在宅医療×ICT連携ガイド【2026年版・多職種共有プラットフォーム】

📅最終更新:2026-05-26
※本記事には広告(PR)が含まれます。掲載判断は当サイトの編集基準に基づき行っています。 編集方針 | 最終更新日: 2026-05-08

「訪問診療・訪問看護・ケアマネが同じ情報を共有できず、薬の変更が伝わらなかった」「患者情報のやり取りをFAXや電話に頼っており、タイムラグが大きい」——在宅医療に携わる医師・訪問看護師・ケアマネジャーから、こうした声が年々増えています。

2024年度の診療報酬・介護報酬改定では、ICTを活用した多職種情報共有への評価が拡充され、プラットフォーム導入が収益面でも直結する局面を迎えています。厚生労働省「在宅医療の現状」(2024年3月)によると、在宅医療を受ける患者は増加傾向にあり、複数職種が関わる包括ケアチームの情報連携が医療安全の鍵を握ります。

本記事では、公的情報・各プラットフォーム公式情報をもとに、在宅医療×ICT連携の市場動向・主要プラットフォームの機能比較・個人情報保護の要点・補助金と診療報酬加算・よくある失敗事例・FAQ10問を整理します。診療行為の判断・個別の医療指導は専門家にご相談ください。

この記事で分かること

  • 在宅医療×ICT連携市場の現状と2026年の方向性
  • 多職種連携で生じる情報共有の課題と構造的な原因
  • 主要プラットフォーム(MCS・HOKUTO・YaDoc・Welby等)の機能比較
  • 医師・看護師・ケアマネジャー間の情報共有フローとICT活用ポイント
  • 個人情報保護法・3省2ガイドラインへの対応要点
  • ICT導入補助金・診療報酬加算の活用方法
  • 失敗事例と回避策・FAQ10問・次の1ステップ

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1. 在宅医療×ICT連携市場の現状と2026年の方向性

厚生労働省「在宅医療の現状について」(2024年3月公表)によると、在宅患者訪問診療料の算定件数は年間約2,000万件(推計)に達し、在宅療養支援診療所(在支診)は全国で約15,000施設(2023年時点)が届け出ています。高齢化の進展と病院完結型から地域包括ケアへの転換が加速するなか、在宅医療は今後さらに需要が拡大すると見込まれます。

こうした背景のもと、在宅医療×ICT連携の市場は2020年代前半から急速に拡大しています。コロナ禍でのオンライン診療解禁・PHR(個人健康記録)整備の議論・マイナンバーカードを活用した医療情報基盤の整備が重なり、医療介護DXとしてのICT連携は国家戦略的な位置づけを持ちます。厚労省「医療DX推進に関する工程表」(2023年)では、電子処方箋・医療情報プラットフォーム・電子カルテ標準化が段階的に推進される計画が示されています。

ネットワーク連携
指標数値・動向出典
訪問診療実施診療所数約11,000か所(2022年)厚労省「在宅医療の現状について」(2024年3月)
在宅療養支援診療所届出数約15,000施設(2023年)厚労省「医療施設動態調査」
在宅患者訪問診療料算定件数年間約2,000万件(推計)社会医療診療行為別統計(2023年)
医療DX推進工程表電子処方箋・情報基盤・標準化を段階的推進厚労省「医療DX推進に関する工程表」(2023年)
2024年度診療報酬改定ICT活用多職種連携加算の拡充・在宅関連点数見直し中央社会保険医療協議会(2024年)

2024年度の診療報酬改定では、ICTを用いた多職種連携に対する評価が拡充されました。具体的には「在宅医療・介護連携推進事業」の充実や、「情報通信機器を用いたカンファレンス」への算定要件緩和が盛り込まれ、プラットフォーム導入が直接収益向上につながる制度設計となっています。介護報酬においても、ICTを活用した情報共有を前提とした加算が整備されており、医療・介護双方でICT連携の導入メリットが生まれています。

一方で、プラットフォーム市場は乱立気味であり、導入後の運用定着・個人情報保護・費用対効果をめぐる課題も指摘されています。本記事では、そうした実務上の論点も含めて整理します。

2. 多職種連携における情報共有の課題

在宅医療は外来診療と本質的に異なる情報共有構造を持ちます。外来診療は医師・看護師・事務スタッフが同一施設内で情報を共有しやすいのに対し、在宅医療では関与職種が患者宅・ステーション・クリニック・居宅介護支援事業所・薬局など複数の拠点に分散しています。この「分散構造」こそが、情報連携の最大の障壁です。

