2024年度(令和6年度)診療報酬改定は、賃上げ・働き方改革・医療DXという3つの大きな政策テーマが本体改定率や個別項目に色濃く反映された改定として位置づけられています。クリニックの医療事務担当者・病院の医事課にとっては、新設加算の算定要件確認、レセプト記載項目の修正、レセコン設定の更新、施設基準届出の整理など、対応すべき実務が広範に及びました。改定から一定期間が経過した現在も、運用上の疑問や届出の見直しを行っている医療機関は少なくありません。
本記事はクリニック医療事務・病院医事課のスタッフを主な読者と想定し、2024年度診療報酬改定の主要項目(医療DX推進体制整備加算、外来・在宅ベースアップ評価料、看護職員処遇改善評価料、特定疾患療養管理料の見直し等)と、それらが医療事務実務に与えた影響を、厚生労働省の告示・通知・関連資料をもとに整理します。本記事は公的情報の整理を目的としており、個別の算定可否・施設基準該当性については厚生局・支払基金・国保連合会・関係団体への照会または社会保険労務士等の専門家にご相談ください。
この記事で分かること
- 2024年度(令和6年度)診療報酬改定の全体像と医療事務に関わる主要論点
- 医療DX推進体制整備加算・ベースアップ評価料・看護職員処遇改善評価料の概要
- 特定疾患療養管理料見直し等、レセプト記載・算定実務に直結する変更点
- 加算の届出・算定要件・カルテ記載要件の整理ポイント
- レセコンマスタ更新・点数表更新・施設基準コード設定の確認手順
- 医療事務スタッフが学習・キャッチアップする情報源と研修機会
- 自院・自医事課の改定対応状況をその場で点検できる10項目チェックリスト
- 改定対応が遅れがちな医療機関のパターンと回避策
1. 診療報酬改定2024の全体概要
2024年度診療報酬改定は、厚生労働省が2024年3月5日付けで告示(厚生労働省告示第57号ほか)し、原則として2024年6月1日施行(薬価・材料価格基準は4月1日施行)で実施された大規模改定です。これまで4月1日一斉施行が通例だった本体改定が、医療現場の準備期間確保や働き方改革対応の観点から「2か月後ろ倒し」となった点が、医療事務実務に与えたインパクトとして大きな特徴でした。
改定率は、診療報酬本体プラス0.88%(うち看護職員・医療従事者等の賃上げに0.61%、入院基本料等の引上げに0.06%、その他に0.21%)、薬価マイナス0.97%(材料価格基準マイナス0.02%を含めるとマイナス1.00%超)と告示・関連資料で示されています。実質的には「賃上げ財源確保のためのプラス改定」「薬価引下げによる原資捻出」という構造が明確化された改定でした(厚生労働省「令和6年度診療報酬改定の概要」より)。
政策テーマとしては、(1) 医療従事者の賃上げ・処遇改善、(2) 医師の働き方改革推進、(3) ポストコロナを見据えた医療提供体制の確保、(4) 医療DX推進と医療情報の利活用、(5) 同時改定(介護報酬・障害福祉サービス等報酬との同時改定)への対応、の5本柱が打ち出されました。医療事務実務に直接関わるのは、特に(1)賃上げ関連の各種ベースアップ評価料、(4)医療DX推進体制整備加算、および施設基準・算定要件の見直しです(厚生労働省「中央社会保険医療協議会 総会(第584回)資料」等)。
同時改定としては、2024年度は診療報酬・介護報酬・障害福祉サービス等報酬の「トリプル改定」となり、訪問診療・訪問看護を提供するクリニックや、医療・介護を一体運営する法人にとっては、関連する複数報酬の改定を横串で押さえる必要がありました。医療事務担当者は自院の機能(外来のみか、在宅も提供しているか等)に応じて、確認すべき改定範囲を整理することが運用上のスタート地点となります。

2. 主要改定項目(医療DX加算/働き方改革推進加算/賃上げ加算)
