にチームを設置する形態です。専門医・精神保健福祉士・臨床心理士等の体制を活かし、診断と支援を一体的に提供できる点が強みとされます。BPSDが顕著なケースや、医療機関受診への抵抗が強いケースに対するアプローチに優位性がある一方、生活支援・介護保険申請手続き等の介護系業務は、地域包括支援センターと密接に連携する必要があります。厚生労働省「認知症疾患医療センター運営事業実施要綱」関連通知で、センターの種別と役割が整理されています。

診療所・在宅医療機関設置型

認知症サポート医のいる診療所や在宅医療を提供する医療機関にチームを委託する形態です。医師の関与が日常的に確保しやすく、かかりつけ医機能とチーム機能を一体運営できる点が強みとなる場合があります。診療所側にとっては、地域貢献と認知症診療への窓口拡大の意味を持つ一方、訪問支援に伴う人員確保・記録整備・自治体への活動報告事務など、診療所運営とは異なるノウハウが必要となります。委託料の水準・対象人員の上限・成果指標は委託契約で個別に定められます。

訪問支援の標準フロー

認知症初期集中支援チームの訪問支援は、おおむね「対象者把握・受理→初回訪問・アセスメント→チーム員会議→集中支援(訪問・モニタリング)→引継ぎ・モニタリング終了」の流れで運営されます。各市町村の運営マニュアルで詳細な様式・記録方法が定められますが、国レベルの研修教材・ガイドブックで標準的な進め方が共有されており、地域差を一定程度抑える設計となっています。

対象者把握・受理

対象者把握の主要な経路は、(1)地域包括支援センターからの相談・紹介、(2)民生委員・自治会等地域住民からの情報提供、(3)医療機関(かかりつけ医・救急医療機関等)からの紹介、(4)行政窓口(高齢福祉課・生活保護担当等)からの情報提供、(5)家族からの直接相談などです。チームは受理時に、対象者要件への該当性、緊急性、対応の優先順位を判断し、初回訪問の計画を立てます。市町村によっては受理判定会議を別途運用しているケースもあります。

初回訪問とアセスメント

初回訪問は原則2名以上のチーム員で実施し、本人・家族との関係構築から開始します。観察・聞き取り・標準アセスメントツールを用いて、認知機能・身体機能・生活状況・家族介護負担・社会的孤立等を多面的に把握します。標準ツールとしては地域包括ケアシステムにおける認知症アセスメントシート、DASC-21、Zarit介護負担尺度の短縮版等が研修等で紹介されており、地域の運用に応じて選定されます。本人や家族の支援拒否がある場合も、関係構築を優先しながら段階的にアセスメントを進める方針が基本とされます。

チーム員会議と支援方針決定

初回アセスメント結果は、認知症サポート医を含むチーム員会議で共有・検討され、支援方針(医療機関受診への橋渡し・介護保険申請・家族支援・近隣連携等)が決定されます。チーム員会議は対象者ごとに定期的に開催され、支援の進捗・新たな課題に応じた方針見直しを行います。会議の開催頻度・参加者・記録様式は市町村運用要綱に基づき運用されますが、サポート医による医学的助言と専門職による生活面アセスメントの統合の場として、チーム機能の中核に位置づけられます。

集中支援期間と引継ぎ

集中支援期間はおおむね最長6か月とされ、その間にチームは複数回の訪問・関係機関調整・モニタリングを実施します。期間中に医療機関受診・介護サービス利用が定着し、本人・家族の生活が安定化したと判断された段階で、地域の介護支援専門員・地域包括支援センター・かかりつけ医・認知症地域支援推進員等への引継ぎが行われます。引継ぎは申し送り書の作成・合同訪問・引継ぎ会議など複層的に行われ、引継ぎ後一定期間のモニタリングも運用上重要とされます。

