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本記事は、厚生労働省・地方厚生局・中央社会保険医療協議会(中医協)・各市町村が公開している在宅医療・介護連携推進事業および在宅医療連携拠点に関する公開情報を整理した内容です。特定の自治体・医師会・事業者の運営方針を保証するものではなく、また個別の医療行為や診療上の判断を助言するものでもありません。制度の運用は市町村・都道府県・医師会ごとに差異があるため、最終的な意思決定の際は所管自治体・地方厚生局の最新通知をご確認ください。
1. 在宅医療連携拠点とは — 制度の全体像と位置づけ
「在宅医療連携拠点」は、2012〜2014年度の在宅医療連携拠点事業(厚生労働省モデル事業)を起点に、2015年度以降は介護保険法に基づく 在宅医療・介護連携推進事業(地域支援事業の包括的支援事業) として、市町村が主体となって取り組む枠組みに発展した仕組みです。財源は地域医療介護総合確保基金および介護保険の地域支援事業交付金が中心で、市町村は郡市区医師会等への委託や直営など、地域の実情に応じた形態で実施しています。
2024年(令和6年)介護報酬・診療報酬同時改定では、在宅医療の体制整備が一層強調され、医療と介護の切れ目ない連携、ICTを活用した情報共有、入退院支援・看取り対応の強化が政策上の重点に据えられました。2026年度は介護報酬の中間年度に当たり、第9期介護保険事業計画の進捗を踏まえた運用見直しが各自治体で進む見込みです。
制度の根拠と関係法令
- 介護保険法 第115条の45(地域支援事業 包括的支援事業)— 在宅医療・介護連携推進事業の法的根拠
- 医療介護総合確保推進法(2014年)— 地域医療介護総合確保基金の創設
- 医療法 第30条の4(医療計画)— 在宅医療体制の都道府県計画への位置づけ
- 診療報酬上の在宅療養支援診療所・在宅療養支援病院の届出基準
出典: 厚生労働省「在宅医療・介護連携推進事業の手引き」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000061944.html
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2. 在宅医療・介護連携推進事業の「8事業」
厚生労働省が示す在宅医療・介護連携推進事業のガイドラインでは、市町村が取り組むべき事業が 8つの事業(ア〜ク) として整理されています。2020年度以降、運用上はPDCAサイクルでの実効性が重視され、形式的な実施ではなく地域課題の抽出と改善活動の循環が問われています。
| 記号 | 事業名 | 主な内容 |
|---|---|---|
| ア | 地域の医療・介護の資源の把握 | 診療所・病院・訪問看護ST・居宅介護支援事業所等のリスト化・マップ化 |
| イ | 在宅医療・介護連携の課題の抽出と対応策の検討 | 多職種会議で地域課題を可視化しPDCAを回す |
| ウ | 切れ目のない在宅医療と介護の提供体制の構築推進 | 入退院支援・日常療養・急変時・看取りの4場面の体制整備 |
| エ | 医療・介護関係者の情報共有の支援 | 共通シート・ICTツール(MCS等)導入支援 |
| オ | 在宅医療・介護連携に関する相談支援 | 連携拠点における専従・専任の相談員配置 |
| カ | 医療・介護関係者の研修 | 合同研修・事例検討会・多職種研修 |
| キ | 地域住民への普及啓発 | 市民公開講座・パンフレット・ACP啓発 |
| ク | 在宅医療・介護連携に関する関係市区町村の連携 | 圏域単位・二次医療圏単位での広域連携 |
これら8事業のうち 「オ:相談支援」 の窓口を担う組織が、いわゆる「在宅医療連携拠点」と呼ばれることが多く、医師会内の事務局・地域包括支援センター内併設・行政直営など、形態は地域差があります。
出典: 厚生労働省 介護保険最新情報(在宅医療・介護連携推進事業に関する事務連絡)https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/chiiki-houkatsu/index.html
3. 自治体・医師会の役割分担
在宅医療連携拠点の運営は、市町村(保険者)と郡市区医師会との 役割分担と委託契約 のうえに成り立ちます。市町村が直営する例もありますが、医療職の知見が必要な相談支援・多職種研修については、医師会への業務委託が一般的です。
典型的な役割分担
- 市町村(介護保険担当課・高齢福祉課): 事業計画策定・予算管理・包括的支援事業の総合調整・地域包括支援センターとの連動
- 郡市区医師会: 在宅医療連携拠点の運営受託・多職種研修の企画運営・かかりつけ医への情報還元・ICTツール導入支援
- 地域包括支援センター: 介護側の入口・困難ケースの拠点への接続
