医療機関の温泉・水治療法運営 完全ガイド【2026年版・温泉利用/水治療室/療養泉/温泉医学連携】

📅公開日:2026-08-25

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本記事は、病院・診療所・介護老人保健施設・リハビリテーション病院・温泉利用型健康増進施設の施設長、事務長、リハビリテーション部門責任者、設備管理担当者を対象に、医療機関における温泉利用および水治療法運営の設計を、環境省・厚生労働省・e-Gov法令検索・日本温泉気候物理医学会等の公開情報を整理した内容としてまとめたものです。温泉法上の位置づけ、療養泉の分類、水治療室の設備要件、温泉利用型健康増進施設の厚生労働大臣認定、レジオネラ属菌対策を含む水質管理、温泉療法医との連携、2024年度診療報酬改定における関連論点、FAQ5問を扱います。特定の泉質の治療効果、個別患者への温泉療法の適否、医療行為・診断・治療の助言は本記事の対象外です。

この記事でわかること

  • 温泉法と鉱泉分析法指針における「温泉」「療養泉」の定義
  • 医療機関における温泉利用の類型(併設浴場・水治療室・水中運動療法)
  • 水治療室・機能訓練室として整備する際の主な設備要素
  • 温泉利用型健康増進施設の厚生労働大臣認定制度の考え方
  • 療養泉の泉質分類と医学的性質の整理
  • 日本温泉気候物理医学会の温泉療法医・温泉療法専門医の位置づけ
  • 循環式浴槽・打たせ湯等におけるレジオネラ属菌対策の運用
  • 2024年度診療報酬改定における運動器・脳血管疾患リハビリテーション料の水治療関連論点

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1. 温泉法・鉱泉分析法指針における位置づけ

日本国内における温泉は、温泉法(昭和23年法律第125号)によって定義されています。温泉法上の温泉とは、地下から湧出する温水・鉱水および水蒸気その他のガス(炭化水素を主成分とする天然ガスを除く)で、温度が摂氏25度以上であるか、または指定物質のいずれかを一定量以上含有するものとされます。温泉の掘削・湧出路変更・利用は、都道府県知事の許可事項として位置づけられており、医療機関が新規に源泉を確保して利用する場合、掘削許可・利用許可・浴用/飲用適否の判定を段階的に取得する必要があります(環境省「温泉法」関連資料)。

環境省が示す「鉱泉分析法指針」は、温泉のうち治療の目的に供しうる泉質を「療養泉」として整理する基準を提供しています。療養泉に該当するかどうかは、温度・溶存物質・特定成分(遊離二酸化炭素、総鉄イオン、水素イオン、よう化物イオン、硫黄、ラドン等)の含有量に基づいて判定されます。療養泉の判定と泉質名の付与は、都道府県が指定する分析機関による鉱泉分析書と、環境省指針に沿った掲示用泉質名の交付を通じて行われる仕組みで、医療機関が温泉利用施設を運営する上での基礎的な位置づけとなります(環境省「鉱泉分析法指針」関連資料)。

2. 医療機関における温泉利用の類型

医療機関における温泉利用は、大きく(1)入院患者向けの併設浴場、(2)リハビリテーション室内の水治療室(ハバードタンク・気泡浴槽・部分浴槽等)、(3)水中運動療法用のプール、(4)外来通院者向けの温泉利用型健康増進施設併設、といった類型に整理されます。それぞれの類型は、対象患者の状態、目的(保清・機能訓練・リラクゼーション・生活習慣病予防等)、根拠となる制度・診療報酬上の位置づけが異なるため、施設全体の運営設計として類型を整理して意思決定することが実務的です(環境省「温泉利用型健康増進施設について」関連資料)。

類型ごとの主な違いを整理すると、併設浴場は入院療養上の日常生活支援の一環として位置づけられ、施設基準上の必須設備ではないものの、リハビリテーション病棟・地域包括ケア病棟・介護老人保健施設等では患者QOLと機能維持の観点から整備される例があります。水治療室は運動器・脳血管疾患等リハビリテーション料の実施場所として活用される場合があり、この場合は診療報酬上のリハビリテーション施設基準における面積・設備要件との整合が前提となります(厚生労働省「診療報酬の算定方法」関連資料)。