認知症地域支援推進員との役割分担

認知症地域支援推進員は、市町村における認知症施策の企画調整・関係機関のネットワーク構築・認知症ケアパスの作成と普及・チーム員会議への助言等を担う職員で、初期集中支援チームとあわせて認知症総合支援事業の中核を担います。両者は機能が重なる部分もありますが、推進員は「面」での施策推進と地域づくりに重点、チームは「点」での個別ケースの集中介入に重点という役割分担が想定されています。推進員は地域包括支援センター・市町村本庁・認知症疾患医療センター等に配置されます。

推進員の主な役割

認知症地域支援推進員の主な役割は、(1)市町村の認知症施策の企画調整、(2)医療・介護・生活支援を行う関係機関のネットワーク構築、(3)認知症ケアパス・本人ガイドブック等の作成と普及、(4)認知症カフェ・本人ミーティング等の運営支援、(5)初期集中支援チームのケース対応への助言・引継ぎ調整、(6)認知症の人への相談支援・本人発信支援、などです。研修要件として「認知症地域支援推進員研修」の受講が求められており、認知症介護研究・研修センター等が実施しています。

チームと推進員の連携設計

チームと推進員の連携を機能させるためには、(1)定例の情報交換会議の設定、(2)対象者把握ルート(住民・民生委員・医療機関等)の役割分担明確化、(3)引継ぎ時の合同訪問・申し送り様式の統一、(4)地域ケアパスへの個別ケース知見の反映、(5)研修会等の共同企画、などが運用上の論点となります。市町村が認知症施策推進計画でチームと推進員の連携体制を明文化することで、現場の動きが安定する傾向があります。

実績報告と自治体評価の論点

認知症初期集中支援チームの活動実績は、市町村に対して定期的に報告される運用が一般的です。報告内容は市町村運営要綱で定められますが、おおむね対象者数・新規受理件数・訪問回数・チーム員会議開催回数・医療機関受診への移行件数・介護サービス利用への移行件数・支援終了理由などが含まれます。市町村は集計データを認知症施策推進計画の評価指標と接続し、必要に応じて運営方針の見直しに反映します。

標準的な実績指標

  • 対象者把握件数(年度内・通算)とその経路別内訳
  • 受理件数・初回訪問実施件数
  • 訪問延べ回数・チーム員会議開催回数
  • 医療機関受診への移行件数(初診・継続)
  • 介護保険申請への移行件数・介護サービス利用開始件数
  • 支援終了理由(自立化・転居・施設入所・死亡・拒否継続等)
  • 引継ぎ先(介護支援専門員・地域包括支援センター・推進員等)別件数

国・都道府県への積み上げ

市町村が集計したデータは、都道府県を経由して国(厚生労働省)へ集約され、認知症施策推進基本計画・地域支援事業の進捗管理・次期計画策定の基礎資料として用いられます。チーム単位の活動指標は、市町村間の単純な優劣比較ではなく、地域実情(高齢化率・医療資源・人口規模等)を踏まえた評価が望ましいとされます。委託先である地域包括支援センター・認知症疾患医療センター・診療所等は、報告様式と提出期限を年度初に確認し、日々の活動記録を集計しやすい形で蓄積する運用が現実的です。

第三者評価・自己評価の動き

近年は、量的な活動実績だけでなく、本人・家族の声を反映した質的評価への関心が高まっています。認知症の本人や家族からの聞き取り、地域包括支援センター・かかりつけ医・介護支援専門員等の関係者からの評価、チーム員自身の振り返り(自己評価)を組み合わせる試みが、自治体レベル・研究レベルで蓄積されつつあります。認知症介護研究・研修センター等の公開資料で、評価指標の検討状況が紹介されています。

2024年介護報酬改定・診療報酬改定の影響

認知症初期集中支援チームそのものは地域支援事業として運営されるため、介護報酬・診療報酬の改定で「チーム業務の単価」が直接変動する仕組みではありません。一方、2024年度の介護報酬改定・診療報酬改定では、認知症ケアに関わる評価が複数強化・新設されており、チームから引き継いだ後の医療・介護現場でのサービス提供基盤が変化しています。厚生労働省「令和6年度介護報酬改定について」「令和6年度診療報酬改定」のページで、改定全体像と関連告示が公開されています。

