2024年度の調剤報酬改定は、薬局経営にとって近年でも特に対応負荷の大きな改定となりました。調剤基本料の区分見直し、地域支援体制加算の要件強化、かかりつけ薬剤師指導料の評価見直し、在宅薬学総合体制加算の新設、電子処方箋管理サービスの本格運用に伴う加算の創設、後発医薬品調剤体制加算の閾値引き上げなど、薬局の業務フロー・人員配置・設備投資の全方位に影響する内容です。改定への対応が遅れると、調剤基本料の区分が不利な側に張り付いたまま単価が下がり続けたり、地域支援体制加算が算定できなくなって粗利が大きく削られたりするリスクがあります。本記事は、薬局オーナー・管理薬剤師を対象に、2024年度改定(2024年6月施行)の主要論点と、続く2026年度改定(2026年4月施行)でアップデートされた点を踏まえ、薬局が今取り組むべき業務改革を、厚労省告示・中央社会保険医療協議会(中医協)答申などの公開情報をもとに整理した実務ガイドです。個別の算定要件の解釈・届出書類・施設基準充足確認については、地方厚生(支)局および所管行政窓口にあらかじめご相談ください。
この記事を読むペルソナ:①調剤薬局を経営する薬局オーナーで、2024年度改定への対応状況を点検し直したい方、②管理薬剤師として現場の業務フロー・施設基準・加算算定要件の整理を求められている方
この記事でわかること
- 2024年度調剤報酬改定の全体像と改定の方向性
- 調剤基本料1〜3および特別調剤基本料A・Bの区分見直しの要点
- かかりつけ薬剤師指導料・地域支援体制加算の評価強化のポイント
- 在宅薬学総合体制加算の新設と在宅推進の方向性
- 電子処方箋管理サービス本格運用に伴う加算と要件
- 後発医薬品調剤体制加算の閾値引き上げの影響
- 改定対応に必要な業務フロー・人員配置・システム投資の論点
- 自薬局の対応状況を確認する自己解析チェックリスト10項目
- 改定対応が遅れる薬局のパターンと回避策
- よくある質問への回答

1. 調剤報酬改定2024の全体像
2024年度の診療報酬改定は、医科・歯科・調剤の本体部分が改定され、調剤については2024年6月1日に施行されました(医科・歯科と異なり、本体施行が4月ではなく6月にずれた点も実務上の留意点です)。改定の基本方針は社会保障審議会医療保険部会・医療部会で示され、具体的な点数・施設基準は中央社会保険医療協議会(中医協)の答申を経て、厚生労働大臣の告示として公布されました。出典:厚労省「令和6年度診療報酬改定について」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411.html、取得日:2026-05-24)
1-1. 改定の基本方向性
調剤分野の改定方向性は、大きく4本柱で整理できます。第一に、対物業務から対人業務への構造的転換の継続。第二に、かかりつけ機能・地域連携・在宅対応の評価強化。第三に、電子処方箋・オンライン服薬指導など医療DXの普及。第四に、後発医薬品使用促進と医薬品の安定供給への対応です。中医協答申および告示で公開されており、薬局はこの4本柱に沿って体制整備を進めることが求められます。出典:厚労省「中央社会保険医療協議会(中医協)」(https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-chuo_128154.html、取得日:2026-05-24)
1-2. 改定の施行スケジュール
2024年度改定は、医科・歯科本体が2024年6月1日、薬価が2024年4月1日、調剤本体も2024年6月1日施行という変則的なスケジュールでした。施設基準の新規届出は、施行日までに地方厚生(支)局へ提出する必要があり、届出忘れによる算定漏れに注意が必要でした。続く2026年度改定(2026年4月1日施行)では、地域支援体制加算・連携強化加算・在宅薬学総合体制加算の要件と点数が再度見直されており、現時点では2026年度改定の最新告示を反映した運用が必要です。出典:厚労省「保険医療機関・保険薬局の指定」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/index.html、取得日:2026-05-24)
1-3. 薬局経営への影響構造
調剤報酬は、調剤基本料・薬剤調製料・調剤管理料・服薬管理指導料・各種加算で構成されます。2024年度改定では、調剤基本料の区分判定(処方箋集中率・処方箋受付回数)と特別調剤基本料の適用範囲が見直され、敷地内薬局や同一グループ大規模薬局には特別調剤基本料Aが適用される構造が整理されました。地域支援体制加算は施設基準と点数の双方が見直され、加算1〜4の点数差・要件差がより明確化されました。これにより、薬局ごとに「どの区分・どの加算で算定するのが現実的か」を再点検する必要が生じています。出典:厚労省「調剤報酬点数表」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411.html、取得日:2026-05-24)
