電子帳簿保存法 医療法人対応完全ガイド【2026年版・電子取引/タイムスタンプ/検索要件】

※本記事には広告(PR)が含まれます。掲載判断は当サイトの編集基準に基づき行っています。 編集方針 | 最終更新日: 2026-05-08

電子帳簿保存法(電帳法)は2024年1月1日から電子取引データの紙出力保存が廃止され、適切な電子保存が義務となりました。医療法人にとっては、医薬品・医療材料の発注・受注に伴う電子請求書、リース契約書、委託費の精算書など、日常的に大量の電子取引書類が発生しています。これらを法令に適合した形で保存・管理できていない場合、税務調査時に重大なリスクを負うことになります。

本記事では、医療法人の経理担当者・事務長・CFOの方向けに、電子帳簿保存法の3区分(電子帳簿・スキャナ保存・電子取引)の概要から、医療法人特有の影響範囲、主要クラウド会計サービスの電帳法対応状況、導入手順、検索要件・タイムスタンプの実務的なポイントまでを、国税庁・厚生労働省等の公開情報をもとに整理します。税務・法務の具体的な判断については、顧問税理士・公認会計士等の専門家にご相談ください。

この記事で分かること

  • 電子帳簿保存法の3区分(電子帳簿・スキャナ保存・電子取引)の概要と違い
  • 2024年義務化以降に医療法人が対応すべき電子取引の範囲
  • 主要クラウド会計4サービスの電帳法対応・JIIMA認証の現状比較
  • 検索要件・タイムスタンプ・改ざん防止措置の実務的な整備方法
  • 紙書類のスキャナ保存と紙のまま保存の使い分け
  • 導入時の失敗事例5件とFAQ10問

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1. 電子帳簿保存法の概要——3区分と2024年義務化の全体像

電子帳簿保存法(正式名称:電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律)は、1998年に施行された法律で、2022年度税制改正・2023年度税制改正を経て、2024年1月1日から電子取引の電子保存が完全義務化されました。同法は国税関係帳簿・書類の保存方法に関する特例を定めており、大きく3つの区分に分かれます。

1-1. 電子帳簿等保存(区分①)

電子帳簿等保存は、最初から電子的に作成した帳簿・書類(仕訳帳、総勘定元帳、貸借対照表、損益計算書など)を電磁的記録として保存する区分です。「優良な電子帳簿」として国税庁が認める要件を満たすと、過少申告加算税の軽減措置(5%)が適用されます。

主な要件は次のとおりです(国税庁「電子帳簿保存法一問一答」より整理)。

  • 訂正・削除の履歴管理:帳簿の訂正・削除の事実と内容を確認できるシステムによる記録・保存
  • 帳簿間の相互関連性確保:仕訳帳と各勘定元帳との間でデータが関連付けられた状態での保存
  • 検索機能の確保:日付・金額・取引先で検索できる機能の整備
  • 見読可能性の確保:ディスプレイやプリンターで速やかに出力できる状態の維持

1-2. スキャナ保存(区分②)

スキャナ保存は、紙で受領・作成した領収書・請求書などをスキャンして電磁的記録として保存する区分です。要件を満たせば原本の紙を廃棄することができます(税法上)。スキャナ保存は任意(義務ではない)であるため、紙のまま保存し続けることも可能です。

主な要件は以下のとおりです。

  • 高解像度スキャン:解像度200dpi以上・カラースキャン(階調256階調以上)
  • タイムスタンプの付与:受領日から最長2か月と7営業日以内にタイムスタンプを付与(または入力期間の制限と訂正・削除の防止に関する事務処理規程の整備)
  • 適正事務処理要件:相互牽制・定期検査・再発防止策の社内整備
  • 検索機能の確保:日付・金額・取引先で検索できる体制

1-3. 電子取引の保存(区分③)——2024年から完全義務化

電子取引の保存は、電子的手段で授受した取引情報(電子メール添付のPDF請求書・EDI取引・クラウド発行の領収書など)を電磁的記録として保存する区分です。2024年1月1日から猶予措置が終了し、すべての法人・個人事業主に適用される完全義務となりました。

電子取引データを印刷して紙で保存することは認められなくなっています(国税庁「電子取引データ保存義務化への対応」2024年1月施行)。主な保存要件は以下の2方式のいずれかです。