介護報酬改定での認知症関連の論点

2024年度介護報酬改定では、認知症対応型共同生活介護(グループホーム)・認知症対応型通所介護等の認知症関連サービスについて、医療連携体制加算・看取り対応・身体拘束適正化等の見直しが行われました。また、訪問介護・通所介護等のサービスでも、認知症の方への対応に関する加算・要件の整理が進められ、初期集中支援チームからの引継ぎ後に活用できる介護サービス側の体制が、運営面で着実に変化しています。社会保障審議会介護給付費分科会の公開資料で、改定の議論経緯が確認できます。

診療報酬改定での認知症関連の論点

2024年度診療報酬改定では、認知症ケア加算の体制要件見直し、地域包括診療料・地域包括診療加算の対象拡大、入院基本料における身体的拘束の最小化に向けた基準の見直し等が行われました。これらは、初期集中支援チームから医療機関受診へとつなげた後の、医療機関側の受け入れ体制と関係し、認知症の方の入院・外来を通じた質の高い対応が制度的に促されています。中央社会保険医療協議会(中医協)の公開資料で、改定議論の経緯が確認できます。

2027年度改定に向けた論点

2027年度の介護報酬・診療報酬の同時改定に向けては、認知症基本法・認知症施策推進基本計画を踏まえた、本人の意思決定支援・本人発信支援・BPSDへの非薬物的対応の強化・地域支援事業との接続強化等が論点となる見通しです。初期集中支援チームの委託先である事業所・医療機関は、地域支援事業としてのチーム業務と、自施設の介護・診療業務の双方で、改定議論の動きを継続的に確認することが運営上重要となります。

運営上の課題と対応の方向性

初期集中支援チームを巡っては、設置自体は全市町村レベルで進んだ一方、運用面の課題が報告されています。複数の調査研究で挙げられる典型的な課題と、対応の方向性を以下に整理します。これらは個別チームの努力だけでは解決が困難な構造的要素を含むため、市町村認知症施策担当課・都道府県認知症施策担当課・関係団体との協議を通じた改善が望まれます。

  • 受理件数が想定より少なく、地域住民・関係機関への周知が不十分なケース
  • 認知症サポート医の確保が地域的に困難で、嘱託・遠隔助言での運用に依存するケース
  • チーム員研修受講者の人事異動でチームの実働力が断続的に低下するケース
  • 支援拒否ケースへの長期的アプローチが個人スキルに依存しがちなケース
  • 引継ぎ後のモニタリング体制が不十分で、再悪化時の再受理経路が不明確なケース
  • BPSDが顕著なケースで、入院先・受診先の精神科医療資源が地域に乏しいケース
  • 若年性認知症のケースで、就労支援・経済支援との連動が不十分なケース

これらの課題は、市町村単独で解決することが難しく、都道府県単位の支援体制(若年性認知症支援コーディネーター・認知症疾患医療センター・都道府県認知症介護指導者等)との連動が現実的な対応軸となります。市町村認知症施策推進計画・都道府県計画の中で、課題と対応方針を明文化し、進捗管理を行う運用が望まれます。

よくある質問(FAQ)

