クリニックの紹介状・診療情報提供書 完全ガイド【2026年版・書き方/診療情報提供料/電子紹介状】

📅公開日:2026-08-24
本記事は公開情報を整理した内容です。掲載情報は2026年8月時点の公開資料に基づき作成しています。最新情報は各公式発表をご確認ください。

※本記事には広告(PR)が含まれます。mitoru編集部は公開情報を整理して比較・解説しており、表示順位や評価は広告主からの依頼ではなく編集部の独自判断によります。

クリニックが日常的に作成する「紹介状」(診療情報提供書)は、患者を病院や他院に橋渡しする書類であると同時に、診療報酬上は「診療情報提供料」として算定される請求項目でもあります。2026年時点では、紙運用に加えて電子紹介状・HL7 FHIRベースの標準規格・全国医療情報プラットフォームなど、地域医療連携を電子化する取り組みが厚生労働省主導で進んでおり、開業医の紹介状業務は「書式・算定・電子化・セキュリティ」の四つを同時にアップデートする局面にあります。本ガイドは、内科・整形・小児・精神など幅広い一般開業医の院長・事務長に向けて、紹介状の位置づけ・算定要件・書き方・電子紹介状の潮流・セキュリティ設計の論点を、公開情報を整理した内容としてまとめています。

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本記事では、特定患者に対する診断・治療方針の助言、特定電子紹介状ベンダーの推奨、算定可否の個別判断は扱いません。診療報酬の解釈に疑義がある場合は地方厚生(支)局への疑義照会が基本ルートとなり、個人情報の取扱いに関する個別判断は個人情報保護委員会や弁護士への相談が推奨されます。

紹介状(診療情報提供書)の位置づけと法的根拠

紹介状は正式には「診療情報提供書」と呼ばれる、医師が他の医療機関の医師や介護保険施設等に対して患者の診療情報を提供する書面です。医療法第1条の4第3項では、医療提供施設相互間の機能分担と業務連携が求められており、紹介・逆紹介を通じて患者を適切な機能の医療機関へ導く責務が制度的に整理されています。医師法第22条は処方箋交付義務を定める条文ですが、診療情報提供の書式そのものは通知・診療報酬告示レベルで規定されており、厚生労働省が示す「診療情報提供書」の様式が広く参照されています。

紹介状の役割は大きく三つに整理されます。第一に、専門的検査・治療が必要な患者を高次医療機関へ引き継ぐ「上りの連携」、第二に、急性期治療を終えた患者をかかりつけ医へ戻す「下りの連携(逆紹介)」、第三に、介護保険施設・在宅医療・訪問看護ステーション等の非医療系連携先へ情報提供する「横の連携」です。紹介状の質は転院先での初期対応の速度と精度に直結するため、記載内容の網羅性・可読性・タイムリーな交付が実務上の重要指標となります。

診療情報提供料の算定要件(I・II)

紹介状の作成に対しては、診療報酬上「診療情報提供料(I)」「診療情報提供料(II)」が算定対象として整理されています。診療情報提供料(I)は、他の保険医療機関等での診療の必要を認め、患者の同意を得て、紹介先医療機関等に対して患者を紹介した場合に算定できるもので、1患者につき月1回が基本枠組みとなります。紹介先は、他の保険医療機関、介護老人保健施設、介護医療院、市町村や介護支援専門員、指定居宅介護支援事業者、指定特定相談支援事業者等が対象として告示に整理されており、加算として退院時診療情報添付加算・検査・画像情報提供加算等が別途整理されています。詳細な点数・要件は最新の診療報酬点数表告示(厚生労働省)を参照する必要があります。

診療情報提供料(II)は、患者が別の医療機関でセカンドオピニオンを求める際に、当該他医療機関に対して患者に関する診療状況を示す文書を提供した場合に算定されるもので、患者本人からの申出に基づく点が(I)と異なります。両者を混同して重複算定するとレセプト返戻の原因になるため、算定台帳での区分管理と、依頼元・依頼理由・患者同意の記録が実務上の運用ポイントとなります。加算の要件は年度ごとの改定で見直されるため、算定コードは電子カルテのマスタ更新をベンダーに確認しつつ運用します。

紹介状の書き方——基本構成と記載項目

厚生労働省が示す診療情報提供書の様式に基づく標準的な記載項目は、以下のように整理されます。院内テンプレートを様式に沿って作り込んでおくと、記載漏れや形式不備によるレセプト返戻を減らせます。