  • タイムスタンプ方式:電子取引データに認定タイムスタンプを付与して改ざん防止を担保する方式
  • 事務処理規程方式:訂正・削除を防止する社内規程(事務処理規程)を整備し、規程にしたがって保存する方式(中小企業等が採用しやすい)
区分対象義務/任意主な要件の骨子
①電子帳簿等保存電子作成の帳簿・書類任意(優良帳簿は軽減メリットあり)訂正削除履歴・相互関連性・検索・見読可能性
②スキャナ保存紙書類をスキャンしたデータ任意(紙廃棄するなら要件充足)200dpi以上・タイムスタンプ or 規程・適正事務処理
③電子取引保存電子的に授受した取引情報義務(2024年1月〜)改ざん防止(タイムスタンプ or 規程)・検索要件

出典:国税庁「電子帳簿保存法の概要」(https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/index.htm 2026-05-08取得)

書類+印鑑

2. 医療法人への影響——電子取引が発生する主要シーンと対応の優先度

医療法人では、日常業務の中で多様な電子取引が発生しています。どの取引が電帳法の適用対象となるかを正確に把握することが、対応の第一歩です。

2-1. 電子取引が発生する主要シーン

  • 医薬品・医療材料の仕入:医薬品卸(販売業者)からメールやEDIで届く電子請求書・納品書。月間取引件数が多く、電帳法対応の優先度が最も高い領域です。
  • 医療機器・情報システムのリース・保守契約:リース会社・ITベンダーからクラウドで発行される電子契約書・請求書。数年単位の契約が多く、原本の電子データ管理が長期にわたります。
  • 委託費・外注費の精算書:検体検査の外注・清掃・給食委託・医事事務委託の請求書がPDF等で送られてくる場合、電子取引として保存が必要です。
  • 診療報酬の電子請求書受領:社会保険診療報酬支払基金・国保連からの支払通知書は電子データで通知される場合があります(オンライン請求システム対応)。
  • 光熱費・通信費等のユーティリティ:電気・ガス・通信事業者が提供するWeb明細・電子請求書も電子取引の対象です。
  • インボイス(適格請求書)の電子受領:2023年10月開始のインボイス制度以降、仕入先から電子インボイスが送付されるケースが増えており、電帳法対応と合わせた一元管理が求められます。

2-2. 医療法人特有のリスクポイント

医療法人が電帳法対応で特に注意すべきリスクポイントは以下のとおりです。

  • 部署間の書類フロー分散:薬剤部・放射線科・医事課・経理部など複数部署に書類が分散して届くため、電子取引の捕捉漏れが発生しやすい。
  • 受領担当者の紙出力習慣:従来から「PDFを印刷して整理」してきた担当者が多く、新ルールへの移行に一定の教育コストが必要。
  • 診療報酬専用ソフトとの連携:レセコン・医事システムからエクスポートされるデータを会計ソフトに取り込む際のデータ形式・保存方法の整合性確認が必要。
  • 電子インボイスの適格請求書要件確認:インボイス制度と電帳法の両方の要件を同時に満たす保存管理が求められる。

2-3. 対応の優先度マトリクス

取引区分発生頻度金額規模対応優先度
医薬品・材料の電子請求書高(月次多数)★★★ 最優先
委託費・外注費の電子請求書中(月次〜週次)中〜大★★★ 最優先
リース・保守契約の電子書類低(年次・契約時)★★ 優先
ユーティリティ電子明細高(月次)小〜中★★ 優先
診療報酬支払通知(電子)月次★★★ 最優先

出典:国税庁「電子取引データ保存義務化への対応(令和6年1月1日以後の取扱い)」(https://www.nta.go.jp/ 2026-05-08取得)

3. 主要クラウド会計サービス比較——電帳法対応・JIIMA認証取得状況

電帳法対応のシステム整備において、クラウド会計・経費精算サービスの活用が中心的な選択肢となっています。以下では、主要4サービスについて電帳法対応状況・JIIMA認証取得状況を各社の公式公開情報をもとに整理します(2026年5月時点)。

なお、JIIMA(公益社団法人 日本文書情報マネジメント協会)認証は電帳法の要件を満たすことを第三者機関が審査・認証するものであり、認証取得がシステム選定の重要な目安のひとつとなっています。