2-1. FAX・電話依存による情報遅延

在宅医療現場では、処方変更・病状変化・緊急往診の情報をFAXや電話でやり取りするケースが依然として多く残っています。FAXは送受信の確認に手間がかかり、情報の検索性・履歴管理が困難です。電話は伝達ミスや聞き漏らしのリスクがあり、夜間・休日の連絡体制にも負荷がかかります。厚労省「在宅医療の現状について」でも、多職種間の連絡調整の負荷が在宅医療普及の障壁の一つとして言及されています。

2-2. 縦割り情報管理と横断共有の困難

医師が使う電子カルテ・訪問看護師が使う看護記録システム・ケアマネジャーが使うケアプラン管理ソフトは、それぞれ独自の情報管理体系を持っています。システム間の相互接続(インターオペラビリティ)が整っていない場合、同じ患者の情報が複数システムに断片化して保存され、各職種が全体像を把握しにくい状況が生まれます。この縦割り構造は、服薬情報の未共有・リハビリ状況の連絡漏れ・緊急時の初動遅延といったリスクに直結します。

2-3. 情報セキュリティへの懸念と導入障壁

クラウド型の情報共有プラットフォームを導入する際、「患者情報をクラウドに置くことは安全か」という懸念が管理者側から示されることがあります。厚労省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第6.0版」(2023年5月)では、クラウドサービスを利用する場合の事業者選定基準・情報の暗号化・アクセス管理・インシデント対応の考え方が整理されており、適切な要件を満たすプラットフォームを選べばクラウド利用は認められています。懸念があることで導入が遅れ、FAX・電話依存が続くという課題があります。

2-4. 職種・事業所ごとのリテラシー格差

在宅医療に携わる職種はITリテラシーにばらつきがあります。若い訪問看護師はスマートフォンに慣れていても、高齢の開業医やベテランの介護職はICTツールへの抵抗感が強いケースがあります。こうしたリテラシー格差は、プラットフォームを導入しても利用率が上がらない「形骸化」問題の原因となります。操作画面のシンプルさ・学習コストの低さ・サポート体制が選定の重要要件です。

課題分類具体的な問題ICTによる改善方向
情報遅延FAX・電話による伝達ミス・タイムラグリアルタイム共有・既読確認・通知機能
情報の断片化システム縦割りによる全体像把握困難多職種横断の統合ダッシュボード
セキュリティ懸念クラウド利用への心理的障壁ガイドライン準拠プラットフォームの明示
リテラシー格差利用率が上がらない形骸化シンプルUI・スマホ対応・段階的研修
費用・手間導入コストと定着管理の負担補助金活用・SaaS月額モデル

3. 主要プラットフォーム比較【2026年版】

在宅医療×ICT連携に対応した主要プラットフォームを機能・対象職種・費用モデルの観点で整理します。以下の情報は各社公式サイト・公開情報をもとにしており、詳細・最新の料金は各社への問い合わせで確認してください(参照:2026年5月)。

3-1. MCS(Medical Care Station)

エンブレースが提供するMCSは、医師・訪問看護師・薬剤師・ケアマネジャー・介護士など在宅医療に関わる多職種がグループ(「サービス」)単位で情報を共有するプラットフォームです。テキスト・写真・バイタルデータの投稿と既読確認、患者ファイルの共有が中心機能です。スマートフォン・PC・タブレットから利用でき、医療・介護職向け無料プラン(基本機能)も提供されています。連携する電子カルテ・看護記録システムも増えており、在宅医療ICT連携の標準的な選択肢として広く普及しています。

3-2. YaDoc(ヤードック)

インテグリティ・ヘルスケアが提供するYaDocは、患者のセルフモニタリング(バイタル・症状・服薬記録)と医療者へのデータ共有を組み合わせたプラットフォームです。患者自身がスマートフォンで体重・血圧・血糖値などを記録し、そのデータを主治医・訪問看護師がリアルタイムで確認できます。慢性疾患の在宅管理・療養指導に強みがあり、「YaDoc」「YaDoc Quick」の2製品が展開されています。オンライン診療機能も備え、遠隔診療と在宅ICT連携を統合して運用できます。

3-3. Welby(ウェルビー)マイカルテ

Welbyが提供するウェルビー マイカルテは、患者がPHR(個人健康記録)として自身の医療・健康情報を管理し、許可した医療者と共有するサービスです。血糖値・血圧・体重・服薬記録・検査値をグラフ化して医療者と共有でき、在宅での慢性疾患管理や治験支援にも活用されています。患者中心の情報管理モデルであり、医師・看護師・薬剤師が同じデータを基に指導を行える点が特徴です。

