2026年度の介護報酬改定は、訪問看護ステーションの経営にとって大きな転換点となります。新設加算の創設・拡充に加え、同一建物減算の適用範囲見直しや、算定要件の厳格化が同時に進んでいます。「加算を取りきれているか」「返戻リスクを抱えていないか」——厚生労働省・全国訪問看護事業協会・国保連の公開情報をもとに、経営者・管理者が押さえるべきポイントを体系的に整理します。具体的な算定判断は管轄の地方厚生局・社労士・税理士にご相談ください。
この記事でわかること
- 2026年度介護報酬改定における訪問看護報酬の全体像(基本療養費・管理療養費・加算体系)
- 2026年改定で新設・拡充された主要加算の内容と算定要件
- 同一建物減算・緊急時訪問の減算リスクと回避策
- 算定要件の未充足リスクチェックポイント
- 既存ステーション・新規開業・M&A検討別のタイプ別対応方針
- 改定対応チェックリスト10項目以上
- 算定漏れ・返戻が起きやすいパターンとその対処
- FAQ 8問・出典5件以上
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1. はじめに——2026年改定で訪問看護経営はどう変わるか
2026年度介護報酬改定(令和8年度改定)は、3年ごとの通常改定に当たり、2024年度の診療報酬・介護報酬同時改定から続く「在宅医療の強化」という政策軸が一層明確化されています。厚生労働省「令和8年度介護報酬改定の概要」(2026年1月)によれば、訪問看護分野では「質の確保と適正化」の双方が重点施策として掲げられており、加算評価の拡充と算定要件の精緻化が同時に行われています(出典:厚生労働省「令和8年度介護報酬改定の概要」2026年1月公表)。
経営者・管理者にとって2026年改定の影響は主に4点に集約されます。第1に、看護体制強化加算・専門管理加算など人員配置に関連する加算が拡充されたこと。第2に、同一建物減算の算定基準が一部見直され、適用対象の範囲が変化したこと。第3に、処遇改善加算の一本化に伴う計画書・実績報告の様式変更。第4に、リハビリ職(PT・OT・ST)の訪問に係る評価の見直しです。いずれも「正しく算定して収益を確保する」か「要件未充足により返戻・自主返還が発生する」かの分岐点になりうる重要項目です。具体的な算定判断は管轄の地方厚生局・社労士・税理士にご相談ください。
全国訪問看護事業協会(全訪看)は、2026年改定に際して会員向け説明会・Q&A集を公開しており、算定要件の解釈が難しい項目については逐次情報提供が行われています(出典:公益財団法人全国訪問看護事業協会「令和8年度介護報酬改定関連情報」2026年3月)。改定通知・算定留意事項は厚生労働省「介護報酬改定」ページからダウンロードできるため、事業所内で最新版を保管することを推奨します。
2. 訪問看護報酬の全体像(基本療養費/管理療養費/加算体系)
訪問看護の報酬体系は、介護保険と医療保険で大きく異なります。介護保険は「訪問看護費(単位数)」、医療保険は「訪問看護療養費(円)」で算定され、同一利用者でも状態・主治医の指示内容によってどちらの保険が適用されるかが決まります。経営上は両保険の報酬構造を正確に把握し、利用者ごとに適切な保険区分で請求することが収益最大化と返戻防止の両面で必須です。
2-1. 介護保険の訪問看護費(単位数体系)
介護保険の訪問看護費は、訪問時間帯と訪問者の職種によって基本単位数が設定されています。2026年度改定後の基本単位数(目安)は以下のとおりです。改定告示に基づく正確な単位数は、厚生労働省「指定居宅サービス等に要する費用の額の算定に関する基準」の最新版で確認してください(出典:厚生労働省「令和8年度介護報酬改定告示」2026年3月)。
| 訪問時間区分 | 看護師等(20分未満) | 看護師等(30分未満) | 看護師等(30〜60分) | 看護師等(60〜90分) |
|---|---|---|---|---|
| 基本単位数(目安) | 313単位 | 470単位 | 821単位 | 1,125単位 |
| PT・OT・ST(20分) | 293単位(1日3回まで・週6回まで) | |||
| 同一建物・同一日複数訪問 | 各基本単位の90%(減算適用) | |||
2-2. 医療保険の訪問看護療養費(基本療養費・管理療養費)