サービス名電子取引保存対応スキャナ保存対応JIIMA認証インボイス連携医療機関での採用実績料金目安(月額)
マネーフォワードクラウド◎(電子取引データの管理・検索機能を標準搭載)◎(スキャナ保存機能あり)◎(電子帳簿ソフト・スキャナ保存ソフト・電子取引ソフトの各認証取得)◎(インボイス管理サービスと連携)○(中小〜中堅クリニック)3,980円〜(Basicプラン)
freee会計◎(電子取引書類の受領・保存機能を標準搭載)◎(各カテゴリ認証取得)○(小規模クリニック)2,380円〜(スタータープラン)
弥生会計 Next◎(電子取引保存機能を搭載)○(別途「やよいの電子取引」等と連携)○(電子帳簿ソフト認証取得)○(診療所規模)2,000円〜(デスクトップ版は別途)
勘定奉行クラウド(OBC)◎(電子取引奉行クラウドとの連携)◎(証憑保管機能)◎(各認証取得)◎(インボイス奉行との連携)◎(中規模以上の医療法人)3万円〜(法人向けプラン)

【凡例】◎完全対応(専用機能・認証取得済)/○対応(標準機能または別モジュールで対応)

出典:JIIMA「電子帳簿保存法対応ソフトウェア認証制度(電帳法認証)」公式リスト(https://www.jiima.or.jp/ 2026-05-08取得)、各社公式サイト(2026-05-08取得)

3-1. マネーフォワードクラウドの電帳法対応の特徴

マネーフォワードクラウドは、「マネーフォワード クラウド会計」「マネーフォワード クラウド経費」「マネーフォワード クラウドインボイス」の各サービスが連携し、電帳法3区分すべてに対応した電子書類の一元管理を実現しています。主な特徴は以下のとおりです(マネーフォワード公式サイト公開情報、2026年5月時点)。

  • 電子取引データの受領・保管:電子メール・クラウドサービス経由の請求書・領収書を受領し、法令要件を満たした形で自動保存する機能を搭載。
  • タイムスタンプの自動付与:クラウド経費・インボイス管理の受領書類に対し、自動でタイムスタンプを付与する機能に対応(プランにより異なる)。
  • 検索機能:日付・金額・取引先(勘定科目)の3要件による絞り込み検索が可能で、税務調査時の提示対応に対応した設計。
  • JIIMA認証の取得:電子帳簿ソフト法的要件認証・スキャナ保存ソフト法的要件認証・電子取引ソフト法的要件認証の各認証をJIIMAより取得(認証番号等の詳細は公式サイトでご確認ください)。
  • 会計データとの連携:経費精算・インボイス管理から会計仕訳への自動連携により、二重入力を排除しながら電帳法要件を満たした保存が可能。

3-2. 医療法人の規模別選定指針

規模目安推奨の方向性主な検討サービス例
小規模クリニック(医療法人)年商5億円未満・施設1電帳法対応・コスト重視のクラウド一本化マネーフォワードクラウド・freee
中規模医療法人年商5〜30億円・施設2〜5電帳法+インボイス+会計の統合管理マネーフォワードクラウド上位・勘定奉行クラウド
大規模医療法人・病院グループ年商30億円超・施設5以上ERPとの連携・大量取引の自動処理勘定奉行クラウド・大手ERP(別途電帳法対応モジュール)

4. 費用相場——プラン別・年商別の目安

電帳法対応を目的としたクラウド会計・電子書類管理システムの費用は、法人規模・取引件数・必要機能によって大きく異なります。以下は各社公式サイト公開情報をもとにした参考レンジです(2026年5月時点。詳細・最新価格は各社公式サイトまたはお問い合わせでご確認ください)。

サービス区分プラン例月額目安(税別)主な対象
マネーフォワードクラウド会計(Basicプラン)Basic3,980円〜小規模クリニック・法人化直後
マネーフォワードクラウド会計(中小企業向けプラン)Professional5,480円〜中規模医療法人(電帳法・インボイス含む)
マネーフォワードクラウドインボイス(追加)インボイス管理サービス無料〜別途インボイス受領・電子取引保存一元化
freee会計(スターター)スターター2,380円〜小規模クリニック
freee会計(スタンダード)スタンダード4,380円〜中規模医療法人
勘定奉行クラウド(中規模法人向け)中小企業向けプラン3万円〜中規模以上の医療法人
社内規程のみ整備(ゼロコスト対応)0円(規程作成コストのみ)小規模クリニック・電子取引件数が少ない場合

