介護事業所M&A・事業承継完全ガイド【2026年版・譲渡相場/サービス区分別/指定承継】

📅公開日:2026-05-24
※本記事には広告(PR)が含まれます。掲載判断は当サイトの編集基準に基づき行っています。 編集方針 | 最終更新日: 2026-05-24

介護事業所の経営者の高齢化と後継者不在を背景に、M&A・第三者承継を検討する事業所が急増しています。中小企業庁の調査では介護・福祉領域の後継者不在率は依然として高水準で推移し、厚生労働省も介護人材確保と事業継続性の観点から事業承継支援を政策課題に位置づけています。一方で、介護事業所のM&Aは一般企業の事業承継とは異なる固有の論点が多く、介護保険法上の指定承継・労務承継・利用者引継ぎを誤ると、譲渡実行後に介護報酬の遡及返還や指定取消といった重大事象に発展しかねません。本記事では2026年時点の公開情報をもとに、サービス区分別の譲渡相場・承継パターン・行政手続き・税務まで体系的に整理し、後継者不在の介護事業所運営者が次の打ち手を判断する材料を提供します。

この記事で分かること

  • 介護事業所M&A市場の規模・後継者不在率・取引動向(公開情報ベース)
  • 訪問介護・通所介護・特養・グループホーム等サービス区分別の譲渡相場感
  • 株式譲渡・事業譲渡・社会福祉法人合併の使い分け
  • 介護保険法上の指定承継手続き(廃止届・新規指定・継承)の実務
  • 譲渡価格の算定方法(年買法・EBITDAマルチプル・純資産法)
  • 労務・人事承継・税務・退職金プランニングの論点
  • 承継が向いている事業所と向いていない事業所の見極め10項目

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1. 介護事業所M&A市場の現状

介護事業所M&A市場は、団塊世代の経営者が70代後半に差しかかる「介護経営者の大量引退期」と、介護人材不足・処遇改善加算対応・LIFE提出義務化など運営負荷増による中小事業所の単独存続困難化が重なり、毎年取引件数を更新する成長市場です。中小企業庁が公表する「中小企業白書」では、医療・福祉領域の後継者不在率は全産業平均と比較しても高水準で推移し、第三者承継ニーズが顕在化していると整理されています。

厚生労働省の「介護事業経営実態調査」では、訪問介護・通所介護を中心に小規模事業所の収支差率が悪化傾向にあり、単独経営の継続困難から大手介護グループへの統合・地域内介護法人への事業譲渡が増えている実態が確認できます。買い手側も「新規指定取得→施設立ち上げ」より「既存事業所のM&A」のほうがリードタイム・利用者獲得・人材確保の面で合理性が高く、譲受需要は安定的に存在します。

M&Aを検討する典型的なきっかけ

  • 経営者の高齢化・体調不安・親族内に後継者がいない
  • 介護報酬改定で収支が悪化し、単独運営継続のメリットが薄れた
  • 処遇改善加算・特定処遇改善加算の事務負担に対応しきれない
  • LIFE提出・科学的介護推進体制加算等のICT対応投資が重荷
  • 複数事業の選択と集中で、特定サービス区分から撤退したい
  • 大手グループ傘下で運営基盤を強化し、利用者・職員を守りたい

2. サービス区分別の譲渡相場

介護事業所の譲渡価格はサービス区分・収益性・指定有効期間・人員配置基準充足度・地域の介護需給で大きく変動します。以下に2026年時点の公開情報・各種M&A仲介会社の公表事例から整理した相場感を示します。あくまで参考レンジで、実際の取引価格はDD(デューデリジェンス)・買い手の戦略・地域競合状況で大きく前後します。

サービス区分譲渡価格レンジの目安主な評価ドライバー
訪問介護数百万円〜数千万円規模登録ヘルパー数・サ責の在籍年数・稼働率
通所介護(デイサービス)数百万円〜数千万円規模定員・稼働率・送迎エリア・要介護度構成
通所リハ・リハビリ特化型中規模レンジ機能訓練指導員配置・加算取得状況
小規模多機能型居宅介護中規模レンジ登録定員消化率・夜間体制・地域包括との関係
グループホーム(認知症対応型共同生活介護)中〜大規模レンジ建物所有形態・空室率・夜勤体制
特別養護老人ホーム(社会福祉法人)合併スキーム前提・規模大定員・建物減価償却残・社福法上の認可要件
有料老人ホーム・サ高住大規模レンジ不動産評価・入居率・賃料水準
居宅介護支援事業所小規模レンジ主任ケアマネ在籍・特定事業所加算取得

