※本記事には広告(PR)が含まれます。mitoru編集部は公開情報を整理して比較・解説しており、表示順位や評価は広告主からの依頼ではなく編集部の独自判断によります。
「開院にあたってナースステーションをどのくらいの広さで設計すればよいかわからない」「電子カルテのモニターをカウンターのどこに置けば患者情報が見えずに済むか」「採血の準備スペースと検体の一時保管場所をどう分ければよいか」――クリニックの新規開業・改装を検討する院長・事務長・設計担当者から繰り返し聞かれる悩みです。ナースステーションは看護師の作業拠点であると同時に、電子カルテ・薬剤・検体といった重要な情報や物品が集まる場所であり、患者からの見え方(プライバシー)、緊急時の動線、スタッフ教育の受け皿としての機能まで、多面的な検討が求められます。本記事は、ナースステーションの基本機能、オープン型とクローズド型の比較、カウンター高さ・電子カルテモニター配置、薬剤保管棚・採血準備エリア・検体一時保管の設計、患者情報のプライバシー確保、看護師動線とリストバンド発券機・呼出しシステム、緊急コード対応、家族対応スペース・新人ナース教育スペースまでを、厚生労働省などの公開情報とあわせて2026年版として整理したガイドです。
個別のクリニックの設計図面の是非、施工業者の選定、法令適合性の最終判断は、本記事の範囲外です。掲載する設計の考え方は公開情報を編集部で整理したものであり、最新の法令・通知は厚生労働省等の公式発表で確認し、実際の設計は建築士・医療専門の設計事務所・保健所等の専門家にご相談ください。
ナースステーションに求められる機能とクリニック設計における役割
ナースステーションは、外来クリニックにおいて看護師が診療の補助・患者対応・記録業務を行う拠点であり、単なる「看護師の机」ではなく、情報管理・準備作業・患者の見守りという複数の機能を同時に満たす設計が求められる場所です。診察室・処置室・待合室のいずれからも一定の距離でアクセスでき、かつ電子カルテや医薬品といった管理対象物を適切に保管できる位置に配置することが、クリニックのレイアウト設計における基本的な考え方です。開業前の設計段階でナースステーションの機能を明確にしておくことで、後から「動線が悪い」「収納が足りない」といった手戻りを避けやすくなります。
ナースステーションが担う3つの機能(情報管理・準備作業・見守り)
ナースステーションの機能は、大きく(1)電子カルテ入力・伝達事項の共有といった情報管理機能、(2)採血・注射・処置の準備を行う準備作業機能、(3)待合室・診察室の動きを把握し急変時に早期対応する見守り機能の3つに整理できます。この3つの機能をひとつのカウンターに集約しすぎると、情報入力中のスタッフが準備作業や見守りに手が回らなくなるため、面積に余裕がある場合は機能ごとに作業スペースをゆるやかに区分するレイアウトが実務上有効です。
オープン型とクローズド型の比較と選び方

ナースステーションの設計は、待合室・廊下からカウンター越しに内部が見える「オープン型」と、壁やパーティションで区切り外部から内部が見えにくい「クローズド型」に大別されます。どちらを選ぶかは、クリニックの診療科・患者層・スタッフ数・建物の間取りによって最適な形が異なるため、両者のメリット・デメリットを踏まえたうえで検討する必要があります。
オープン型のメリット・デメリット
オープン型は、受付・待合室からナースステーションの様子が見えるため、患者が声をかけやすく、スタッフも待合室の状況を把握しやすいという利点があります。一方で、電子カルテのモニターや会話の内容が患者から見え聞こえやすくなるため、プライバシーへの配慮を別途設計に組み込む必要があります。
クローズド型のメリット・デメリット
クローズド型は、内部が外部から見えにくいため、患者情報や医薬品の管理面では有利に働きますが、スタッフが待合室の様子を目視で把握しにくくなる分、呼出しシステムなど別の手段で状況を把握する工夫が求められます。また、閉鎖感がクリニック全体の雰囲気に影響する場合もあるため、窓やガラスパーティションを部分的に採用し、開放感とプライバシーを両立させる設計例もあります。