電子帳簿保存法対応だけを目的に新たなシステムを導入するコストが懸念される場合、まず「事務処理規程の整備」によるゼロコスト対応を検討し、その後段階的にクラウド会計へ移行する方法も実務的な選択肢のひとつです。ただし社内運用の手間と管理リスクは別途考慮が必要です。

4-1. 年商別の投資対効果の考え方

  • 年商3億円未満の小規模クリニック:月額3,000〜5,000円程度のクラウド会計1本で電帳法・インボイス対応が概ねカバー可能。経理担当者の業務時間削減効果も含めると費用対効果は高い傾向。
  • 年商3〜15億円の中規模医療法人:会計・経費・インボイスを統合したプラン(月額1〜3万円程度)が現実的。取引件数が多いほど自動化のメリットが大きくなる。
  • 年商15億円超の大規模医療法人:ERPとの連携・電帳法専用モジュールを含めた総合費用を個別見積で確認。IT補助金(IT導入補助金)の活用も選択肢。

なお、IT導入補助金(デジタル化基盤導入枠)は会計・経費・インボイス管理ソフトが対象となる場合があります。詳細は独立行政法人中小企業基盤整備機構・IT導入補助金事務局の公式情報でご確認ください。

5. 導入手順——保存要件確認からシステム稼働まで4ステップ

電子帳簿保存法への対応は、単にシステムを導入するだけでなく、院内の業務フロー・社内規程の整備が不可欠です。以下の4ステップで体系的に進めることが望ましいとされています。

チェックリスト

ステップ1:電子取引の洗い出しと保存要件の確認

まず、法人内で発生しているすべての電子取引を部署横断で洗い出します。経理部門だけでなく、薬剤部・医事課・購買担当など、書類の受領窓口となっているすべての部署に確認が必要です。

  • 電子メール・EDI・クラウドサービス経由で受領している書類の種類と件数を一覧化する
  • 各書類の内容(請求書・領収書・契約書・支払通知書等の区分)と取引金額を確認する
  • 現状の保存方法(印刷して紙ファイリング・フォルダ保存等)と、法令要件とのギャップを整理する
  • 適用対象となる保存期間(原則として確定申告期限から7年)を確認する

ステップ2:システム選定と導入設計

洗い出した電子取引の量・種類・既存会計システムとの相性を踏まえ、対応システムを選定します。JIIMA認証を取得したシステムは法令要件の充足が確認されているため、選定の基準のひとつとなります。

  • JIIMA認証の取得状況を確認する(電子取引ソフト法的要件認証・スキャナ保存ソフト法的要件認証の別に確認)
  • 既存の会計ソフト・レセコン・経費精算システムとのデータ連携可否を確認する
  • 月次の電子取引件数・ストレージ容量・ユーザー数がプラン上限に収まるか確認する
  • 税理士・顧問会計士が利用・アクセスできる権限設定が可能かを確認する

ステップ3:運用ルール(事務処理規程)の策定

電帳法対応では、システムの導入だけでなく、電子取引書類の取扱いに関する社内規程(事務処理規程)の整備が必要です。国税庁は「電子取引データの訂正及び削除の防止に関する事務処理規程(サンプル)」を公式に公開しており、これをベースに法人の実態に合わせて作成することができます。

  • 規程の対象者・適用範囲・保存責任者を明確にする
  • 電子取引書類の受領から保存までのフロー(誰が・どのシステムに・いつまでに登録するか)を定める
  • 訂正・削除が必要な場合の手続きと記録方法を定める
  • 年1回以上の規程の見直しと担当者への周知方法を定める

ステップ4:社内周知・担当者教育・試行運用

規程とシステムの整備後は、電子取引書類の受領担当者(各部署の担当者)に対する教育と試行運用期間の設定が重要です。特に「印刷して紙保存してしまう」という従来習慣の払拭と、システムへの正確な登録手順の定着に時間をかけることが、後の問題発生を防ぐ鍵となります。

  • 担当者向けの操作マニュアルを作成・配布する
  • 1〜2カ月の試行運用期間を設け、運用上の問題点を洗い出す
  • 試行運用後に規程・運用フローを必要に応じて修正する
  • 税理士・顧問会計士の確認を経て本格運用に移行する

6. 検索要件・タイムスタンプ・改ざん防止——実務上の整備ポイント

電帳法における電子取引・スキャナ保存の「検索要件」「タイムスタンプ」「改ざん防止措置」は、税務調査時に最初に確認されるポイントです。それぞれの要件を正確に把握しておくことが実務上不可欠です。