上記は編集部が公開情報・M&A仲介会社の公表事例から整理した参考値です。譲渡価格は「営業利益×数年分+純資産」の年買法で算定されるケースが多く、収益性と資産規模で大きく振れます。指定取消・行政処分歴・人員配置基準違反履歴がある事業所は大幅にディスカウントされる、あるいは買い手がつかないケースもあります。

訪問介護の譲渡相場の見方

訪問介護事業所は固定資産が少なく、価値の中心は「登録ヘルパー」「サービス提供責任者」「ケアマネとの関係性」です。ヘルパー在籍数・稼働可能時間・特定処遇改善加算の取得状況が価格に直接影響します。サ責が退職するリスクがあると譲渡後の収益が急減するため、譲渡実行前に主要職員の継続意思確認・引継ぎインセンティブ設計が必須です。

通所介護・グループホームの譲渡相場の見方

通所介護・グループホームは建物・送迎車両・厨房設備等の固定資産が価値に上乗せされます。建物が自社所有か賃借か、賃借なら残存賃借期間・賃料水準・オーナーの承諾可否で価格が変動します。稼働率(定員に対する利用率)が80%を継続して超えていることが買い手の必須要件になるケースが多く、稼働率60%台では収益性で評価額が大幅ディスカウントされます。

3. 承継パターンと手続き

介護事業所の事業承継スキームは大きく「親族内承継」「役員・従業員承継(MBO/EBO)」「第三者承継(M&A)」の3つに分かれます。さらに第三者承継の中で、株式譲渡・事業譲渡・合併・分社化+譲渡など複数のスキームがあり、運営法人の形態と承継範囲によって最適解が変わります。

承継パターン主なメリット主な留意点
親族内承継理念・地域関係性の継続が容易後継者の経営能力・自社株評価・相続税対策が論点
役員・従業員承継(MBO/EBO)内部理解者による円滑な引継ぎ後継者の自己資金不足・金融機関融資の確保が論点
株式譲渡(第三者)法人格・指定・契約をそのまま承継可能簿外債務・行政処分歴の引継ぎリスク
事業譲渡(第三者)承継範囲を限定できる・簿外債務の遮断が可能介護保険指定は引き継がれず、新規指定が必要
社会福祉法人の合併特養等を含む包括的承継・公益性の継続所轄庁の認可手続き・理事会・評議員会決議が必要

株式譲渡は法人格そのものを承継するため、介護保険法上の指定・各種契約(利用者契約・労働契約・賃貸借契約)が原則自動承継されます。一方、事業譲渡では介護保険指定は譲受側に自動承継されず、譲受側で新規指定取得手続きが必要で、利用者・職員との契約も巻き直しが必要です。承継範囲・簿外債務リスク・スピードのバランスで最適スキームを選びます。

4. 介護保険法上の指定承継・行政手続き

介護事業所のM&Aで最も実務的に重要なのが、介護保険法上の「指定」がどう取り扱われるかです。指定は事業所単位・サービス種別単位で都道府県知事・市町村長から付与されており、譲渡スキームによって扱いが異なります。誤った手続きで介護報酬を請求すると、過誤調整・遡及返還・最悪の場合は指定取消・指定停止処分につながります。

株式譲渡の場合

株式譲渡では法人格が同一のため、原則として指定はそのまま継続されます。ただし、役員変更・代表者変更・株主変更があった場合は、介護保険法第75条等に基づく「変更届」の提出が必要です。届出期限は変更後10日以内が一般的で、所轄庁により様式・添付書類が異なります。代表者変更・役員変更を届出しないまま運営を継続すると行政指導の対象となります。

事業譲渡の場合

事業譲渡では譲渡側で事業を「廃止」し、譲受側で「新規指定」を取得するのが原則です。譲渡側は廃止届を提出し、譲受側は新規指定申請を行います。新規指定の標準処理期間は2ヶ月程度かかる自治体が多く、廃止と新規指定のタイミングを誤ると、空白期間中に提供したサービスは介護報酬を請求できません。実務上は廃止日と新規指定日を同一日に合わせるよう、所轄庁と事前協議のうえスケジュールを組みます。

合併・分割の場合

会社法上の合併・分割では、介護保険法施行規則の規定に基づき、合併・分割の効力発生に伴って指定が承継される取扱いが整備されています。所轄庁への事前協議・合併契約書等の添付書類提出が必要で、社会福祉法人同士の合併では所轄庁の認可(社会福祉法第59条等)が前提となります。手続きの詳細は厚生労働省・各自治体の指定権者の通知に基づいて運用されているため、あらかじめ所轄庁の最新通知・運用指針を確認します。