- 都道府県・地方厚生局: 在宅医療体制整備の医療計画上の位置づけ・基金配分・診療報酬の運用通知
委託契約においては、相談員(看護師・社会福祉士等)の人件費、研修事業費、ICTツール導入経費、調査・分析委託費などが対象となります。基金の配分や交付金の使途は都道府県の地域医療介護総合確保基金実施計画で示されるため、自治体担当者は当該計画と整合した予算編成が必要です。
出典: 厚生労働省「地域医療介護総合確保基金」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000061712.html
4. 多職種連携とICTツール — MCS等の運用例
多職種連携の実効性を高めるため、多くの地域で 非同期型コミュニケーションツール が活用されています。代表例として MedicalCare STATION(MCS)・バイタルリンク・Net4U などが各地で導入されており、医師・訪問看護師・ケアマネジャー・薬剤師・歯科衛生士・リハ専門職等が患者単位のグループで情報共有を行います。
ICT導入で押さえるべき設計ポイント
- 個人情報保護: 改正個人情報保護法・医療情報システムの安全管理に関するガイドライン(厚労省)への準拠
- 本人同意の取得: グループ作成時に患者・家族から書面で同意取得するフローを標準化
- 利用ルール: 投稿頻度・写真送信可否・退院時のグループクローズ手順
- 運用ガバナンス: 連携拠点が利用規約・FAQ・初期研修を整備し、新規参加事業所への伴走支援
- ID管理: 退職者・事業所変更時のID削除フロー
ツール選定そのものよりも、「誰が・どの場面で・どの粒度で投稿するか」のローカルルール整備が活用度を分けます。連携拠点が地域標準のテンプレート(入退院サマリ・看取りカンファ記録など)を提示することで、各事業所の負担を均一化できます。
出典: 厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/0000516275.html
5. 在宅療養支援診療所・訪問看護STとの連携
在宅医療提供体制の中核は 在宅療養支援診療所(在支診)・在宅療養支援病院(在支病)・訪問看護ステーション です。連携拠点はこれらをマップ化し、空白地域・夜間休日対応力・看取り対応実績などを可視化することで、適切なケース紹介と参入促進の双方を支援します。
在支診・機能強化型在支診の届出区分
- 在宅療養支援診療所: 24時間連絡体制・往診体制・訪問看護体制の確保が要件
- 機能強化型 在支診(単独型): 常勤医師3名以上、過去1年の緊急往診10件以上・看取り4件以上等の追加要件
- 機能強化型 在支診(連携型): 複数医療機関での連携体制で実績要件を満たす
診療報酬上の届出区分は地方厚生局への届出により認められます。詳細な要件・実績件数は告示・通知ごとに改定されるため、最新の点数表・通知をご確認ください。
出典: 厚生労働省 中央社会保険医療協議会 在宅医療関連資料https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-chuo_128154.html
訪問看護ステーションとの接続
訪問看護STは 医療保険・介護保険の双方から訪問看護を提供します。在宅医療連携拠点は、医師の指示書発行フロー、特別訪問看護指示書の運用、ターミナル期の頻回訪問体制、24時間対応体制加算の運用状況などを把握し、地域内の人員配置の偏りや空白を見える化する役割を担います。
6. 看取り・入退院支援との接続
連携拠点が機能評価を受ける典型的な場面は 「入退院支援」と「看取り」 の2局面です。いずれも医療・介護をまたぐ手続きとコミュニケーションが多く、運営の質が患者・家族の満足度に直結します。
入退院支援のポイント
- 入院時の情報共有シート(介護→病院)を地域標準で運用
- 退院前カンファレンスへのケアマネジャー・訪問看護師の参加促進
- 退院支援加算・入退院支援加算の届出医療機関リストの整備
- 退院当日の在宅サービス導入を可能にする緊急時連絡体制
看取り対応の体制づくり
- ACP(人生会議)の普及啓発と研修の地域開催
- 夜間休日の死亡確認体制・在宅看取りプロトコル整備
- 多職種カンファレンス(事前・事後)の標準化
- 家族支援・グリーフケアの窓口情報整備
厚生労働省「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」は2018年改訂版が現行版で、ACPの考え方の地域実装が連携拠点に期待されています。
出典: 厚生労働省「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000197665.html
7. 立ち上げから運営までの実務フロー
在宅医療連携拠点を新たに立ち上げる、もしくは既存事業をリブートする際の実務フローを、市町村と医師会の協働を前提に整理します。