2. 調剤基本料の見直し
調剤基本料は、薬局の規模・処方箋集中率・グループ要件に応じて、調剤基本料1・2・3(イロハ)および特別調剤基本料A・Bに区分されます。2024年度改定では、各区分の判定基準と特別調剤基本料の適用範囲が整理されました。詳細な点数・要件は厚労省告示および調剤報酬点数表に定められており、自薬局の処方箋応需実態がどの区分に該当するかを毎月レビューすることが必須です。出典:厚労省「令和6年度診療報酬改定について」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411.html、取得日:2026-05-24)
2-1. 調剤基本料1の対象
調剤基本料1は、調剤基本料2・3および特別調剤基本料に該当しない薬局が算定する区分で、いわゆる「面分業型・地域密着型」の薬局が中心です。処方箋集中率(特定医療機関の処方箋が占める割合)が一定水準を下回り、月間処方箋受付回数が大規模区分に該当しない薬局がこの区分に該当します。区分判定は届出時の直近1年間の実績で行われ、年度途中の届出変更も可能です。出典:厚労省「保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/iryouhoken01/index.html、取得日:2026-05-24)
2-2. 調剤基本料2の対象
調剤基本料2は、処方箋集中率が一定値を超え、かつ月間処方箋受付回数が一定基準を超える薬局が対象です。いわゆる門前薬局のうち、規模と集中率の両方が要件を満たすケースが該当します。基本料1より単価が低く設定されており、調剤管理料・服薬管理指導料などの加算で粗利を確保する構造になります。区分が変動する境界線上の薬局では、毎月の処方箋応需件数モニタリングが欠かせません。出典:厚労省「調剤報酬点数表」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411.html、取得日:2026-05-24)
2-3. 調剤基本料3イ・ロ・ハと特別調剤基本料A・B
調剤基本料3は、同一グループの保険薬局の処方箋受付回数の合計が一定基準を超える大規模グループ薬局を対象とした区分で、イ・ロ・ハの3段階に分かれます。特別調剤基本料Aは、特定の保険医療機関と不動産取引等の特別な関係を有する薬局(いわゆる敷地内薬局を含む)に適用される区分で、2024年度改定で適用範囲が整理されました。特別調剤基本料Bは、保険薬局指定後に未届の薬局等が対象です。各区分の点数・施設基準は告示に定められており、自薬局の経営形態・グループ構成・所在地条件をもとに該当区分を確認する必要があります。出典:厚労省「令和6年度診療報酬改定について」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411.html、取得日:2026-05-24)
3. かかりつけ薬剤師指導料の評価強化
かかりつけ薬剤師指導料・かかりつけ薬剤師包括管理料は、患者が同意した上で特定の薬剤師(かかりつけ薬剤師)が継続的に服薬管理・健康相談に応じる業務に対して算定する点数です。2024年度改定では、対人業務評価強化の流れの中で、かかりつけ機能発揮への評価が再整理されました。かかりつけ薬剤師として指導料を算定するためには、薬剤師個人の経験年数・研修要件・勤務時間・薬局の体制要件など複数の要件をすべて満たす必要があります。出典:厚労省「調剤報酬点数表」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411.html、取得日:2026-05-24)
3-1. かかりつけ薬剤師指導料の算定要件
かかりつけ薬剤師指導料の算定にあたっては、薬剤師個人について、保険薬剤師登録後の業務経験、当該薬局における継続勤務、認定薬剤師資格、医療保険業務に係る研修受講などの要件を満たす必要があります。また、患者から「かかりつけ薬剤師として依頼する」旨の同意を文書で取得し、患者本人の選択に基づき指導することが前提となります。施設基準の届出と患者同意書の保管が要件であり、運用ルールの整備が欠かせません。出典:厚労省「保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/iryouhoken01/index.html、取得日:2026-05-24)
3-2. 地域支援体制加算との関係