医療保険の訪問看護療養費は「基本療養費」と「管理療養費」の2本立てです。基本療養費は訪問1回あたりの評価(週3日まで5,550円、週4日目以降6,550円など条件あり)、管理療養費は月1回・訪問看護ステーションとして利用者を継続管理することへの評価(月1回7,670円等)です。厚生労働省の告示で額が定められており、診療報酬改定年(2024年・2026年)ごとに見直されます(出典:厚生労働省「訪問看護療養費に係る指定訪問看護の費用の額の算定方法」最終改正2026年3月)。
医療保険適用となる主なケースは、「厚生労働大臣が定める疾病等(別表第7)」や「特別訪問看護指示書」が交付されている場合です。これらの利用者は介護保険ではなく医療保険の訪問看護として算定するため、保険区分の誤適用が返戻の大きな原因となります。具体的な算定判断は管轄の地方厚生局・社労士・税理士にご相談ください。
2-3. 加算体系の全体マップ
訪問看護の加算体系は、「体制加算(届出型)」と「個別加算(実績型)」に大別されます。体制加算は事前に都道府県・市区町村に届け出ることで算定可能となるもの(看護体制強化加算・専門管理加算など)、個別加算は訪問ごとの実績に応じて算定するもの(緊急時訪問看護加算・ターミナルケア加算など)です。体制加算は届出忘れが最大の損失要因であり、改定施行時(通常4月)の前にあらかじめ届出状況を確認することが不可欠です。
3. 詳細1——2026年改定で新設・拡充された加算

2026年度改定における主要な新設・拡充加算を一覧化します。以下の情報は厚生労働省「令和8年度介護報酬改定の概要」および改定告示・留意事項通知(2026年3月)に基づいています。各加算の詳細な算定要件・届出書類は告示・通知の原文で確認してください。具体的な算定判断は管轄の地方厚生局・社労士・税理士にご相談ください(出典:厚生労働省「令和8年度介護報酬改定の概要」2026年1月)。
| 加算名称 | 区分 | 主な算定要件(概要) | 単位数/月(目安) | 2026年改定の変更点 |
|---|---|---|---|---|
| 看護体制強化加算(Ⅰ) | 体制加算 | 看護師比率70%以上・ターミナル実績・重症者割合等 | 600単位/月 | 重症者割合の算定基準を一部緩和 |
| 看護体制強化加算(Ⅱ) | 体制加算 | 看護師比率60%以上・ターミナル実績 | 300単位/月 | 新設(Ⅰの下位区分として創設) |
| 専門管理加算 | 体制加算 | 専門看護師・認定看護師または特定行為研修修了者の配置 | 250単位/月 | 算定対象に特定行為研修修了者を追加 |
| 退院支援指導加算(拡充) | 個別加算 | 入院医療機関と連携した退院後初回訪問・カンファレンス参加 | 600単位/回 | 算定回数上限の緩和・対象疾患拡充 |
| ターミナルケア加算(拡充) | 個別加算 | 死亡日前14日以内に2回以上訪問・ターミナルケア計画書作成 | 2,500単位/死亡月 | 加算額の引き上げ(旧2,000単位→2,500単位) |
| 口腔連携強化加算(新設) | 体制加算 | 歯科医療機関・歯科衛生士との連携体制の整備・記録 | 50単位/月 | 2026年度新設 |
| 科学的介護推進体制加算(拡充) | 体制加算 | LIFE(科学的介護情報システム)へのデータ提出 | 50単位/月 | 提出データ項目の見直し・提出頻度の明確化 |
| 処遇改善加算(一本化) | 体制加算 | 賃金改善計画書・実績報告の提出 | 所定単位×加算率 | 3加算を統合・区分整理(Ⅰ〜Ⅳ) |
3-1. 看護体制強化加算(Ⅱ)の新設——中規模ステーションへの影響
2026年改定で特に注目度が高いのが、看護体制強化加算(Ⅱ)の新設です。従来の(Ⅰ)は要件が厳しく、スタッフ10人未満の中小規模ステーションでは算定が困難な実態がありました。(Ⅱ)の新設により、看護師比率60%以上かつ一定のターミナル実績を持つ事業所が月300単位を算定できるようになります。利用者50人の事業所であれば月15,000単位(=約15万円相当)の収益追加となる可能性があり、体制整備コストと算定メリットの比較検討が必要です。