3-4. カナミッククラウドサービス

カナミックネットワークが提供するカナミッククラウドサービスは、介護事業者向けに特化した情報共有・記録管理プラットフォームです。ケアプラン・介護記録・申し送り・シフト管理を一元化し、医療機関との情報連携機能も提供しています。介護報酬の算定管理・LIFE(科学的介護情報システム)への対応など、介護保険に特化した機能が充実しており、医療×介護の横断連携に適しています。

3-5. HOKUTO(ホクト)

HOKUTOは医師向けの医療情報・診療支援アプリとして知られていますが、在宅医療の文脈では処方薬・診療ガイドライン・算定情報の検索支援ツールとして活用されています。多職種プラットフォームとしての機能は限定的ですが、医師の在宅診療時の情報確認ツールとして補完的に利用されています。

3-6. 主要プラットフォーム機能比較表

プラットフォーム主な対象職種コア機能患者参加費用モデル公式サイト
MCS(Medical Care Station)医師・看護師・薬剤師・ケアマネ・介護士多職種グループ情報共有・バイタル・写真一部対応基本無料(医療・介護職)/有料プランありmedical-care-station.com
YaDoc医師・看護師・患者患者セルフモニタリング・オンライン診療中心機能有料(要問い合わせ)yadoc.jp
Welby マイカルテ医師・看護師・薬剤師・患者PHR管理・慢性疾患記録共有中心機能一部無料(患者向け)/医療機関向け有料welby.jp
カナミッククラウド介護事業者・ケアマネ・医療機関ケアプラン・介護記録・LIFE対応限定的有料(要問い合わせ)canamick.jp
HOKUTO医師(主に)薬剤・ガイドライン情報検索なし基本無料(医師向け)hokuto.app

プラットフォーム選定にあたっては、「現場の職種構成に対応しているか」「既存システムとの連携が可能か」「セキュリティ要件(3省2ガイドライン準拠)を満たすか」「操作の習熟コストが低いか」を優先的に確認してください。複数プラットフォームを組み合わせる事業所も多く、運用負荷と情報分散のトレードオフに注意が必要です。

4. 医師・看護師
チーム輪=連携
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チーム輪=連携

在宅医療における多職種情報共有の中心となる3職種(医師・訪問看護師・ケアマネジャー)の役割分担と情報共有フローを整理します。

4-1. 医師(主治医・在宅支援診療所)

主治医は在宅医療チームの医学的意思決定の中心です。訪問診療時の診察所見・処方変更・病状評価・看取り方針の決定など、チーム全体に影響する情報を発信します。ICTプラットフォームを活用することで、訪問診療後の記録をリアルタイムで看護師・ケアマネに共有し、従来のFAXによる伝達ラグを解消できます。また、緊急往診の際にも事前の情報(バイタル推移・最終服薬・家族の状況)をプラットフォーム経由で確認し、迅速な判断が可能になります。

医師がICTプラットフォームを活用する際の主要なユースケースは次の通りです。訪問後の経過記録の即時投稿・処方変更のチームへの通知・カンファレンス資料の事前共有・バイタルデータの遠隔確認・緊急時の連絡・応答履歴管理——これらをモバイルデバイスから操作できる環境が整うと、往診中の入力負担を大幅に軽減できます。

4-2. 訪問看護師(訪問看護ステーション)

訪問看護師は患者宅を定期的に訪問し、バイタル測定・処置・服薬確認・病状観察を行います。医師への報告・ケアマネへの情報提供の両方を担う「情報ハブ」的役割を果たします。ICTプラットフォームを活用すると、バイタルデータの入力→医師への自動通知→指示の確認→記録完了、という一連のフローをペーパーレスで完結できます。訪問看護記録システム(NiCOL・iBow等)と連携可能なプラットフォームであれば、記録の二重入力を回避できます。

訪問看護師の主要なICT活用ポイントとして以下が挙げられます。患者ごとのグループチャットへのバイタル報告・創傷状態の写真共有・処置後の記録投稿・夜間急変時の医師への即時連絡・次回訪問前の引き継ぎ確認——これらをスマートフォン1台で完結できる環境は、訪問件数が多いステーションほど業務効率向上効果が大きくなります。

4-3. ケアマネジャー(居宅介護支援事業所)