3. 水治療室・機能訓練室の設備要素

水治療室を運営する上での主な設備要素は、ハバードタンク(全身浸漬用の蝶型または長方形浴槽)、気泡浴槽、渦流浴槽(ワールプール)、部分浴槽(上肢用・下肢用)、リフト(浴槽への昇降補助)、更衣室・シャワー室、給排水設備、給湯設備、循環濾過装置、消毒設備、床材(防滑・排水勾配)、換気設備、非常呼び出しボタン等です。設備の選定は、対象患者の要介護度・移乗能力、実施予定の療法(機能訓練・保清・水中歩行等)、想定人員配置、既存の給排水インフラの制約を踏まえて行うことが基本となります。

水治療室を運動器リハビリテーション料等の実施場所として利用する場合、面積要件・専用性要件・機能訓練室との位置関係が施設基準の対象となります。届出内容と実際の運用が乖離すると、適時調査・個別指導で指摘対象となるため、平面図・設備一覧・利用実績(実施記録)を整えて内部監査を行う運用が求められます。詳細な要件は厚生労働省告示・通知・地方厚生(支)局の疑義解釈で確認する必要があります(厚生労働省「診療報酬の算定方法」関連資料)。

4. 温泉利用型健康増進施設の厚生労働大臣認定

厚生労働大臣認定「温泉利用型健康増進施設」は、療養泉を利用した健康増進プログラムを提供する施設のうち、一定の要件(療養泉であること、健康運動指導士等の配置、健康増進プログラムの提供、医療機関との連携等)を満たすものを厚生労働大臣が認定する制度です。医療機関との連携のもとで発行される温泉療養に係る費用のうち、施設利用料等の一定部分が所得税法上の医療費控除の対象となりうる仕組みとして位置づけられており、認定要件と控除対象範囲は厚生労働省・国税庁の関連資料で示されています(厚生労働省「健康増進施設認定制度」関連資料)。

医療機関が温泉利用型健康増進施設と提携する、あるいは自院が併設施設として認定を目指す場合、認定要件の確認、健康運動指導士・健康運動実践指導者等の人員体制、医師が発行する「温泉療養指示書」の運用フロー、利用者記録の管理体制を整えることが実務的な出発点となります。認定の申請・更新の手続きは、健康増進施設認定審査要領等の関連資料に基づいて進めることになり、認定期間・更新頻度も所定のルールに従います。

5. 療養泉の泉質分類

環境省「鉱泉分析法指針」は、療養泉の泉質を溶存物質・特定成分・pH・温度等に基づいて分類しています。代表的な泉質としては、単純温泉、塩化物泉、炭酸水素塩泉、硫酸塩泉、二酸化炭素泉、含鉄泉、酸性泉、含よう素泉、硫黄泉、放射能泉が挙げられ、各泉質には掲示用泉質名と、指針上示される一般的適応症・禁忌症等の情報が整理されています。個別患者への温泉療法の適否判断は主治医の臨床判断によるものであり、本記事では制度上の分類と一般的な整理にとどめます(環境省「鉱泉分析法指針」関連資料)。

療養泉としての適応・禁忌に関する掲示は、温泉法に基づき温泉利用施設に義務づけられており、環境省が示す様式に沿って掲示を行うことが基本です。掲示内容の作成・改訂は、鉱泉分析書の更新(分析書の有効期間は一般に10年)に合わせて見直すことになり、医療機関が温泉利用施設を運営する場合、掲示の適切性を定期点検の項目に組み込む運用が求められます。

6. 温泉療法医制度と医学的連携

日本温泉気候物理医学会は、温泉療法・気候療法・物理療法を含む温泉医学の学術団体として、温泉療法医・温泉療法専門医の認定制度を運営しています。温泉療法医は所定の講習・臨床経験を経た医師、温泉療法専門医はより高度な要件を満たした医師として位置づけられており、温泉利用型健康増進施設や温泉療養に関わる医療機関において、温泉療養指示書の発行や患者相談の対応にあたる例があります(日本温泉気候物理医学会 関連資料)。