地域支援体制加算は、地域医療への貢献度に応じて加算1〜4の4区分が設けられており、加算ごとに在宅対応実績・かかりつけ薬剤師指導料算定回数・調剤後フォローアップ実績・休日夜間対応体制などの実績要件が定められています。2024年度改定では、要件と点数の双方が見直され、上位加算の取得には在宅対応・服用薬剤調整支援・薬剤情報提供書の交付など複数の対人業務実績が必須となっています。加算1〜4のどの区分を取得するかで月次粗利が大きく変わるため、要件充足の進捗管理が経営課題になります。出典:厚労省「令和6年度診療報酬改定について」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411.html、取得日:2026-05-24)
3-3. 服薬情報等提供料との組み合わせ
服薬情報等提供料は、患者の同意のもとで薬局から医療機関へ服薬状況・副作用・残薬情報などをフィードバックする業務に対する評価です。かかりつけ薬剤師として継続的に同一患者を担当している場合、服薬情報等提供料の算定機会も増えるため、業務フローを連動させて運用することが効率的です。算定にはトレーシングレポートの記録・送付実績の保管が必要となります。出典:厚労省「調剤報酬点数表」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411.html、取得日:2026-05-24)
4. 在宅薬学管理指導の推進
在宅医療への対応は、調剤報酬改定で継続的に評価強化されてきた領域です。2024年度改定では、在宅薬学総合体制加算が新設・再整理され、24時間対応体制・無菌調剤対応・医療材料の供給体制・地域連携体制などの実績に応じて評価される構造となりました。続く2026年度改定でも在宅対応の評価が継続的にアップデートされており、薬局として在宅対応にどの段階まで踏み込むかの経営判断が問われています。出典:厚労省「在宅医療の推進について」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000061944.html、取得日:2026-05-24)
4-1. 在宅患者訪問薬剤管理指導料
在宅患者訪問薬剤管理指導料は、医師の指示に基づき薬剤師が患者宅を訪問し、服薬指導・残薬確認・服薬管理を行う業務に対する評価です。算定にあたっては、医師からの指示書・訪問計画書・薬学的管理指導計画書の作成、訪問記録の保管が必要となります。単一建物診療患者数に応じて点数区分が設定されており、施設訪問とサ高住訪問・個人宅訪問で算定区分が異なる点に留意が必要です。出典:厚労省「在宅医療の推進について」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000061944.html、取得日:2026-05-24)
4-2. 在宅薬学総合体制加算の要件
在宅薬学総合体制加算は、在宅医療を担う薬局として総合的な体制を整備した薬局を評価する加算で、加算1・2の区分があります。実績要件には、年間在宅患者訪問薬剤管理指導料の算定回数、無菌調剤対応の体制(自局対応または共同利用契約)、24時間対応体制、地域の医療機関・介護事業者との連携実績などが含まれます。在宅展開を経営戦略に位置付ける薬局では、これらの要件を中期的に整備していく計画が必要です。出典:厚労省「令和6年度診療報酬改定について」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411.html、取得日:2026-05-24)
4-3. 介護報酬(居宅療養管理指導費)との関係
介護保険適用の在宅患者については、医療保険の在宅患者訪問薬剤管理指導料ではなく、介護保険の居宅療養管理指導費(薬剤師が行うもの)を算定します。介護報酬改定(医療と同じく2024年度に同時改定)でも単価・算定要件が見直されており、医療保険と介護保険の両方を理解した運用が必要です。同一患者について両者を重複算定しないルールを徹底することが、返戻防止の観点で重要です。出典:厚労省「介護報酬」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00033.html、取得日:2026-05-24)
5. 電子処方箋対応加算
電子処方箋管理サービスは、社会保険診療報酬支払基金が運営する電子処方箋の管理基盤で、2023年1月から本格運用が開始されました。2024年度改定では、電子処方箋の応需体制を整備した薬局への評価として、医療DX推進体制整備加算が創設され、調剤管理加算等での電子的服薬情報活用が評価される構造となりました。電子処方箋への対応は、レセコン・電子薬歴・オンライン資格確認端末・HPKIカード(電子署名用)の連携が前提となり、システム投資と業務フロー再設計が必要です。出典:厚労省「電子処方箋」(https://www.mhlw.go.jp/stf/denshishohousen.html、取得日:2026-05-24)