2024年度改定で医療事務担当者の業務に大きく関わる新設・見直し項目を整理します。詳細な点数・要件は厚生労働省告示・関係通知をご参照ください。
2-1. 医療DX推進体制整備加算(新設)
医療DX推進体制整備加算は、オンライン資格確認による情報取得・活用、電子処方箋の導入、電子カルテ情報共有サービスへの参画など、医療DXに関する体制を整備した医療機関を評価する新設加算です。初診時を対象に算定し、施設基準として(1)オンライン資格確認の体制整備、(2)マイナ保険証の利用率実績、(3)電子処方箋の導入予定、(4)電子カルテ情報共有サービス(電子カルテ情報共有サービス含む)への対応予定、等の要件が告示で示されています(厚生労働省「医療DX推進体制整備加算に係る施設基準等」関連通知)。
マイナ保険証の利用率については、初回告示後に段階的な引き上げが行われており、医療事務担当者は厚生労働省・社会保険診療報酬支払基金が公表する自院の利用率データを定期的に確認し、加算区分の維持・変更を判断する運用が必要になっています。
2-2. 外来・在宅ベースアップ評価料(新設)
外来・在宅ベースアップ評価料(I)(II)は、医療従事者(医師・歯科医師を除く対象職員)の賃金改善を目的に新設された評価料です。算定対象は外来診療・在宅医療を提供する保険医療機関で、対象職種への賃金改善計画(ベースアップ等の方針)を策定し、施設基準を満たす届出を行うことが要件とされています。算定区分は対象患者・算定回数・算定方式によって細分化されており、医療事務担当者はレセプト摘要欄への記載や算定回数管理に注意が必要です(厚生労働省「ベースアップ評価料に係る施設基準等」)。
運用上のポイントとして、(1)賃金改善計画書の作成・保管、(2)毎年の賃金改善実績報告、(3)対象職員の常勤換算把握、(4)患者への院内掲示等の情報提供、が継続的な事務作業として発生します。算定開始後の管理体制を整えることが、医事課・事務局の重要な役割となります。
2-3. 入院ベースアップ評価料・看護職員処遇改善評価料
入院料を算定する病院では、入院ベースアップ評価料の新設および従来からの看護職員処遇改善評価料の見直しが行われました。看護職員処遇改善評価料は、地域でコロナ医療等を担う一定の保険医療機関に勤務する看護職員等の処遇改善を目的とした評価料で、対象施設・算定要件・区分が定められています(厚生労働省「看護職員処遇改善評価料に係る施設基準等」関連通知)。
医事課では、入院ベースアップ評価料の算定対象患者の特定、レセプト記載の整合性確認、賃金改善計画と実績の整合チェックなど、人事・労務部門と連携した管理業務が発生します。複数の評価料を同時並行で運用する大病院では、専任担当者の配置や運用フロー文書化が実務上の重要課題となっています。
2-4. 医師事務作業補助体制加算等の見直し
医師の働き方改革(2024年4月の医師時間外労働上限規制施行)を支える観点から、医師事務作業補助体制加算の評価が見直されたほか、タスク・シフト/シェアを推進する各種加算の要件整理が行われました。医療事務担当者がメディカルクラーク・医師事務作業補助者として配置される医療機関では、勤務時間管理・補助業務範囲・研修受講記録など、施設基準を満たすための事務管理が重要になります(厚生労働省「医師事務作業補助体制加算に係る施設基準等」)。
2-5. 特定疾患療養管理料等の見直し
特定疾患療養管理料の対象疾患の整理(生活習慣病管理料への移行)など、外来管理関連の評価が再編されました。生活習慣病管理料(I)(II)は、療養計画書の作成・患者署名等の要件があり、医療事務担当者は様式の準備・保管、レセプト記載との整合管理を担当することになります(厚生労働省「令和6年度診療報酬改定における主な改定事項について」)。