シールド保護

6-1. 検索要件(3要件)

電子取引データ(およびスキャナ保存書類)は、税務調査の際に速やかに提示できるよう、以下の3つの検索要件を満たす必要があります(国税庁「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】」より)。

  1. 日付(取引年月日)による検索:任意の日付・期間を指定して対象書類を検索できること。
  2. 金額(取引金額)による検索:任意の金額・金額範囲を指定して検索できること。
  3. 取引先(取引先の名称等)による検索:取引先の名称等を指定して検索できること。

重要な緩和措置として、税務調査時にダウンロードの求めに応じられる場合(クラウド上のデータを任意形式で提供可能な場合)、検索要件を「日付・金額・取引先」の3要件から「日付または取引先のいずれか」に緩和することが認められています。また、年間の電子取引件数が少ない事業者向けに追加の緩和措置もあります。詳細は国税庁の最新通達・Q&Aでご確認ください。

6-2. タイムスタンプの役割と取得方法

タイムスタンプは、電子データが特定の時刻に存在し、その後改ざんされていないことを証明するための電子証明技術です。一般財団法人日本データ通信協会が認定したタイムスタンプ(認定タイムスタンプ)が電帳法に使用できます。

  • タイムスタンプの付与タイミング:電子取引書類の受領後、原則として2か月と7営業日以内(スキャナ保存の場合)に付与する。電子取引保存の場合は受領直後から遅滞なく付与するのが理想。
  • JIIMA認証システム経由のタイムスタンプ:マネーフォワードクラウドや勘定奉行クラウド等のJIIMA認証済システムでは、アップロード時にシステム側でタイムスタンプを自動付与する機能を搭載しているサービスがあります。
  • タイムスタンプ vs 事務処理規程:タイムスタンプが不要な「事務処理規程方式」も認められていますが、システムによる自動タイムスタンプの方が運用上のミスが少なく、実務的には推奨されます。

6-3. 改ざん防止措置の4類型

電子取引保存における改ざん防止措置は、国税庁のガイダンスで以下の4類型が示されています。

類型方法の概要導入難易度
① タイムスタンプ付与認定タイムスタンプを各データに付与中(JIIMA認証システムなら低)
② 訂正・削除不可システムの利用上書き・削除ができないストレージ・システムで保存低〜中(クラウドサービス選定で対応)
③ バージョン管理による履歴記録訂正・削除の事実・内容をすべてシステムに記録する方式
④ 事務処理規程の整備訂正・削除手続きを社内規程で制限し、運用で担保する方式低(規程作成のみ)

出典:国税庁「電子帳簿保存法の概要(令和6年1月施行版)」(https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/tokusetsu/index.htm 2026-05-08取得)

7. 紙書類の扱い——スキャナ保存と紙のまま保存の使い分け

電子帳簿保存法の「スキャナ保存」は任意の制度であるため、紙で受領した書類はスキャナ保存の要件を整備しない限り、引き続き紙のまま保存することが認められています。医療法人における実務的な判断基準を整理します。

7-1. 紙のまま保存が適しているケース

  • 月次の紙書類件数が少なく(月100件未満程度)、保管スペースに余裕がある場合
  • スキャナ保存要件(200dpi以上・適正事務処理要件等)を整備するコストが割に合わない場合
  • 経理担当者の電子化対応リソースが限られている段階(移行期間中)

なお、紙のまま保存する場合も、法定保存期間(法人税申告期限から7年、欠損法人は10年)の間は適切に保管・索引付けする必要があります。

7-2. スキャナ保存が適しているケース

  • 月次の紙書類件数が多く、保管スペース・検索の手間が問題になっている場合
  • 複数施設・複数部署に書類が分散しており、一元管理したい場合
  • 税理士・会計士との証憑共有をクラウド上で行いたい場合
  • 長期的に電子化・ペーパーレス化を推進したい方針の場合

7-3. 紙書類とデジタル書類の混在管理における留意点

医療法人では、仕入先によって電子請求書と紙請求書が混在する場合があります。この場合、重要なのは「電子取引」と「紙取引」の区分を明確にし、それぞれのルールに従って保存することです。電子的に受領した書類を印刷して保存しても電子取引の電子保存義務は免れません(2024年1月以降)。一方、紙で受領した書類をスキャンせずそのまま保存する場合は紙保存として認められます。