5-1. 電子処方箋応需に必要な準備
電子処方箋を応需するには、オンライン資格確認システムが導入済であることが前提となり、その上で電子処方箋管理サービスへの接続申込み、HPKIカードの取得(管理薬剤師・薬剤師ごと)、レセコン・電子薬歴ベンダーによる電子処方箋対応モジュールの導入、運用フローの整備(マイナンバーカードまたは健康保険証+引換番号での処方箋取得)を進める必要があります。HPKIカードは申請から発行までに一定期間を要するため、計画的な申請が欠かせません。出典:厚労省「医療情報化支援基金」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000174807.html、取得日:2026-05-24)
5-2. 医療DX推進体制整備加算
医療DX推進体制整備加算は、オンライン資格確認による情報取得・電子処方箋対応・電子カルテ情報共有サービス対応等の医療DX体制を整備した薬局・医療機関を評価する加算として2024年度改定で創設されました。施設基準には、電子処方箋の応需体制、マイナ保険証の利用率、電子的な薬剤情報・特定健診情報の活用体制などが含まれます。要件の改定が頻繁にあるため、最新告示・通知の確認が継続的に必要です。出典:厚労省「令和6年度診療報酬改定について」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411.html、取得日:2026-05-24)
5-3. オンライン服薬指導の活用
オンライン服薬指導は薬機法改正により制度化され、対面と組み合わせた継続的な薬学的管理の手段として位置付けられています。電子処方箋と組み合わせることで、患者は処方箋の物理的な受け取り・薬局来局が不要となり、配送による医薬品受領が可能となります。実施にあたっては、本人確認・服薬指導記録の保管・通信環境のセキュリティ確保などの運用ルールを整備する必要があります。出典:厚労省「オンライン服薬指導」(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_07000.html、取得日:2026-05-24)
6. 後発品調剤体制加算の要件
後発医薬品調剤体制加算は、後発医薬品(ジェネリック医薬品)の調剤数量割合に応じて算定する加算で、加算1〜3の区分が設けられています。2024年度改定では、各区分の閾値が引き上げられ、より高い後発品使用率が求められる構造になりました。一方、後発医薬品の供給不安が継続する状況を踏まえ、医薬品供給の困難な状況下での減算ルールの取り扱いも整理されています。後発品使用促進と医薬品安定供給は厚労省の継続課題であり、薬局としては在庫管理と供給情報の継続的なモニタリングが必要です。出典:厚労省「後発医薬品の使用促進について」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000132697.html、取得日:2026-05-24)
6-1. 後発品調剤体制加算1〜3の閾値
後発品調剤体制加算は、調剤した薬剤のうち後発医薬品が占める数量割合(カットオフ値以上の品目について)が一定水準を超えた薬局が算定できます。2024年度改定では、加算1・2・3それぞれの閾値が引き上げられ、加算3を取得するには高い水準の後発品使用率が求められます。閾値の具体的数値は告示に定められており、最新告示の確認が必須です。閾値を下回ると上位加算が取得できなくなり、月次粗利に直接影響します。出典:厚労省「令和6年度診療報酬改定について」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411.html、取得日:2026-05-24)
6-2. 後発品調剤体制減算の対象
後発品調剤体制減算は、後発品の数量割合が一定水準を下回る薬局に対して、調剤基本料を減算するルールです。減算対象となった場合は基本料が低減されるため、後発品在庫の整備と先発品からの変更調剤の運用が経営上重要となります。ただし、医薬品供給の困難な状況にある品目については、減算の対象から除外される運用が告示・通知で示されています。出典:厚労省「医薬品の安定供給」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000208770.html、取得日:2026-05-24)
6-3. バイオシミラー使用体制加算