Q1. 認知症初期集中支援チームと認知症地域支援推進員の違いは何ですか?
初期集中支援チームは、医療・介護サービスにつながっていない認知症の方や、BPSDで対応に苦慮しているケースを対象に、複数の専門職とサポート医がおおむね最長6か月の集中介入を行う「点(個別ケース)」の機能を担います。一方、認知症地域支援推進員は、市町村の認知症施策の企画調整・関係機関のネットワーク構築・認知症ケアパスの作成と普及・本人発信支援等を担う「面(地域づくり)」の機能を担います。両者は連動し、推進員が個別ケースの引継ぎや地域連携の調整役となるケースが多くなっています。
Q2. 認知症サポート医がいなければチームを設置できませんか?
チーム員にサポート医を含めることが運営要件の前提となっており、地域内に認知症サポート医がいない場合は、近隣自治体のサポート医や認知症疾患医療センターの専門医との連携契約等で確保する運用が想定されています。県内のサポート医確保が課題となっている地域では、都道府県主導での養成研修受講枠の確保・受講費用補助等が実施されている場合があります。所属都道府県の認知症施策担当課に、養成研修の年度内開催情報を確認することが出発点となります。
Q3. クリニックが委託を受けてチームを運営する場合、どのような体制整備が必要ですか?
市町村との委託契約に基づき、(1)サポート医・専門職(医療系・介護系各1名以上)の配置と研修受講、(2)訪問・記録・チーム員会議の運営フローと様式整備、(3)個人情報取扱規程と本人同意書様式の整備、(4)市町村への活動報告フォーマットの準備、(5)地域包括支援センター・推進員・介護支援専門員等との連携経路の確保、が基本的な体制整備項目となります。診療所の通常診療と並行運用するため、訪問日の人員ローテーション・記録時間の確保等を運営計画に組み込む設計が現実的です。市町村運営要綱と委託契約書の内容を出発点に、自院の体制を組み立てることになります。
Q4. チームによる支援は本人や家族に費用負担が発生しますか?
認知症初期集中支援チームの活動は介護保険法に基づく地域支援事業として市町村が実施するため、チームによる訪問支援・アセスメント・チーム員会議そのものについては、本人・家族に直接の費用負担を求めない運用が一般的です。一方、チームが橋渡しした先の医療機関受診・介護サービス利用については、通常の医療保険・介護保険のルールに基づく自己負担が発生します。費用面の説明は、初回訪問時の説明事項として整理しておくことが、本人・家族の安心感につながります。
Q5. 集中支援期間の6か月を超えて支援が必要な場合はどうなりますか?
集中支援期間はおおむね最長6か月と設定されていますが、これはチームによる集中介入の期間であり、6か月で支援自体が打ち切られるという意味ではありません。期間内に医療機関受診・介護サービス利用が定着していれば、介護支援専門員・地域包括支援センター・かかりつけ医・推進員等へ引継ぎ、その後は通常の医療・介護・地域支援の枠組みで継続的な支援が行われます。やむを得ず期間内に方針が定まらないケースでは、チーム員会議で再評価のうえ運用要綱に沿った対応方針(期間延長・推進員への移行等)を判断する運用が想定されます。

関連記事(内部リンク)

出典・参考資料

  • 厚生労働省「認知症施策」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/ninchi/index.html
  • 厚生労働省「認知症施策推進大綱」 https://www.mhlw.go.jp/stf/ninchisho_taikou.html
  • 厚生労働省「認知症総合支援事業の概要」 https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/0000079008.pdf
  • 厚生労働省「認知症疾患医療センター運営事業実施要綱」関連通知 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/ninchi/index.html
  • 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_36945.html
  • 厚生労働省「令和6年度診療報酬改定について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00046.html
  • 厚生労働省「地域包括支援センターの概要」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/chiiki-houkatsu/dl/link1-1.pdf
  • 内閣府「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」 https://www8.cao.go.jp/kourei/ninchi/index.html
  • e-Gov法令検索「介護保険法」 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=409AC0000000123
  • e-Gov法令検索「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=505AC1000000065
  • 認知症介護研究・研修仙台センター(チーム員研修関連) https://www.dcnet.gr.jp/
  • 国立長寿医療研究センター「認知症サポート医養成研修」 https://www.ncgg.go.jp/

本記事は公開情報の整理を目的としており、個別の市町村における運用判断・委託契約の妥当性判断を行うものではありません。具体的な設置・運営は、所属市町村の認知症施策担当課・都道府県認知症施策担当課・顧問専門家にご相談ください。

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