| 比較項目 | オープン型 | クローズド型 |
|---|---|---|
| 患者との距離感 | 近く声をかけやすい | やや距離を感じやすい |
| プライバシー管理 | 別途対策が必要 | 比較的確保しやすい |
| 待合室の見守り | 目視で把握しやすい | 呼出しシステム等の補助が有効 |
| 開放感 | 出やすい | 窓・ガラス面で調整可能 |
カウンター高さ・電子カルテモニター配置などレイアウト設計の基本
カウンター高さと作業動線の考え方
ナースステーションのカウンターは、立ち作業を前提とする高さ(目安として床から100cm前後)と、座って電子カルテ入力を行う高さ(目安として70cm前後)のいずれを主とするかで、作業のしやすさが大きく変わります。立ち作業中心のクリニックでは高めのカウンターに簡易的な記録台を設ける設計が採られる一方、長時間の入力作業が多い場合は座位を基本としたデスク形状を組み合わせる設計も見られます。カウンターの高さや形状に唯一の正解があるわけではなく、スタッフの体格や業務の中心が「立ち仕事」か「入力作業」かによって、開業前に現場の意見を集めて決めていく進め方が実務上有効です。
電子カルテ・モニター配置とIT機器レイアウト
電子カルテのモニターは、入力効率と患者情報の非表示(のぞき見防止)の両立が課題になります。カウンターの背面側にモニターを設置すると、待合室側からの視線を遮りやすい一方、スタッフの視線が待合室から外れやすくなるため、モニターの角度やのぞき見防止フィルタの併用、離席時の自動画面ロックの設定などをあわせて検討する必要があります。医療情報システムの安全管理に関するガイドラインでは、画面ロック・アクセス制御といった技術的安全管理措置が示されており、物理的な配置設計と組み合わせて運用することが望ましいとされています(厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン第6.0版」)。
薬剤保管棚・採血準備エリア・検体一時保管スペースの設計
薬剤保管棚の設計ポイント(施錠・毒薬劇薬区分・麻薬管理)
院内で医薬品を保管する棚は、施錠可能であることに加え、毒薬・劇薬を他の医薬品と区別して保管する区分棚を設けることが、薬機法に基づく基本的な考え方です(e-Gov法令検索「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」)。麻薬を取り扱うクリニックでは、麻薬及び向精神薬取締法に基づき、鍵をかけた堅固な設備内に他の医薬品と区別して保管することが求められ、麻薬帳簿による在庫管理も別途必要になります(e-Gov法令検索「麻薬及び向精神薬取締法」)。ナースステーション内に保管棚を設ける場合は、施錠管理と、担当者以外が容易に開閉できない位置への設置をあわせて検討します。
| 区分 | 保管の考え方の例 |
|---|---|
| 毒薬 | 他の医薬品と区別し、鍵のかかる設備で保管 |
| 劇薬 | 他の医薬品と区別して保管 |
| 麻薬 | 鍵をかけた堅固な設備内に他の医薬品と区別して保管し帳簿で管理 |
| 一般用医薬品 | 温度・遮光等の保管条件に応じて棚を分けて保管 |
採血準備エリアと検体一時保管スペース
採血準備エリアは、採血管・駆血帯・消毒綿等の物品を取り出しやすい位置にまとめ、使用済み針を廃棄する鋭利物専用容器を作業動線の近くに設置することが基本です。採取した検体を外部の検査機関に送るまでの一時保管スペースは、常温保管でよいものと冷蔵保管が必要なものを区別できる小型冷蔵庫等を設け、検体の取り違えを防ぐためのラベリング・仕分けスペースをナースステーション内、または隣接する位置に確保しておくと、採血から検体回収までの一連の流れがスムーズになります。
患者情報のプライバシー確保(個人情報保護法・ガイドラインの観点)