バイオシミラー(バイオ後続品)の使用体制についても、調剤報酬上の評価が整理されています。バイオシミラーは生物学的製剤の後続品で、自己注射・在宅自己注射対応の場面で取り扱いが増えており、患者への適切な情報提供・服薬指導が求められます。在宅対応・在宅自己注射患者を多く抱える薬局では、バイオシミラー対応の体制整備が経営戦略上の差別化要素になり得ます。出典:厚労省「バイオシミラーについて」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/0000079226.html、取得日:2026-05-24)
7. 改定対応に必要な業務改革
調剤報酬改定への対応は、施設基準の届出だけで完結するものではありません。実態として加算要件を満たす業務を回し続けるためには、人員配置・業務フロー・システム・教育研修の全方位での見直しが必要です。改定対応を「届出を出して終わり」にすると、運用が伴わず実績要件を満たせずに加算が取り下げになる、というケースが発生します。改定対応は中期的な業務改革プロジェクトとして位置付けることが現実的です。
7-1. 業務フロー再設計
調剤管理料・服薬管理指導料・調剤後フォローアップ・服薬情報等提供料といった対人業務の評価項目は、業務フローへの組み込みが前提となります。処方箋受付から薬剤交付・服薬指導・記録作成・必要に応じたフォローアップ電話・トレーシングレポート作成までの一連のフローを文書化し、担当者・タイミング・記録方法を標準化することが重要です。フローの文書化と教育を怠ると、属人化により加算算定漏れが発生します。出典:厚労省「保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/iryouhoken01/index.html、取得日:2026-05-24)
7-2. 人員配置と人材育成
かかりつけ薬剤師指導料・地域支援体制加算には、薬剤師個人の経験年数・研修受講・継続勤務などの人的要件が含まれます。要件を満たす薬剤師を一定数確保するためには、採用戦略と既存スタッフの研修受講計画を並行して進める必要があります。薬剤師の確保が困難な地域では、要件充足のために計画的な採用・配置転換が必要となるため、薬剤師の人材確保ルートの整備が経営課題となります。出典:厚労省「薬剤師確保について」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000125968.html、取得日:2026-05-24)
7-3. システム投資と医療DX対応
電子処方箋対応・オンライン資格確認・電子薬歴の機能拡張・トレーシングレポート作成支援機能などは、レセコン・電子薬歴ベンダーの対応モジュール導入が必要です。ベンダーごとに対応時期・追加費用・連携可否が異なるため、自薬局が使っているシステムの対応スケジュールを確認し、未対応であれば乗り換えや追加契約を計画する必要があります。医療情報化支援基金等の支援制度もあるため、最新の支援メニューを確認することが推奨されます。出典:厚労省「医療情報化支援基金」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000174807.html、取得日:2026-05-24)
8. 自己解析チェックリスト(10項目)
自薬局の改定対応状況を確認するためのセルフチェック項目を整理します。以下10項目のうち「いいえ」が3つ以上ある場合、改定対応の遅れにより加算算定機会の取りこぼし・基本料区分の不利な張り付きが発生している可能性があります。所管行政窓口・調剤報酬コンサルタント・税理士に相談のうえ、優先順位を整理してください。
- 自薬局の調剤基本料区分(1/2/3イロハ/特別A/特別B)を直近1年間の処方箋集中率・受付回数から再確認しているか
- 地域支援体制加算1〜4のうち、どの区分を取得しているか・上位区分への移行可能性を点検しているか
- かかりつけ薬剤師指導料の算定実績を月次でモニタリングし、算定率向上の運用改善を行っているか
- 在宅患者訪問薬剤管理指導料の算定件数と、在宅薬学総合体制加算の要件充足状況を確認しているか
- 電子処方箋管理サービスへの接続申込み・HPKIカード取得・レセコン対応モジュール導入が完了しているか
- 医療DX推進体制整備加算の施設基準(マイナ保険証利用率等)を月次で確認しているか
- 後発医薬品調剤体制加算1〜3のうち、自薬局の数量割合がどの区分の閾値を上回っているか把握しているか
- 服薬情報等提供料・調剤後フォローアップなどの対人業務の算定機会を業務フローに組み込んでいるか
- 2024年度改定および2026年度改定後の最新告示・通知を確認し、施設基準の届出を更新しているか
- レセコン・電子薬歴ベンダーから改定対応モジュールの提供スケジュールを取得し、運用テストを行っているか