ブロック記載項目実務上のポイント
宛先紹介先医療機関名・診療科・担当医名担当医が特定できる場合は個人名を記載
患者情報氏名・生年月日・性別・住所・保険情報電子カルテのマスタから自動連携が望ましい
紹介目的精査依頼・治療依頼・逆紹介・意見依頼目的を冒頭で明示すると紹介先の初期対応が早い
主訴・現病歴受診経緯・症状経過・発症時期時系列を意識して記載
既往歴・家族歴手術歴・慢性疾患・アレルギー薬剤アレルギーは特に明確に記載
現在の処方薬剤名・用量・用法・開始時期お薬手帳・電子処方箋との整合を確認
検査結果血液・画像・生理検査の要点詳細データは別紙添付とし要点のみ本文へ
治療経過診断名・治療内容・反応ICD-10コード・KコードやJコードの併記推奨
依頼事項希望する検査・治療・意見紹介先の裁量を尊重する表現に留める
作成情報作成日・作成医師名・医療機関名・連絡先疑義照会先の電話・FAX番号を明記

個人情報保護法および厚生労働省「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」の観点では、紹介状の交付にあたって患者本人からの同意取得が原則です。診療目的での医療機関間連携は院内掲示等での包括的同意で足りるとされる場面が多いものの、機微情報(HIV感染症・精神疾患・遺伝情報等)を含む場合は個別説明と同意記録の整備が推奨されます。

電子紹介状の潮流——HL7 FHIRと全国医療情報プラットフォーム

2020年代後半に入り、紹介状の運用は紙・FAXから電子データ交換への移行が本格化しています。厚生労働省が推進する「医療DX令和ビジョン2030」および全国医療情報プラットフォーム構想では、電子処方箋・電子カルテ情報共有サービス・オンライン資格確認等システムを軸に、医療機関間の診療情報交換を標準化する方針が示されています。電子的な情報連携の共通規格として、国際標準のHL7 FHIR(Fast Healthcare Interoperability Resources)が採用され、電子カルテ情報共有サービスの3文書6情報(診療情報提供書・退院時サマリー・健診結果、傷病名・アレルギー・感染症・薬剤禁忌・検査・処方)が第一段階の共有対象として整理されています。

電子紹介状の導入形態は、(1)オンライン資格確認等システムの延長で提供される国主導のプラットフォームを利用する方式、(2)地域医療連携ネットワーク(EHR)に参加してVPN経由で相互参照する方式、(3)電子カルテベンダーが提供する紹介状クラウド機能を利用する方式、の三つに整理できます。いずれも導入前に電子カルテベンダーへの対応可否確認と、通信環境(IP-VPN・閉域網・IPsec等)の整備、院内オペレーションの見直しが前提条件となります。導入費用・月額費用・回線費用の内訳と、紙運用との併存期間の想定は、費用対効果を評価する上で欠かせない検討項目です。

セキュリティ設計——医療情報安全管理ガイドライン第6.0版

紹介状は患者の氏名・生年月日・診断名・治療内容・処方内容を含む機微性の高い情報のため、電子的な交換に際しては厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第6.0版」(2023年)に沿った安全管理措置が求められます。同ガイドラインは、経営管理編・企画管理編・システム運用編の三部構成で整理されており、電子紹介状の運用は「外部と個人情報を交換する場合の取扱い」「アクセス制御」「監査ログの取得と保管」「バックアップと事業継続」等の各項目に照らして自院の運用ルールを設計します。

実務上の重要ポイントは五つに整理できます。第一に、紹介状のPDFや文書ファイルをメール添付する運用は原則避け、専用のセキュアな連携基盤を利用すること。第二に、USBメモリ等の可搬媒体で持ち出す場合は暗号化と持出台帳での管理を徹底すること。第三に、FAX送信を継続する場合は誤送信防止のダブルチェックと送信先電話番号の登録運用を維持すること。第四に、電子カルテ・院内サーバへのアクセス権限を職種別に最小権限で設計し、監査ログを保管すること。第五に、事故発生時の患者説明・行政報告・院内是正のフローをあらかじめ文書化しておくことです。

地域医療連携ネットワークとの接続——実務上の論点

地域医療連携ネットワーク(EHR)は、都道府県や医師会・大学病院を核として運営される地域単位の医療情報共有基盤で、参加医療機関の同意した患者について、検査結果・処方・画像・退院時サマリー等を相互参照できる仕組みです。参加には運営主体との利用規約締結・患者への説明と同意取得・院内ネットワーク改修等が必要になります。導入費用と月額運用費が発生するため、参加による紹介・逆紹介の効率化効果と費用のバランスを試算した上で意思決定するのが実務上の運用です。