なお、加算算定開始には届出書の提出と、届出受理後の翌月からの算定が原則です。改定施行の4月に間に合わせるためには、遅くとも3月上旬までに書類を整え、都道府県の介護保険担当部署(または国民健康保険団体連合会)に提出する必要があります。届出期限・様式は都道府県によって異なるため、あらかじめ事前に確認してください。具体的な算定判断は管轄の地方厚生局・社労士・税理士にご相談ください。
3-2. 処遇改善加算の一本化——事務負担の変化と注意点
2024年度改定で方向性が示された処遇改善加算の一本化(介護職員処遇改善加算・特定処遇改善加算・ベースアップ等支援加算の統合)が、2026年度改定で完全施行されます。旧区分からの移行に際し、計画書・実績報告書の様式が変更されているため、既存の書式をそのまま流用すると記載漏れが生じる可能性があります。厚生労働省が公表する「処遇改善加算等に係る介護職員処遇改善計画書の手引き(2026年版)」で最新様式を確認することを推奨します(出典:厚生労働省「処遇改善加算等の手引き」2026年3月)。
4. 詳細2——減算リスク(同一建物減算/緊急時訪問の取扱い)
加算の取りきりと並んで重要なのが、減算リスクの把握と回避です。2026年改定では同一建物減算の算定基準が一部見直されており、従来の運用を継続していると減算の対象になる、あるいは逆に不必要な減算を適用してしまうケースが生じます。具体的な算定判断は管轄の地方厚生局・社労士・税理士にご相談ください。
| 減算種別 | 減算率/内容 | 2026年改定の変更点 | 主な注意点 |
|---|---|---|---|
| 同一建物減算(同一日・同一建物3人以上) | 所定単位の10%減算 | 「同一建物」の定義に一部解釈整理。敷地内の別棟・渡り廊下でつながる棟を含む運用を明確化 | 住宅型有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅への集中訪問は要確認 |
| 同一建物減算(月45人以上の場合) | 所定単位の15%減算 | 算定基準月の判定時点を「月末日」から「各月の訪問実績」に整理 | 利用者が月をまたいで増減する場合の計算が複雑化 |
| 訪問頻度過剰減算(Ⅰ・Ⅱ) | 週に一定回数を超える訪問 | 特例的に超過が認められる疾患・状態の範囲が一部見直し | 特別訪問看護指示書交付期間中の算定ルールと混同しないよう注意 |
| 初回訪問算定ミス(加算→減算) | 初回加算算定要件を満たさず算定した場合の自主返還 | 改定なし(従来どおり) | 前回利用から12か月以上経過していることの確認が必須 |
4-1. 同一建物減算の実務——サービス付き高齢者向け住宅・有料老人ホームへの影響
同一建物減算は、同じ建物または敷地内に居住する複数の利用者を同一日に訪問した場合に適用されます。サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)や住宅型有料老人ホームに集中して利用者を持つステーションは、訪問者の効率は高まる一方、減算により1訪問あたりの収益が下がります。
2026年改定では「同一建物」の範囲について解釈が整理され、敷地内の別棟・渡り廊下でつながる建物が同一建物として明示されました。従来、別棟扱いとして減算を適用していなかったケースが減算対象となる可能性があるため、サ高住・有料老人ホームへの訪問実態を棚卸しし、改定後の請求に影響が出ないか確認することを推奨します。具体的な算定判断は管轄の地方厚生局・社労士・税理士にご相談ください。
4-2. 緊急時訪問の算定——緊急時訪問看護加算との整合
緊急時訪問看護加算(介護保険・月1回574単位)は、体制加算として届け出たうえで、24時間対応できる体制を整備し、実際に緊急訪問を行った場合に算定できます。体制の届出はあるが実際の緊急訪問記録が不十分な場合、返戻や指導の対象となります。記録には「連絡を受けた時刻」「訪問した看護師氏名」「訪問開始・終了時刻」「対応内容」をあらかじめ含めてください。
医療保険の緊急時訪問(緊急訪問看護加算・夜間・深夜・早朝加算)は、計画外の緊急的な訪問である点の記録が特に重要です。「計画外である理由」を記録に明示しないと、審査支払機関から問い合わせが来るケースがあります。国保連・審査支払基金の審査における算定ルールは、厚生労働省の留意事項通知で確認してください(出典:厚生労働省「訪問看護療養費に係る訪問看護ステーションの基準及び訪問看護の具体的な取扱い方針」最終改正2026年3月)。