介護保険指定以外の行政手続き

  • 労働基準監督署への36協定再提出・就業規則届出
  • 年金事務所・健康保険組合への適用事業所変更・新規適用
  • 消防署への防火管理者選任・消防計画変更届
  • 所轄税務署・都道府県税事務所への異動届
  • 建物賃借の場合はオーナーへの賃借人変更通知・承諾取得
  • 業務用車両(送迎車)の使用者変更登録

5. 譲渡価格の算定方法

介護事業所の譲渡価格算定は、一般的なM&Aで用いられる手法をベースに、介護報酬という公定価格収入の特殊性・指定の継続性リスク・人員配置基準充足リスクを織り込んで調整します。代表的な3手法を整理します。

年買法(年倍法)

中小M&Aで最も多用される実務手法です。「修正後営業利益×数年分(2〜5年)+時価純資産」で算定します。介護事業所では役員報酬・接待交際費・私的経費を修正して実質的な営業利益を再計算し、その2〜4年分に時価純資産を加算するのが一般的です。シンプルで買い手にも説明しやすい反面、将来の介護報酬改定・地域内競合変化を十分に反映しにくい弱点があります。

EBITDAマルチプル法

EBITDA(金利・税・減価償却前利益)に業界相場のマルチプル(倍数)を乗じて事業価値を算定する手法です。介護事業のマルチプルは買い手の戦略・サービス区分・規模・地域で変動します。EBITDAを使うため、設備投資が大きい施設系事業所の本来の収益力を可視化しやすいメリットがあります。

純資産法(時価純資産法)

貸借対照表の資産・負債を時価評価し、時価純資産額を譲渡価格とする手法です。収益性が低い・赤字が続いている事業所では、年買法・EBITDA法で算定するとマイナスや低額になるため、純資産法をベースに調整するケースが多くなります。建物・送迎車両・厨房設備等の現物資産が多いグループホーム・通所介護で実務的に重要です。

介護事業所特有の調整項目

  • 処遇改善加算・特定処遇改善加算の継続取得可能性
  • 人員配置基準充足の安定性(看護職員・機能訓練指導員等の確保)
  • 建物賃借契約の残存期間・賃料水準・更新条件
  • 送迎車両のリース残債・買取価格
  • 過去5年の実地指導・監査での指摘事項の有無
  • 未払残業代・有給休暇消化状況等の労務リスク
  • 退職給付債務・社内預り金等の簿外類似負債

6. 譲渡時の労務・人事承継

介護事業所の譲渡では「人をどう承継するか」が成否を分けます。介護人材不足の中で、ケアマネ・サ責・看護職員・機能訓練指導員等の有資格者が譲渡を機に退職すると、譲受側は人員配置基準を満たせず指定維持が困難になります。譲渡前に主要職員への説明・継続意思確認・引継ぎインセンティブ設計を行うことが必須です。

株式譲渡時の労働契約

株式譲渡では法人格が同一のため、労働契約は原則そのまま継続されます。労働条件・賃金水準・退職金規程・有給休暇残日数も維持されます。職員への説明義務は法律上明確には定められていませんが、譲渡後の運営方針・処遇方針について、譲渡実行前後に丁寧な説明会を実施するのが実務上望ましいとされます。

事業譲渡時の労働契約

事業譲渡では労働契約は自動承継されず、譲受側との新規労働契約締結が必要です。職員一人ひとりに転籍を打診し、同意を得る形になります。労働条件が悪化する場合は同意取得が難航し、有資格者が退職するリスクが高まります。厚生労働省の「事業譲渡又は合併を行うに当たって会社等が留意すべき事項に関する指針」では、労働者の理解と協力を得るための情報提供・協議のガイドラインが示されています。

合併・会社分割時の労働契約

会社分割では「労働契約承継法」に基づき、承継される事業に主として従事する労働者は労働契約が自動承継されます。事前協議・労働者への通知・異議申出手続きが法定されており、手続違反は労働契約の効力に影響します。合併では存続会社・新設会社に労働契約が包括承継されます。いずれも介護事業所特有の有資格職員確保の観点から、法定手続き+丁寧な説明会の両輪が重要です。

7. 税務・退職金プランニング

介護事業所の譲渡では、譲渡側オーナーの手取り最大化と退職後の生活設計のために、税務スキームの選択が極めて重要です。譲渡対価をどう受け取るか(株式譲渡代金/役員退職金)で税負担が大きく変わります。