外来クリニックでは、特定疾患療養管理料を高頻度で算定していた医療機関が「生活習慣病管理料への移行」「同等性のある別管理料の算定」「算定中止」のいずれかを判断する必要があり、医事課の点数表・カルテ運用の両面に影響が及びました。
3. 医療事務実務への影響(カルテ記載/レセプト要件)
2024年度改定は、新設加算・評価料・管理料の見直しに伴うレセプト記載項目の追加、施設基準コードの更新、カルテ記載要件の厳格化など、医療事務実務に多方面の影響を及ぼしました。
3-1. レセプト摘要欄記載の追加項目
2024年度改定では、新設加算・評価料の算定にあたり、レセプト摘要欄への記載項目が追加・変更されました。例として、外来・在宅ベースアップ評価料では算定根拠となる対象職員配置や届出区分の情報、医療DX推進体制整備加算では届出区分の表示など、各加算ごとに摘要欄記載のルールが告示・通知で示されています。記載漏れ・誤記は返戻・査定の原因となるため、医療事務担当者は厚生労働省「診療報酬請求書等の記載要領」(保医発通知)を都度参照する運用が求められます。
3-2. カルテ記載要件の整理
生活習慣病管理料(I)(II)では、療養計画書を作成し患者の署名(または同意の記録)を取得することが要件とされています。療養計画書は所定の様式に基づき、診療計画・指導内容・検査計画等を記載することが求められ、紙運用・電子カルテ運用いずれにおいても保管管理が必要です。医療事務担当者は、診察前後の様式準備・署名取得サポート・原本管理を担当するケースが多く、運用フローを文書化することが重要です。
3-3. 施設基準届出の管理
新設加算・評価料の算定にあたっては、所定の施設基準を満たし届出書を地方厚生(支)局に提出することが必要です。届出書の様式は厚生労働省ホームページで公開されており、所定様式に従って必要事項を記入し、添付書類とともに提出します。届出には経過措置(一定期間内に届出すれば施行日に遡って算定可とする扱い等)が設けられるケースがあり、医療事務担当者は通知の経過措置条項を確認のうえ、届出期限を管理する必要があります(厚生労働省「保険診療における施設基準等」関連通知)。
3-4. 患者への院内掲示・情報提供
2024年度改定では、患者への情報提供の充実が求められる項目が増えました。ベースアップ評価料の算定や、保険外併用療養費(選定療養)の取扱い、生活習慣病管理料における療養計画書の交付等、患者に対する書面交付・院内掲示の運用整備が必要になります。医療事務担当者は院内掲示物の作成・更新・電子掲示への移行などを担当することが多く、最新通知に即した運用更新が継続的に求められます。
3-5. 改定影響まとめ表
| 影響領域 | 主な変更点 | 医療事務の対応 |
|---|---|---|
| レセプト摘要欄 | 新設加算・評価料の記載項目追加 | 記載要領通知に基づくマスタ・運用更新 |
| カルテ記載 | 生活習慣病管理料等で計画書・署名要件 | 様式準備・保管運用・電子カルテ設定 |
| 施設基準届出 | 新設加算・評価料の届出書提出 | 様式記入・添付書類整備・期限管理 |
| 院内掲示 | ベースアップ評価料等の情報提供義務 | 掲示物作成・定期更新 |
| マイナ保険証関連 | 利用率の段階的引上げ | 利用率把握・加算区分管理 |
| 加算・評価料 | 主な算定要件 | 届出様式 |
|---|---|---|
| 医療DX推進体制整備加算 | オン資・マイナ利用率・電子処方箋等 | 所定様式(厚生局へ届出) |
| 外来・在宅ベースアップ評価料 | 賃金改善計画・実績報告・配置体制 | 所定様式(厚生局へ届出) |
| 入院ベースアップ評価料 | 賃金改善計画・実績報告・対象職員 | 所定様式(厚生局へ届出) |
| 看護職員処遇改善評価料 | 対象施設要件・職員配置・処遇改善 | 所定様式(厚生局へ届出) |