8. 医療法人が陥りやすい失敗事例5件

電子帳簿保存法への対応を進める中で、医療法人の経理担当者・事務長から報告されている典型的な失敗事例を5件紹介します。同様の問題を事前に回避するための参考としてください。

失敗事例①:電子請求書を印刷してファイリングし続けていた

2024年1月以降も、仕入先から届くPDF請求書を「念のため」印刷して紙ファイルに綴じていたケース。電子取引の電子保存義務に違反した状態が継続し、税務調査時に指摘を受けるリスクが高まります。対応策は、受領ルールの周知徹底と、クラウドへの自動登録フローの構築です。

失敗事例②:検索要件を満たさないフォルダ管理

電子取引データをフォルダに保存していたが、ファイル名のルールが不統一で「日付・金額・取引先」の検索ができない状態になっていたケース。電帳法の検索要件を満たすには、ファイル名を「取引年月日_取引先名_金額」等の規則に統一するか、JIIMA認証システムを利用して検索インデックスを自動生成する必要があります。

失敗事例③:事務処理規程を整備したが運用が形骸化

事務処理規程をひな形から作成して承認したものの、担当者への周知が不十分で実際の保存業務が規程に沿って行われていなかったケース。規程と実態の乖離は税務調査時に不備として指摘される可能性があります。定期的な内部確認(半期または年次)と担当者教育が対策となります。

失敗事例④:部署ごとのバラバラな保存場所

薬剤部はメール本体のフォルダ、医事課は共有ドライブ、経理部は会計ソフト内、というように部署ごとに電子取引データの保存場所が分散し、法人としての一元管理が困難になっていたケース。クラウド上の統合電子書類管理システムへの集約が、現実的な解決策となります。

失敗事例⑤:スキャナ保存の解像度要件を満たさないスキャンデータ

スキャナ保存を進めようとしたが、診察室においてある複合機のスキャン設定が「150dpi・グレースケール」のままで、電帳法が求める「200dpi以上・カラー(256階調以上)」の要件を満たしていなかったケース。スキャナ機器・設定の事前確認と、スキャン後の品質チェック運用が必要です。

9. よくある質問(FAQ)10問

Q1. 電子取引保存の義務化は個人クリニック(個人事業主)にも適用されますか?

はい。電子取引保存義務(区分③)は法人・個人事業主を問わずすべての事業者が対象です。個人クリニック(個人開業医)もメール添付のPDF請求書等は電子保存が必要です。

Q2. 電子帳簿保存法の「電子取引」とはどの範囲を指しますか?

「電子取引」とは、電磁的方式によって請求書・領収書・納品書・契約書等の取引情報を授受することをいいます(電帳法第2条第6号)。メール添付のPDF・クラウドサービス経由の請求書・EDIシステム経由の取引情報などが該当します。FAXやデジタルカメラで撮影した紙書類の電子化は「スキャナ保存」に該当し「電子取引」とは区別されます。

Q3. 診療報酬請求(レセプト)のデータも電帳法の対象になりますか?

診療報酬請求書類(レセプト)自体は電帳法の「国税関係書類」には該当しないことが一般的ですが、診療報酬支払通知書や入金明細書等が電子的に発行されている場合は、取引情報として電帳法の対象になり得ます。顧問税理士にご確認ください。

Q4. 事務処理規程だけで対応できますか?システム導入は必須ですか?

電子取引保存において、タイムスタンプの付与に代えて「訂正・削除の防止に関する事務処理規程」を整備・運用することで対応することは制度上可能です。ただし、運用の確実性・検索要件への対応・管理効率の観点から、JIIMA認証システムの利用が実務上は推奨されます。電子取引件数が少ない段階では規程整備のみで始め、規模拡大後にシステム移行する段階的アプローチも選択肢です。

Q5. 既存の会計ソフトで対応できない場合、どうすればよいですか?

既存の会計ソフトが電帳法対応に未対応または機能が不十分な場合、①会計ソフトのバージョンアップ・プラン変更で対応できるか確認、②電子取引書類の保存に特化した別サービス(電子取引管理ソフト)と併用する、③JIIMA認証取得の会計ソフトへ移行する、の順で検討するのが現実的です。

Q6. スキャナ保存後、原本の紙は廃棄してよいですか?