株式譲渡所得課税

株式譲渡による所得は「株式等に係る譲渡所得」として申告分離課税の対象となり、所得税・住民税・復興特別所得税を合わせた一定税率が適用されます(最新の税率は国税庁の最新公表値を確認)。給与所得・不動産所得とは分離されるため、譲渡代金が大きくても税負担は予測しやすい構造です。

役員退職金との組み合わせ

譲渡対価の一部を「役員退職金」として受け取ることで、退職所得控除+2分の1課税の優遇措置を活用できる場合があります。役員退職金は「最終報酬月額×役員在任年数×功績倍率」を基準とした適正額の範囲内であれば法人側で損金算入され、受給側でも退職所得として税負担を抑えられる二重メリットがあります。ただし、不相当に高額な退職金は否認リスクがあり、税理士・会計士による事前シミュレーションが必須です。

事業承継税制(特例措置)

親族内承継・役員従業員承継で自社株を後継者に渡す場合、中小企業庁の事業承継税制(特例措置)の活用で、贈与税・相続税の納税猶予・免除を受けられる可能性があります。要件・手続きが詳細に定められているため、認定経営革新等支援機関・税理士のサポートが必須です。事業承継税制は時限措置で、特例承継計画の提出期限・適用期限が定められているため、最新の中小企業庁公表情報で要件・期限を確認します。

社会福祉法人の合併と税務

社会福祉法人は公益法人として原則非課税のため、株式譲渡所得課税は発生しません。合併によって特養等の事業を統合する場合は、資産・負債の包括承継により法人税負担なしで再編が可能ですが、所轄庁の認可・理事会・評議員会決議・債権者保護手続き等の重い手続きが必要です。

8. 自己解析チェックリスト(10項目)

自介護事業所がM&A・第三者承継に向いているかを判断するための10項目チェックリストです。「はい」が多い側を方向性の出発点としてください。

No質問承継検討を進めるべき単独継続を検討すべき
1経営者の年齢・健康状態は?65歳以上・後継者不在50代以下・現役で運営可能
2親族内に後継者候補はいるか?いない・本人意思なしいる・経営参画意思あり
3過去3年の収支差率は?悪化傾向・赤字寸前安定黒字
4稼働率・登録ヘルパー数等の運営指標は?低下傾向安定推移
5処遇改善加算・LIFE等の事務対応は?追従できていない適切に運用できている
6主要職員(サ責・ケアマネ等)の定着は?不安定・退職多発長期勤続者多数
7建物・設備の老朽化・投資要否は?大規模修繕が必要当面投資不要
8地域内競合・需要動向は?競合増・利用者減需要安定・地域内ポジション強い
9事業継続意欲・経営者個人の希望は?引退・撤退を希望継続意欲が強い
10金融機関からの借入残・個人保証は?大きく重荷軽微・コントロール可能

10項目中「承継検討を進めるべき」が7項目以上なら、早期のM&A仲介会社相談・事業引継ぎ支援センター活用を検討する段階です。中間(5対5前後)なら、まずは事業引継ぎ支援センター(中小企業庁所管)の無料相談で現状診断を受けるのが現実的です。

9. M&A承継が向いていない事業所のパターン

すべての介護事業所がM&Aで承継できるわけではありません。以下のパターンに該当する場合、買い手がつかない・極端なディスカウントを受ける・譲渡後にトラブルが発生するリスクが高いため、別の対応策(事業縮小・廃業・統合再編)を並行検討する必要があります。

  • 過去5年以内に介護報酬の不正請求・指定取消・指定停止処分の履歴がある
  • 実地指導での重大指摘が未改善のまま放置されている
  • 人員配置基準の充足が常態的に困難で、加算返還リスクが高い
  • 主要職員(管理者・サ責・ケアマネ・看護職員)が同時退職する見込み
  • 建物の老朽化が深刻で、譲渡後の大規模修繕が不可避
  • 賃借建物の賃貸借契約期間が短く、オーナーが更新拒絶意向
  • 未払賃金・残業代・社会保険料未納・税金滞納等の簿外債務が多額
  • 地域の介護需要が縮小し、譲受側が単独で黒字化できる見込みが薄い
  • 譲渡側オーナーが譲渡後も経営に関与し続けたい意向で、譲受側と相容れない

上記に該当する場合は、まず該当事項の改善・整理を進めてから譲渡交渉に入るのが現実的です。改善困難な場合は、事業引継ぎ支援センターや弁護士・税理士と相談し、廃業・解散・破産等の選択肢も含めて出口戦略を組み立てます。利用者・職員に最後まで迷惑をかけない撤退計画も、経営者の責務として重要な検討事項です。

10. よくある質問(FAQ)