ナースステーションでは、電子カルテの画面、口頭での申し送り、検査結果の書類など、患者の要配慮個人情報にあたる情報が日常的に取り扱われます。個人情報保護法および「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」(個人情報保護委員会・厚生労働省)は、こうした情報を物理的・組織的・技術的な観点から保護する体制整備を求めています(個人情報保護委員会・厚生労働省「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」)。ナースステーションの設計面では、モニターの向き・のぞき見防止フィルタの利用、待合室からの視線を遮る間仕切りの配置、申し送りを行う際の声の大きさへの配慮など、間取りと運用ルールを組み合わせて対策する視点が求められます。個別の間取りが法令上適切かどうかの最終判断は本記事の範囲外であり、詳細はクリニックのプライバシー確保を扱う個別記事や専門家への確認をおすすめします。
看護師動線とリストバンド発券機・呼出しシステムの設計
看護師動線を左右する配置の考え方
ナースステーションから診察室・処置室・待合室までの移動距離は、1日の業務量に直結します。頻繁に往復する診察室をナースステーションの近くに配置し、来院時に一度しか立ち寄らない部屋(相談室等)は多少距離があっても支障が出にくい、といった優先順位をつけて動線を設計すると、限られた面積の中でも効率的なレイアウトを組みやすくなります。廊下の幅や扉の開閉方向も、車椅子やストレッチャーの通行を想定して確認しておく点になります。
リストバンド発券機・呼出しシステム(ナースコール等)の導入ポイント
入院設備のある診療所や、採血・処置の順番管理を行うクリニックでは、患者の取り違え防止を目的にリストバンド発券機を導入するケースがあります。発券機はナースステーション内、またはその近接エリアに設置し、発券後すぐに看護師が内容を確認できる位置関係にしておくと、確認漏れを防ぎやすくなります。呼出しシステム(ナースコール等)は、処置室・トイレ・待合室など患者が体調不良を訴える可能性がある場所からナースステーションに通知が届く設計とし、通知の音・光・表示のいずれか(または組み合わせ)で、忙しい時間帯でも見落としにくい方式を選ぶことがポイントです。
- 発券機・呼出しシステムの通知先をナースステーションに一元化する
- 忙しい時間帯でも気づきやすい通知方式(音・光・表示)を選ぶ
- 処置室・トイレ・待合室等、通知が必要な場所を洗い出しておく
- 定期的な動作確認・電池交換等の保守サイクルを決めておく
緊急コード対応時のナースステーション設計

急変対応時にナースステーションが果たす役割は、AED・救急カート・酸素等の緊急用物品の保管場所であると同時に、院内の職員へ状況を伝達する情報拠点でもあります。緊急時に使用する物品は、ナースステーション内または直近の決まった位置に常時同じ状態で配置し、誰が対応しても迷わず取り出せるようにしておくことが基本です。院内での緊急連絡の方法(館内放送・内線・スタッフ間の合図等)は施設ごとに定め方が異なるため、自院の規模・人員体制に合わせたルールを事前に取り決め、定期的な訓練で運用を確認しておくことが実務上重要になります。
家族対応スペース・新人ナース教育スペースの確保
家族対応スペースの設計ポイント
患者の病状説明や、家族からの相談対応をナースステーションのカウンター越しに行うと、他の患者に会話内容が聞こえてしまう恐れがあります。面積に余裕がある場合は、ナースステーションに隣接する小部屋やパーティションで区切った相談スペースを設け、込み入った話をする際に移動できるようにしておくと、患者・家族双方にとって落ち着いて話せる環境を確保しやすくなります。
新人ナース教育スペースの確保と動線への配慮
新人看護師の指導は、実際の業務の合間にナースステーションで行われることが多いため、指導担当者と新人が並んで電子カルテ画面や手順書を確認できる作業スペースを、通常業務の動線を妨げない位置に確保しておくと、教育とその日の業務を両立させやすくなります。あわせて、手順書やマニュアル類を新人が自分で参照できる場所に常備しておくことも、指導担当者の負担を分散させる工夫のひとつです。
よくある質問(FAQ)
- Q1. ナースステーションの標準的な広さはどのくらいですか?