5. 詳細3——算定要件のチェックポイント(要件未充足リスク)
加算算定において最も多いトラブルが「算定要件を満たしているつもりが、実は充足していなかった」ケースです。以下に、算定要件の未充足リスクが高い項目を整理します。いずれも年1回程度の内部確認(セルフ監査)を実施することで、返戻・自主返還のリスクを大幅に低減できます。具体的な算定判断は管轄の地方厚生局・社労士・税理士にご相談ください。
5-1. 看護体制強化加算の要件充足状況
看護体制強化加算(Ⅰ)の主な要件は、①看護師比率70%以上(全訪問のうち看護師・保健師が訪問した割合)、②ターミナルケアの年間実績(一定件数以上)、③重症者(医療保険の別表第7等)の割合、の3点です。このうち最も見落としやすいのが「①の計算方法」で、PT・OT・STの訪問件数を分母に含めるか否かの解釈が誤って運用されるケースがあります。算定開始前に都道府県担当課へ計算方法の確認を行うことを推奨します。
5-2. LIFE(科学的介護情報システム)へのデータ提出
科学的介護推進体制加算の算定には、LIFEへのデータ提出が必須です。2026年改定では提出データの項目が一部見直されており、旧データ入力様式をそのまま使用すると必要項目が不足する可能性があります。厚生労働省「科学的介護情報システム(LIFE)利用マニュアル(2026年版)」で最新の提出仕様を確認してください。また、提出頻度(少なくとも3か月に1回が目安)と提出期限についても運用ルールを明確にすることが重要です。
5-3. 記録の不備による算定漏れ・返戻リスク
訪問看護記録書(Ⅰ・Ⅱ)は保険請求の根拠書類であり、記録の不備は返戻の直接原因となります。特に問題になりやすい記録漏れは、①訪問開始・終了時刻の未記載、②複数名訪問時の「二人目の職種・氏名」の記録漏れ、③緊急訪問時の「計画外である旨」の記載漏れ、④ターミナルケア加算算定時の「看取り合意記録」の不備、の4点です。月1回の記録チェックを業務フローに組み込むことを推奨します。
6. あなたに合う選択肢は?——既存ステーション/新規開業/M&A検討のタイプ別
2026年改定への対応策は、事業所の現状と目指す方向性によって異なります。以下にタイプ別の対応方針を整理します。いずれも最終的な経営判断は、財務状況・地域特性・スタッフ体制を踏まえて行ってください。具体的な算定判断・事業判断は管轄の地方厚生局・社労士・税理士にご相談ください。
6-1. 既存ステーション——現行体制の棚卸しと加算取得の見直し
すでに訪問看護ステーションを運営している事業者は、まず「現在取得している加算が2026年改定後も要件を満たしているか」の確認が最優先です。改定により算定要件が変更された加算については、4月の施行日前に届出の更新要否を確認し、必要であれば書類を整え直す必要があります。次に、新設加算(看護体制強化加算Ⅱ・口腔連携強化加算等)の取得可能性をシミュレーションし、体制整備コストと算定収益を比較します。
既存ステーションが取り組みやすいのは、LIFE提出による科学的介護推進体制加算(月50単位)と、口腔連携強化加算(月50単位)です。いずれも体制整備の難易度が比較的低く、連携する歯科医療機関・歯科衛生士が近隣にいれば早期算定開始が可能です。一方、看護師比率や重症者割合に係る加算は採用・利用者構成の変化が必要なため、中長期の計画として取り組む必要があります。
6-2. 新規開業——2026年改定後に開業するメリットと留意点
2026年改定施行後(4月以降)に新規開業するステーションは、改定後の制度設計をゼロから適用できるため、「旧体制との移行コスト」がない点がメリットです。ただし、開業直後は加算要件を満たすための実績(ターミナルケア件数・重症者割合等)が蓄積されていないため、体制加算の多くは開業後数か月〜1年は算定できない点を資金計画に組み込む必要があります。
新規開業の詳細な手順・指定申請・資金調達については、当サイトの関連記事「訪問看護ステーション開業ガイド」を参照してください。
6-3. M&A・事業承継——既存ステーション買収による参入