Q1. 介護事業所のM&Aはどのくらいの期間で完了しますか?
規模・スキームにより異なりますが、仲介会社・事業引継ぎ支援センター経由の中小規模M&Aでは、初回相談から最終契約・クロージングまで概ね半年〜1年程度を見込む案件が多い傾向です。事業譲渡で新規指定取得が必要な場合は、所轄庁の標準処理期間(2ヶ月程度)を逆算してスケジュールを組みます。買い手探し・DD・交渉が長引くと1年超かかるケースも珍しくありません。
Q2. M&A仲介会社と事業引継ぎ支援センターはどう使い分けますか?
事業引継ぎ支援センター(中小企業庁所管・全国に設置)は無料相談・登録制マッチング・公的支援機関との連携が強みで、小規模事業所・初期段階の相談に向いています。M&A仲介会社は専任担当・買い手ネットワーク・交渉支援・契約書ドラフト等の総合支援が強みで、譲渡対価が一定規模以上の案件に向いています。まずは事業引継ぎ支援センターで現状診断を受けてから、必要に応じて民間仲介会社を併用するのが実務的なフローです。
Q3. 譲渡を職員にいつ伝えればよいですか?
早すぎる開示は職員の不安・退職を招き、遅すぎる開示は信頼関係を毀損します。一般的な実務では、基本合意(LOI)締結後・最終契約直前のタイミングで主要職員(管理者・サ責・ケアマネ等)に開示し、最終契約締結後・クロージング前後に全職員説明会を開催する流れが多く採られます。情報管理ルール(守秘義務契約)を整えたうえで段階的に開示範囲を広げます。
Q4. 利用者・家族への説明はいつ・どう行いますか?
利用者・家族への説明は、最終契約締結後・クロージング前後のタイミングで、運営方針継続・職員継続・サービス継続を明示する文書配布+希望者への個別説明が一般的です。事業譲渡で新規指定取得が必要な場合は、利用者との契約巻き直しが必要となるため、所轄ケアマネ事業所への事前情報共有・ケアプラン継続性確保も並行して進めます。
Q5. 譲渡後も経営者として残ることはできますか?
多くのM&Aで、譲渡後一定期間(半年〜数年)譲渡側オーナーが顧問・相談役・施設長等の役割で残るアーンアウト型・引継ぎ期間設定型が採用されます。利用者・職員・地域関係者への引継ぎを円滑にするため、譲受側からも一定期間の残留を求められるケースが多くなります。完全引退を希望する場合は、引継ぎ期間を契約書に明記して期間満了で退任する設計が現実的です。
Q6. 個人事業の介護事業所もM&Aできますか?
個人事業形態の介護事業所(主に居宅介護支援・小規模訪問介護等)も事業譲渡スキームでM&Aは可能です。ただし、個人事業の場合は介護保険指定が個人に紐づいているため、譲受法人での新規指定取得が必須となります。譲渡対価は所得税法上の譲渡所得として課税されるため、税務スキーム検討は法人形態以上に重要です。
Q7. 親族内に後継者がいるが経営経験がない場合は?
中小企業庁・各都道府県の事業承継支援機関では、親族内承継候補者向けの経営研修・後継者育成プログラム・伴走支援を無料〜低額で提供しています。また、現経営者が顧問として5〜10年残り、徐々に経営権を移譲する漸進的承継も介護事業所では一般的です。事業承継税制(特例措置)の活用で、自社株移転の税負担を軽減できる可能性もあります。

11. まとめ

介護事業所のM&A・事業承継のポイントを整理します。

  • 市場は拡大基調:経営者高齢化と単独運営困難化で、第三者承継需要は構造的に増加しています。
  • サービス区分で相場が大きく異なる:訪問介護・居宅介護支援は小規模、特養・サ高住は大規模レンジで、評価ドライバーも区分ごとに異なります。
  • スキーム選択が重要:株式譲渡・事業譲渡・合併で承継範囲・指定手続き・税務が大きく変わります。
  • 指定承継手続きを誤らない:事業譲渡では新規指定取得が必要で、空白期間中は介護報酬請求できません。所轄庁との事前協議が必須です。
  • 労務承継が成否を分ける:主要有資格者の継続意思確保なしに、譲渡後の人員配置基準維持は困難です。
  • 税務スキームで手取りが大きく変わる:株式譲渡代金+役員退職金の組み合わせ、事業承継税制の活用を税理士と早期に検討します。
  • 承継不向き事業所もある:行政処分歴・主要職員退職見込・建物老朽化等の課題は、譲渡交渉前に改善するか、廃業・解散も含めた出口戦略を検討します。

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12. 出典・参考資料

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mitoru編集部の見解

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