- クリニックの診療科・スタッフ数・扱う業務範囲によって適正な広さは異なり、一律の基準があるわけではありません。情報管理・準備作業・見守りの3機能をどこまでひとつの空間に集約するかを整理したうえで、必要な収納・作業スペースを積み上げて検討する進め方が実務上の基本です。
- Q2. オープン型とクローズド型はどちらが向いていますか?
- 患者との距離感を重視する診療科ではオープン型、プライバシーや情報管理を重視する診療科ではクローズド型が選ばれる傾向がありますが、窓やガラスパーティションを組み合わせて両者の折衷案を採用する設計例もあります。自院の診療科・患者層に合わせて検討してください。
- Q3. 電子カルテのモニターは患者から見えないようにする必要がありますか?
- 医療情報システムの安全管理に関するガイドラインでは、画面ロックやアクセス制御などの技術的対策とあわせて、物理的な配置による対策も重要とされています。モニターの向きやのぞき見防止フィルタの活用など、設計段階から検討しておくことが望まれます。
- Q4. 麻薬を取り扱わないクリニックでも保管棚の施錠は必要ですか?
- 薬機法に基づき、毒薬・劇薬を保管する場合は施錠可能な設備での区分保管が基本的な考え方として示されています。麻薬を扱わない場合でも、毒薬・劇薬に該当する医薬品を保有していれば、同様の保管体制を整える必要があります。
- Q5. 緊急コードの伝達方法に決まったルールはありますか?
- 緊急時の連絡方法は、館内放送・内線・スタッフ間の合図など施設によって運用が異なり、全国一律の統一ルールがあるわけではありません。自院の規模・人員体制に合わせて手順を定め、定期的な訓練で確認しておくことが実務上重要です。
- Q6. ナースステーションの改装で確認すべき法令はありますか?
- 医療法・医療法施行規則に基づく施設の安全管理体制、個人情報保護法に基づく情報管理体制、薬機法・麻薬及び向精神薬取締法に基づく医薬品保管体制など、複数の法令にまたがって確認すべき事項があります。改装計画の初期段階で、設計事務所や保健所等の窓口に相談しておくと手戻りを防ぎやすくなります。
出典・参考情報
- e-Gov法令検索「医療法」 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=323AC0000000205 (取得日:2026-09-18)
- e-Gov法令検索「医療法施行規則」 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=323M40000100050 (取得日:2026-09-18)
- e-Gov法令検索「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=335AC0000000145 (取得日:2026-09-18)
- e-Gov法令検索「麻薬及び向精神薬取締法」 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=328AC0000000014 (取得日:2026-09-18)
- 個人情報保護委員会・厚生労働省「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」 https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/guidelines_medical/ (取得日:2026-09-18)
- 厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン第6.0版」 https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/0000516275_00007.html (取得日:2026-09-18)
- 厚生労働省「医療安全対策」関連資料 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/i-anzen/index.html (取得日:2026-09-18)
- 総務省消防庁「防火管理・防災管理」関連資料 https://www.fdma.go.jp/mission/prevention/bouka/ (取得日:2026-09-18)
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mitoru編集部の見解
電子カルテ選定の最大の落とし穴は「機能の多さ=良いシステム」と誤認することです。実際には診療科の運用フローに合わない機能は使われず、かえって操作負担を増やします。mitoru編集部は、自院のワークフローを先に文書化し、その上で必要最小限の機能を満たすシステムを選ぶアプローチを推奨します。