ケアマネジャーは介護保険のサービス調整を担う専門職であり、医療・介護の橋渡し役です。サービス担当者会議の招集・ケアプランの共有・介護サービス事業者との調整・家族への説明など、情報集約と発信の量が多い職種です。ICTプラットフォームを活用すると、医師からの医療情報・看護師からの観察記録・介護事業者からの生活状況報告を一元的に閲覧し、ケアプランの見直し判断が迅速になります。

ケアマネジャーがICT連携で得られる主なメリットを整理します。医師・看護師の記録をリアルタイムで閲覧できるため、月1回の訪問時だけでなく日常的に患者の状態変化を把握できます。サービス担当者会議をオンラインで開催する際に、会議前に全員が同じ情報を共有した状態でスタートでき、会議の質と効率が向上します。

職種主な役割ICT活用の主要ユースケース連携先
医師(主治医)医学的意思決定・処方訪問後記録の即時共有・処方変更通知・バイタル遠隔確認看護師・薬剤師・ケアマネ
訪問看護師バイタル・処置・服薬確認バイタル入力→医師通知・写真共有・夜間急変連絡医師・ケアマネ・薬剤師
ケアマネジャーケアプラン・サービス調整医療情報の一元閲覧・オンライン担当者会議医師・看護師・介護事業者
薬剤師(在宅訪問)服薬指導・薬剤管理残薬情報共有・副作用報告・医師への疑義照会医師・看護師
介護士日常生活支援ADL記録・申し送り・緊急時の看護師/医師連絡看護師・ケアマネ

5. MCS等プラットフォームの機能詳細比較

在宅医療ICT連携において中心的な役割を果たすプラットフォームの機能を詳細に比較します。選定時に確認すべき機能軸ごとに整理します。

5-1. グループ情報共有・コミュニケーション機能

患者ごとのグループ(チャンネル・サービス)を作成し、関与する職種全員が情報を共有する機能は、在宅医療ICT連携の基本です。確認すべき要件として、テキスト投稿・写真/動画添付・既読確認・通知設定・メッセージの検索機能が挙げられます。MCSは患者ごとの「サービス」作成が基本設計で、グループ内のメンバー管理(追加・削除・権限)が管理者から操作できます。

5-2. バイタル・観察記録の入力・共有機能

訪問看護師や介護士がスマートフォンから血圧・体温・SpO2・体重などのバイタルを入力し、グループ内でリアルタイム共有できる機能は業務効率に直結します。Bluetooth対応の医療機器との自動連携(バイタルの自動入力)に対応したプラットフォームもあり、入力ミスの低減につながります。YaDocは患者自身のセルフモニタリングと医療者側の閲覧を組み合わせた設計が特徴的です。

5-3. ファイル・書類共有機能

サマリー・ケアプラン・退院時カンファレンスの議事録・訪問看護指示書などの書類をPDF・画像形式でアップロードし、チーム内で参照できる機能は、在宅医療の連絡業務のペーパーレス化に貢献します。ファイルのバージョン管理・保存期限の設定・削除権限の管理が適切にできるかを選定時に確認してください。

5-4. カレンダー・訪問スケジュール連携

医師の訪問日程・看護師の訪問スケジュール・ケアマネの面談予定をプラットフォーム上で管理・共有できる機能があると、調整コストが下がります。外部カレンダー(Googleカレンダー等)との同期対応の有無は確認すべき項目です。ただし、スケジュール管理は専用の訪問管理システムが機能的に優れているケースもあり、プラットフォームとの役割分担を整理して選定することが重要です。

5-5. 既存システムとのAPI連携

電子カルテ・訪問看護記録システム・レセコン・薬歴システムとのAPI連携の有無は、二重入力の回避と情報の一元化に直結します。MCSは複数の電子カルテベンダーとの連携実績を公表しています。ただし連携の深さ(一方向データ取得か双方向か・リアルタイム同期かバッチ同期か)は製品ごとに異なるため、既存システムのベンダーとプラットフォーム提供会社の双方に確認が必要です。

機能軸確認すべき要件MCSYaDocWelbyカナミック
グループ情報共有患者ごとグループ・既読確認・通知
バイタル入力・共有スマホ入力・Bluetooth連携◎(患者入力)◎(PHR中心)
ファイル共有PDF・書類・バージョン管理
スケジュール連携訪問日程・外部カレンダー同期
既存システム連携電子カルテ・看護記録API○(複数連携実績)○(限定)○(限定)○(介護系中心)
患者・家族参加患者・家族への情報開示一部対応

◎:標準的に充実 ○:基本対応あり △:限定的または要確認。上記は公開情報をもとにした概況であり、各社のプラン・バージョンにより異なります。詳細は各社公式サイトでご確認ください。