| 生活習慣病管理料(I)(II) | 療養計画書・同意取得・定期見直し | 所定様式(厚生局へ届出) |
5. レセコン設定変更ポイント
2024年度改定では、レセプトコンピューター(レセコン)のマスタ更新・施設基準コード設定・算定パターン設定の更新作業が広範に発生しました。改定対応の進め方は、レセコンの種類(クラウド型・オンプレ型)やベンダーのサポート範囲によって異なります。
5-1. 改定対応プログラムの適用タイミング
クラウド型レセコンの場合、改定対応プログラムはベンダー側で自動配信されるケースが一般的です。オンプレ型の場合は、ベンダー担当者または院内IT担当者がインストール作業を行い、改定施行日(2024年は6月1日)に間に合うように適用する必要があります。改定パッチ適用後は、点数マスタ・コード・施設基準コードが正しく更新されているかを確認することが重要です。
5-2. 施設基準コードの設定
届出済の施設基準(医療DX推進体制整備加算、ベースアップ評価料等)は、レセコンの施設基準コードに登録することで自動算定が可能になります。届出区分の変更(例:ベースアップ評価料の区分変更、マイナ利用率に応じた医療DX加算区分変更)が発生した際は、レセコン側のコード設定も合わせて更新することが必要です。設定漏れがあると算定漏れ・誤算定の原因となります。
5-3. レセプト記載要領への適合確認
新設加算・評価料のレセプト摘要欄記載は、レセコンのテンプレートまたは自動記載機能で対応しているケースが多いですが、ベンダーのアップデート対応状況によっては手入力が必要な期間が発生する可能性があります。社会保険診療報酬支払基金・国民健康保険中央会が公表する「電子レセプト作成の手引き」「レセプト記載要領」を医療事務担当者が確認し、自院レセプトの記載状況とすり合わせる作業が重要です。
5-4. 試行運用とテストレセプトの確認
改定対応プログラム適用後は、改定施行月の本算定開始前に、過去事例または模擬事例を用いてテストレセプトを作成し、点数・摘要欄記載・施設基準コードが正しく反映されているかを確認することが推奨されます。誤算定・記載漏れがあると、後月の請求で返戻・査定が発生し、医療事務の修正作業負担が増大します。
5-5. レセコン更新作業チェック表
| 確認項目 | 確認内容 | 備考 |
|---|---|---|
| 改定パッチ適用 | ベンダー配信プログラムの適用完了 | クラウドは自動、オンプレは要手動 |
| 点数マスタ | 新設加算・評価料の点数登録 | パッチで一括反映が基本 |
| 施設基準コード | 届出区分に応じたコード設定 | 届出変更時は再設定が必要 |
| 摘要欄テンプレート | 新規記載項目の自動出力設定 | ベンダー対応範囲を確認 |
| テストレセプト | <

6. 医療事務スキルアップに必要な学習
診療報酬改定対応は2年ごとに発生する継続的な実務テーマであり、医療事務担当者にとっては学習・キャッチアップが業務スキルの中核を占めます。以下、改定情報の主な情報源と学習機会を整理します。
6-1. 厚生労働省・関係機関の一次情報
改定情報の最も重要な情報源は厚生労働省ホームページの「診療報酬改定」関連ページです。告示・通知(保医発・事務連絡)・疑義解釈資料・施設基準届出様式・「診療報酬改定の概要」資料が無料で公開されており、医療事務担当者は定期的に閲覧する習慣を持つことが推奨されます。また、社会保険診療報酬支払基金・国民健康保険中央会のレセプト記載要領・電子レセプト作成の手引きも算定実務に直結する重要資料です。
6-2. 中央社会保険医療協議会(中医協)資料
中央社会保険医療協議会の総会・分科会資料は、改定の議論経緯・改定方針・個別項目の検討状況を把握する一次情報として有用です。厚生労働省ホームページから過去の資料が公開されており、改定の背景・政策意図を理解することで、個別加算の運用判断がしやすくなります。