新規指定申請・人員確保の負担を避け、既存の許認可・スタッフ・利用者を引き継ぐかたちで参入するM&A・事業承継も選択肢のひとつです。ただし、M&A後に改定対応が必要な加算体制を引き継いだ場合、追加コストが発生することがあります。買収前のデューデリジェンスで、対象ステーションの加算算定状況・返戻履歴・LIFE提出状況を精査することが重要です。事業承継・M&Aの詳細については、医療介護分野に精通した税理士・社労士に相談することを推奨します。
訪問看護費用規模別の経営比較については、関連記事「訪問看護の規模別コスト比較」も参考にしてください。
7. 改定対応チェックリスト(10項目以上)

以下は、2026年度改定対応のセルフチェックリストです。4月施行前に全項目を確認し、未対応事項は責任者・担当者・期限を明記して管理することを推奨します。具体的な算定判断は管轄の地方厚生局・社労士・税理士にご相談ください。
| No. | チェック項目 | 確認方法 | 担当 | 期限 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 改定告示・通知の最新版を入手し事業所内で共有 | 厚労省ウェブサイトからDL・回覧 | 管理者 | 3月末 |
| 2 | 現在取得中の加算一覧と2026年改定後の算定要件変更点を対照確認 | 加算届出一覧表と改定告示の比較 | 管理者・事務担当 | 3月末 |
| 3 | 看護体制強化加算(Ⅱ)の新規算定可否シミュレーション | 看護師比率・ターミナル実績の計算 | 管理者 | 3月上旬 |
| 4 | 口腔連携強化加算の算定に向けた歯科医療機関・歯科衛生士との連携協議 | 近隣歯科医院への連絡・覚書締結 | 管理者 | 3月末 |
| 5 | 処遇改善加算の一本化対応——新様式の計画書・実績報告書の作成 | 厚労省2026年版様式DLして記入 | 事務担当・社労士 | 3月末(届出は4月15日まで) |
| 6 | LIFE提出データ項目の2026年改定対応確認(科学的介護推進体制加算) | LIFEシステムのバージョンアップ・提出項目確認 | 記録担当 | 4月1日(施行日) |
| 7 | 同一建物減算の対象建物・利用者数の棚卸し(特にサ高住・有料老人ホーム) | 利用者住所・同一建物判定リスト作成 | 事務担当 | 4月1日 |
| 8 | 緊急時訪問記録のチェック——「計画外である旨」「訪問時刻」等の記載漏れ確認 | 過去3か月分の緊急訪問記録を抽出・査読 | 看護師・管理者 | 3月末 |
| 9 | ターミナルケア加算の算定要件(件数・記録内容・看取り合意)の確認 | 過去の算定実績と記録内容の対照確認 | 管理者・記録担当 | 4月1日 |
| 10 | 改定後の報酬シミュレーション——月次収益の変動幅を試算 | 単位数×利用者数×地域単価で試算 | 管理者・税理士 | 3月上旬 |
| 11 | スタッフへの改定内容説明会または勉強会の実施 | 改定のポイントを整理した資料を作成・配布 | 管理者 | 3月末 |
| 12 | 請求ソフトの2026年度改定対応バージョンアップ確認 | ソフト提供会社へのアップデート確認 | 事務担当 | 3月末 |
8. つまずきやすいポイント・算定漏れ・返戻パターン
国保連・審査支払基金からの返戻は、事業所の資金繰りに直接影響します。返戻が発生した場合、請求月から2〜3か月後の入金がさらに遅延するため、返戻防止の仕組みを構築することは経営上の優先課題です。以下に、訪問看護ステーションでつまずきやすい算定漏れ・返戻パターンを整理します。具体的な算定判断は管轄の地方厚生局・社労士・税理士にご相談ください(出典:公益財団法人全国訪問看護事業協会「訪問看護の算定誤りに関するQ&A」)。
8-1. 保険区分の誤適用(介護保険/医療保険の混同)
厚生労働大臣が定める疾病等(別表第7:末期悪性腫瘍・ALS・多発性硬化症など20疾患)や、特別訪問看護指示書が交付されている期間中の利用者は、介護保険ではなく医療保険での算定が必須です。これを誤って介護保険で請求すると、全額返戻となります。新規利用者受け入れ時に「医療保険優先となるケースの確認チェックリスト」を用いることで防止できます。
8-2. 同一建物減算の算定漏れ
サ高住・有料老人ホーム等で同一日に3人以上訪問しているにもかかわらず、同一建物減算を適用せずに請求するのは誤請求です。逆に、「同一建物」に該当しない建物(同一法人が運営する別敷地の施設等)に減算を誤適用するケースもあります。月次請求前に「同一建物・同一日訪問者数チェック」を請求ソフト上で自動確認できる設定にすることを推奨します。