フェーズ1: 現状把握と課題抽出
- 地域内の医療・介護資源リスト化(事業ア)
- 多職種ヒアリング・アンケートで課題抽出(事業イ)
- 人口動態・要介護認定率・在宅死亡率等の基礎統計の整理
フェーズ2: 体制構築
- 運営協議会の設置(行政・医師会・歯科医師会・薬剤師会・看護協会・介護関係者)
- 相談窓口の設計(場所・人員・受付時間・記録様式)
- 委託契約の締結・予算化
フェーズ3: 運用開始
- 地域ルール・標準シートの公表
- 多職種研修・事例検討会の定例化
- 住民啓発(公開講座・パンフレット)
フェーズ4: 評価と改善
- 年次評価指標の設定(相談件数・研修参加者・ICT登録事業所数等)
- 運営協議会での年次レビュー
- 都道府県・国への報告
8. 2024年改定の論点と2026年改定の見込み
2024年度(令和6年度)の診療報酬・介護報酬同時改定では、在宅医療・在宅介護に関連する以下の方向性が示されました。
- 在宅療養支援診療所の機能分化(往診頻度・看取り実績による評価)
- 訪問看護における専門性の評価(精神科訪問看護・専門管理加算等)
- ICT活用による多職種カンファレンス・退院時共同指導の評価
- 在宅医療と介護の連携加算の整理
- 協力医療機関を定めることが介護施設に求められる流れ
2026年度は介護報酬の中間年度に当たり、第9期介護保険事業計画(2024〜2026年度)の最終年度として、地域包括ケアシステムの深化・推進が引き続き重点となる見込みです。次期改定(2027年度予定の介護報酬改定・2026年度の診療報酬改定)に向けて、中医協・社会保障審議会介護給付費分科会での議論を継続して確認することが推奨されます。
出典: 中央社会保険医療協議会(中医協)資料https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-chuo_128154.html / 社会保障審議会 介護給付費分科会https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-hosho_126706.html
9. よくある質問(FAQ)
- Q1. 在宅医療連携拠点の設置は市町村に義務付けられていますか?
- A. 介護保険法第115条の45に基づく在宅医療・介護連携推進事業は、市町村が実施する包括的支援事業として位置づけられています。事業の8項目(ア〜ク)は全市町村が取り組むべき内容として整理されており、相談支援機能を担う窓口(いわゆる連携拠点)の設置形態は地域に委ねられています。
- Q2. 連携拠点の運営費の財源は何ですか?
- A. 主な財源は介護保険の地域支援事業交付金(国・都道府県・市町村・1号保険料・2号保険料)です。研修・ICT導入・体制整備費の一部は地域医療介護総合確保基金の対象となる場合があります。詳細は所管自治体・都道府県の基金実施計画を確認してください。
- Q3. 医師会が運営受託する場合のメリット・課題は?
- A. 医療職のネットワークを活かせる点、かかりつけ医への情報還元が早い点が利点として挙げられます。一方、介護側との接続・行政との調整に関しては地域包括支援センターや行政担当課との連動設計が必要となります。委託契約の役割分担を明文化することが重要です。
- Q4. ICTツールは特定の製品が指定されていますか?
- A. 国が特定の製品を指定する仕組みはありません。各地域がコスト・機能・運用負荷を比較して選定しています。選定にあたっては医療情報システムの安全管理に関するガイドライン(厚労省)への準拠と、退職者・事業所変更時のID管理運用が確認ポイントです。
- Q5. クリニック側はどう連携拠点と関われますか?
- A. 在宅医療への参入を検討するクリニックは、所管市町村の在宅医療・介護連携推進事業の窓口(連携拠点)に相談することで、地域の研修・多職種会議・ICTグループへの参加機会を案内されることが一般的です。在支診の届出要件についても、地方厚生局・郡市区医師会から最新の情報を得ることが推奨されます。
10. 関連情報・次のステップ
本記事と関連する mitoru の解説記事もあわせてご参照ください。地域包括ケア・介護施設運営・クリニック開業に関連する制度情報を、公開情報ベースで整理しています。
- 地域包括支援センターの役割と運営の基礎
- 訪問看護ステーション開設・運営の論点整理
- クリニック開業ロードマップ — 在宅医療参入の検討フロー
※本記事は厚生労働省・地方厚生局・中医協・各自治体の公開情報を整理した内容です。制度の運用は地域・改定時期により異なります。最新情報は所管自治体・地方厚生局・厚生労働省の公表資料をご確認ください。誤りに気づかれた方は、編集部までご連絡いただければ確認のうえ訂正いたします。
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