6-3. 関係団体・学会の研修・情報誌
日本医師会・日本病院会・全日本病院協会・全国公私病院連盟・日本診療情報管理学会など、医療機関団体・学術団体が改定対応の研修会・情報誌・通達を提供しています。医療事務関連では、医療事務技能審査試験(メディカルクラーク)等の関連団体が改定対応の研修コンテンツを公開するケースがあり、所属医療機関を通じた参加・購読が可能なものもあります。なお、個別の研修費用・参加可否は医療機関の方針・予算によって異なります。
6-4. レセコンベンダー・関連サービスの説明会
レセコンベンダー各社は、改定対応プログラムの配信に合わせて、ユーザー向けの説明会(オンライン/オフライン)を実施することが一般的です。自院のレセコンに即した改定対応の解説が得られるため、医療事務担当者は積極的に参加することが推奨されます。説明会では、改定対応プログラムの操作手順・施設基準コード設定・摘要欄記載の運用方法等が解説されます。
6-5. 自己学習のためのキーワード整理
自己学習を進める際は、以下のキーワードで厚生労働省ホームページ・関係機関サイトを検索する習慣が有用です。「令和6年度診療報酬改定」「医療DX推進体制整備加算」「外来ベースアップ評価料」「在宅ベースアップ評価料」「入院ベースアップ評価料」「看護職員処遇改善評価料」「生活習慣病管理料」「特定疾患療養管理料」「疑義解釈」「保医発」「施設基準届出」「電子レセプト作成の手引き」等。検索結果から告示・通知の原本にあたることで、確実な情報整理が可能になります。
7. 自己解析チェックリスト(10項目)
自院・自医事課の2024年度改定対応状況をその場で点検できる10項目チェックリストです。「該当する」「不明」「該当しない」のいずれかを記録し、不明項目は厚生労働省告示・通知の原本にあたって確認することをおすすめします。
- 1. 改定情報の入手:2024年度診療報酬改定の告示・主要通知・疑義解釈資料を厚生労働省ホームページから入手しているか。
- 2. 改定影響範囲の把握:自院の機能(外来・入院・在宅)に対応する改定項目を一覧化し、対応要否を整理しているか。
- 3. レセコン改定対応:レセコンの改定対応プログラムを適用済で、点数マスタ・施設基準コードが正しく更新されているか。
- 4. 施設基準届出:新規算定する加算・評価料の届出書を地方厚生(支)局に提出済で、控えを保管しているか。
- 5. レセプト記載:新設加算・評価料のレセプト摘要欄記載が記載要領に沿って出力されているか、テストレセプトで確認済か。
- 6. カルテ記載:生活習慣病管理料等で求められる療養計画書の様式準備・運用ルールを文書化しているか。
- 7. ベースアップ評価料運用:賃金改善計画書の作成・実績報告・院内掲示などの継続管理体制が整っているか。
- 8. マイナ保険証関連:マイナ保険証の利用率を定期的に把握し、医療DX加算の区分維持・変更を判断しているか。
- 9. 患者への情報提供:院内掲示・書面交付など、患者への情報提供物を最新通知に基づいて更新しているか。
- 10. 改定後の振り返り:改定施行後3〜6か月時点で、算定実績・返戻査定の傾向を確認し、運用改善に反映しているか。
10項目のうち「該当する」が8項目以上で、改定対応が概ね定着していると判断できる目安となります。5項目以下の場合は、優先度の高い項目(届出・レセコン・レセプト記載)から順に対応を進めることが推奨されます。
8. 改定対応が遅れる医療機関のパターン
改定対応が遅れがち・運用に困難を抱えがちな医療機関には、いくつかの共通パターンがあります。自院の状況と照らして、改善ポイントを整理する参考にしてください。
8-1. 改定情報の収集が個人依存