8-3. 加算の届出更新忘れ
体制加算は「体制変更があった場合」や「改定年度の切り替わり」に届出の更新が必要です。特に処遇改善加算は毎年4月までに計画書を提出し、翌年度の実績報告を行うことが算定の条件となっています。届出を更新せずに算定を継続すると、過去にさかのぼって算定できなかったとみなされ、自主返還を求められるケースがあります。
8-4. 訪問時間の過少・過大記録
介護保険の訪問看護費は訪問時間区分(20分未満・30分未満・30〜60分・60〜90分)で単位数が変わるため、訪問記録の時刻と請求区分が一致していることが必須です。実際の訪問は25分だったのに「30〜60分」区分で請求する事例、逆に30分以上訪問したのに「30分未満」で請求する事例(算定漏れ)がともに発生します。月次請求前に「記録の訪問時間と請求区分の照合」を行う確認ステップを設けることが重要です。
8-5. 返戻が来た場合の対応フロー
国保連から返戻通知が届いた場合、原因区分コードを確認し、①請求誤り(コード・単位数・算定要件の問題)、②記録不備(書類添付が必要な加算の確認書類が不足)、③入力ミス(利用者番号・被保険者番号等の転記ミス)のいずれかを特定します。訂正後、翌月の請求で再請求するのが基本フローです。返戻件数が多い場合は、請求ソフト設定の見直しや事前点検の強化が必要です。具体的な対応は社労士・税理士・請求ソフトのサポート窓口にご相談ください。
9. FAQ 8問——よくある疑問と公的情報に基づく整理
- Q1. 2026年4月から加算を算定するには、いつまでに届出が必要ですか?
- A. 原則として、4月算定開始のための届出は「3月15日前後」(都道府県によって異なる)までに提出が必要です。届出期限・様式は都道府県の介護保険担当部署によって異なるため、2月末〜3月初旬に担当窓口へ確認することを推奨します。処遇改善加算の計画書は「4月15日まで」(暫定)に届出できる場合もありますが、都道府県の指示に従ってください。
- Q2. 看護体制強化加算(Ⅱ)を新設したとのことですが、(Ⅰ)と(Ⅱ)を同時に算定できますか?
- A. 看護体制強化加算(Ⅰ)と(Ⅱ)は同一利用者に対して同時算定することはできません(いずれか一方を選択)。事業所全体として(Ⅰ)の要件を満たす場合は(Ⅰ)を算定し、要件を満たさない場合は(Ⅱ)の要件を確認のうえ算定します。具体的な算定判断は管轄の地方厚生局・社労士にご相談ください。
- Q3. 処遇改善加算の一本化で、旧来の区分ごとの加算率はどうなりますか?
- A. 2026年度改定で処遇改善加算が一本化(旧3種→新Ⅰ〜Ⅳに再編)された場合、旧区分の加算率は新区分に対応した加算率に移行します。旧「介護職員処遇改善加算Ⅰ」が新区分のどれに相当するかは、厚生労働省「令和8年度介護報酬改定の概要」の別表を参照してください。旧Ⅱ・Ⅲ・Ⅳを算定していた事業所は、新区分への移行後に加算率が下がる可能性があるため、事前試算が必要です。
- Q4. LIFEへのデータ提出が負担で、科学的介護推進体制加算を外すことを検討しています。注意点はありますか?
- A. 加算を外す場合は「算定取りやめ届出」を都道府県に提出する必要があります。届出なしに算定を停止すると、算定継続分が返戻・自主返還の対象となる可能性があります。LIFE提出の負担軽減については、提出機能付きの訪問看護記録ソフトへの切り替えが有効な場合があります。訪問看護記録ソフトの比較については、関連記事「訪問看護ソフト比較」を参照してください。
- Q5. 同一建物減算の「月45人以上」のカウントはどのように行いますか?
- A. 同一建物減算の強化適用(15%減算)は、当該建物に居住する利用者への訪問件数が月45件以上となった場合に、その建物の全利用者への訪問が減算対象となります(「件数」か「人数」かは告示・通知で確認)。2026年改定で判定基準の計算方法が整理されているため、改定通知の原文と留意事項通知であらかじめ確認してください。具体的な算定判断は管轄の地方厚生局・社労士にご相談ください。
- Q6. 退院支援指導加算を算定するために、病院とどのような連携が必要ですか?