9. 改定対応が遅れる薬局のパターン
改定対応が遅れがちな薬局には、いくつか共通したパターンがあります。事前に自薬局がこのパターンに該当していないかを点検することで、対応の遅れによる粗利減少を回避しやすくなります。
9-1. 管理薬剤師に改定情報収集が一任されているパターン
改定情報の収集・解釈・施設基準届出を管理薬剤師1人に任せきりにしている薬局では、日常の調剤業務との両立で改定対応が後手に回りがちです。経営者・オーナーが改定情報を共有し、業務改革プロジェクトとしてリソースを割り当てる体制が必要です。中医協答申・告示・通知・疑義解釈は厚労省サイトで順次公開されるため、定期的な情報収集の役割分担を明確にすることが推奨されます。出典:厚労省「中央社会保険医療協議会(中医協)」(https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-chuo_128154.html、取得日:2026-05-24)
9-2. 施設基準の届出はしたが運用が追いついていないパターン
地域支援体制加算・在宅薬学総合体制加算など、実績要件を含む加算は、届出後も継続的に要件を満たし続ける必要があります。届出時の実績で要件を満たしたものの、その後の運用で実績が継続できず、要件未充足のまま算定を続けてしまうと、後日の指導監査で指摘・返還を求められるリスクがあります。月次の実績モニタリング体制が欠かせません。出典:厚労省「保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/iryouhoken01/index.html、取得日:2026-05-24)
9-3. 医療DX・電子処方箋対応を後回しにしているパターン
電子処方箋・オンライン資格確認・マイナ保険証対応などの医療DX関連は、患者来局時に対応できないと利便性で他薬局に劣後する要素となります。また医療DX推進体制整備加算など加算評価にも直結します。レセコン・電子薬歴の更新スケジュール・HPKIカード取得などには時間を要するため、後回しにすると改定後の機会損失が大きくなります。出典:厚労省「電子処方箋」(https://www.mhlw.go.jp/stf/denshishohousen.html、取得日:2026-05-24)
10. よくある質問(FAQ)
- Q1. 2024年度改定と2026年度改定はどちらが現行ですか?
- A. 現時点(2026年5月)では、2026年度改定(2026年4月1日施行)が現行の運用ルールです。2024年度改定で整理された枠組みを土台に、2026年度改定で地域支援体制加算・在宅関連加算・電子処方箋関連加算等の点数・要件が再度見直されています。本記事は2024年度改定の枠組みを起点に整理しつつ、2026年度改定の最新告示・通知の確認を前提とした内容となっています。最新の点数・要件は厚労省告示および中医協答申で確認してください。出典:厚労省「令和6年度診療報酬改定について」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411.html、取得日:2026-05-24)
- Q2. 調剤基本料の区分は途中で変更できますか?
- A. 調剤基本料の区分は、施設基準の届出により変更が可能です。処方箋集中率・受付回数の実績が変動して区分が変わる場合、所定の届出書類を地方厚生(支)局へ提出する必要があります。届出のタイミング・対象期間の取扱いは厚労省通知に定められており、所管厚生局へあらかじめ確認してください。区分判定の境界線上にある薬局では、毎月の処方箋応需実績のモニタリングが推奨されます。出典:厚労省「保険医療機関・保険薬局の指定」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/index.html、取得日:2026-05-24)
- Q3. 地域支援体制加算1から上位区分への移行は可能ですか?
- A. 地域支援体制加算は、在宅対応実績・かかりつけ薬剤師指導料算定回数・調剤後フォローアップ実績・休日夜間対応体制などの実績要件が区分ごとに定められています。上位区分への移行には、これら実績要件を一定期間継続して満たした上で、施設基準の届出を行う必要があります。要件の具体的数値は最新告示・通知の確認が必須です。中期的な業務改革計画として、対人業務・在宅対応の実績を積み上げていくアプローチが現実的です。出典:厚労省「令和6年度診療報酬改定について」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411.html、取得日:2026-05-24)
- Q4. 電子処方箋への対応は義務ですか?