改定情報の収集・社内展開が特定の医療事務担当者個人に依存しているケースでは、担当者の異動・退職時に情報共有が途切れ、改定対応の遅れや漏れにつながるリスクがあります。情報収集ルート(厚生労働省ページ・ベンダー説明会・関係団体研修)と社内共有方法を文書化し、複数名で情報共有する体制が望まれます。
8-2. 届出書作成・提出期限管理の不備
施設基準の届出書は、所定様式に基づき必要事項を記入のうえ、添付書類とともに地方厚生(支)局に提出する必要があります。届出に経過措置が設けられているケースもあり、期限管理を誤ると算定開始が遅れるリスクがあります。改定告示・通知の公開直後に届出予定一覧を作成し、提出期限を管理表で追跡する運用が有効です。
8-3. レセコン更新と運用テストの分離
改定対応プログラムを適用しただけで、テストレセプトによる動作確認を行わないまま本算定に入ると、施設基準コード設定漏れ・摘要欄記載漏れによる返戻査定が発生する可能性があります。改定パッチ適用後の1〜2週間は、テストレセプトの作成・出力確認を運用フローに組み込むことが推奨されます。
8-4. ベースアップ評価料の運用管理体制不足
ベースアップ評価料は、賃金改善計画書の作成・実績報告・院内掲示等の継続管理が必要な評価料です。算定開始後に管理体制が形骸化すると、実績報告期限の失念・計画と実績の乖離・施設基準不適合のリスクが生じます。人事部門・医事課・事務局の役割分担を文書化し、年間スケジュールに沿って管理する体制が望まれます。
8-5. 改定対応の振り返り不足
改定施行から3〜6か月経過した時点で、算定実績・返戻査定の傾向・運用上の困りごとを振り返り、次回改定(2026年度改定)への準備につなげる運用が、対応力の継続的な底上げに寄与します。振り返りなしでは、次回改定でも同じ問題が再発しやすくなります。
9. よくある質問(FAQ)
- Q1. 2024年度診療報酬改定の施行日はいつですか?
- A. 診療報酬本体は2024年6月1日施行、薬価・材料価格基準は2024年4月1日施行とされました。本体改定が「2か月後ろ倒し」となった点が2024年度改定の運用上の大きな特徴でした。詳細は厚生労働省「令和6年度診療報酬改定の概要」をご参照ください。
- Q2. 医療DX推進体制整備加算の算定要件は何ですか?
- A. オンライン資格確認の体制整備、マイナ保険証による情報取得・活用、電子処方箋導入予定(または導入済)、電子カルテ情報共有サービスへの参画予定、マイナ保険証利用率の実績等が主な要件として告示で示されています。算定区分は複数設定されており、施設の対応状況・利用率に応じた区分での算定となります。最新の要件は厚生労働省告示・通知をご確認ください。
- Q3. 外来・在宅ベースアップ評価料を算定するにはどうすればよいですか?
- A. 賃金改善計画書を作成し、所定様式で地方厚生(支)局に届出を行うことが算定開始の前提となります。算定区分(I・II)に応じた配置要件・体制要件があり、毎年の賃金改善実績報告・院内掲示等の継続管理が必要です。具体的な様式・記入方法は厚生労働省「ベースアップ評価料に係る施設基準等」関連通知をご確認ください。
- Q4. 特定疾患療養管理料はどう変わりましたか?
- A. 2024年度改定では、対象疾患のうち脂質異常症・高血圧症・糖尿病が特定疾患療養管理料の対象から外れ、生活習慣病管理料(I)(II)への移行が想定される形に整理されました。外来クリニックでは、従前算定していた対象疾患の取り扱いを「生活習慣病管理料への移行」「同等性のある別管理料の算定」「算定中止」のいずれかで判断する必要があります。詳細は厚生労働省「令和6年度診療報酬改定における主な改定事項について」をご参照ください。
- Q5. レセコンの改定対応プログラムが間に合わなかった場合はどうすればよいですか?