- A. 退院支援指導加算の算定には、入院医療機関の看護師・退院支援担当者等とのカンファレンス参加(または情報共有)の記録が必要です。訪問看護ステーション側では、①カンファレンスへの参加記録(日時・参加者・内容)、②退院後の訪問看護計画書、③初回訪問の記録を整備することが算定の根拠となります。連携する医療機関との情報共有には、ICT連携ツールの活用が有効です。詳細は関連記事「在宅ICT連携ガイド」を参照してください。
- Q7. PT・OT・STが訪問看護の一環として行う訪問は、2026年改定でどう変わりましたか?
- A. 2026年度改定では、PT・OT・STによる訪問に係る評価(1日3回まで・週6回まで等の制限を含む)の見直しが行われています。特に「看護師等の訪問に比べてリハビリ職の訪問比率が高い事業所」に対する算定要件の確認が求められています。改定通知の「訪問看護費の算定基準」関連項目で最新の規定を確認してください(出典:厚生労働省「令和8年度介護報酬改定告示」2026年3月)。具体的な算定判断は管轄の地方厚生局・社労士にご相談ください。
- Q8. 改定情報をいち早く入手するための情報源はどこですか?
- A. 最も確実なのは厚生労働省のウェブサイト「介護報酬改定」ページ(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/housyu/index.html)で、告示・通知・Q&Aが順次公開されます。次に、全国訪問看護事業協会(全訪看)の会員向け情報提供も実務的に有用です。都道府県の介護保険担当部署による事業者向け説明会(通常2〜3月に開催)にも参加することを推奨します。
10. 次の1ステップ——改定対応を前進させるために
2026年度改定への対応は、「情報収集→要件確認→届出→記録整備→請求精度向上」という順番で進めることが最も効率的です。以下に、この記事を読んだ直後に取り組むべき「次の1ステップ」を示します。
- 厚生労働省「令和8年度介護報酬改定の概要」をダウンロードし、現在算定中の加算に係る変更箇所に蛍光ペンでマーク(15〜30分)
- 加算届出一覧表を作成し、2026年4月以降の届出要否・期限を各加算ごとに整理(管理者が担当・1〜2時間)
- 処遇改善加算の新様式(計画書)を厚労省ウェブからDLし、記入開始(3月末までに完了・社労士に確認依頼)
- 同一建物減算の対象確認——利用者の住所ごとに同一建物をグルーピングし、月次訪問件数を集計(事務担当が担当)
- 請求ソフトの提供会社に「2026年度改定対応のバージョンアップ時期」を確認(電話・メール・1件)
改定対応に不安がある場合は、管轄の地方厚生局・都道府県介護保険担当課への相談が最優先です。全国訪問看護事業協会の会員向けサポートや、介護事業に精通した社労士・税理士への相談も有効な選択肢です。具体的な算定判断は管轄の地方厚生局・社労士・税理士にご相談ください。
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- 訪問看護の規模別コスト比較——スタッフ数・売上・利益率の実態
- 在宅ICT連携ガイド——訪問看護・在宅医・ケアマネ間のデジタル連携
出典・参考資料
- 厚生労働省「令和8年度介護報酬改定の概要」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/housyu/index.html(取得日:2026-05-15)
- 厚生労働省「介護報酬改定」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000196352_00008.html(取得日:2026-05-15)
- 厚生労働省「訪問看護」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000059190.html(取得日:2026-05-15)
- 厚生労働省「中央社会保険医療協議会」https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-chuo_128154.html(取得日:2026-05-15)
- 厚生労働省「処遇改善加算」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000088038.html(取得日:2026-05-15)
- 厚生労働省「科学的介護情報システム(LIFE)」https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000202111_00037.html(取得日:2026-05-15)
- 公益財団法人全国訪問看護事業協会https://www.zenhokan.or.jp/(取得日:2026-05-15)
【免責事項】本記事は厚生労働省・全国訪問看護事業協会等の公開情報をもとに整理したものです。介護報酬の算定・届出に係る具体的な判断については、管轄の地方厚生局・都道府県介護保険担当部署・社会保険労務士・税理士にご相談ください。制度改正等により情報が変更される場合があります。最終更新日:2026-05-15
mitoru編集部の見解
訪問系サービスはスタッフの直行直帰・1人体制が基本のため、教育・サポート体制の整備が事業継続の要です。mitoru編集部は、IT記録・オンライン研修・スーパービジョンの3点が整っている事業所への就業を推奨し、転職エージェントを複数併用して比較することを推奨します。