医療機関が温泉利用施設と連携する場合、温泉療法医の関与範囲(指示書発行、相談対応、プログラム設計への助言、事故発生時の医学的対応等)を書面で整理し、連携協定・業務委託契約に落とし込む運用が実務的です。連携先施設との情報共有経路、利用者の既往歴確認、緊急時の連絡フロー、記録の保管方法を明確化することで、連携体制の実効性と患者安全の担保につながります。

7. 感染管理・水質管理(レジオネラ属菌対策)

温泉利用施設・水治療室の運営で最も継続的な管理が求められる領域が、循環式浴槽・打たせ湯・気泡浴槽・シャワー・加湿装置等におけるレジオネラ属菌対策です。厚生労働省「循環式浴槽におけるレジオネラ症防止対策マニュアル」および「レジオネラ症を予防するために必要な措置に関する技術上の指針」等の公開資料は、施設構造・水質管理・清掃・消毒・水質検査の頻度・記録保管等の実務的な指針を示しています(厚生労働省「レジオネラ症対策」関連資料)。

実務上の運用ポイントとしては、(1)浴槽水の遊離残留塩素濃度の適切な管理、(2)配管・ろ過装置・気泡発生装置・打たせ湯配管等の定期的な清掃と生物膜(バイオフィルム)除去、(3)浴槽水・原湯・原水のレジオネラ属菌検査の実施頻度と結果記録、(4)ろ過材の逆洗・交換周期の管理、(5)循環配管の高温殺菌・薬剤消毒の実施記録、(6)事故時の連絡・報告フローの明文化、が挙げられます。公衆浴場法・旅館業法に該当する施設は、都道府県・保健所の指導監督下で運営される点も踏まえた体制設計が求められます(厚生労働省「公衆浴場における水質基準等に関する指針」関連資料)。

8. 運営コスト・収支の考え方

温泉利用施設・水治療室の運営コストは、初期投資(掘削・配管・浴槽・ろ過装置・リフト等)、維持費(燃料費または源泉料、電力、水道、消耗品)、水質検査費、清掃・消毒に要する人件費、修繕積立、設備更新費に大別されます。自家源泉を保有する場合と、既存源泉から供給を受ける場合、市水を沸かして水治療用に用いる場合とで、費用構造・法令上の位置づけ・水質管理の要件が異なるため、初期段階での類型選択が長期の運営費に大きく影響します。

収益側の設計としては、入院基本料・リハビリテーション料等の診療報酬収入の一部として位置づけられる類型と、健康増進施設としての利用料・会費として設計される類型があります。診療報酬上の位置づけを目指す場合は施設基準の要件充足と届出が前提となり、健康増進施設としての運営を目指す場合は健康増進施設認定の枠組みや任意の会員制モデルの設計が実務的な選択肢となります。運営類型ごとの費用構造と法令上の要件を、下表のように整理しておくことが意思決定に役立ちます。

類型主な法令上の位置づけ主な収益源
入院療養併設浴場医療法・入院基本料の療養環境入院基本料・療養環境加算等
水治療室(リハ室内)診療報酬 リハビリテーション施設基準運動器・脳血管疾患等リハビリテーション料
温泉利用型健康増進施設健康増進施設認定・所得税法上の医療費控除対象施設利用料・会員料
公衆浴場併設公衆浴場法・都道府県条例入浴料・付帯サービス

9. 2024年度診療報酬改定の関連論点

令和6年度(2024年度)診療報酬改定では、運動器リハビリテーション料・脳血管疾患等リハビリテーション料・廃用症候群リハビリテーション料・呼吸器リハビリテーション料等のリハビリテーション料区分、疾患別リハビリテーションの実施計画書・目標設定支援・共同指導に関する要件、リハビリテーション実施場所・専従要件等が論点として取り扱われました。水治療室を実施場所として活用する場合、施設基準上の要件との整合性を継続的に点検することが求められます(厚生労働省「令和6年度診療報酬改定について」関連資料)。