また、電子紹介状と紙紹介状は当面併存する見込みであり、紹介先の医療機関が電子受信環境を整えていない場合は従来通り紙で発行する運用となります。院内フローでは「電子で送るケース」「紙で発行するケース」「PDFで印刷して手渡すケース」の三パターンを想定し、算定コードの取り違えや二重発行が発生しないよう運用マニュアルに落とし込むのが実務上の設計となります。

よくある質問

Q1. 紹介状を作成する際、患者の同意は毎回書面で取得する必要がありますか?
A. 医療機関間で診療目的の情報連携を行う場合、院内掲示等での包括的同意で対応する運用が一般的とされています。ただし機微情報(HIV感染症・精神疾患・遺伝情報等)を含む場合や、患者本人から個別の求めがある場合は、個別説明と同意記録の整備が推奨されます。詳細は個人情報保護委員会・厚生労働省「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」を参照してください。
Q2. 診療情報提供料(I)と(II)はどう使い分けますか?
A. (I)は医師の判断で他医療機関等に紹介する場合、(II)は患者自身がセカンドオピニオンを求める場合が基本区分です。算定要件・対象紹介先の範囲・添付書類要件が異なり、混同して重複算定するとレセプト返戻の原因となります。院内では算定台帳を分けて管理し、レセコン・電子カルテのマスタ設定でも別コードで運用するのが実務上の運用です。
Q3. 電子紹介状の導入費用はどれくらいですか?
A. 導入形態・接続先・電子カルテベンダーによって幅があるため一概には言えません。国のプラットフォーム利用は比較的低コストで導入できる一方、地域EHR参加はネットワーク改修と月額運用費が発生します。電子カルテベンダー独自のクラウド紹介状機能は月額数千円〜数万円が中心帯とされることがありますが、実際のコストは複数ベンダーからの見積もり取得と、既存カルテとの連携可否確認のうえで判断してください。
Q4. FAXでの紹介状送信はいつまで許容されますか?
A. 2026年時点でFAXは実務上広く使われており、直ちに廃止となる制度改正の予定は示されていません。ただし全国医療情報プラットフォームの整備が進むにつれて、電子的な情報連携の比重が高まる方向性が厚生労働省から示されています。当面はFAXと電子の併用が現実解であり、誤送信防止のダブルチェック運用は継続が推奨されます。
Q5. 紹介状の保存期間はどう扱えばよいですか?
A. 診療録および診療に関する諸記録は、医師法・医療法により所定の保存期間(診療録は5年)が定められています。紹介状の控えは診療録の一部として扱う運用が一般的で、電子カルテ内での保存が実務上の運用となります。電子的に保存する場合の要件は厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」に整理されており、真正性・見読性・保存性の三基準への対応が求められます。

次のステップ

  • Step 1:自院の紹介状フォーマットが厚生労働省が示す診療情報提供書の様式項目を網羅しているか点検する
  • Step 2:診療情報提供料(I)(II)および加算の算定台帳と、レセコン・電子カルテのマスタ設定を最新の告示に照らして確認する
  • Step 3:現在使用中の電子カルテベンダーに「電子紹介状・電子カルテ情報共有サービスへの対応状況」を問い合わせる
  • Step 4:地域の医師会・地域医療連携ネットワークの参加要件を確認し、費用対効果を試算する
  • Step 5:厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第6.0版」に沿って院内セキュリティ運用ルールを見直す

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出典・参考資料(取得日:2026-08-24)

  • 厚生労働省「医療DXの推進について」https://www.mhlw.go.jp/stf/iryoudx_00001.html
  • 厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第6.0版」(2023年)https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/0000516275.html
  • 厚生労働省「電子処方箋」https://www.mhlw.go.jp/stf/denshishohousen.html
  • 厚生労働省「診療報酬情報提供サービス」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/iryouhoken15/index.html
  • 個人情報保護委員会・厚生労働省「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/guidelines_iryou/
  • 総務省・経済産業省「医療情報を取り扱う情報システム・サービスの提供事業者における安全管理ガイドライン」https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/d_syohi/iryouj_anzenkanri.html
  • e-Gov 医療法(昭和23年法律第205号)https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=323AC0000000205
  • e-Gov 医師法(昭和23年法律第201号)https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=323AC0000000201

最終更新日:2026年8月24日|編集方針

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mitoru編集部の見解

電子カルテは導入後10〜15年使い続けるシステムです。mitoru編集部は、ベンダーの財務安定性・サポート体制・診療報酬改定への追従速度を、機能比較と同等以上に重視することを推奨します。一度導入すると移行コストが大きいため、契約前のデモ環境利用と他院ヒアリングが現実的な評価軸となります。

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