電帳法のスキャナ保存要件(200dpi以上・タイムスタンプ等)を完全に満たした場合、税法上は原本の紙を廃棄することができます。ただし医療機関特有の法令(医療法・健康保険法等)に基づく帳票保管義務は別途存在するため、医療関連書類は顧問税理士・顧問弁護士に廃棄可否を確認してください。

Q7. 電帳法対応が不十分な場合のペナルティは何ですか?

電子取引データの電子保存義務に違反した場合、税務調査の際に「帳簿書類の備付けが不十分」と判断され、青色申告承認取消の可能性や、重加算税の対象となるリスクがあります。ただし、要件を満たそうとする努力が認められる「相当の理由」がある場合には宥恕(ゆうじょ)措置が考慮される場合があります(詳細は顧問税理士にご確認ください)。

Q8. 電子インボイス(電子適格請求書)と電帳法の対応は別々に考える必要がありますか?

インボイス制度(適格請求書等保存方式)と電帳法は、それぞれ別の法律(消費税法・電子帳簿保存法)に基づく要件ですが、電子インボイスを電子的に受領した場合は電帳法の電子取引保存義務も同時に適用されます。実務的にはJIIMA認証システムで両方の要件を同時に満たすことが多く、一元管理が推奨されます。

Q9. 複数施設を持つ医療法人では施設ごとに対応が必要ですか?

電帳法の対応義務は法人単位ですが、複数施設に電子取引の受領窓口が分散している場合は施設横断での保存・管理体制の構築が必要です。クラウド型の一元管理システムを導入すれば、複数施設の電子取引データを法人本部で集約管理することができます。

Q10. 電帳法対応のためにIT導入補助金は使えますか?

IT導入補助金(デジタル化基盤導入枠)では、会計ソフト・経費精算ソフト・インボイス管理ソフトが補助対象となる場合があります。ただし補助対象のITツールはIT導入補助金事務局が公表するリストに掲載されたものに限られ、毎年度の募集要件・補助率・上限額が変更される場合があります。最新の公募要領は独立行政法人中小企業基盤整備機構の公式サイトでご確認ください。

10. 次の1ステップ——今週中にできる電帳法対応の第一歩

電子帳簿保存法への対応は、「完璧な体制を整えてから動く」より「今の状況でできる第一歩」から着手することが重要です。本記事を読んだ方が今週中に取り組める具体的な行動を整理します。

  1. 電子取引の洗い出し(30分):自院でどの部署・どの担当者が電子的な請求書・領収書等を受領しているかをリストアップする。薬剤部・医事課・購買・経理すべてに確認する。
  2. 現状保存方法の確認(15分):電子受領書類が現在印刷・紙保存されているかどうかを確認し、法令とのギャップを認識する。
  3. JIIMA認証システムの無料トライアル検討:マネーフォワードクラウドをはじめとするJIIMA認証取得サービスの多くは無料トライアル期間を設けています。まず操作感・機能を確認することが次のステップです。
  4. 顧問税理士への確認:現状の保存体制と今後の整備方針について顧問税理士・会計士に相談し、優先対応事項を絞り込む。

電帳法対応のクラウド会計サービスについて詳しく知りたい方は、以下からサービス詳細をご確認ください。

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11. 出典・参考情報と関連記事

公的出典・参考資料

  • 国税庁「電子帳簿保存法の概要(令和6年1月施行版)」(https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/index.htm 2026-05-08取得)
  • 国税庁「電子取引データ保存義務化への対応(令和6年1月1日以後の取扱い)」(https://www.nta.go.jp/ 2026-05-08取得)
  • 国税庁「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】(令和6年版)」(https://www.nta.go.jp/ 2026-05-08取得)
  • 公益社団法人 日本文書情報マネジメント協会(JIIMA)「電帳法対応ソフトウェア認証制度」(https://www.jiima.or.jp/ 2026-05-08取得)
  • 厚生労働省「医療分野における情報化の推進」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/johoka/ 2026-05-08取得)
  • デジタル庁「電子インボイス推進協議会(EIPA)関連情報」(https://www.digital.go.jp/ 2026-05-08取得)

免責事項

本記事は公開情報をもとにした情報提供を目的としており、税務・法務・会計に関する個別の判断・アドバイスを提供するものではありません。具体的な対応については顧問税理士・公認会計士等の専門家にご相談ください。掲載情報は2026年5月8日時点のものであり、法令改正・サービス内容の変更等により情報が変わる場合があります。

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mitoru編集部の見解

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