改定の解釈・運用については、地方厚生(支)局の通知・疑義解釈を併せて確認する必要があります。次回改定に向けた議論は中央社会保険医療協議会(中医協)およびその分科会・部会で進められ、確定的な根拠は答申・告示・通知として厚生労働省ホームページで公開されます。未確定情報に基づく断定的判断を避け、確定した告示・通知に基づいて自院の体制を見直すことが実務上の基本姿勢となります(厚生労働省「中央社会保険医療協議会(中医協)」関連資料)。

10. よくある質問(FAQ)

Q1. 病院内の浴場を「温泉」と表示するには何が必要ですか?
A. 温泉法上の「温泉」に該当するには、湧出時の温度が摂氏25度以上であるか、指針で示された指定物質のいずれかを所定量以上含有していることが要件です。都道府県知事による温泉利用許可、指定分析機関による鉱泉分析、環境省指針に沿った掲示用泉質名の交付、浴用として適切であることの判定を経る手続きが基本となります。市水を沸かした浴場を「温泉」と表示することは原則できません。詳細は環境省「温泉法」および都道府県温泉担当部署に確認してください。
Q2. 水治療室での訓練はリハビリテーション料の対象になりますか?
A. 水治療室で実施される訓練は、疾患別リハビリテーション料(運動器・脳血管疾患等・廃用症候群等)の実施場所として位置づけられる場合があります。ただし、施設基準上の面積・設備・専従要件との整合、実施計画書・記録の整備、担当療法士の要件充足等が前提となります。個別の算定可否については、厚生労働省告示・通知および地方厚生(支)局の疑義解釈で確認してください。
Q3. 温泉利用型健康増進施設の認定はどのように取得しますか?
A. 温泉利用型健康増進施設は、療養泉の利用、健康運動指導士等の配置、健康増進プログラムの提供、医療機関との連携等の認定要件を満たすことを前提に、厚生労働大臣が認定する制度です。認定要件・申請手続・更新頻度は、厚生労働省の「健康増進施設認定制度」関連資料および認定審査要領で示されています。医療機関自身が併設施設として認定を目指すか、外部施設と連携する形で運営するかは、施設規模・立地・患者層を踏まえて設計することが実務的です。
Q4. レジオネラ属菌検査はどの程度の頻度で実施すべきですか?
A. レジオネラ属菌の水質検査は、施設類型・構造(循環式か否か、打たせ湯・気泡浴槽の有無)・利用者数に応じて、厚生労働省「レジオネラ症を予防するために必要な措置に関する技術上の指針」および都道府県・保健所の指導に沿って実施することが基本です。指針上の目安と、公衆浴場法・旅館業法に基づく都道府県条例の規定を併せて確認し、施設ごとの検査計画・記録保管を標準化してください。事故発生時の対応フロー・保健所への連絡経路も併せて整備することが求められます。
Q5. 温泉療養指示書は誰が発行できますか?
A. 温泉療養指示書は、温泉利用型健康増進施設の利用に係る医療費控除の要件に関連する書面として位置づけられており、原則として医師が発行します。日本温泉気候物理医学会が認定する温泉療法医・温泉療法専門医が発行にあたることが多く、施設側と医療機関との連携協定に基づいて運用される例があります。医療費控除の対象範囲・書式・提出先は、厚生労働省・国税庁の関連資料および税務署の案内で確認してください。

11. 出典・参考資料


【免責事項】本記事は環境省・厚生労働省・e-Gov法令検索・日本温泉気候物理医学会等の公開情報を整理することを目的としており、特定の泉質の治療効果、個別患者への温泉療法・水治療法の適否、施設基準の届出可否、温泉利用型健康増進施設認定の取得可否、医療費控除の対象範囲を保証するものではありません。温泉法・公衆浴場法・旅館業法・医療法・診療報酬関連告示等の関係法令は改正・改訂により見直されるため、個別判断は環境省・厚生労働省・都道府県温泉担当部署・保健所・地方厚生(支)局・所轄税務署・主治医・所属団体等にご確認ください。医療行為・診断・治療の助言は本記事では扱いません。本記事の情報利用によって生じた損害について、mitoru編集部は責任を負いません。

最終更新日:2026年8月25日|編集方針

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