- A. クラウド型・オンプレ型のいずれも、ベンダーは原則として改定施行日に合わせて対応プログラムを提供します。万一遅延がある場合は、ベンダーのサポート窓口に連絡し、代替対応(手動算定・暫定マスタでの対応等)について確認することが必要です。改定パッチ適用後はテストレセプトでの動作確認を行い、本算定の精度を担保することが運用上重要です。
- Q6. 改定対応の研修はどこで受けられますか?
- A. 厚生労働省ホームページの告示・通知・疑義解釈資料は無料で公開されています。レセコンベンダー各社の改定説明会(ユーザー向け)、医療機関団体・学術団体の研修、医療事務関連団体の研修等が利用可能なケースがあります。所属医療機関の方針・予算によって受講可能な研修は異なるため、勤務先での参加申請をご検討ください。
- Q7. 改定対応で算定漏れ・返戻が発生した場合の対処は?
- A. 返戻レセプトは、返戻理由を確認のうえ、レセプト記載・施設基準コード・摘要欄記載を見直して再請求します。算定漏れに気づいた場合は、所定の手続きで再請求が可能なケースがあります。具体的な対応は社会保険診療報酬支払基金・国民健康保険中央会の取扱いに従い、施設として誤算定パターンを記録・共有することで再発防止につなげる運用が望まれます。
- Q8. 次回改定(2026年度改定)に向けて何を準備すればよいですか?
- A. 2024年度改定の対応で得られた知見(届出運用・レセコン更新手順・テストレセプト確認手順・ベースアップ評価料管理体制等)を文書化し、改定対応マニュアルとして整備しておくことが推奨されます。中医協の議論動向を継続的にフォローし、議論の方向性を社内共有することも、次回改定対応のスタートを早める一助となります。
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10. 出典・参考資料
- 厚生労働省「令和6年度診療報酬改定について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00037.html (取得日:2026-05-24)
- 厚生労働省「令和6年度診療報酬改定の概要」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_38913.html (取得日:2026-05-24)
- 厚生労働省「中央社会保険医療協議会(中医協)」 https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-chuo_128154.html (取得日:2026-05-24)
- 厚生労働省「診療報酬の算定方法(告示)」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000196352.html (取得日:2026-05-24)
- 厚生労働省「特掲診療料の施設基準等」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000077198.html (取得日:2026-05-24)
- 厚生労働省「保険診療における施設基準等」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/iryouhoken15/index.html (取得日:2026-05-24)
- 厚生労働省「医療DXの推進について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/iryoudx.html (取得日:2026-05-24)
- 社会保険診療報酬支払基金「審査関連情報」 https://www.ssk.or.jp/ (取得日:2026-05-24)
- 国民健康保険中央会「審査支払業務」 https://www.kokuho.or.jp/ (取得日:2026-05-24)
【免責事項】本記事は厚生労働省告示・通知等の公開情報を整理することを目的としており、特定の算定可否・施設基準該当性を保証するものではありません。診療報酬改定の運用は告示・通知・疑義解釈の改訂や個別事案により変動するため、個別判断は地方厚生(支)局・社会保険診療報酬支払基金・国民健康保険中央会・社会保険労務士等の専門家にご相談ください。本記事の情報利用によって生じた損害について、mitoru編集部は責任を負いません。
最終更新日:2026年5月24日|編集方針
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mitoru編集部の見解
レセコン選定は、施設基準算定・診療報酬改定への追従速度・返戻率の3軸で評価するのが実務的です。価格だけで決めると改定対応の遅延・施設基準算定漏れにより、相応の規模の機会損失につながるケースがあります。