- A. 電子処方箋への対応は、医療DX推進体制整備加算等の算定要件・施設基準として整理されており、加算を算定するためには対応が必要です。義務化のスケジュールは厚労省から段階的に方針が示されていますが、最新方針は厚労省「電子処方箋」ページおよび関連通知で確認してください。加算評価の観点だけでなく、患者の利便性・処方箋受付の効率化の観点でも、対応を計画的に進めることが推奨されます。出典:厚労省「電子処方箋」(https://www.mhlw.go.jp/stf/denshishohousen.html、取得日:2026-05-24)
- Q5. 後発品の供給不安で閾値を満たせない場合はどうなりますか?
- A. 医薬品の安定供給が困難な状況にある後発医薬品については、厚労省告示・通知により、後発品調剤体制加算・減算の対象から除外される取扱いが整理されています。具体的な対象品目・除外ルールは厚労省「医薬品の安定供給」関連通知で公開されており、最新の取扱いを確認することが必要です。薬局としては、卸からの供給情報・出荷調整品目情報を継続的に把握し、レセコンへの反映を徹底することが求められます。出典:厚労省「医薬品の安定供給」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000208770.html、取得日:2026-05-24)
- Q6. かかりつけ薬剤師指導料の同意は何枚まで取得できますか?
- A. かかりつけ薬剤師指導料の同意取得は、患者本人の選択に基づくものであり、患者と薬剤師の信頼関係を前提とした制度設計です。同意取得の運用は、薬剤師の業務量・薬局の体制・患者ニーズを踏まえて適切に行う必要があります。同意は文書で取得し、患者がいつでも撤回できる旨を説明することが運用上重要です。詳細な同意取得ルール・記録要件は厚労省通知で示されています。出典:厚労省「保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/iryouhoken01/index.html、取得日:2026-05-24)
- Q7. 改定対応のために薬剤師を増員する余裕がありません。どこから着手すべきですか?
- A. 増員が困難な場合は、既存の業務フローの見直し・記録の電子化・対人業務の標準化など、現有人員での業務改革から着手するのが現実的です。具体的には、調剤管理料・服薬管理指導料・服薬情報等提供料など、既存業務に組み込みやすい加算から運用を整え、その後でかかりつけ薬剤師指導料・在宅対応など人員要件の高い加算へ拡張する段階的アプローチが取りやすいです。経営判断の優先順位については、薬局経営に詳しい税理士・コンサルタントにあらかじめご相談ください。
11. 出典・参考資料
- 厚労省「令和6年度診療報酬改定について」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411.html(取得日:2026-05-24)
- 厚労省「中央社会保険医療協議会(中医協)」https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-chuo_128154.html(取得日:2026-05-24)
- 厚労省「保険医療機関・保険薬局の指定」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/index.html(取得日:2026-05-24)
- 厚労省「保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/iryouhoken01/index.html(取得日:2026-05-24)
- 厚労省「在宅医療の推進について」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000061944.html(取得日:2026-05-24)
- 厚労省「介護報酬」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00033.html(取得日:2026-05-24)
- 厚労省「電子処方箋」https://www.mhlw.go.jp/stf/denshishohousen.html(取得日:2026-05-24)
- 厚労省「医療情報化支援基金」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000174807.html(取得日:2026-05-24)
- 厚労省「オンライン服薬指導」https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_07000.html(取得日:2026-05-24)
- 厚労省「後発医薬品の使用促進について」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000132697.html(取得日:2026-05-24)
- 厚労省「医薬品の安定供給」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000208770.html(取得日:2026-05-24)
- 厚労省「バイオシミラーについて」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/0000079226.html(取得日:2026-05-24)
- 厚労省「薬剤師確保について」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000125968.html(取得日:2026-05-24)
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免責事項:本記事は厚生労働省・中央社会保険医療協議会(中医協)等の公開情報をもとにmitoru編集部が整理したものです。個別の施設基準届出・算定要件解釈・指導監査対応については、あらかじめ所管地方厚生(支)局・行政書士・税理士・薬局経営コンサルタント等の専門家にご相談ください。記事中で参照している点数・要件は2024年度改定および2026年度改定の枠組みに基づくものであり、最新の告示・通知・疑義解釈で随時更新されるため、運用にあたってはあらかじめ厚労省の公式情報をご確認ください。本記事の内容は2026-05-24時点の公開情報に基づいています。
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mitoru編集部の見解
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